BtoBマーケティングのコミュニケーション設計において有効なメソッド。
各種プロモーション施策から、すぐにお問い合わせ獲得や商談獲得を目指すのではなく、見込み顧客と段階的にコミュニケーションを取り、関係性を構築した上でお問い合わせ獲得、商談獲得を目指す考え方。一見手間が増えるように感じるが、最終的にはお問い合わせ数や商談数、ひいては受注数が最大化する。
資料:『階段設計』の記入フォーマットをダウンロードする(PowerPoint形式)
「BtoBマーケティングを強化しようとオウンドメディアを立ち上げたが、お問い合わせにつながらない」「セミナーを開催したが、商談・受注につながらい」といった話をよく聞く。
しかし、顧客の視点に立つと「オウンドメディアの記事を読んだだけでは、信頼できる会社かどうかわからない」「セミナーに参加したのは情報収集のためで、いきなり商談を打診されても困る」というのが正直な感想だろう。
本来であれば、SNSで認知してもらい、コーポレートサイトで自社が提供するサービスや保有するノウハウを理解してもらい、セミナーに参加して信頼できる会社だと認識してもらい、商談において「この会社に任せよう」と思ってもらうような段階的なコミュニケーションが必要になる。
しかし、多くのBtoB企業のマーケティング設計では「SNSで認知を拡大し、商談数を増やす」ような、いわば、「出会った初日に結婚を申し込む」事態が起きている。これでは当然、結婚を受け入れてもらえる可能性が低く、営業・マーケティング活動の効率は悪くなってしまう。
見込み顧客との関係構築を目指す上では、『階段設計』の考え方が重要になる。
前述したように多くのBtoB企業はオウンドメディア、展示会、お役立ち資料DL、SNSなどの施策からいきなり「お問い合わせ」や「商談獲得」を期待し、見込み顧客の視点に立つと、ハードルが高すぎる行動を求めている。
『階段設計』の考え方を使うと、セミナーや少人数勉強会、製品・サービスの説明会、もしくは定期的なメールマガジンなど、見込み顧客が登りやすいハードルの低い階段を提示することが重要になる。
これをビジネスモデルレベルでうまく設計しているのが、東証一部に上場する経営コンサルティング会社・船井総研ホールディングスだ。
同社グループの中核をなす船井総合研究所(以下、船井総研)は、経営コンサルティングサービスを提供している企業だが、そのビジネスモデルに大きな特徴がある。上図は、彼らが発表している2016年の決算資料から抜粋したものだ。
船井総研の売り上げの9割前後を占めているのは、「コンサルティングサービス(図の右端)」である一方、「コンテンツサービス(ピラミッドの下段)」の販売や、1回1~3万円程度で参加できる「経営セミナー(同中段)」、業種・テーマ別に開催し、会費が年間数十万円程度の「経営研究会(同上段)」も提供している。
見込み顧客にとって、いきなり高額な「コンサルティングサービス」を発注するのはハードルが高い。そこで、コンテンツサービスや経営セミナー、経営研究会を通して、顧客と継続的な関係を維持しながら段階的に関係を深めた上で、主軸となるコンサルティングサービスを販売しているのだ。
船井総研のコミュニケーション設計を階段で表現すると、下図のように最初のメルマガから最後の月次・プロジェクト型コンサルティングまで綺麗なステップになっていることがわかる。
この階段設計の考え方は多くのBtoB事業で使えるため、自社のマーケティング活動が「なめらかな階段」になっているかをチェックすることをおすすめしたい。
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