フィールドセールスの役割は企業ごとに異なります。いわゆる「THE MODEL(ザ・モデル)」型の分業組織は商談~クロージングのみ、一気通貫型はリード獲得やリードナーチャリングも含め担当しているなどさまざまですが、本記事はどちらの方にも役立つ「紹介営業」を取り上げています。
紹介営業とは、既存顧客などから新たな見込み顧客を紹介してもらう営業手法のこと。とくにルートセールス・顧客深耕型の営業スタイルの方は、活用頻度の高い手法でしょう。リード獲得をマーケティング部が行っている企業であっても、マーケティング部とフィールドセールス部が連携して総力戦で挑めば成功確率は向上します。
本記事では、紹介者・紹介先を以下のとおり定義し、紹介営業の実行前に備えるべき基礎知識をまとめました。
紹介者:紹介をしてくれる人物(顧客)
紹介先:新たな見込み顧客(企業など)
※関連記事:フィールドセールスが知っておくべき紹介営業【実行編】
才流(サイル)のノウハウに加え、紹介営業で成果を創出してきた複数社のフィールドセールスに実施したデプスインタビュー(モデレーターが対象者と“1対1”でインタビューする調査)を基に解説します。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、営業活動型化の支援をしています。営業活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)
紹介営業のメリットと難しさ
メリット=効率性
紹介営業が実現できれば効率的であることは周知の事実です。多くの場合、紹介が実現した時点で紹介先のニーズと紹介する商品/サービスはお互い明確かつ整合している状態だからです。
今回、複数社のフィールドセールスへ実施したデプスインタビューの結果では、紹介営業の受注率の最頻値は80~100%と非常に高く、最も低いケースでも30%。通常の営業活動より高い傾向があります。
難しさ=紹介者の心理的ハードル
一方、紹介者が抱きがちな心理的ハードルには考慮し、以下のように解消していかなくてはなりません。
紹介することで起こるかもしれない、自身の面子へ影響を及ぼすリスクを回避したい心情は理解できます。しかし、「紹介先を優遇・優先されそう」という不安はビジネスシーン特有ではないでしょうか。たとえば、紹介先が自社より大きなビジネスを展開しており購買力がある場合、自社(自分)へのリソースは減少されるのではないかという不安から起きるようです。蔑ろにしないことを説明し、不安を解消しておきましょう。
紹介の類型
紹介者の心理的ハードルを解消しながら成果につなげていく必要のある紹介営業ですが、紹介営業が上手くいくケースは、なにを・だれに・なぜが明確になっていて類型が存在しています。
なにを | ・ 人 ・ 商品 / サービス ・ 会社 |
だれに | ・ 別部署 / 担当者 / 経営層 ・ 子会社 / 系列会社 ・ 別会社 |
なぜ | ・ 合理的メリット ・ 信頼 ・ 応援 ・ 貸し借り / お礼 ・ 義理 |
なにを紹介するか
- 人
- 商品/サービス
- 会社
紹介が増えるアプローチとしては、「営業として挨拶だけでもさせてほしい」「この商品は、〇〇さんの課題解決に寄与できそうだから紹介させてほしい」「自社はリーディングカンパニーであり今後役立てることがあるはずだから、企業を紹介してほしい」などです。
だれに紹介したいか
- 別部署/別担当者/経営層
- 子会社/系列会社
- 別会社
商品によって異なりますが、一般的には「別部署/別担当者/経営層」への紹介依頼がもっとも容易でしょう。たとえば大企業になると、SFA/CRMなどのツールを事業部ごとで別々に導入しているケースがあります。しかし、経営層は管理コストやオペレーションコストの効率化を望む傾向があるため、全社最適というメリットを伝えれば別部署や適任者を紹介してくれるものです。
紹介先が顧客の「子会社/系列会社」であれば、親会社が導入しているシステムを子会社も導入すべきであるといった組織のロジックを使いながら紹介してもらえるケースも多いでしょう。
「別会社」を紹介してもらうためには工夫が必要です。1つ事例をご紹介しましょう。
総合商社への紹介依頼事例
総合商社では、さまざまな企業と合同プロジェクトやジョイントベンチャーを有しています。両社が使用しているシステムの違いにより、どちらか一社だけがデータを毎回送付する手間の発生、ケアレスミス、オペレーションコストの増加が起きていました。ある営業パーソンは、そんな課題があることに気づき、同じ視座をもってもらいたいといったポジティブな意図を含めて紹介を依頼したところ、話を聞き入れてもらえたのです。この経験から、「システムを統一する目的であれば、紹介をもらえるケースが多い」という成功パターンを得ました。
なぜ紹介してもらえるのか
多くの場合、紹介してもらえるときは理由が存在します。
- 合理的メリットがあるから
- 信頼しているから
- 応援しているから
- 貸し借り/お礼があるから
- 義理があるから
合理的メリットには、紹介料やボリュームディスカウントによる原価低減が挙げられます。ポピュラーでありもっとも効果的な理由です。
また、営業パーソンのことを信頼していれば「あなたが言うなら」と損得勘定抜きで一も二もなく紹介してくれる可能性があるでしょう。ぜひ目指したいステージです。
「応援しているから」は、新人に対してやベンチャー企業などに多いかもしれません。「あなたの成長を応援している」「御社の商品は社会的意義があるから」と紹介をもらうケースです。このステージを活用できること自体が差別化のひとつでしょう。
「貸し借り・お礼があるから」は、商品/サービスの特別価格提供や成果創出などの協力をしたお礼に対しての紹介などです。顧客の趣味や関心ごとへの情報提供も効果的でしょう。返報性の法則(※)を活用し、互いに紹介しあえる状態を醸成しましょう。
※返報性の法則:人から施しを受けるとお返ししたくなる心理が働くこと
紹介してくれる理由として「義理があるから」は、少ないケースかもしれません。例を挙げるなら、“担当者やキーパーソンは前向きに検討して稟議を進めていたけれど、最終コンペで上長による鶴の一声で覆ってしまったことへのお詫び”といったものなどです。
これらの類型の中で選択できるものは、各営業パーソンによって異なります。自分が注力すべきものを明確にすることからはじめましょう。
紹介をくれやすい方の特徴
複数社のフィールドセールスへのデプスインタビューを通じてわかった、紹介してくれやすい方に共通する3つの特徴を紹介します。
特徴1.コミュニケーション力がある
コミュニケーション力のある方は人的ネットワークがあります。社内の別部署や階層・年齢・性別問わずコミュニケーションを図れます。ビジネス面では、複数部署を横断するプロジェクトの経験者も挙げられるでしょう。組織ごとの異なる背景を乗り越え、プロジェクトを完遂したメンバー同士のつながりは強固です。彼らは、紹介に対する抵抗が相対的に低い傾向があります。
特徴2.バイタリティがある・アグレッシブである
バイタリティのある方は紹介の壁となる心理的ハードルが低く、会社や自分にメリットを感じたり、興味関心のあることは積極的に行動してくれる傾向があります。過去に新規事業アイディアなどを起案した経験者や成績優秀な方から探すと見つかりやすいでしょう。
特徴3.経営層とのネットワークを有している
経営層の紹介をもらえるほど望ましいことはありませんが、難易度が高いです。現場担当者に役員の紹介を依頼しても、失礼になる場合が多いでしょう。
しかし、同期であれば階層は無関係でネットワークがあります。誤解を恐れずいえば、役職定年して第一線から退いた方は組織のしがらみも少なく、比較的自由に動けます。彼ら/彼女らにとっては、自分しかできない存在価値を改めて示すチャンスとなるため協力してもらいやすい特徴があります。
当然ながら急に接近しては相手も勘繰るので、早めに接点を持って関係性を構築するしたたかさを持ち合わせたいものです。
紹介をもらえない営業パーソンの特徴
紹介をもらえない営業パーソンの特徴をインタビューすると、異口同音にあがった2つの共通点がありました。
特徴1.ハッキリ伝えない
紹介営業が得意な方は紹介をもらえない営業パーソンを見ると「なぜもっとハッキリ頼まないのか」と思うようです。「可能であれば」「タイミングがあれば」などでは、相手は真に受けません。明確に本気で依頼していると伝えることが重要です。
特徴2.シンプルに行動量が少ない
紹介営業がうまくいく方は「頼めそうな人だけに」ではなく、断られることを大前提として「全員に声かけ」していました。
ただし、無意識に関係性構築やタイミングを見計らっている可能性もあるため、慣れるまでは慎重さを担保するべきですが、全員に依頼する心持ちを忘れずにいるだけでも結果につながるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、紹介営業にまつわる基礎知識をご紹介しました。
営業成績向上の一手としては現場の営業パーソン、マネジメント層を問わずに示唆深い内容になっていると思います。自社や個人に最適な手法を抽出し、PDCAを回すことでKGI達成に寄与していくので、取り組んでいただければ幸いです。
新規リード獲得のために、具体的に紹介をもらう実行方法については以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
※関連記事:フィールドセールスが知っておくべき紹介営業【実行編】
実際に紹介営業をすすめるとき、悩むことがあればぜひ質問して下さい。
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