著者/ 栗原 康太
株式会社才流 代表取締役社長

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もしも私がモチベーションクラウドのマーケティング責任者だったら

今回のBtoB企業のマーケティング分析は少し趣向を変え、爆伸びしていると噂のリンクアンドモチベーションさんが提供するHR SaaS『モチベーションクラウド』について、自分がマーケティング責任者だったら、という観点で書いてみたいと思います。


まずは、モチベーションクラウドに関する現状把握

最低限、理解しておきたいことは以下のような内容でしょうか。


  • サービス概要:従業員エンゲージメント向上のための組織改善クラウドサービス
  • 提供価値:組織状態を可視化する「ものさし」を提供し、組織改善の「PDCAサイクル」をサポートすることで、従業員のエンゲージメント向上を支援。離職率低下、マネジメント負荷の軽減、業績向上が成果。
  • ターゲットペルソナ1:大企業の人事担当役員、人材開発系部門の部長
  • ターゲットペルソナ2:上場前後のベンチャー企業経営者
  • 競合:アトラエ『wevox』、ヒューマンキャピタルテクノロジー『Geppo』、識学『識学クラウド
  • 市場環境:労働人口減少で、従業員満足度の向上は重要テーマ。働き方改革、ティール組織など、関連市場は右肩上がり


※実際は、事業責任者をはじめとした社内メンバーや既存顧客、見込み顧客にインタビューして情報の体感値を上げたいですが、取り急ぎ、Web上でわかる範囲で記載しています。


リンクアンドモチベーションの経営、事業上の目標を把握

モチベーションクラウドと顧客リピート率

導入目標数は2020年に2,000社のようです。2018年9月時点で641社の導入と決算資料にありましたが、2018年12月時点では900社前後に導入決定していると推測されます。


2019年、2020年であと1,100社に導入する計画ですが、2018年の伸び率を見る限り、このままやっていても十分な気がしますが(笑)、1年あたり550社に導入する計画なので


  • 45社/月の導入社数
  • 450社/月の商談数 ※受注率を10%と仮定
  • 4,500件/月のリード獲得数 ※商談化率10%と仮定


あたりがマーケティング部門として追う指標になります。


現状のマーケティングプロセス

マーケティングプロセスの全体像(仮説)

外から見ての推測ですが、大枠は上記のようなマーケティングプロセスになっていると思われます。


セミナーを月5回程度の頻度で開催しているので、2000年の創業以来やっているコンサルティング事業で蓄積した既存リードや、新規で獲得したリードに対して、メール等でセミナーに誘導→そこからサービス説明や商談につなげる、のは一つの勝ちパターンになっていると思われます。


セミナーの内容をレポートにして、オウンドメディア『HR2048』内で発信していることからも、セミナー施策の効果が高いことが推測されます。


直近の6つのセミナーのうち、5つが自社単独セミナーだったので、リーチを広げる意味でも共催セミナーの割合は増やしたいですね。例えば、ベンチャーキャピタル、人材紹介会社、HR Tech会社など、シナジーが生める会社に声をかけます。


新規リードは、サービスサイト内にホワイトペーパーが3つほどありましたが、ホワイトペーパーDLをCVポイントにして、Facebook広告を出稿しているようです。
※参照:https://www.motivation-cloud.com/whitepaper/


モチベーションクラウド


Facebook広告の効果が高いのであれば、追加で


  • EightやWantedly広告も出稿して、新規リード獲得の幅を広げる
  • セミナー参加をCVポイントにして、Facebook広告を出稿
  • ホワイトペーパーの種類を増やす


は試したいですね。特に3点目のホワイトペーパーは、現状のタイトル(日本一働きがいのある会社、戦略人事概論)の訴求力を上げられそうなので、営業メンバーにも参加してもらい、コンテンツ企画会議を開催します。


セミナー誘導の勝ちパターンに加え、モチベーションクラウドを導入した知り合いが「コンサルタントはプロフェッショナル感があり、さすがだった」と言っていましたが、レベルの高いコンサルティング部隊が導入企業をサポート→エンゲージメントスコアを高める→カンファレンスなどでノウハウ発信→紹介で同業界の導入が進む・・・がもうひとつの勝ちパターンになっていそうです。


ペルソナの検討プロセスからの施策分析

施策分析

ターゲットペルソナ2の「上場前後のベンチャー企業経営者」で検討プロセスと追加施策を考えてみました。


組織課題に悩まない経営者はいないと思うので、「無関心」「課題認識」のフェーズでは、「組織の課題が出てきたなら、まずは組織診断・改善クラウドツールを導入することが当たり前」という状態を取りたいです。


・導入事例が出るたびにリリースを打つ
・導入企業に診断結果(Afterのみ結果のみでも)をIR資料や採用サイト、Wantedlyなどで公開してもらう

などが施策になると思います。

すでにいらっしゃるかと思いますが、広報チームと連携して、PR強化は優先度高くやりたいですね。


組織改善に関するカンファレンスの開催

FeedTech

さらに導入企業に登壇してもらうことを中心にしたカンファレンスの開催も検討したいです。上記はフィードフォース社が開催しているカンファレンス「FeedTech」ですが、テーマを絞ったカンファレンスは


  • 営業のリードタイムの短縮
  • 受注率の向上
  • 見込み度低だった顧客が、見込み度高にアップ
  • メディアからの取材依頼数の増加


などの効果が見込めます。リンクアンドモチベーションさんの知名度・信頼度があれば、集客に苦戦することはないでしょうし、参加したい経営者も多いはずです。


「解決策検討」「導入決定」のフェーズでは、「組織改善クラウドツールなら、モチベーションクラウドが一番」という認知と「モチベーションクラウドを導入したら組織が変わる」という認知を取りたいところ。


前者は、決算資料で出している「導入数国内No.1」の訴求を、あらゆるクリエイティブ(Webサイト、パンフレット、広告)に反映していく、などでしょうか。
※細かいレベルでは、Webサイトのtitleを「国内初、組織改善クラウド|モチベーションクラウド」から、「導入数国内No.1、組織改善クラウド|モチベーションクラウド」に変更


後者は、成功事例の発信はもちろん、コンサルタントが組織改善のノウハウを発信していく仕組みを作りたいです。


現状は、以下のようにカンファレンスやイベントで導入企業に登壇してもらい、ノウハウを発信しているようです。

ラクスルが乗り越えた6つの組織の壁~「経営トップ依存症」~|モチベーションクラウド


【一挙公開】ベストモチベーションカンパニーの経営者が語る組織づくりの秘訣とは?(全8回) – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION


プロダクトの性質上、「現状把握はできそうだけど、解決策を考えて、実行していく部分に自信がない・・」という顧客の不安があると推測されるので、実行を支援するコンサルタントの方がノウハウを公開するのは、営業支援の意味でも効いてくるはずです。


SEO HACKS


業種が違いますが、デジタルマーケティング支援のナイルさんが運営されている『SEO HACKS』はコンサルタントの方がSEOに関する質の高い情報発信をしていて、「SEOの基礎」というカテゴリでSEOに関する基本情報も網羅的に書いています。


この手の施策は、検索エンジン経由でトラフィックを集められるのはもちろんですが、見込み顧客が「この会社なら大丈夫そうだな」と感じ、問い合わせや商談をしてくれるメリットがあります。


モチベーションクラウドでも、成功事例の公開だけでなく


・コンサルタントによる組織改善に関するノウハウ記事の執筆
・組織改善に関する基礎知識を用語集やQ&Aの形式で発信


する仕組みを作り、「モチベーションクラウドを導入したら組織が変わる」の裏付けをしていきたいです。


検索エンジン対策は強化の余地ありだが、優先順位次第

一方、関連キーワードでのSEO順位は以下のように低かったのと、リスティング広告もブランド名「モチベーションクラウド」以外では出稿が見当たりませんでした。検索エンジン経由のリード獲得は現状、優先度が高くないようですね。

検索エンジン結果

マーケティングチームのリソース次第ですが、現状のインタビュー、イベントレポート系の記事はニッチキーワードでの上位表示とソーシャル拡散は見込めますが、CVキーワード、ビッグキーワードでの上位表示は難しいので


・リスティング広告は良い代理店を見つける、もしくは『Shirofune』のような運用自動化ツールを導入し、インハウス運用を強化
・オウンドメディア『HR2048』の中で、月1~2本でも、上記のワードで上位表示が取れる記事を執筆


などは、追加施策の候補にあがると思います。


今後の地方展開や5,000社、1万社と広げていく際には必要になると思いますが、現時点では良いパートナーが見つかった or 社内メンバーをアサインできた、でなければ、優先度を下げて良いと思います。


モチベーションクラウドのプロダクトサイトは改善の余地が少しありそう

モチベーションクラウドのプロダクトサイト


完成度の高いサイトですが、すぐに試せる改善策がいくつかありそうです。※上の画像に改善案を赤字/赤枠で記載しています。

  • 現状のCTAが「無料で体験する」ですが、リンク先の「デモ体験を申し込むフォーム」とつながりが弱いのと、DropboxやEvernoteなどのフリーミアム/低単価サービスではないので、CTAは「資料請求」もしくは「デモを依頼する」に変更
  • 「国内初、組織改善クラウド」は、「国内No.1、組織改善クラウド」のようなNo.1を訴求するコピーに変更
  • 「CMギャラリー」はクリック率が低く、購買行動の後押しへの寄与度が低そうなので、グローバルメニューから削除。フッターに移動
  • 「サポート」もリンク先のコンテンツをイメージしづらいので、「改善サポート」に変更。コンサルタントによる手厚いサポートは、プロダクトの特徴だと思うので、何パターンかでテストし、クリック率は上げておきたい
  • 「HR2048」がリンク先のコンテンツをイメージできないので、「コラム」に変更
  • 「資料ダウンロード」もリンク先で、何がダウンロードできるのかイメージできないので「お役立ち資料」に変更


すると、CV率が変わってくるはずです。


また、勝ちパターンの一つである、セミナーへの誘導を強化するために、TOPページにセミナー告知のエリアを作るのはテストします。


コンテンツ面では、いずれにしても一度、ユーザーテストを実施したいですが、「実際の診断項目や診断結果画面を見たい」ニーズがあると思うので、プロダクトツアー的なページを作りたいです。


あと、導入事例インタビューとは別に、以下のようなストーリー形式の組織改善・変革のコンテンツを発信していけると「モチベーションクラウドを活用した組織改善」の実態がわかって良いですし、社内メンバーの育成にも寄与するでしょうし、なにより個人的に読みたいので(笑)、月1-2本のペースで継続発信していきます。

クラウドワークス 吉田浩一郎が「孤立」の先に見つけた希望 | CAREER HACK



まとめ

さすが2019年には売上20億に届きそうなSaaS事業で、2020年2,000社の導入数は達成するペースで推移していましたが、マーケターとして追加で施策を検討するのであれば、


  • セミナーと、カンファレンスやイベントで導入企業に登壇してもらい紹介発生が現状の勝ちパターン? 基本はこれを強化する方向で
  • セミナーは以下の4つの施策を試したい
    – 共催セミナーの割合を増やす
    – EightやWantedly広告も出稿、新規リード獲得の幅を広げる
    – セミナー参加をCVポイントにして、Facebook広告を出稿
    – TOPページからセミナーページへの動線を強化
  • ホワイトペーパーの種類を増やす
  • 導入事例が出るたびにリリースを打つ
  • 導入企業に診断結果(Afterのみ結果のみでも)をIR資料や採用サイト、Wantedlyなどで公開してもらう
  • 組織改善をテーマにしたカンファレンス開催
  • 紹介強化、営業支援の位置づけでコンサルタントのノウハウ発信を強化
  • 導入数国内No.1は、あらゆる場所で訴求
  • WebサイトはCV率向上に寄与しそうな改善をいくつか実施
  • プロダクトツアーや組織改善ストーリーをコンテンツ化


という感じでしょうか。参考になれば幸いです。


※本記事は、Web上の情報だけをもとに記載しており、リンクアンドモチベーション社の実際の内部数値をもとにした考察でない点はご容赦ください
※本記事は、リンクアンドモチベーション 取締役の麻野さまに許可をいただいて作成しております


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著者/ 栗原 康太
株式会社才流 代表取締役社長

2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げる、株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。 より良い物事の捉え方・進め方を「サイル式メソッド」として発信しています。

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