「いつか良い人に出会えるはず……」と応募者に対して理想を求めすぎるあまり、集まった応募者の中から内定者を決めきれない。採用活動でよくある失敗の一つです。
こういった失敗は、計画を立てないまま採用を始めてしまった場合によく起こります。運命の1人を追い求めているだけでは、いつまでたっても採用はうまくいきません。
そこで才流(サイル)では、採用計画の立案に役立つシミュレーションシートのテンプレートをご用意しました。ゴールとなる入社数と歩留まりを入力するだけで、各選考フェーズで必要な目標値を算出できます。
採用KPIの設定や採用活動のモニタリングにぜひご活用ください。
採用シミュレーションシートのテンプレート(Googleスプレッドシート形式)を開く
採用シミュレーションシートのテンプレート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
採用の成功に欠かせない事前計画のポイント
「いつか良い人に出会えるはず」とただ応募者を待っているだけになっていませんか?計画性のない採用活動を続けていては、いつまでも目標を達成できない可能性があります。
そもそも採用活動とは、母集団(※)の中で応募者同士を比較し、適性や能力、経験を評価する方法(相対評価)で人材を選ぶもの。質の高い応募者が必要なだけ集まらないと、採用活動はうまくいきません。
では、どうしたら必要な母集団を形成して採用目標を達成できるのか。実は、採用活動が成功するかどうかは採用活動を始める前の計画の立て方に大きく左右されます。
ここからは、採用計画で重要な役割を果たすKPI設定とシミュレーションについて解説します。
※母集団:本記事では、自社の求人に興味を持った応募者の集団のことを指す。
1.採用KPIの設定
採用KPIとは、採用活動に特化したKPI(重要業績評価指標)のことで、採用活動の成果を定量的に測定するための指標。入社までの各選考フェーズで「応募数」「書類選考の通過数」「面接実施数」「内定数」などの指標をKPIとするのが一般的です。
採用KPIを設定することで採用活動の成果が可視化されます。どこにボトルネックがあるかを把握しやすくなるため、採用活動における効果的な意思決定を行いやすくなるのが利点です。
採用KPIの設定では、目標から逆算するアプローチを用います。目標とは、最終的に何人を採用したいか、つまり入社数です。入社数を明確にしたら、目標に到達するために通過する「応募」「書類選考」「面接」「内定」などの各選考フェーズにおいて、それぞれどれくらいの人数が必要かを入社数から逆算します。
応募数は採用活動における重要なKPIの一つです。まずは必要となる応募数を把握しましょう。
2.採用シミュレーションの実施
採用KPIを設定しても、それが現実的な数値でなければ採用活動はうまくいきません。実現可能な採用KPIを設定するためには、採用シミュレーションの実施が不可欠です。
採用シミュレーションで重要なのは、現実的な歩留まり(各選考フェーズの通過率)を考慮すること。採用における歩留まりは、職種やターゲットによって異なります。自社の採用実績からわかる歩留まりのデータを参考に、自社の実態に近づくようにシミュレーションを行うのがポイントです。
シミュレーションを通じて現実的な応募数を把握できれば、必要な母集団を確保するための適切な採用マーケティング戦略を描けるようになるでしょう。また、シミュレーションの結果から目標値に届かないことが判明した場合、すみやかに対策を講じることもできます。
採用シミュレーションの具体的な方法については、このあと「採用シミュレーションシートの使い方」以降でくわしく解説します。
採用シミュレーションシートの使い方
先ほど述べたように、実現可能な採用計画を立てるためにはシミュレーションが欠かせません。そこで才流では、採用シミュレーションシートのテンプレートを作成しました。個人情報の入力なし、無料でダウンロード可能です。ぜひご活用ください。
採用シミュレーションシートのテンプレート(Googleスプレッドシート形式)を開く
採用シミュレーションシートのテンプレート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
1.採用予定人数(入社数)を入力する
はじめに、①に今回の採用のゴールとなる入社数を入力します。
2.選考フェーズごとの歩留まりを入力する
次に、②の選考フェーズごとの歩留まり、選考通過率を入力します。これまでの採用実績や類似職種の歩留まりのデータを参考に、実態に近い数値を入力することが大切です。
参考にできる歩留まりのデータが自社にない場合は、転職エージェントや求人媒体に問い合わせると参考値を共有してもらえます。応募者獲得の手法とあわせて問い合わせてみるとよいでしょう。
3.KPIとなる応募数を確認する
②をすべて入力すると、各選考フェーズのKPIが自動で算出されます。③が、今回の採用活動で獲得すべき応募数の目標値です。
シミュレーションシートを活用した採用計画の注意点
採用シミュレーションシートを活用すれば、実現可能な採用計画を立案できます。その際、以下の3つの点に注意して進めましょう。
1.歩留まりの改善に期待しすぎない
採用シミュレーションで応募数の目標達成が難しいという課題が明らかになった場合、「歩留まりを改善すれば入社数を確保できるのでは」と期待してしまいがちです。
しかし、歩留まりは、応募者一人ひとりの選択肢や行動などのコントロールできない要素に大きく左右されるもの。選考プロセスをどれだけ改善しても、大幅な歩留まりの向上は期待できません。
歩留まりを無理に改善しようとするよりも、より多くの質の高い応募者を獲得する手段を検討したほうが効率的です。別の採用手法との併用や、採用要件の緩和を検討しましょう(※)。
※良い人がいなければ採用しなくてもいい場合や、予算に限りがあり採用手段が限られる場合はこの限りではありません。
2.リードタイムを加味した採用スケジュールを設計する
シミュレーションシートには記載がありませんが、実際の採用活動ではリードタイムを加味してスケジュールを設計する必要があります。
たとえば、1月入社で採用を目指すケースを考えてみます。
内定承諾から入社までは、少なくとも3か月ほどの時間を要します。内定者が退職交渉や引き継ぎ、有給消化をするためです。1月入社から逆算すると、遅くても10月には内定を出す必要があります。
また、募集から内定までは、書類選考や面接、内定通知、条件面談で1.5か月ほどの時間をかけるのが一般的です。母集団形成の時間を考慮すると、採用手法の検討や求人広告の発注などの具体的な活動は8月以前にスタートする必要があります。
このようにリードタイムを念頭に置いて、ゴールから逆算して計画的に採用活動を行うことが大切です。計画的な採用活動ができれば、入社後に前任者からの引き継ぎ期間も十分に確保できるため、無理のないオンボーディングが可能になります。
3.シミュレーションシートは面接官にも共有する
採用シミュレーションシートは、必ず面接官にも共有をしましょう。
昨今、即戦力となる人材を採用することは容易ではありません。似たような求人も多数存在するため、多くの企業が採用条件を緩和しながら採用活動を行っています。
しかし、こうした状況を理解している面接官は残念ながら少数派。実際の面接で「もっと良い人がいるのではないか」と理想を求めて採用が進まないケースも少なくありません。
採用の成功に欠かせないのは、母集団の中からもっとも適した人を選ぶという「相対評価」の意識です。面接官にはシミュレーションシートをもとに「目の前の母集団から何人を選ぶのか」を把握してもらい、相対評価で新しい仲間を選択してもらいましょう。
面接官が「この中でもっとも適した人は誰か?」という思考にシフトすることで、採用確率を高めることができます。
採用活動を始めたら|実績の入力とモニタリングの方法
採用活動が本格的にスタートしたら、1週間に1度のペースで実績を確認しましょう。
シミュレーションシートの④に、実績値を入力します。すると、目標と実績の差分が⑤に自動で算出されます。
⑤をもとに、シミュレーションに基づいた母集団形成が十分にできているか、歩留まりが悪化していないかなどを確認します。母集団形成に不足があれば、すぐに次の打つ手を考えて実行しましょう。
このように、採用シミュレーションシートでは、目標と実績の比較をすることができます。定期的に現状をモニタリングし、目標が未達とならないよう採用手法の見直しや採用要件の緩和、選考プロセスの見直しなどに取り組んでください。
採用活動が終わったら|振り返りのポイント
採用活動が終了したら、すべての選考プロセスの実績とシミュレーションを比較した振り返りも忘れずに行ってください。次回の採用で、より精度の高い計画を立てられるようになります。
採用活動の振り返りで重要なポイントは以下の2つです。
- 応募者獲得の手法ごとに評価する
- 差分の原因を分析する
ここからは、それぞれのポイントについて解説します。
1.応募者獲得の手法ごとに評価する
求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用など、応募者獲得の手法ごとに応募者の数を確認します。どの手法がもっとも効果的だったか、また採用計画との差分がどれだけあるかを確認しましょう。
それぞれの実績値をそのまま受け入れるのではなく、各手法を提供している企業の担当者と共同で振り返りを実施することで、それぞれの手法における傾向や対策をつかむことができます。
振り返りの結果を受けて、次回の採用に向けて継続・利用拡大を検討する採用手法と、利用の縮小・停止を検討する採用手法を明らかにしましょう。採用プロセスを最適化することで、募集開始までの期間を短縮できるなど採用効率を向上する効果が期待できます。
2.差分の原因を特定する
目標と実績には差分がつきものです。ただし、生じた差分をそのまま次回の採用計画に反映するのは禁物。必ず差分の原因を特定しましょう。
計画に対してマイナスの差分が発生した場合は、書類選考の担当者や面接官、入社者や辞退者にヒアリングを行うことで改善のポイントを明らかにします。たとえば、書類選考の基準が不明瞭だったことがわかれば、選考基準を明確にすることが改善につながります。
差分の原因を解消すれば、適切な候補者が選考を通過しやすくなります。次回の採用計画の際、より精度の高い予測を立てられるようになるため、必要以上に大きな母集団を形成せずに済むでしょう。
また、プラスの差分がある場合にも原因の特定は必要です。「今回はたまたま良かっただけ」という可能性を放置したまま、今回の実績を次回計画に反映してしまうと、採用失敗に至るリスクが高まります。差分がプラスであってもマイナスであっても、原因を特定することは採用成功に直結する重要な取り組みです。
(執筆・編集/藤井恵)