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対話型AIのマーケットリーダーPKSHA Workplaceに聞く、エンタープライズSaaSを成長させる組織戦略と人材育成

法人営業
才流コンサルタント
宮戸 章光

自然言語処理技術を活用した複数のAI SaaSプロダクトにより、企業の社内コミュニケーションの改善やナレッジマネジメントを支援する、株式会社PKSHA Workplace(パークシャ・ワークプレイス)。

パークシャグループが提供するAIの導入社数は2,400を超え、とくにエンタープライズ企業への導入が進んでいます。

エンタープライズSaaS(※)の成長を見通した組織づくりやセールスの人材育成について、事業全体の推進を担う執行役員の大西 正人さんと、フィールドセールス部の部長を務める松橋 岳さんに話をうかがいました。

聞き手は、才流コンサルタント・宮戸 章光です。

本記事におけるエンタープライズ企業の定義
エンタープライズ企業の定義は、各社で異なります。本記事では、取材先のエンタープライズ企業の定義に沿い、かつ決裁に複数人の関係者が関わり、サービスやプロダクトの提案から導入までに、一定の期間を要する企業を、エンタープライズ企業としています。

株式会社PKSHA Workplace 執行役員 Workplaceビジネス本部 本部長
大西 正人さん

慶應義塾大学在学中に海外にて起業を経験。帰国後、3人目のセールスとしてfreee株式会社に入社し、後の主力事業部となる4つの事業部の立ち上げに貢献する。また、Salesforce社との協業担当として、協業ビジネスと連携プロダクトの推進に従事。リーガルテックベンチャーの取締役を経て、現職。

株式会社PKSHA Workplace フィールドセールス部 部長
松橋 岳さん

ランサーズ株式会社にて、フリーランスを活用したバックオフィス業務の効率化・働き方改革プロジェクトを推進する。その後、2020年に株式会社PKSHA Workplace(旧BEDORE)入社。AI SaaSのインサイドセールス(BDR)組織の立ち上げ、フィールドセールスを経て、現職。

膨大なデータを保有するエンタープライズはAIとの相性が良い

宮戸 はじめに、PKSHA Workplace(パークシャ・ワークプレイス)の事業内容を教えてください。

PKSHA Workplace 執行役員 Workplaceビジネス本部 部長 大西 正人さん
PKSHA Workplace 執行役員 Workplaceビジネス本部 部長 大西 正人さん

大西 PKSHA Workplace(以下、パークシャ)は、AI研究を行う東京大学松尾研究室出身のメンバーが立ち上げたPKSHA Technologyのグループ企業として、2016年10月に創立しました(※1)。

おもな事業ドメインは、「エンタープライズナレッジマネジメント」(※2)と捉えています。

ヘルプデスクやバックオフィスなど、社内コミュニケーションが発生する部署において、対話型AIを用いた業務改善や属人化の解消、社内ナレッジ共有の最適化などをご支援しています。

宮戸 パークシャが提供する各種のAI SaaSは、エンタープライズへの導入が進んでいますよね。どのような背景があるのでしょうか。

大西 AI SaaSはさまざまな規模の企業にお使いいただけますが、とくにエンタープライズは保有するデータ量が多く、AIを活用しやすい環境です。

数万名規模の企業の場合、毎日社内外でやり取りされるコミュニケーションのデータだけでも膨大な量になります。そこに私たちの持つアルゴリズムの力を掛け合わせれば、さまざまな形で価値を提供できるのです。

たとえば、三井不動産さまのITヘルプデスクには、月間2,200件の電話によるお問い合わせがあり、対応に1,000時間以上を費やしていました。当社のAIチャットボット「PKSHA Chatbot」を導入いただいた結果、お問い合わせを前年比40%まで削減しています。

また、大和ハウスさまは、「AI ヘルプデスク for Microsoft Teams」(※3)を導入され、約18,000人の従業員からの人事関連のお問い合わせを一元管理しています。さらに、そこで発生する膨大な対話データをナレッジ化し、同様の問い合わせに対してAIチャットボットが回答する仕組みづくりを推進しています。

宮戸 エンタープライズでAIを活用すると、よりインパクトの大きい成果が得られるということなんですね。

質の高いCxOレターと架電の組み合わせで商談化につなげる

宮戸 パークシャでは、どのようなセールス活動を行っているのでしょうか。

PKSHA Workplace フィールドセールス部 部長 松橋 岳さん
PKSHA Workplace フィールドセールス部 部長 松橋 岳さん

松橋 現在、AI SaaS事業のビジネスサイドには、フィールドセールス部とマーケティング・セールス部、カスタマーサクセス部があります。マーケティング・セールス部に、マーケティングとインサイドセールス、パートナーアライアンスの機能を置いています。

セールス組織の立ち上げ初期は、エンタープライズの決裁者層のリードがなかなか獲得できない時期が続きました。お客さまとの接点を生み出さなければ始まりませんから、BDRによるリード獲得に注力してきました。

宮戸 BDRでは、どのようなアプローチ手法を採用していましたか。

松橋 まずは、CxOレターを中心にリードを獲得していきました。送付後のコンタクト率や商談化率は私たちが期待する以上に高く、継続して実施しています。

宮戸 CxOレターでは、どのような点を重視しているのでしょうか。

松橋 質と量をどちらも追求すること。そして、しっかりと施策を継続することです。

まずは質の部分。個社ごとに、レターの内容をカスタマイズしています。お客さまの組織体制や事業を理解したうえで、お客さまのどのような課題に対しAI SaaSがどんな価値を提供できるのか?を考えて作成しています。

インサイドセールスが立てている仮説の精度が非常に高く、これが質の担保につながっています。

そして量の部分です。レターを送付したあとは、必ず電話でのアプローチを行います。複数の手段を掛け合わせると、アポイントにつながりやすいと感じます。


宮戸 CxOレターは出して終わりではなく、必ず架電する。架電のきっかけをつくる施策とも考えられますね。

才流コンサルタント 宮戸章光
才流コンサルタント 宮戸 章光(https://sairu.co.jp/member/1523/)。営業コンサルタントとして、法人営業支援を担当。

松橋 最近ではBDRだけでなく、イベントの出展やプレスリリースを通じた導入事例の発信など、マーケティング・PRと連動したSDRの取り組みにも力を入れています。

やはりエンタープライズ企業への提案では、導入実績や具体的な事例の活用が有効だと感じます。AI活用への関心が高まっている背景もあり、問い合わせ数は順調に増えていますね。

宮戸 おっしゃるとおり、エンタープライズ企業への商談では事例が有効です。グループ会社への横展開であれば親会社の事例は参考にしやすいですし、同業他社も「その企業がDXに成功しているなら、私たちも着手しなければ」と関心度が一気に高まります。

エンタープライズSaaSの成長を支えるフラットな組織

宮戸 続いては、セールスと他部署との連携について教えてください。

松橋 まず、アプローチ先企業のターゲティングは、マーケティングとインサイドセールスが密に連携しています。

アプローチすべき業界や企業群はマーケティング側で定め、部署や個人レベルまで特定していくのがインサイドセールスの役割です。人事異動ニュースや外部の情報、公開されている記事などから情報を収集し、アプローチしていきます。

大西 私たちの製品は社内コミュニケーションの領域が対象となるため、全業種・全部署がターゲットとなり得ます。そのなかでも、全社のDXやデジタル化の啓蒙を担う方がキーパーソンになりやすいのですが、エンタープライズ企業の場合、その方がどこに所属されているのか、会社の体制によってさまざまです。

総務部が主体になっている企業もあれば、役員直下でDX推進部を設置している企業もある。もしくは、特定の事業部がDXを進めているケースもあります。どの部署が全社のDX推進を担う旗振り役なのかを見極めることが重要なのです。

まずは企業内のさまざまな部署に対して網羅的にアプローチしていき、チーム間で情報交換をしながら注力するコンタクト先を変えていくようにしています。

宮戸 セールス間の連携はいかがでしょうか。

松橋 フィールドセールスからインサイドセールスへ商談のフィードバックを行うミーティングを実施しています。

インサイドセールスがトスアップした商談がどうだったかの結果を共有することで、インサイドセールスの活動のPDCAを回し、再現性の高い施策をつくっていく。担当者全員が参加する場を設定しています。

また、パークシャのセールスは、新規のお客さま開拓から、既存のお客さまの他部署展開、深耕営業までと幅広いです。フィールドセールスが「このお客さまとの関係性をさらに深めたい」というときは、インサイドセールスの力を借りて、違う部署への商談の機会を探したり、必要な情報を収集したりします。

また、既存のお客さまの他部署展開では、カスタマーサクセスがキャッチアップしているお客さまの情報を参考にすることも欠かせません。

宮戸 インサイドセールスとフィールドセールスの連携だけでなく、組織全体で1つのアカウントからの売上を最大化する、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の取り組みをしているんですね。スムーズな連携ができるように、組織が設計し尽くされている印象を持ちました。

大西 大前提として、マーケティングからカスタマーサクセスまで、フラットな組織づくりをしたいと考えています。チーム間で連携が足りないと、お互いの業務範囲や責任の所在について、対立が起きてしまいやすいです。

私は以前freeeに勤務し、事業の立ち上げやマネジメント、採用など、会社が大きく成長していくプロセスを経験する機会に恵まれました。その経験から、チームごとの部分最適に閉じるのではなく、組織全体としての「あるべき姿」を描き、そこから逆算して組織をつくっていくべきと肌で学びました。

パークシャでは、当時の経験をいかした組織づくりを心がけています。

組織立ち上げの早期にセールスイネーブルメント専任者を置いた理由

宮戸 昨今、エンタープライズセールス人材の採用ニーズが高まる一方で、経験者が少ないという課題があります。そのため、経験者採用ではなく人材育成に注力している企業も見られます。パークシャでは、どのような人材育成を行っていますか。

松橋 幅広い企業・部署に提案できるAI SaaSのセールスには、高いスキルが求められます。フィールドセールスでは、再現性高く売れるような組織づくりにチャレンジしている最中です。

組織立ち上げの早期からイネーブルメント担当を専任で置き、トップセールスのナレッジ型化に1年ぐらい前から取り組んでいます。

宮戸 セールスイネーブルメントに注目が集まっていますが、現状ではすでに完成している組織のスキルアップを前提としています。パークシャのように、組織の立ち上げ時からイネーブルメント組織を置くのは珍しい印象です。

大西 私はパークシャに入社後、フィールドセールスも担当しました。やはり提案の難易度が高く、若手や経験の浅いセールスが、個人でスキルを身につけるには限界があると感じました。

パークシャでは、あらゆる企業・部署の担当者さまにアプローチするため、お客さまの事業ドメインだけでなく、経営からフロントオフィス、バックオフィスと幅広いポジションについての知識が求められます。

加えて、AI領域は毎日のように最新技術が導入され、情報のアップデートも早いです。お客さまからは「AIの専門家」として頼られるわけですから、エンジニアメンバーでなくとも最低限の知識をキャッチアップすることが欠かせません。

このように、さまざまな知識を広く深く身につけるためには、組織として育成する仕組みが不可欠だと考えました。

宮戸 具体的に、どのようなセールスイネーブルメントを行っているのでしょうか。

松橋 ひとりで商談を行えるようになるまでのリードタイムの短縮、および経験が浅いセールスが新規商談を案件化するフェーズでのつまずきを防ぐことに、イネーブルメントは注力しています。

入社後は、まずイネーブルメントチームのもとでロールプレイングを重ねます。そして、合格基準をクリアしたら、セールスのマネージャーへ管轄をシフトし、実際にお客さまとのやり取りを行っていく流れです。

以前は、ひとりで商談を行えるようになるまで最大6か月を要していましたが、現在では1か月で自走可能になりました。また、新規商談から受注に至るまでの期間も、以前の1年から半年程度に短縮されました。イネーブルメントの成果を感じます。

宮戸 セールスプロセスのボトルネックを探し、その解消を目的としたイネーブルメントに注力しているんですね。

大西さん、松橋さんがパークシャでフィールドセールスとインサイドセールスの両方を経験し、セールスプロセスやどんなスキルが重要かを把握されているからこそだと感じます。

大西 そのほか、グループ全体でナレッジの型化や人材育成にも取り組んでいます。お客さまごとの課題やソリューションの事例をデータとして蓄積し、AIを活用してSlackやNotionで情報が引き出せるシステムを社内に構築しているんです。

また、「てく猫」というAIキャラクターのbotにより、セキュリティチェックシートなどの定形業務を一部自動化しており、日々試行錯誤を重ねております。

お客さまへより高い価値をお届けするために、私たち自身もAIを積極的に活用し、自己矛盾のない環境と体制をつくることも重要だと考えています。

てく猫の画面
パークシャ・ワークプレイス社内で利用しているAI bot「てく猫」(画像提供:パークシャ・ワークプレイス、才流にて一部加工)

セールスの立場から「日本のあるべきAI活用」を描く

宮戸 ここまで、エンタープライズセールスの活動、組織づくりをうかがってきました。あらためて、お二人が考えるパークシャのエンタープライズセールスのおもしろさは、どのようなところでしょうか。

松橋 エンタープライズセールスとしての成長機会に恵まれていることです。新規顧客の開拓はもちろん、注目が集まるAI産業において、既存の仕組みと新技術を組み合わせた提案を通じ、大局的な視点からお客さまのビジネス成長に貢献できます。

パークシャのAI SaaSは、自社の自然言語処理技術を強みに、ビジネスにおけるあらゆるコミュニケーションの最適化を行っています。お客さまは、「従来のコミュニケーション手段をAIによって変化させたい」「生成AIを全社に展開し、従業員の体験を変えるような取り組みをしたい」など、AIを活用したコミュニケーションの変革に高い関心を寄せています。

そのような期待に答えながら、多くの経営層の課題をヒアリングし、各社にとって最適な解決策をご提案していく。AI活用でどのように成果を出していくのかのステップを考え、プロジェクトを推進する。数万人規模の組織に影響するような変革の機会に関わることも多く、とてもやりがいがあります

大西 私も、AIというテクノロジーを軸に、エンタープライズの全業種・全部署の課題に幅広く、かつ深くアプローチできる点にやりがいを感じます。

お客さまは、業界ならではの課題だけでなく個社特有の課題を抱えています。その課題に対して、私たちはどのようにアプローチを行い、課題を解決できるのか。製品導入においても、最初から全社展開を目指すべきか、それとも特定の部署からトライアル的に試していただき、どのように横展開していくのがよいのか。

AI活用の戦略立案のフェーズから関われ、お客さまの状況に合わせたさまざまな形でソリューションをご提案できる環境は、とてもエキサイティングです。

宮戸 最後に、今後の展望をお聞かせください。

松橋 現在、パークシャ・ワークプレイス全体で50名ほどの組織となりました。今後100名体制を見据えて、リーダーシップを持って組織を率いるハイレイヤー層の育成が急務だと考えています。イネーブルメントチームを中心に、組織全体で成長できる仕組みを構築していく予定です。

大西 向こう10年で、エンタープライズ企業におけるAIの位置づけはさらに変わってくるでしょう。「日本のあるべきAI活用」を描き、パークシャグループとしてこの領域をリードしていきたいです。

AI Solution ✕ AI SaaS ✕ エンタープライズ ✕ ホリゾンタルで展開するパークシャの事業は、さらなる成長余地があります。パークシャ・ワークプレイスは、まずエンタープライズ企業のナレッジマネジメント領域における圧倒的なポジションを確立してまいります。

大西さん、松橋さん、ありがとうございました。

才流コンサルタントが解説

国内シェアNo.1のAIチャットボットやFAQシステムを展開する、PKSHA Workplace(パークシャ・ワークプレイス)を取材しました。

売上に課題を持つ企業は、施策が局所的になりやすい傾向があります。自分たちができること、やりたいことを選び、「これしかできない」と限界を決めてしまっているのです。

パークシャ・ワークプレイスでは、目標から逆算し、計画的かつ網羅的に施策を実行している点が印象的でした。

BDRにおいて、「まずは企業内のさまざまな部署に対し網羅的にアプローチしていき、チーム間で情報交換をしながら重点コンタクトを変えていく」点も、重要なポイントです。

エンタープライズ企業は事業領域が広範囲に渡り、人員も豊富なため、予想外のメンバーがキーパーソンになることも珍しくありません。網羅的なアプローチが一見非効率に見える場合もありますが、エンタープライズセールスにおいては、これが合理的な選択となることも多いのです。

また、同社のセールスイネーブルメントも、非常に計画的かつ合理的でした。

ロープレを実施し、合格基準をクリア後、はじめて顧客とやり取りを任せる。ボトルネックを顕在化させ、イネーブルメントプログラムに反映する。セオリーとして認知はされていますが、着実に実行している企業は少ないです。

世の中を変革させる魅力あるプロダクトと計画的な営業戦略が、同社の成長を支えているのだと実感しました。

(執筆/村尾 唯 撮影/植田 翔)

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