本記事では、新規事業における競合分析の手順を解説しています。競合分析に使えるExcelテンプレートも用意していますので、あわせてご活用ください。

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手順
新規事業の競合分析はどのように進めるとよいのでしょうか。才流(サイル)が作成した「新規事業の競合分析テンプレート」に沿って手順を解説します。
目的を明確にする
競合分析は、やみくもに範囲を広げすぎると膨大な調査コストがかかります。まずは自社の新規事業のフェーズと目的を確認し、ゴールに直結するように範囲を絞りましょう。
調査に着手する前に、チームメンバーや上司と、今回の分析で得たい成果(目的)をすり合わせておくと安心です。
以下に、新規事業のフェーズごとの競合分析の目的、分析のポイント、主な調査項目をまとめましたので、ご参照ください。
事業アイデアの発見フェーズ
競合分析の目的 | ・類似サービスやソリューションの有無を確認し、 新規事業の「新規性」を大まか に把握する ・既存プレイヤーがどのような顧客課題を解決しているかを参考にし、自社の解決 すべき課題設定を明確にする ・「どの顧客層・どの課題・ニーズにアプローチするか?」を検討する際の初期仮説 を補強する |
ポイント | ・徹底的な深掘りよりも「競合の存在をざっくり把握」することが主目的 ・あくまで自社の事業アイデアの実現可能性や市場ポテンシャルを 見極めるために行う |
主な調査項目 | 製品・サービスの概要、ターゲット顧客像(企業規模、業種など)、 解決している課題・ニーズ |
事業アイデアの具体化フェーズ
競合分析の目的 | ・競合の強み・弱みを明確にし、「自社ならではの差別化要素」を洗い出す ・競合のサービス仕様・機能・価格を概観し、 自社のソリューションコンセプトと 比較検証する ・ターゲット顧客層・価格帯・提供形態の方向性を定める参考データにする |
ポイント | ・競合分析で得た学びを、PoC(概念検証)や試作品に反映させために行う ・競合分析結果を基に、「自社ならではのソリューションコンセプトは何か?」を 問い直すと効果的 |
主な調査項目 | 製品・サービスの特徴、機能比較、収益モデル・価格 |
事業化・拡大フェーズ
競合分析の目的 | ・競合と比較してサービス品質や提供価値を評価し、自社を選ぶ理由 (バリュープロポジション)を客観的に検証する ・価格設定や導入ハードルなどについて、顧客視点で競合と比較評価し、 PMF達成に向けた最適化を図る ・競合のマーケティング戦略や営業手法、提携関係を調べ、自社の拡大戦略 (大量集客、ブランド戦略など)を検討する |
ポイント | ・「LTV(顧客生涯価値)」「CAC(顧客獲得単価)」「解約率」などの数字と照らし 合わせると、より客観的な分析が可能 ・価格競争やブランド力の差が出やすいフェーズなので、中長期の競争優位の確立を 意識した分析が重要 |
主な調査項目 | 販売チャネル、プロモーション手法、メインメッセージ・タグライン、LTV・CAC |
主要プレイヤーを洗い出す
次に、自社の競合となる主要プレイヤーを洗い出します。競合分析テンプレートでは、5社分を記入できるようにしています。生成AI、Web検索、業界本などを活用して競合を洗い出し、チーム内で抜け漏れがないか確認しましょう。
複数の業界に競合が存在する場合は、まず業界構造を整理することをおすすめします。主要プレイヤーの洗い出しは、生成AIを活用すると効率的に行えます。
(例)生成AIで競合の洗い出しを行うプロンプト
# あなたはBtoBの市場調査アナリストです。2025年4月時点の最新・信頼性の高い公開情報を使い、ファクトベースで回答してください。
# 目的後述する新規事業のアイデアに対し
1. 直接競合(同じアプローチで同じ課題を解決)
2. 間接競合(異なるアプローチで同じ課題を解決)
3. 価値競合(ユーザーが同じニーズを別カテゴリで満たす代替手段)
を特定し、比較表に整理する。
# タスク
1. 後述する新規事業のアイデアを1文で要約(顧客課題+提供価値)
2. 上記 3 種類の競合を最大各5つずつ抽出
3. 抽出基準:市場規模・成長性・メディア露出の大きい順に優先
4. 根拠となる URL(公式サイト / IR / ニュース)を各社 1~2件示す
# 出力形式(Markdown テーブル)
| 企業・サービス名 | 本社国/地域 | ビジネスモデル概要 | 主な顧客セグメント | 差別化ポイント | 最新トピック (23年〜) | 競合タイプ (直接/間接/価値) | 情報ソースURL |
– URL は[]内に番号を付け、表の後に一覧を列挙- 数字は西暦+単位を明記(例:売上 2024年 ¥4.2B)
– 可能なら日本語ソースを優先し、なければ英語ソースで補完
# 制約
– 想定外の分野が出てきた場合は「─」と記入し飛ばす
– 回答は日本語、簡潔かつ論理的に
– 表の後に「さらに深掘りしたい場合は…」と一文で再質問例を提案
– 日本の商材を優先的に出力。参考に海外の有力、先進的な競合を3つほど出力
# 《新規事業アイデア》※ここに自社サービス/製品の概要を3〜4行で記入する
※
調査項目を設定する
手順1で確認した目的に沿って、調査する項目を設定します。競合分析テンプレートにはあらかじめ主要な調査項目が入っていますので、適宜カスタマイズしてご使用ください。
以下に、才流が作成した競合分析テンプレートの主な項目を示します。
企業情報、製品・サービスについての情報を記載する項目

機能・サービス比較、収益構造、マーケティングについて記載する項目

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情報を収集する
調査項目が決まったら、情報収集を行います。情報収集のチャネルは、競合のWebサイトやサービス資料、IR資料、SNS、口コミサイト、生成AIなどがあります。もし前述のチャネルで情報を得られない場合は、リサーチ会社のレポートなど、有料の情報を購入するという選択肢もあります。
また、デスクトップリサーチに加えて、ユーザーや業界・領域のエキスパート(有識者)へのインタビューも有効です。
収集した情報は、テンプレートに記載しておきましょう。
※関連記事:見込み顧客インタビューのメソッド/進め方
インサイト(洞察)をまとめる
FAQ(よくある質問)
Q.競合分析をするとき、どの範囲の企業やサービスを「競合」とみなすべきでしょうか?
直接競合となる類似サービスだけでなく、同じ顧客ニーズを満たす代替サービス(代替競合)も含めて分析すると漏れが少なくなります。
たとえば、なんらかのツールを提供している場合、ツール自体の競合に加えて、「コンサルティングや人的サービス」といった別の形態の競合も考慮するとよいでしょう。最初は広く洗い出し、その後で優先順位をつける方法をおすすめします。
Q.競合分析の結果、競合が非常に強かった場合はどうすればよいでしょうか?
レッドオーシャンと感じる市場でも、ニッチな分野や特定の顧客層、特定の機能領域で差別化できる可能性があります。競合が手薄な分野や顧客の未充足のニーズを発見できれば、そこから参入の糸口を掴めます。
それでも厳しい場合には、事業アイデアそのものを方向転換(ピボット)することも選択肢として検討しましょう。
Q.自社の弱みを補強するにはどうしたらよいでしょうか?
まずは、自社の弱みが明らかになっている領域(開発力、マーケティング能力、資金力など)を補うための方法を検討しましょう。
たとえば、外部パートナーとの連携や特定領域の専門家の採用したり、顧問契約したりすることも考えられます。すべてを自社で解決しようとするとリソース不足や時間がかかる場合があるため、積極的に外部の力を借りることを視野に入れてください。
Q.競合分析はどのくらいの頻度で更新すればよいでしょうか?
成長段階では競合の動きも早いため、3〜6か月に一度、簡易的なレビューを行うことをおすすめします。
また、大きな製品リリースやM&Aといった業界内の重要な動きがあった場合は、その都度チェックすると安心です。事業が安定した後でも、年に1回は主要競合の状況を概観しておくとよいでしょう。