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SFAを有効活用・運用するためのチェックリスト

法人営業
コンサルタント
井出 孝尚

ブラックボックスになりがちな営業活動や顧客情報を見える化し、営業の効率化や売上予測の精度向上につなげるSFA(Sales Force Automation)。近年、多くの企業が導入を進めています。

2014年に第三者機関が行ったセールスフォース・ドットコムのカスタマリレーションシップに関する調査(対象:4,100社超)によると、Salesforce導入による売上拡大は平均32%でした。内訳は商談成約率32%増、見込み顧客の商談化率39%増、営業の生産性40%増、売上予測の精度45%増という結果で、SFA活用の可能性の大きさを示しています。

一方で、「SFAを導入したが成果が出ない、活用しきれていない」という声もよく耳にします。なぜそのような課題が生まれてしまうのでしょうか。

原因の多くは、企業がSFA導入の目的やそれを実現するためのオペレーション設計を行っていないこと。いわば、シナリオがないまま進んでいる状態です。

何のために情報を蓄積し、どのようなゴールを目指すのか。そのために必要な設計や運用体制は十分なのか。見落しがちなポイントは複数あります。

そこで、今回はBtoB企業がSFAを有効活用するためのチェックリストを公開します。SFA活用に課題を感じている企業の方は、ぜひご活用ください。

また、才流では「SFAで成果を出したい」「SFAを活用したい」企業さまを支援しています。SFAを用いた営業活動でお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら

※本記事はSalesforce・Paedotの伴走支援サービスを提供するFull Funnel代表 嶋田  賢策様、SFA・CRMの設計支援を行うセールスリクエスト代表 原 秀一様に監修をお願いしました。

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利用目的の整理

SFAを有効活用するには、明確な目的設定と目的に沿ったオペレーションを設計が欠かせません。

SFAの利用目的が明確ではない場合は、以下の視点で整理することをおすすめします。

  • リード獲得から受注、継続利用、追加受注に至るまでの営業活動において、課題や実現したい状態を具体的に定義しているか
  • 改善したい活動をリストアップしているか
    • 量に不足のある活動(商談、提案、訪問、架電など)
    • 質に不足のある活動(売上予測、案件管理、KGI・KPI管理、顧客管理など)
    • 機能間連携に不足のある活動(インサイドセールとフィールドセールスの連携、フィールドセールスとカスタマーサクセスの連携、営業部と開発部の連携、複数事業部の営業間の連携、部下から上司への報告、上司から部下へのフィードバックなど)
  • リストアップした活動を改善するために必要なデータを想定できているか
    ※必要なデータを想定しにくい場合は、まず不足している活動を促すために社内でどのようなコミュニケーションが必要かを検討する。その上で、コミュニケーションに必要な情報を検討しましょう
  • SFAに蓄積したデータを用いて各活動をどの程度改善したいか目標設定できているか
  • 設定した目的が、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど、機能や組織ごとの個別最適になっていないか
    ​​​​​​​例)フィールドセールス以降の歩留まりを考慮せず、インサイドセールスにおける商談化数の最大化のみを目的としている
  • 定義した目的は、自社の売上拡大と顧客の満足度向上がセットで語られているか

利用者属性ごとの活用シナリオ設計

多くの企業がシナリオを持たないまま進んでしまう背景には、SFAのユースケースを細かく想定していないことが挙げられます。どのデータを収集すべきか定義できていても、収集したデータをどう使うかについては各現場の担当者に任せてしまっています。

SFAユーザーの利用者属性を整理し、「誰がどのデータを見て何を判断するか」を検討しましょう。

  • SFAの利用者属性を機能ごと(部署ごと)に整理できているか
  • SFAの利用者属性を役職ごとに整理できているか
  • 利用者属性別のユースケースを整理できているか
  • ユースケースごとに次のような点を定義できているか
    • 判断すること
    • 判断する目的
    • 判断するために閲覧するデータ
    • 判断する場
    • 判断する頻度

利用者属性別の活用シナリオ

閲覧画面の設計

SFAの利用目的と利用者属性別の活用シナリオを整理できたら、それぞれのユースケースで必要な閲覧画面を設計します。

ダッシュボードや条件別のレポート、上司との案件管理ミーティングで使用する案件ページ、顧客ページなどがこれに該当します。設計の際には以下の点をチェックしましょう。

  • ユースケースごとに閲覧すべきダッシュボードやレポート、ページを定義できているか
  • SFAの標準機能を理解し、カスタマイズや外部ツールとの連携、BIツールの要否を判断しているか
  • ダッシュボードのグラフは、視覚的に把握しやすい表現になっているか
  • ダッシュボードのグラフは、集計対象とするデータや期間、単位などが誰から見てもわかりやすく表現できているか
  • ダッシュボードのグラフやレポートは、年次→月次→週次、事業部→チーム→個人のようにドリルダウンできる設計になっているか
  • 案件ページは、営業プロセスに沿って情報を閲覧できるか
  • 顧客ページは、過去や他部署からのコンタクトを含めた情報を閲覧できるか
  • 利用者属性ごとに閲覧可能画面の権限設定を行っているか

営業データを見える化するためのグラフについては、以下の記事にまとめています。

※関連記事:営業を見える化するグラフサンプルと営業データ活用の診断表

データ項目と入力画面の設計

ユースケース別に閲覧画面を整理したら、それに基づきデータ項目と入力画面を設計します。

よくある失敗として、これまで使用してきたExcelフォーマットの項目をそのままSFAに実装しようとして、効果が出ないということがあります。項目は、SFA導入の目的に則して、改めて設計することをおすすめします。

  • ユースケースごとに定義した閲覧データが、自社の営業プロセスのどこで発生しているかを整理できているか
  • MAツールや名刺管理ツール、基幹システムなど、他のシステムから取り込むデータ項目を整理できているか
  • 営業パーソンの活動から発生するデータ項目だけでなく、顧客の変化(購買意欲の変化・サービス利用頻度の変化など)を把握するためのデータ項目を設計しているか
  • 部署によってデータが分断されたり、二重入力されたりすることがないよう、全社共通で使えるデータ構造を考慮しているか
  • 入力するデータの粒度や意味が、入力者によって異ならないように項目を設計できているか
  • 各項目の入力候補に明確な選択基準があるか(同じ事象に対して、人によって選択が変わらない項目になっているか)
  • フリーテキスト入力とするデータ項目を必要最低限にしているか
  • 入力項目ごとにヘルプ記載ができる場合、該当項目にどのように情報入力すべきかを記載しているか
  • 「使えるかもしれないデータ項目」を排除するなど、入力項目を最小限にできているか
  • 項目に優先順位をつけているか
    例)商談・コール直後に入力すべき項目と、後に時間を取って入力する項目を分ける
  • データの集約や分析の想定に基づいて、フラグを設計しているか
  • ユーザーが入力しやすいUIを設計しているか
    例)営業プロセスの順序に沿ったデータ項目の並びにする
  • 利用者属性ごとに入力可能な項目の権限設定を行っているか

周辺システムとの連携

設計したデータ項目の一部はMAツールや基幹システム、名刺管理ツール、BIツールなどの周辺システムと相互連携する必要があります。

周辺システムと機能が重複するケースもあるため、システムごとに役割分担やデータ連携のあり方を予め明確にしておきましょう。

  • 周辺システムとの役割分担を整理できているか
  • 特に請求、支払い、管理会計の仕組みやデータをどこまでSFAに持たせる必要があるかを整理できているか
  • 周辺システムとのデータフローを設計できているか
  • 周辺システムとのデータ連携の頻度を定義できている
  • 周辺システムとのデータの自動連携を実現できているか
  • メールやチャットツールで報告した内容をSFAに自動転記するなど、業務効率を高める工夫をしているか

周辺システムとの連携例

運用ルールの策定と教育

目的やシナリオに沿って設計されたシステムがあっても、情報入力が不十分、ユーザーがシナリオ通りに使用できていない状態では、SFAの活用効果は得られません。

以下のポイントに沿って、運用ルールや権限設計、教育体制を整備することをおすすめします。

  • 各項目について入力期限や更新期限を定義しているか
  • 入力期限や更新期限を過ぎた案件について、アラート通知やレポートでの見える化を整備しているか
  • データ項目を必須入力項目と任意入力項目に分けているか
  • ファイル添付についてルールを設けているか
  • フリーテキスト項目の記入内容について基準を設けているか
  • 担当者別の入力状況を可視化できているか
  • SFAの活用シナリオを利用者属性やユースケースごとに明文化しているか
  • マニュアルを作成しているか
  • SFAのデータから、定期的に一人ひとりの営業活動状況についてフィードバックする場を設けているか
  • 基本的な操作方法について、定期的に研修を行っているか
  • 一人ひとりが把握したい切り口で情報を抽出できるよう、レポート作成の方法を伝達しているか
  • 次の点について、ロールごとの権限を設計しているか
    • 閲覧可能なデータ
    • 入力・変更可能なデータ
    • 削除可能なデータ
    • エクスポート可能なデータ
  • 重要項目について、変更ログ管理を行える設計になっているか

運用体制の整備

SFAの利用を定着させるためには、社内相談窓口を設置するなど運用体制の整備も重要です。利用中に発生する不具合や疑問にすばやく対応できる体制を作り、ユーザーにとってストレスのない運用を目指しましょう。

また、SFAを設計した際の前提条件は、ビジネス環境の変化に伴い変わるものです。過去に設計したシナリオが不要になったり、新たなシナリオが必要になった場合、仕様変更を主導する役割も必要です。

さらに、近年のクラウド型SFAは頻繁なアップデートが発生します(Salesforceは年3回のアップデートが常態化)。常に最新の製品動向を把握いてメンテナンスを行う必要があるため、外部の専門業者とのサポート契約も検討しましょう。

以上をふまえ、運用体制をチェックしてみましょう。

  • SFAの使い方や不具合に対応する社内窓口を設置しているか
  • 社内向けのFAQを作成し、常に更新しているか
  • SFAの仕様変更の要望を集約する窓口を設置しているか
  • SFAの導入効果を評価する役割を設置しているか
  • SFAの運用の主体となる役割には、システムと現場業務の両方に精通している人材を配置しているか
  • SFAの運用の主体となる役割には、全社業務を理解し全体最適を考慮できる人材を配置しているか
  • 入退職や人事異動に伴うSFAのユーザー数の増減管理を仕組み化できているか
  • 利用中のSFAのアップデート動向について、最新の情報を得られているか
  • 社内担当者の退職に備えた体制が整備できているか
  • 信用できる外部の専門業者を選定できているか(必要に応じてサポート契約を締結している)

最後に

営業活動の結果や顧客情報を蓄積するだけのツールになりがちなSFAですが、本来は蓄積したデータを利用し、受注の拡大につながるアクションをとるための仕組みです。「何のためにデータを蓄積するのか」は常に念頭に置いて運用しましょう。

また、SFAは営業担当者、チームリーダー、課長、部長、経営層、非営業組織など、さまざまな役割のユーザーが使用するシステムです。それぞれの役割に応じた目的と要件定義を丁寧に行う必要があります。

改めてSFAの利用目的を整理し、受注拡大や顧客満足度の向上につなげるシナリオを作成してみてください。本チェックリストが一助になれば幸いです。

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チェックリストの監修者

嶋田 賢策 Twitter:@kensaku_shimada
2006年 シャノンに入社。マーケティング部門の立ち上げからスタートし、Salesforce連携アプリケーションのリリース、AppExchangeコンソーシアムの立ち上げに参画。2014年よりSalesforce地図連携アプリケーションを提供するオークニー(現UPWARD)のマーケティング部長としてMAを活用したデジタル営業を推進。2016年よりtoBeマーケティングのカスタマーサクセスコンサルタントとしてSalesforce・Pardotの伴走型コンサルティングを担当。Salesforce認定アドミニストレーター。2019年5月より株式会社才流にてサイルアカデミー トレーナーに就任。Full Funnel代表。

原 秀一 Twitter:@sicgram
2009年より大手人材企業にて求人広告営業に従事。その後、弁護士ドットコム株式会社にてフィールドセールス・インサイドセールス・営業推進を経験後、スタートアップ企業を経て2019年に独立。セールスリクエスト代表。

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