昨今、中堅・大手企業では既存事業の頭打ちを打破するために、新規事業のマーケティングに投資する動きが活発化しています。
しかし、新規事業は既存事業とは異なる部分が多く、マーケティング投資をしても事業成長に寄与していない例も多数あります。
「どうすれば新規事業のマーケティング立ち上げで失敗せず、成長軌道にのせられるのか?」
才流でBtoB企業の新規事業マーケティングを支援する中で、多くの方が課題を抱えていると痛感しています。そこで本記事では、新規事業マーケティングの失敗につながる「4つの落とし穴」と、新規事業マーケティングを軌道に乗せる具体的なステップを解説します。
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新規事業立ち上げ時の「4つの落とし穴」
新規事業を立ち上げる際、さまざまな壁にぶち当たります。中でもとくに多くの企業が陥る「4つの落とし穴」があります。
①市場ニーズがない
1つ目の落とし穴は、「そもそもニーズがない」という問題です。
「○○のニーズがあるはず」という前提のもとで、「○○の課題を解決するサービス」としてリリースするものの、実際に困っている人はいないというパターン。仮説として持っていた顧客課題やニーズ自体が存在しない場合は、いくら媒体やLP(ランディングページ)を変更しても状況は好転しません。
②リードは増えたが、商談に繋がらない
いわゆる、「リードの質が低い」問題です。セミナーや展示会などで大量にリードを獲得するものの、商談につながらないケースは多々あります。
リード発生後のフォローやインサイドセールスの改善などで解決する場合もありますが、そもそもターゲットのミッションがズレていたり、プロダクトに興味を持ってくれないなどの原因から、商談化しない可能性が考えられます。
③商談しても受注できない
すでに明確な市場がある分野に後発で参入することの多い、大手企業ではまりやすい落とし穴です。営業担当者のスキルが足りないという問題もありえますが、そもそも他社製品と差別化されていない、選ばれる理由が弱いなどのケースが考えられます。
④受注しても解約されてしまう
受注を獲得できたとしても、サブスクリプションのビジネスモデルの場合は、想定よりも解約率が高かったり、リピート前提の事業で再購入されなかったりすることがあります。
カスタマーサクセスやサポートまわりに問題がある場合もありますが、そもそもプロダクトの使い勝手が悪い、サービスで想定していた成果が得られないなど、根本的な原因があるかもしれません。
このように、新規事業のマーケティングでは4つの落とし穴を回避しながら進む必要があります。
データや経験が十分にある既存事業では、数多くの商談やサービス提供を通じて理想的な顧客像が描けるため、「逆算思考」でマーケティング戦略を立案できます。しかし、新規事業は手探りで進まざるをえず、落とし穴にはまってしまいがちなのです。
新規事業が落とし穴にはまる原因は「顧客解像度の低さ」
新規事業で4つの落とし穴にはまる原因は、顧客理解が十分にできていないこと。才流では「顧客解像度が低い」と呼んでいます。ここが、顧客データを持っている既存事業と、新規事業の大きな違いでもあります。
才流が既存事業のBtoBマーケティング戦略を立案する場合、まず顧客理解を徹底的に深めるプロセスに注力します。
既存顧客の傾向や商談履歴の分析、営業や見込顧客へのインタビューを通じて、顧客の困りごとや選定基準を明らかにすれば、チャネル選定やコンテンツ・マーケティングメッセージがおのずと見えてくるからです。
しかし、新規事業では顧客の解像度を高めるためのデータが十分に揃っていません。
顧客の解像度が上げられず、セグメンテーションやペルソナの精度が低くなり、結果として場当たり的なチャネル選定や、曖昧なメッセージしか作れなくなってしまうのです。
新規事業マーケティングの3ステップ
では、データがない状態で、新規事業でのマーケティング投資をする際、売り上げや事業成長に直結させるためにはどうすればいいのでしょうか。
売れる状態を作るための具体的なステップを解説します。
ステップ1.仮説ベースでマーケティング戦略・施策を立案
新規事業の場合は戦略のもととなる情報が不足しているため、戦略は見直す前提で作ります。時間をかけすぎるのは良くありません。
才流が支援する場合も、既存事業は平均3か月で戦略を立案しますが、新規事業の場合には平均1か月。最低限の情報収集をスピーディに行い、ペルソナ設計と具体的な施策立案を行います。
施策の選定時は、ペルソナの情報収集チャネルに合わせることはもちろん、購買意欲の高さや、実行までの期間、検証のしやすさなどから判断しましょう。
ステップ2.リード・商談の獲得
サービスサイトの制作や、Web広告、比較サイト掲載、セミナー開催などを実施してリードを獲得しましょう。広告運用を行う際は、目先のCPA(※)よりもスピードを優先して広告を多めに投下する方法もあります。
また、最低限のインサイドセールス体制も整えておきましょう。
Web広告や比較サイトなどで獲得する購買意欲の高いリードは、他社にも話を聞いているケースが多いものです。初動が遅れてしまうと商談化率が大幅に下落してしまう可能性があります。
インサイドセールスの体制は、アウトソースと内製、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて判断しましょう。リソースが限られている新規事業では、アウトソースの活用は非常に有効なので、積極的に検討することをおすすめします。
※CPA(Cost Per Action/シーピーエー):1件の成果獲得にかかるコスト
ステップ3.売れない理由の検証と改善
リード・商談を獲得したからと言って、順調に受注が伸びる新規事業は多くありません。すぐに受注が獲得できなくても、実際のリードや商談を通じて仮説の検証を行いながら、売れる状態に近づけていきましょう。
まずは「仮説で立てたペルソナから、リード・商談を獲得できているか」を確認します。明らかに想定から乖離している場合は、マーケティングのチャネルやメッセージングを調整する必要があります。
狙ったペルソナからリード・商談が獲得できたら、次に検証するのは「サービス・コンセプト」です。
商談で顧客の声を聞いたり、営業担当者へヒアリングをしたりしながら、「お客様にコンセプトが刺さっているのか」確認しましょう。もしコンセプトが顧客に刺さっていない場合には、顧客ニーズを再調査して、コンセプトを見直す必要があるかもしれません。
狙ったターゲットの商談を獲得できていて、サービスコンセプトは刺さっているにも関わらず売れていない場合には、商談の質に課題があると考えられます。営業資料や営業トーク、営業プロセスの改善を行いましょう。
プロモーション強化は売れる状態を作ってから
大前提として、ある程度の売れる状態を作ってからプロモーションを強化するのがセオリーです。顧客課題とサービス内容がフィットして、競合優位性が成立してからプロモーションを強化することで、無駄なプロモーション費用を抑制することができます。
【某マーケティングツールを提供するSaaS企業の例】
● 初期フェーズにアウトバウンド経由で案件を獲得することで、マーケティングコストを抑制
● 現在はタクシー広告などのマス・マーケティングを強化し、インバウンド経由の受注が大半を占める
また、代表や社員の知り合い経由で地道に商談を設定し、受注・サービス提供を行い、勝ち筋が見つかった段階でプロモーションを強化しているスタートアップも多数存在しています。
既存事業を持つ企業では、既存顧客にアプローチして受注・サービス提供を行い、勝ち筋を見つけてからプロモーションを強化している例もあります。
どのケースにおいても、売れる状態を作ったうえでプロモーションを強化しています。
新規事業でプロモーション強化する際の3つのポイント
売れる状態を作ってからプロモーションを強化するのがセオリーではあるものの、実際のビジネス現場では新規事業立ち上げの時点で売上目標が設定されていることが多いのが現状です。
新規獲得の目標があり、人脈や既存顧客などの当てがない場合は、売れる状態を作る前に一定のプロモーションを実施する場合もあります。コストを無駄にせず、売り上げや事業成長に繋げるためには以下の3つのポイントを意識しましょう。
購買に近い層のリード獲得を優先する
正解が見えていない状態でリードを獲得する際には、スピーディな分析と検証が欠かせません。
実際に獲得したリードが商談・受注に繋がっているのか。ターゲットはズレていないのか。高速で検証するためには「リードタイムが短い」層のリード獲得が有効です。
仮に潜在層向けのアプローチを行ってリードタイム(検討期間)が1年以上かかる場合には、検証サイクルが年1回になってしまいます。
一方で、1か月で購買の意思決定を行う顕在層のリードを獲得できれば、月に1回検証サイクルがまわせるのです。
基本的には明確層・顕在層から順番に実施していくことをおすすめします。
すぐに実行でき、検証しやすい施策を優先する
PDCAのサイクルを早めるためには、すぐに実行できる施策を優先することが大事です。
例えば、SEO記事の制作に数か月、上位表示に数か月かかったとすると、検証できるのは早くて半年〜1年後。その時点で「ターゲットがズレていた」「想定していた課題がなかった」と判明した場合、それまでのコストは無駄になり、何より時間がかかってしまいます。
リソースやスキルによっても異なりますが、以下の施策を優先的に行い、スピーディにPDCAサイクルをまわしましょう。
- できるだけ短期間で実施できる
- リード獲得までの期間が短い
- 後から検証しやすい
定期的に商談分析を行う(最低月1回)
実際にマーケティング施策を展開した後は、必ず定期的に商談分析を行いましょう。
リード獲得数やCPAなどのマーケティング指標だけでなく、「想定していたターゲットのリードが取れていたのか」「想定していた顧客課題にズレはないか」「コンセプトや差別化要素の反応は良かったのか」といった、定性的な振り返りをきちんと行うことが重要です。
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まとめ
- 新規事業は顧客解像度が低いため、落とし穴にハマりやすい
- 売れる状態を作ってから、プロモーションを強化するのがセオリー
- 販売実績がない段階でプロモーションを強化する際は、検証とセットで行う
本記事がBtoBのスタートアップや新規事業のマーケティングに取り組む方のヒントになれば幸いです。
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