株式会社TOKIUM様は、請求書や領収書などの紙を経理部から一掃し、業務効率化を実現する経理AIエージェント「TOKIUM(トキウム)」を提供するBtoB SaaS企業です。無駄な時間を減らし、未来へつながる「時を生む」ために、企業のDX化・ペーパーレス化を支援しています。
リード獲得は順調に進む一方で、「獲得したリードが商談・受注につながらない」というリードナーチャリング(※)の課題に直面した同社。この課題解決とナーチャリング体制構築の“最短ルート”を求め、才流(サイル)にご相談いただきました。
本記事では、マーケティング部 部長(当時)の山下 星夢さん、マーケティング部 ナーチャリング課(当時)の和田 素春さんに、才流の支援の感想とプロジェクトで得られた成果についてお話を伺いました。
※リードナーチャリング:見込み顧客に対して、継続的にコミュニケーションを取ることで商談・受注につなげる手法

最短ルートでリードナーチャリングの体制を構築したい
ーTOKIUM様の事業内容について教えてください。
和田 株式会社TOKIUMは、企業のDX化を支援する経理AIエージェント「TOKIUM」を開発・販売しています。経費精算や請求書処理をペーパーレス化するSaaSですが、単なるシステム提供にとどまらず、AI OCRで読み取りきれない部分や人の手が必要な業務を、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)で補完している点が特長です。

ー才流にご支援を依頼される前、マーケティング活動はどのような状況でしたか。
山下 マーケティング部門ではテレビCMからWeb広告、各種オンラインイベントや展示会まで、幅広いチャネルで積極的にリード獲得活動を展開しています。リード獲得数自体は順調に伸びており、数多くの見込み顧客を獲得できていました。
一方で、獲得したリードを商談や受注につなげるナーチャリングにおいて、リードから商談への転換率が低く、獲得したリードを有効活用しきれていないという課題を抱えていました。当時はナーチャリング専任組織を立ち上げたばかりで、実施していたのはハウスリストへの定期的なメルマガ配信程度。特にコールドリード(※)に対して、適切なアプローチができていませんでした。
※コールドリード:まだ自社の商品・サービスに対して興味や関心を示しておらず、接点もほとんどない見込み顧客のこと

和田 マーケティングとインサイドセールス間の連携にも課題がありました。マーケティングからリードを渡しても、インサイドセールス側ではどこからアプローチすべきか優先順位が一部決まっていないものもあり、対応が属人的になっていました。情報共有やフィードバックも起きづらい状況でしたね。
ーそのような状況で、外部の支援を検討された理由をお聞かせください。
山下 私たちには「不要な失敗で時間を取られることなく、最短ルートでナーチャリングの体制を構築したい」という思いがありました。
失敗から学ぶこともありますが、できることなら失敗の質を上げた状態で、早く体制を立ち上げたい。そして、専門家にご支援いただくことで、立ち上げのスピードと精度を高められるのではと考えました。
ー才流を知ったきっかけは何でしたか。
代表の栗原さんの書籍『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』や、YouTubeなどでの発信を拝見し、才流の持つ知見には信頼感を抱いていました。
実は、依頼に先立って複数の有識者の方々にヒアリングを実施し、ナーチャリング体制構築の全体像はある程度見えていたんです。ですが、「具体的な施策やオペレーションに落とし込む段階で迷いが生じるのではないか。やはり専門家に伴走してもらうべきではないか」と感じたため、才流に依頼することにしました。
調査・評価・実行の3ステップで体系的にアプローチ
ープロジェクトはどのようなステップで進めたのでしょうか。
亀井 今回は大きく3つのステップで進行しました。

亀井 まず、調査・分析フェーズです。見込み顧客はもちろん、実際にTOKIUMを導入されたお客さまや、社内のインサイドセールス、フィールドセールスの方々にもインタビューさせていただき、顧客の解像度を高めました。
次に、アセスメントです。リードのデータベース化やインサイドセールスとの連携など、8つの項目に絞ってマーケティング部門の現状を評価し、理想的な状態とのギャップを可視化しました 。これにより、どこに改善の余地があるのかが明確になりました。
そして、最後に施策立案・実行フェーズです。アセスメントで見えた課題をもとに、理想的なナーチャリング体制に近づけるための戦略を立て、施策を実行していきました。
さらに、ウェビナー運営やインサイドセールスに関する勉強会も実施させていただきました。ナーチャリングにとどまらず、幅広く関わらせていただくことで、より多角的な支援ができたと感じています。
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ープロジェクトを通じて、当初の想定と異なった点や新たな発見はありましたか。
山下 当初はリードナーチャリングに関するご支援をお願いしていました。しかしプロジェクトでは、リード獲得や商談化率なども含めて幅広く相談に乗ってもらえました。都度発生する突発的な課題に関しても、適切なアドバイスをいただけたのが良かったです。
また、自分たちでは知り得ない他社の事例を共有してもらったことで、自社の伸びしろがある場所にも気づきやすくなり、施策の優先順位もつけやすくなりました。亀井さんがSaaSやバックオフィス領域の知識を豊富にお持ちだったので、とても心強かったです。
メルマガから部署間連携まで、マーケティングの枠を超えた支援
ープロジェクトの中で、特に印象に残っている施策はありますか。
和田 最も印象的だったのは、メルマガ配信に対する考え方がガラッと変わったことです。それまで私たちは、配信停止されることを恐れてメルマガの配信回数を控えめにしていました。しかし、才流からは「一日に2〜3回送りましょう」という、これまでの常識を覆す大胆な提案があったんです。
その提案には正直驚きましたが、思いきって実行に移すことに。結果として、メルマガの開封率、クリック率は大きく向上し、SQL(※)の目標を達成することができました。あのご提案があったからこそ、アクセルを踏み切れたのだと思います。
※SQL:Sales Qualified Leadの略。営業部門が受注確度が高いと判断した見込み顧客のこと
ーこの学びは、他の施策にも応用されましたか。
和田 はい。才流との勉強会で得たTipsの中に、「ウェビナー当日にイベントの集客メールを送付する」というものがありました。それを実践してみたところ、ウェビナーの集客数が大幅に向上したんです。今ではレギュラー施策になっていますね。
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ー他に印象に残っていることはありますか。
和田 アセスメントの結果を受けて、マーケティングとインサイドセールスの連携を強化するための施策を導入しました。その中の1つが、メルマガのコンテンツ内容に応じてリードにランクを付け、インサイドセールスに渡す仕組みです。
これにより、インサイドセールスがどのリードに優先的にアプローチすべきかが明確になり、属人的な対応が解消されました。
亀井 以前はマーケティングからトスアップしたリードに対して、インサイドセールス側でそれぞれの判断に任せて架電していました。ですが、それでは勘の良い人しか成果を出せません。今回、和田さんのもとで優先順位が言語化され、インサイドセールスの誰もが効率的に動けるようになったのは大きな成果でしたね 。
山下 マーケティングで獲得したMQL(※)について、その後のファネルも含めてさまざまなアドバイスをいただけたのも、個人的にとても良かったと感じています。
たとえば、当社で設定した商談化の基準について、才流から「その基準は厳しすぎるのではないか」とご提案をいただいたこと。マーケティング単体の支援ではなかなかそこまで踏み込んだアドバイスは得られないので、とても助かりました。
※MQL:Marketing Qualified Leadの略。マーケティング活動によって得られた確度の高い見込み顧客のこと

目標200%達成にとどまらない。失敗を恐れない組織へと変化
ー今回のプロジェクトで得られた成果について教えてください。
和田 リードナーチャリング施策のKPIであるSQLが、目標に対して200%を達成したことです。
そしてもうひとつ、才流と相談しながらKPI設定の座組みを確立できたこと。属人化を防ぎ、今後の持続的な運用を可能にするうえでも価値のある成果だと感じています。
山下 才流が作成してくださった経理担当者向けアンケートのデータも非常に役立ちました。このデータを活用して、広告出稿先の選定や分析をより効果的に行えるようになり、新たな広告出稿にもつながっています。社内リソースの有効活用という点でも大きな成果でした。
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ー数値面での成果以外には、どのような変化がありましたか。
山下 仮説検証のサイクルが格段にスピードアップしました。以前は、新しい施策を実行しようとすると「これで本当に大丈夫か」「リスクはないか」といった点で立ち止まってしまうことが多かったんです。
しかし、才流に壁打ちすることで、他社事例を踏まえたよくあるシナリオを把握したうえで施策を実行できるため、最初から質の高い学びを得られるようになりました。その結果、メンバーの成長スピードも加速しています。
また、私や和田だけでなく、他のマーケターも気軽に相談できる環境をご用意いただいたので、マーケティング部門全体に良い影響が波及しました。メンバーの意識も変化していると感じています。

亀井 才流から見ても、TOKIUM様の実行力の高さは特筆すべき点でした。提案に対していち早く確実に動いていただいたおかげで、これだけの大きな成果につながったのだと思います。
山下 TOKIUMは会社のバリューの一つに「MOVE FAST」を掲げています。このバリューがあったからこそ、ベストプラクティスに最短ルートで行きたいという会社の方針を個人レベルでも実現できたのだと考えています。
専門家の視点と率直なコミュニケーションが正解到達の近道に
ー才流のコンサルタントとのコミュニケーションはいかがでしたか。
山下 コミュニケーションはとても円滑でしたね。オンラインでのやり取りもスムーズでした。才流からは「何でも聞いてください」と言われていたので、本当に安心して頼らせていただきました。
才流のコンサルタントが、当社の展示会ブースに一般客として訪問し、覆面調査をしてくれたこともありました。外部の専門家だからこそ提供できる、自社だけでは気づけなかった客観的な視点をアドバイスいただけたのは非常に貴重でしたね。
和田 やり取りの中で、亀井さんが「リードナーチャリングに魔法の杖はありません」と、本質を突くような言葉を伝えてくださったことがありました。何でも聞ける関係性があったからこそ、このようなはっきりしたコミュニケーションが気持ちよかったです。

ー才流の支援は、どのような企業におすすめだと感じますか。
山下 企業規模の大小に関わらず、新たな領域やビジネスを立ち上げようとしている企業、あるいはまだ仮説が固まっていない状態で施策に取り組もうとしている企業には、才流の支援が心強い後押しとなると思います。
和田 特に立ち上げフェーズにある環境で、「最速で正解にたどり着きたい」「車輪の再発明をしたくない」と考えているのであれば、どんな企業にとっても才流の支援は効果的ではないでしょうか。
ー今回のプロジェクトで得た学びを、今後どのように活かしていきたいですか。
山下 もともと私たちのチームには、中途採用者と新卒メンバーが一体となってスピーディーにPDCAサイクルを回しているという強みがあります。テレビCMなどのマス広告からWeb広告、そして今回のリードナーチャリングに至るまで、幅広い領域を手がけているため、活動自体はとてもエキサイティングです。
今回のプロジェクトを通じて、まず考え方を固めることで、その後の施策をより迅速に推進していこうという方針が定まりました。今後も才流と築き上げたアプローチを活かし、継続的な改善と成長を追求していきたいと考えています。

(撮影/関口 達朗 取材・文・編集/ 河原崎 亜矢)