「BtoBマーケティングを強化しようとオウンドメディアを立ち上げたが、お問い合わせにつながらない」「セミナーを開催したが、商談・受注につながらない」といった課題を抱えている企業は少なくないでしょう。
さまざまなマーケティング施策に取り組んでいるのになかなか成果が出ない場合、顧客に対してハードルの高すぎる行動を求めているのかもしれません。
BtoBマーケティングで成果を出すためには、顧客との段階的なコミュニケーション設計が重要です。才流(サイル)では、これを「階段設計」と呼んでいます。
本記事では、見込み顧客との関係性を構築し、商談・受注数を最大化する階段設計の手法を解説します。また、自社の階段設計に活用できるワークシートもご用意しました。
この機会に自社と顧客とのコミュニケーション設計を見直して、成果の最大化に取り組んでみませんか?
BtoB企業向け階段設計ワークシートをダウンロードする(PowerPoint形式)※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、マーケティング戦略と施策の立案を支援しています。マーケティング活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。
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BtoBマーケティングで重要なコミュニケーション設計
急速なデジタル化によって法人顧客の購買プロセスは大きく変化しました。今や見込み顧客の情報収集はオンラインが主流となり、オフラインだけでマーケティング・営業活動をしていた企業は変化を迫られています。とくにコロナ以降、BtoBマーケティングに注力する企業が年々増加しています。
それと同時に、オウンドメディアやセミナーなどさまざまなリード獲得施策を試しているものの商談数も受注数も増えない、というお悩みもよく聞くようになりました。
しかし、顧客の視点に立って考えてみると「オウンドメディアの記事を読んだだけでは、信頼できる会社かどうかわからない」「セミナーに参加したのは情報収集のためで、いきなり商談を打診されても困る」というのが正直な感想ではないでしょうか。
商談・受注につながるBtoBマーケティングを実践するには、顧客の検討・選定のフェーズにあわせて段階的にコミュニケーションをとっていく必要があります。
たとえば以下のようなイメージです。
- 展示会や広告などで企業や商品・サービスを認知してもらう
- サービスサイトや導入事例で自社が提供する商品・サービスや保有するノウハウを理解してもらう
- セミナーに参加して信頼できる会社だと認識してもらう
- 商談で「この会社に任せよう」と思ってもらう
しかし、成果が出ていない企業では、認知と商談獲得を同時に狙うような、顧客の検討・選定プロセスを無視しているケースが多くみられます。これでは当然、BtoBマーケティングで成果が得られにくいでしょう。
そこで取り入れたいのが、本記事のテーマである「階段設計」です。
BtoBマーケティングの「階段設計」とは
階段設計は、BtoBマーケティングにおいて大切な顧客とのコミュニケーション設計の手法です。
階段設計では、各種マーケティング施策からすぐにお問い合わせ獲得や商談獲得を目指しません。見込み顧客と段階的にコミュニケーションを取り、関係性を構築したうえでお問い合わせ獲得、商談獲得を目指します。
一見手間が増えるように見えますが、最終的にはお問い合わせ数や商談数、ひいては受注数を最大化できる手法です。
才流では、見込み顧客との関係構築を目指すうえで、階段設計の考え方がとても重要だと考えています。
階段設計を実践している、船井総研の事例
見込み顧客が上りやすい、段差の少ない階段を提示することが階段設計の要となります。これをビジネスモデルレベルでうまく設計しているのが、東証プライム上場企業の経営コンサルティング会社・船井総研ホールディングスです。同社グループの中核をなす船井総合研究所(以下、船井総研)を例に挙げて、階段設計を解説します。
上図は、彼らが発表している2016年の決算資料から抜粋したものです。
船井総研の売上の9割前後を占めているのは、図の右端にあるコンサルティングサービスです。そのほかに、図のピラミッドにある以下のサービスも展開しています。
- 業種・テーマ別の経営研究会
- テーマ別の経営セミナー
- Web会員向けのコンテンツサービス
見込み顧客にとって、いきなり高額なコンサルティングサービスを発注するのはハードルが高いものです。そこで、コンサルティングサービスよりも低価格なコンテンツサービスや経営セミナー、経営研究会を通して、顧客と継続的な関係を維持しながら段階的に関係性を構築します。
このように、顧客との関係が深まったところで、主軸となるコンサルティングサービスを販売するのが船井総研のビジネスモデルです。
船井総研のコミュニケーション設計を階段で表現すると、以下のように最初のメルマガから最後の月次・PJ型コンサルティングまで綺麗なステップになっていることがわかります。
BtoBマーケティングにおける階段設計の4つのステップ
船井総研のビジネスモデルで紹介したような階段設計の考え方は、多くのBtoB事業で効果的です。ここからは、実際に自社のマーケティング活動を階段設計に落とし込むステップについて解説します。
1. 顧客を理解する
マーケティング活動において顧客理解は欠かせないプロセスです。階段設計をはじめる前に、まずは自社の見込み顧客についての理解を深めましょう。
- どんな課題を抱えているのか
- 商品・サービスを通じて何を得たいのか
- どんな場面で、どういうきっかけで購買活動をはじめるのか
上記のような顧客への理解が不十分なままでは、顧客に良い体験を提供できません。また、どんなメッセージやコンテンツを届けたらいいのかわからず、マーケティング活動で成果を出すことは難しいでしょう。
以下の記事で、顧客理解を深めるための12の手法を解説していますので、ぜひ参考にしてください。
※関連記事:顧客理解を深めるための12の手法
2. ペルソナを設計する
顧客理解を深めたら、次はペルソナを設計します。
ペルソナとは、自社が提供する商品・サービスを活用してくれるであろう象徴的なユーザー像のこと。「誰の、どんな課題を、どのように解決するか」を整理するのに役立ちます。
ペルソナに必要な項目や作成の手順は以下の記事で解説していますので、早速実践してみてください。
※関連記事:BtoBマーケで役立つペルソナ作成3つのステップ【テンプレート付き】
3. カスタマージャーニーを作成する
ペルソナの設計が完了したら、カスタマージャーニーを作成します。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを知り、購入を検討し、実際に購入や契約に至るまでの一連の購買プロセスのことです。
顧客の行動や思考、感情の変化は認知、理解、検討などのフェーズごとに異なります。カスタマージャーニーをつくることで、それぞれのフェーズで顧客が求めているコンテンツを明確に把握しましょう。
カスタマージャーニーマップの作成手順については、以下の記事で解説しています。
※関連記事:カスタマージャーニーマップの作成手順【テンプレート付き】
4. 階段設計に落とし込む
購買プロセスごとの顧客の思考や感情、行動が整理できたところで、いよいよ階段設計に落とし込んでいきます。階段設計は、カスタマージャーニーマップをビジュアルでわかりやすくしたものです。
認知から階段をスタートさせて、各フェーズで必要な情報(コンテンツ)を提供するように設計しましょう。顧客が上りやすい、なめらかな階段になるように気をつけましょう。
設計した階段を見てわかるとおり、商談に最も近いのは検討段階にいる顧客です。実際にマーケティング活動を行う上では、階段の上部(商談に近いフェーズ)から順に施策に取り組むのがポイントです。
才流では階段設計ワークシートを作成・配布しています。自社の階段設計にぜひお役立てください。
階段設計ワークシートをダウンロードする(PowerPoint形式)※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます
※関連動画:BtoBマーケティングで成果を最大化する一番の打ち手
階段設計ワークシートの使い方
ここからは、階段設計ワークシートの使い方について解説します。
※ワークシートには顧客理解、ペルソナ設計、カスタマージャーニーマップ作成に関する解説も含まれています。すでにペルソナやカスタマージャーニーマップを作成している場合は、「④ ワーク③の内容を階段設計の図に落とし込む」から取り組んでください。
階段設計ワークシートをダウンロードする(PowerPoint形式)※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます
顧客の購買プロセスに合わせてワークシートを選ぶ
顧客の検討・選定フェーズの数によって、階段の段数は変わってきます。ワークシートでは4段階、5段階、6段階の3つのシートを用意しています。自社の顧客の購買プロセスに合わせて、ワークシートを選んでください。
カスタマージャーニーマップを階段設計の図に落とし込む
階段の段数が決まったら、それぞれのフェーズごとにカスタマージャーニーマップに記入したタッチポイントとコンテンツ例を転記しましょう。
カスタマージャーニーマップをワークシートに落とし込むことで、認知から検討・選定のフェーズごとにどのような施策を実行すればいいのかが一目瞭然になります。
ワークシートが完成したら、階段の段差が急ではないかを検討し、もしハードルの高い段があれば段差を増やすなどの対策を行いましょう。
購買に近いフェーズから施策を実行する
「階段設計を描いたもののどこから手をつけていいかわからない」と悩んだら、受注・商談などの購買に近いところからコンテンツを作成することをおすすめします。
購買に近いところから着手することで早期に売上・利益といった成果を出すことができ、マーケティング活動に弾みをつけることができます。一方、認知や理解などの購買に遠いところから着手してしまうと、売上・利益につながるのが1年後、2年後になってしまい、マーケティング活動への投資を打ち切られてしまう可能性すらあります。
まずは階段の後半で必要になることが多い、投資対効果のシミュレーションや導入実績といった見込み顧客の不安を解消するようなコンテンツから着手しましょう。
階段設計を見直して成果が出た事例
参考として、いくつかの事例を紹介します。
事例1:コンテンツ配信企業
コンテンツ配信事業を展開しているA社の階段設計を紹介します。
改善前、A社のWebサイトのCTAにお問い合わせしか設置しておらず、コンバージョン率は低迷していました。そこで、Webサイトに資料ダウンロードのボタンを設置。すると、コンバージョン数はサイト改善前の1.5〜2倍に増加しました。
お問い合わせよりもアクションのハードルの低い資料ダウンロードもCTAとして追加し、中間にCVポイントを設けることで成果を出した事例です。
事例2:BtoB SaaS企業
SaaSプロダクトを扱うB社の事例を紹介します。
BtoB SaaS企業のWebサイトでは、CVポイントを無料トライアルのみとしているケースがよくあります。B社も同様に、CVポイントには無料トライアルしか設置していませんでした。そこで「資料請求」を追加したところ、すぐにコンバージョン率が2倍になったのです。
BtoB商材を購入する場合、多くの企業において社内説明、社内調整、稟議のプロセスが存在します。そのため、見込み顧客はまず資料を請求して自社で使えるかを確認し、社内調整をしてから、無料トライアルに申し込むプロセスを踏むことがほとんどです。
こちらの事例でも、顧客のアクションのハードルを下げることで成果を出すことができました。
まとめ
本記事では、誰でもすぐに階段設計に取り組める4つのステップを紹介しました。
1. 顧客を理解する
2. ペルソナを設計する
3. カスタマージャーニーを作成する
4. 階段設計に落とし込む
顧客に対する理解が深まれば、マーケティング施策の打ち手もわかりやすくなります。なめらかで上りやすい階段を設計するためにも、まずは顧客理解を徹底しましょう。
BtoBマーケティングにおいて、階段設計は汎用性高く使える手法です。たとえば以下の記事のように、イベントマーケティングなどの幅広い領域で活用できます。
※関連記事:費用をかけずにウェビナーの集客を最大化させる4つの打ち手
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