営業活動において、顧客理解と同様に重要とされているのが競合分析です。しかし、いざ競合分析を行ったものの、単にプロダクトを比較採点しただけになってしまい、営業活動にどう活用したらよいのかわからないといった課題に直面している営業組織も多いのではないでしょうか。
そこで才流(サイル)では、すぐに使える汎用的な競合分析フォーマットのテンプレートを用意しました。本記事では、テンプレートを使った競合分析の進め方と営業活動への活用方法について解説します。
競合分析フォーマットのテンプレート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、営業活動型化の支援をしています。営業活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)
競合分析とは
競合分析とは、自社の商品・サービスに対し、競合している会社やそのサービスを分析すること。マーケティング戦略を立てる際に、顧客や自社の分析と合わせて3C分析(※)として行われるのが一般的です。
一方、本記事で取り上げる営業活動における競合分析は、それぞれの顧客の購買・選定基準をベースに、自社と競合を項目ごとに比較して自社に有利な展開を見つけるために行うものです。
顧客は購買にあたって複数のニーズを有しています。さらに、購買・選定の基準となる項目や優先順位は、顧客ごとにさまざまです。顧客ごとに競合分析を実施することで、戦略・戦術の策定と受注確度の高い営業活動を行うことができるようになります。
※3C分析:Customer(顧客)、Competition(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析することで、ビジネス環境を把握し、戦略立案に役立てる手法のこと
営業活動に競合分析が必要な理由
「競合分析はマーケティング部門が行えばよいのでは?」と考えている営業組織は少なくないでしょう。しかし、競合分析は営業も実施すべき施策だといえます。なぜなら、顧客の潜在ニーズやインサイトは営業の現場でしかつかめないことも多いからです。
経営コンサルタントの大前研一氏は、書籍「大前研一と考える営業学」の中で以下のように述べています。
アカデミックスマートたちは、すべてを数字、分析、理屈で解決しようとする傾向が強く、なまじ知識があるばかりに、矛盾や不合理が当たり前の現実世界を正しく理解できないことがままあります。(中略)時には現場で「真実の瞬間」に遭遇することもあるでしょう。(中略)あなたの会社や製品について抱いている顧客の本音が無意識に表れる瞬間のことです。
大前研一/ビジネス・ブレークスルー大学大学院/ビジネススクール教授陣/斎藤顕一/須藤実和/川上真史/後正武 , 大前研一と考える営業学 , ダイヤモンド社 , 2011, p.12-13
営業活動で競合分析を行う4つのメリット
営業が競合分析を行う4つのメリットは以下のとおりです。
- 訴求ポイントが明確になる
競合より自社が勝っている点が明らかになって、訴求ポイント(勝ち筋)が定まります。
- 弱点を補うための対策が可能になる
競合より自社が劣っている点が明らかになって、競合の得意な領域(負け筋)への対策を講じることが可能になります。
- 商品・サービスに関する知識が深まる
機能の優劣だけではなく、商品・サービス全体にわたる知識が深まります。
- 営業戦略の策定に役立つ
自社に有利な戦い方を発見しやすくなるため、営業戦略を練るときにも参考になります。
営業活動に競合分析を活用して成功した事例
才流が以前に支援したクライアントで、営業にフォーカスした競合分析を行って成果につなげた事例を紹介します。
そのクライアントの企業規模はいわゆる大企業。そのため、「企業の信頼性」や「技術力」に関して顧客から高く評価されているという思い込みがありました。
しかし、競合分析を行った結果、「大企業は開発をアウトソースしているケースが多く、専門性に欠けている」という真逆の評価を受けていることが判明。さらに、競合と比較して商品の機能は同等でありながら価格が高いこともわかりました。その一方で、営業パーソンが持つ情報量と質、日々のフォローの丁寧さは顧客に高く評価されていたのです。
そこで、実際に顧客に評価されている面をアピールできるように、商品の訴求ポイントを「顧客が掲げる長期ビジョンの達成を実現するパートナー」に変更。見事受注を獲得できるようになりました。
営業の競合分析によくある課題
営業の中で競合分析を行おうとした場合、以下のような課題に直面するケースがあります。
競合分析を作成する前の課題
- 競合分析を行う目的がわからない
- 競合分析のやり方がわからない
競合分析を作成した後の課題
- 競合分析を営業活動にいかす方法がわからない
限られたリソースの中で成果を最大化するためには、競合分析を行う目的を明確に決めておくことが重要です。しかし実際には、目的があいまいなまま競合分析を進めてしまうケースが散見されます。「競合より優れているポイントを発見するため」「劣っているポイントを発見し改善にいかすため」などのように、まずは目的を明確にしてから取り組むようにしましょう。
しかしながら、競合分析の進め方や営業活動に活用する方法について体系的にまとめられている情報は少ないものです。そこで才流では、ダウンロードしてすぐに使える競合分析フォーマットを用意しました。
競合分析フォーマットのテンプレートをダウンロードする
「競合分析をしたいが、どの選定軸を比較すればいいのかわからない」「どのような根拠で点数づけを行えばいいのか知りたい」
そのようなお悩みを抱える営業パーソンのために、汎用的に使える競合分析フォーマットのテンプレートを用意しました。ぜひ活用してください。
競合分析フォーマットのテンプレート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
競合分析フォーマット作成時の注意点
競合分析フォーマットは、営業ひとりで作成することは避け、複数人でディスカッションしながら作成しましょう。客観性を極力担保し、思い込みや誤解で分析結果が左右されないようにするためです。
また、企業によって選定軸やウエイトは異なるため、競合分析シートは顧客ごとに分けましょう。さらに、選定基準やウエイトは外部環境や内部環境により変化するので、定期的に更新する必要があります。
作成時の注意点
- 競合他社のホームページや関係資料をしっかりと読み込む
- 外部のインタビューを通じて、客観的な評価をもとに作成する(難しければ社内の複数名でディスカッションする)
- 競合分析シートは個社ごとに作成する
- シートの内容(選定軸、ウェイト)は定期的に更新する
企業や業界ごとの特殊な選定軸にも留意しましょう。
例: 鉄道事業者の場合、機能が優れていても正確性や法規制上リスクがある商品・サービスは選択肢に入らない。
競合分析フォーマットの使い方
競合分析フォーマットの中には以下の3種類のシートがあります。
- 競合分析シート
- 戦略キャンバス
- 負け筋対策シート
競合分析シートの一部を抜き出し、グラフ化して視認性を向上させたものが戦略キャンバスです。詳しくは後述しますが、この2つは目的によって使い分けます。
シート解説①:競合分析シート
1.比較選定軸
顧客の比較選定軸を記入します。すでにマーケティング部門などが作成済みの選定軸があれば、それをベースに既存顧客にヒアリングしていきます。ヒアリングが難しければ、ビザスクなどのスポットコンサルを利用して同業他社へインタビューするのも有効な手段です。
シートに記載された記入例以外には、企業ブランド、認知度、財務基盤、カスタマイズ性、環境対策、BCP対策などさまざまな比較選定軸が考えられます。
2.優先度、選定軸のウエイト
まずは「1.比較選定軸」と同様に、顧客へのヒアリングやインタビューで選定基準の優先度を把握してください。
優先度は、高、中、低の3段階に分類します。重要な選定軸から順に、優先度を設定していきましょう。選定軸のウエイトは、優先度の高い項目の比重が多くなるように設定してください。
シートでは便宜上3つの選定軸を優先度「高」に設定しています。顧客ごとに異なりますが、通常は優先度「高」の選定軸は一つか二つに絞るのがおすすめです。
3.比較
自社と競合を比較して、優れているほうに「2(点)」、劣っているほうに「1(点)」をつけます。細かく点数化せずに、2点と1点の2種類にすることで採点に工数をかけないのがポイントです。また、差分の度合いも気にする必要はありません。
4.合計スコア
「選定軸のウエイト」と「比較」のスコアをかけ合わせた点数を合計スコアとして算出します。シートには計算式が入っているため、ここは自動で入力されます。
5.評価
合計スコアの自社と競合の差分に10をかけて算出したスコアを評価とします。10倍するのは点数として把握しやすい値にするためです。
6.比較の根拠
「3.比較」の根拠を記載します。組織メンバーで共通認識を持ち、振り返ったときに比較の根拠を忘れないようにするためです。
7.総合評価
すべての比較選定軸の評価スコアを合計した点数を総合評価として算出します。総合評価がプラス(1点以上)の場合、その商品・サービスは競合より優位であるといえるでしょう。一方、総合評価がマイナス(0点以下)の場合、その商品・サービスは競合に劣っている可能性が高いです。
このように、機能ごとに優劣はあるものの全体として優れていることが可視化できれば、商談展開を有利に運ぶことができるかもしれません。
シート解説②:戦略キャンバス
このシートは、競合分析シートの「4.合計スコア」をグラフ化したものです。勝ち筋と負け筋が一目でわかるように、選定基準の勝ち負けの結果を見やすくしました。営業メンバーに共有する際は、シンプルなこちらのグラフを用いるといいでしょう。
営業活動で競合分析を活用する方法
競合分析を作成したら、以下の3つを実践して営業活動にいかしましょう。
- 勝ち筋で戦う
- 負け筋で戦わない
- 競合の強み・弱みを分析する
1.勝ち筋で戦う
競合分析によって可視化された自社の勝ち筋は、商談時の訴求ポイントとなります。シートの例であれば、価格がもっとも強力な訴求ポイントです。
また、優先度「中」以下で自社が優れている項目について、顧客の優先度を「高」に引き上げる営業活動を行うのも効果的な方法です。シートの例でいえば、機能、情報提供力、拡張性が優先度を引き上げる対象になります。
優先度を引き上げるよう顧客に働きかける場面は、営業パーソンの真価が試されるところです。代表的な手法として「軸ずらし」が挙げられます。以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
※関連記事:軸ずらし営業
2.負け筋で戦わない
競合分析で明らかになった負け筋(競合の得意な領域)に対して、対策を講じます。
負け筋の項目について「そこは御社が重視すべきポイントではない」とすぐに顧客に説明できるよう、スクリプトを準備しておきましょう。自社に有利な展開に誘導できるようになります。
テンプレート内の「負け筋対策シート」を参考に誘導スクリプトを作成してみてください。
3.競合の強み・弱みを分析する
競合分析では、価格やサポート体制、機能やデザインなど商品・サービスの全体を通した比較選定軸を分析します。自社だけでなく競合の強みや弱みも把握できるので、顧客の要望や問題点に対して、なぜ自社の商品・サービスが最適であるのかを具体的に説明できるようになるでしょう。
また、どの項目を強化すれば競合と差がつけられるのかが明確になるため、開発やマーケティングの場面でも役立ちます。
おわりに
本記事では、営業活動にいかせる競合分析の作り方と活用方法について解説しました。
営業の競合分析のポイントは、客観的な評価をもとに顧客ごとに作成すること。顧客にとって競合より自社が勝っている点・劣っている点が可視化され、受注確度の向上に役立つ戦略を立てられるからです。
本テンプレートを使用して、営業現場における成果の最大化に取り組んでいただければ幸いです。
競合分析フォーマットのテンプレート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、営業活動型化の支援をしています。営業活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)