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営業を見える化するグラフサンプルと営業データ活用の診断表

法人営業
コンサルタント
井出 孝尚

リモートワークや営業のデジタルトランスフォーメーションの浸透をきっかけに、「営業の見える化」について、これまで以上にご相談をいただくようになりました。

「他の企業ではどのように営業データを見ているのか?」「営業のダッシュボートにはどのようなグラフを置けば良いのか?」などのご質問をいただくことが多いため、営業データを見える化するグラフサンプルを公開します。

商材の特性や閲覧者の役職・役割によって見るべき営業データは異なりますが、今回は営業マネージャーの方が、業績やメンバーのコンディションを概観することを前提にしたグラフサンプルをまとめました。

また、営業データ活用の診断ポイントをGoogleやfreeeなどで営業マネジメントを経験された株式会社Magic Moment代表取締役・村尾 祐弥様のご協力のもと、作成しましたのであわせてご紹介します。

後半で「営業データ活用の診断表」として掲載しています。「営業の見える化」に取り組み始める際の参考になれば幸いです。

才流では「営業資料などのコンテンツの整備や成功体験のナレッジ化」「営業パーソンの体系的な教育などの仕組み化」に課題を感じている企業さまを支援しています。⇒資料の無料ダウンロードはこちら

営業の見える化に役立つグラフサンプル

まずは目的別にグラフサンプルを紹介します。

全体進捗を把握する

売上進捗

営業活動の状況を把握するために、まず確認するのが売上進捗です。「売上額が予算額に対して何%まで到達しているのか」を評価します。これだけを見て一概に順調・不調を把握することはできませんが、現状を概観するためには最もわかりやすい指標です。

また、その進捗が順調かどうかを判断するために「本日時点の計画に対して順調に推移しているか」または「予算対象期間の営業日消化に対して順調に推移しているか」の指標を可視化する必要があります。

グラフで表すと以下の2つのような表現が可能です。

売上進捗-計画対比のグラフサンプル

売上進捗-期間進捗対比のグラフサンプル

1つ目のグラフでは内側の円グラフに計画上本日時点で到達すべき進捗を、外側に実際の進捗を表現し、中央に確定している売上と本日時点の計画売上と実績の差分を表現しています。一方、2つ目のグラフでは内側の円グラフで期間進捗を表現しており、期間の消化率に対する進捗を把握できます。

どちらの表現が適しているかは売上計画の立て方や、見える化可視化する頻度によって異なります。

たとえばダッシュボードで毎日数値を更新する場合、売上計画が営業日単位に落とし込まれていないと、内側の円グラフで計画進捗を表現することはできません。毎日更新するグラフは内側を期間進捗とし、月次更新するグラフは内側を売上の計画進捗にするなど、状況に応じた運用方法を考える必要があります。

月別の計画と実績

足元のコンディションを評価するために必要なのが月別の計画と実績です。各月の計画額・実績額・達成率を見える化して、直近の営業活動の結果を概観します。

売上の計画と実績(12月末時点)のグラフサンプル

本グラフは4~12月の結果を表しており、将来については売上計上されることが確定している受注残を集計し、確定値でどこまで積み上がっているのかを表現しています。

着地見込み(フォーキャスト)

売上進捗や毎月の達成率を見るだけでは、予算対象期間の達成見込みは把握できません。着地見込み(フォーキャスト)を作成し、残り期間での予算達成をどう見込むかを整理する必要があります。

受注が決まっていない案件の進捗(見込み)を踏まえ、現状のまま進んだ場合の売上予測を表現します。

売上の着地見込みのグラフサンプル

本グラフでは、予算4億5,000万円に対して、実績と受注残と進行中案件の見込みで4億3,460万円が積みあがっていることを表現しています。「現状のままでは1,275万円のマイナスで着地する」という予測なので、このデータを見て営業人員の増強やキャンペーンなどの対策を検討することになります。

着地見込みの内訳

実際に着地見込みから具体的な施策を検討する際には、着地見込みの内訳を確認します。残り期間の各月にいくらの売上が必要で、現状どの程度の見込みがあるのかを細かく整理して、どこから優先的に着手するかを判断するためです。

4Qの修正計画と着地見込み(売上)のグラフサンプル

本グラフでは、まず残り3か月で年度計画を達成するための修正計画を実線の折れ線グラフで、現在の進捗から見込まれる着地見込みを点線の折れ線グラフで示しています。これを見ると、1月は計画を達成でき、2月と3月は未達に終わる予測であることがわかります。先ほど見た1,275万円のビハインドは、これらの合算結果です。

また、棒グラフは各月の着地見込み額の内訳を示しています。すでに売上計上が決まっている金額を「受注残」で、進行中の案件を確度A~Cで表現しています。確度A〜Cそれぞれの金額に受注率の指数を掛け、「受注残」の額を加えた数値が各月の着地見込み額になります。

※本グラフでは確度Aを受注率80%、確度Bを受注率50%、確度Cを受注率25%として計算

グラフを見ると、まず2月と3月とでは計画達成に向けて行うべきアクションが異なることがわかります。2月は進捗中案件が多く存在するため、まずは確度C案件の案件管理を徹底して、確度B~Aに引き上げることを優先すべきでしょう。一方、3月については、十分な量の進捗中案件が存在しないため、キャンペーンや営業員増強などで案件創出に力を入れる必要があるでしょう。

商談数を増やす

リード数と商談化率の推移

実際に計画達成の可能性を高めていくには、以下の6つのアプローチがあります。

  1. 商談数を増やす
  2. 受注率を上げる
  3. 受注単価を上げる
  4. 受注リードタイムを短縮する
  5. 解約率を下げる
  6. クロスセルを増やす

商談数を増やす際に可視化しておきたいのがリード数と商談化率です。

各月発生リードのステータスと商談化率のグラフサンプル

本グラフでは各月に発生したリード数を棒グラフで表現し、そのリードの結果(商談化したか否か)を内訳として示し、各月で発生したリードの最終的な商談化率を折れ線フラグで示しています。

このように「リード数を増やせているか」と「リードが商談につながっているか」を評価できるよう数値を整理しておく必要があります。時系列で可視化すると、改善や悪化の傾向を把握でき、過去に実施した改善施策の効果を評価する際などに役立ちます。

リード数が多いビジネスの場合には、週単位で評価を行い、改善施策を打っていく場合もあります。

担当者別のリードステータス

リード数と商談化率の改善に取り組む際、営業組織はリード獲得から商談につなげるまでの活動を改善していくことになります。必要になるのは、リードを受けた営業担当の活動の改善です。

営業組織のマネージャーやリーダーには「各担当者が未着手のまま溜めこんでいるリードがないか」「商談化に苦労している担当者はいないか」などをリアルタイムで把握して、営業担当者の活動を軌道修正していくことが求められます。

担当者別のリードステータスのグラフサンプル

本グラフは担当者別の保有リードの状況を示しています。この例では、「当月に発生したリード、および前月から繰り越したリードのステータスがどうか」を表していますが、リード数が多い場合には週単位で表現する場合もあります。

リードソース別の商談化率

営業担当がリード対応する際には、リードソース(リードの発生経路)別に優先順位を決めておくと効率的です。

以下のグラフのように、リードソースによって商談化率が大きく異なるケースも多いため、商談化率が高いリードから優先的に対応していくことが、確実に商談数を増やしていくことに繋がります。

リードソース別の商談化率のグラフサンプル

案件数と受注率の推移

予算達成に向けて受注率の改善に取り組むには、各月で発生した案件の結果を整理して、受注率の推移を把握する必要があります。

各月発生案件のステータスと受注率のグラフサンプル

本グラフでは、各月で発生した案件数を分母、そこから生まれた受注数を分子として計算した受注率を折れ線グラフで表現しています。また、棒グラフは、受注率の内訳が把握できるよう各月に発生した案件数とその結果を示しています。

受注率の推移を見ることで、過去に行った受注率改善施策の効果を評価したり、受注率が突然下がった原因を把握して対処したりすることに繋げます。

担当者別の保有案件ステータス

短期的に受注率の改善を図るためには、まず現在進行中の個別案件ごとに受注確度を高めるための施策を打つことが一つの手段として挙げられます。

しかしながら、営業マネージャーや営業リーダーがすべての案件をチェックして、それぞれに対する施策を指示することは困難です。よって、案件の優先順位づけが重要になります。

担当者別の保有案件ステータスのグラフサンプル

本グラフのように各営業担当が保有する案件のステータスを可視化しておけば、受注に近いフェーズかつ提案額が大きい案件の状況を確認することができます。本ケースでいえば、優先すべきは、受注に近い案件を多く保有しているBさんとCさんの活動のフォローでしょう。

担当者別の受注率

中長期的に受注率を改善していくには、営業担当者の営業力を改善していく必要があります。よって、本グラフのように担当者ごとの受注率を一定期間で測定しておき、受注率に課題のある担当者のフォローを手厚くしたり、受注率が高い人の行動特性を分析したりすることにつなげます。

担当者別の受注率のグラフサンプル

担当者別のフェーズ推進力

営業担当者それぞれの受注率を高めるには、担当者別の受注率を可視化しただけでは不足があります。商談開始~契約までの過程のどこにつまづいているかを担当者ごとに把握しなければ、適切な教育や指導が行えないためです。

決着済み案件の最終フェーズ(担当者別・通期)のグラフサンプル

そこで必要になってくるのが本グラフのような「担当者別のフェーズ推進力」の見える化です。すでに結果が確定している案件を集計し、どのフェーズで案件が終わっているケースが多いのかを把握することで、担当者ごとのつまづきのポイントを可視化できます。

本グラフの場合、受注案件は「フェーズ6(契約)」に含まれており、おもに「フェーズ5(稟議)」以下で終わった案件を失注案件として捉えます。「Cさんはそもそも提案まで持ってい行けていない」「Fさんは決裁者合意でつまずく割合が多い」など、受注率を高めるために改善すべきポイントを把握できます。

顧客セグメント別の受注率

受注率に関しては、顧客のセグメント別に比較することで傾向を把握することも有効です。

たとえば、顧客規模によって受注率に違いが見られる場合、「年商100億円未満の企業への提案は基準受注率25%、年商100億円以上の企業への提案は基準受注率を30%とする」というように顧客セグメントに応じた適切な基準値を設定できます。

また、受注単価と組み合わせて評価し、「受注率と受注単価が高い年商100億円以上の企業への営業にリソースを集中させよう」といった判断にも繋げられます。

顧客規模別の受注率のグラフサンプル

受注単価を上げる

受注単価の推移

予算達成に向けては受注単価の変化についても注視が必要です。

一律同額のサービスを販売する場合は、受注量だけを注視すれば問題ありませんが、顧客の要望に応じてカスタマイズが必要な商材や、オプションサービスが付帯する商材の場合、または値引きが常態化している場合では、受注単価を注視する必要があります。

受注件数を増やせても、その分値引きが増えていては意味がありませんし、逆に受注量ではなく受注単価を上げて売上を改善する戦略をとることもあります。こうしたケースで重要となる指標が受注単価です。

各月受注の件数と受注単価のグラフサンプル

本グラフでは各月に発生した受注の平均単価を折れ線グラフで示し、その母数を棒グラフで示しています。「安売りしていないか」「顧客ニーズをもっと深く把握することで、オプションサービスまで販売できないか」といった視点で営業進捗を見る際に利用できます。

顧客セグメント別の受注単価

受注単価を高めていくには、以下のグラフのように顧客セグメント別の平均受注単価を可視化することも必要です。

顧客規模別の受注件数と受注単価

この例では、年商100億円を境に受注単価に大きな差が出ています。この情報をもとに、年商100億円以上の企業に営業リソースを優先的に割いていくことや、年商100億円以上の企業のニーズを調査して新たなオプションサービスを企画するなどの判断が可能です。

なお、一般的に顧客セグメントは年商規模、従業員規模、業界・業種などの切り口で分けられます。

受注リードタイムを短縮する

受注リードタイムの推移

受注状況を評価する際には、受注額だけではなく、受注リードタイム(商談発生から受注を生み出すまでにかかった時間)を注視する必要があります。

受注リードタイムが短いほど、期中の受注案件が増える可能性が高いためです。たとえば今期の残り日数20営業日で発生した商談があるとします。平均受注リードタイムが25日であれば、その商談を期中の受注にすることは難しいですが、平均受注リードタイムが18日であれば、受注に現実味があります。

各月受注の件数と平均受注リードタイムのグラフサンプル

このように受注リードタイムは短ければ短いほど、足元の売上に寄与する重要な指標です。本グラフのように毎月の変化を確認できるようにし、改善施策の効果や悪化予兆などを把握します。

受注リードタイムの内訳

受注リードタイムの短縮を目指す際に必要なのがその内訳の把握です。商談~受注に至るまでの各フェーズに平均してどの程度時間がかかっているのかを把握しなければ、具体的な改善策を検討できないためです。

平均受注リードタイムのフェーズごとの滞在期間のグラフサンプル

本グラフではフェーズを6つに分けて、各フェーズの平均所要時間を表示しています。この数字を見ながら、例えば「社内の契約フローをシンプルにすることでフェーズ6を1日間短縮できないか?」といった具体的な改善策を検討していきます。

担当者別の受注リードタイム

担当者別の平均受注リードタイムとフェーズごとの滞在期間後

営業担当者ごとに同様のグラフを作り、受注リードタイムが短い担当者と長い担当者の違いがどこにあるかを見ることで、改善ポイントを発見できる場合もあります。

ただし、受注リードタイムが短いほど事前整備ができておらず、クレーム発生率や解約率が高いケースもあります。営業担当者ごとに改善を促す場合には、受注後への影響を考慮して慎重に行う必要があります。

解約率を下げる

解約件数と解約率

サブスクリプション型のビジネスモデルの場合には、解約件数と解約率の推移を把握する必要があります。

「解約が増えてきていないか」や「解約率低減に向けた施策の効果が出てきているか」を把握することができます。さらに直近の解約率の状況から、残り期間で起こりうる解約数を予測し、着地見込みの精度を高めることにもつながります。

解約件数と解約率のグラフサンプル

本グラフのように、月ごとの解約率のほか、通期の解約率を見て適切な範囲におさまっているかどうかを評価します。

顧客セグメント別の解約率

解約率についても顧客セグメント別に評価しておくことが重要です。たとえば、サブスクリプション型のサービスでは顧客規模によって解約率が大きく異なることがあります。

この場合、顧客規模別の解約率の平均値を整理しておき、その数値を基準に現状の良し悪しを判断しなければ、適切な対処ができません。

顧客規模別の解約率のグラフサンプル

CS担当者別の解約率

個人にフォーカスして解約率を改善するためには、まずカスタマーサクセスの担当者ごとの傾向を掴む必要があります。各担当者の一定期間における解約率を比較し、解約率が高い担当者の活動の仕方を改善しましょう。

解約内訳と解約率(カスタマーサクセス担当者別)のグラフサンプル

本グラフのように解約の内訳(契約からどの程度の期間で解約に至ったか)を可視化すると、優先的に解決すべきポイントを発見しやすくなります。本ケースでは、Gさんの3か月未満での解約の課題が最も大きいことに着目し、Gさんの顧客サポートの始め方などを確認していくことになるでしょう。

営業担当者別の解約率

解約率を低減していくにはカスタマーサクセス担当者別の解約率だけではなく、営業担当者別の解約率にも目を向ける必要があります。

営業担当者が顧客に過大な機能を説明していたことや、顧客の本質的なニーズが薄いまま無理やり受注してきたことなどが、解約率に影響を及ぼすことも多々あるためです。

営業担当者別の解約率のグラフサンプル

中長期的に解約率を低減するためには、解約率の高い営業担当者の受注の仕方や、カスタマーサクセス担当者への引き継ぎの仕方にメスを入れなければなりません。そのためにも、本グラフのように、営業担当者ごとの過去の解約率および解約の期間内訳を可視化することが重要です。

クロスセルを増やす

担当者別のクロスセル状況

受注の最大化を目指すには、既存顧客に対するクロスセルを最大化させる取り組みが重要です。まず、既存顧客の潜在ニーズを把握して提案活動ができているか、次にそれらがどの程度受注に繋がっているかを見ていく必要があります。

これらを営業担当ごとに整理しておくと、クロスセルの取り組みの抜け漏れを防ぐことができますし、営業担当の深耕営業をサポートしやすくなります。

担当者別のクロスセル状況のグラフサンプル

顧客セグメント別のクロスセル状況

クロスセルの成功率は顧客セグメントによって異なるケースが多いため、顧客規模等のセグメント別にクロスセルの状況を整理しておきましょう。

顧客規模別のクロスセル状況のグラフサンプル

本グラフのように、顧客規模が大きいほどクロスセルの受注率が高いことがわかれば、「まず年商100億円以上の既存顧客に対する追加提案をやり切ることを優先しよう」といった優先順位の判断が行いやすくなります。

※関連記事:クロスセルとは? LTV向上に役立つ5つの営業Tips【トーク例付き】

行動量とリソース配分を適正化する

担当者別の行動量

これまで見てきた各指標を改善していくためには担当者ごとの行動量を可視化しておくことも必要です。

担当者別の行動量のグラフサンプル

本グラフは営業担当者ごとの当月の訪問件数を示していますが、インサイドセールスであれば架電数や通電数、カスタマーサクセスであれば顧客とのコンタクト数やコンタクト頻度など、役割や課題に応じて適切な指標を測定します。

担当者別の活動時間

営業担当者の活動を変える際、「意識を変える」「評価制度を変える」という視点で考えがちですが、「時間の使い方を変える」という視点が非常に重要です。

担当者別の活動時間(当月)のグラフサンプル

何かを始めるには、何かを捨てる必要がありますが、営業担当者に向けて出す指示は始めることに偏った内容になりがちです。この場合、「処理能力が圧迫されるだけで成果に繋がらない」「残業時間の増加によるパフォーマンスの低下」など、営業担当者への悪影響を招く可能性があります。

このような事態を避けるためにも、営業担当者の現在の時間の使い方を整理し、時間配分の変更とセットで改善指示を出すことが重要です。毎日精緻に時間配分を把握することは難しいですが、概算でも把握しておくことをおすすめします。

営業データ活用の診断表

ここからは上記のような営業の見える化を進める際の診断ポイントをご紹介します。

営業データ活用の診断表(Word形式)をダウンロードする

※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。

営業データを活用するには、単純にデータ入力の箱を作り、入力を徹底するだけでは後々不都合が生じます。たとえば、人によって入力するデータの粒度がバラバラでは正確な状態を把握できません。また、部署ごとにデータ管理が分断されていると顧客情報を一元的に把握できないでしょう。

このような失敗を避けるために必要なチェックポイントを診断表としてまとめました。「営業データを見える化したい」「営業データを管理しているが、運用が形骸化している」などのお悩みをお持ちの方は、ぜひ以下の診断表をご活用ください。

営業データ活用の目的定義

営業データを活用する目的は、顧客と営業パーソンの動きのそれぞれをデータで可視化し、顧客の状況に応じて営業パーソンの活動を最適化していくことにあります。しかし、可視化すべきデータやデータに基づく最適化の仕方は、業界・商材・事業フェーズなど各社が置かれている状況によって様々です。

まずは自社の営業上の課題を整理して、「何を可視化することで、どういった改善につなげるのか」という目的を定義しましょう。

■診断ポイント

  • 営業~サービス提供までの顧客接点において解消したい課題や実現したい状態などの目的を定義している
  • 目的の実現に向けて計測・観察すべき指標、指標の元とするデータを想定している
  • 営業やサービス提供を通じて取得できるデータのうち、資産として蓄積すべきデータを定義している
  • データ活用の目的を、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス等の機能や組織ごとに検討せず、全体最適を踏まえて検討している
  • データ活用の目的を、自社都合だけではなく、顧客の満足度向上の視点でも検討している

営業データ活用の運用設計

営業データ活用の目的が定義できたら、実際にどのような形式でデータを見て何を判断すべきかをケース別に定義しましょう。「蓄積した営業データを分析し、活用したい」といったご相談をいただきますが、本来、営業データ活用の目的定義と運用設計を行ってから蓄積するデータを決めていくべきです。

運用設計については、以下の点を満たせているかを確認してみてください。

■診断ポイント

  • 経営層や営業マネージャー、営業担当者などレイヤーごとに営業データの活用ケースを想定している
  • インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど機能ごとに営業データの活用ケースを想定している
  • 営業会議や1on1など、会議体ごとに営業データの活用ケースを想定している
  • ケースごとに使用するデータやグラフイメージを想定している
  • ケースごとにデータを使って何を判断すべきか想定している

営業データの項目設計

営業データ活用の目的定義と運用設計ができたら、これらに基づき必要なデータ項目を設計していきます。データ項目の設計については以下の点に注意してください。

■診断ポイント

  • データ活用の目的、ダッシュボードの設計にもとづき必要なデータ項目を定義している(目的が曖昧なままデータ項目を増やさない)
  • 必要なデータ項目が営業プロセス上のどこで発生するものかを整理できている
  • データ項目の並びが、営業プロセスの流れに沿ったものになっている
  • 営業パーソンの活動から発生するデータ項目だけではなく、顧客の変化(購買意欲の変化・サービス利用頻度の変化など)を把握するためのデータ項目を設計している
  • 入力するデータの粒度や意味が入力者によって異なることがなく、揃っている
  • 各項目の入力候補に明確な選択基準があり、同じ事象に対して人によって選択が変わることがない
  • フリーテキストの入力形式を必要最低限にしている

営業データの構造の設計

必要なデータ項目を網羅しても、各データが構造的に繋がっていなければ、データの有効活用はできません。組織をまたぐことや時間の経過によるデータの分断が起きると、データの二重取得が発生したり、過去に得た貴重なデータを見逃してしまったりします。このような問題が起きないよう以下のポイントを確認しておきましょう。

■診断ポイント

  • 顧客データや案件データが組織ごとやシステムごとに生成されることなく、一元的なデータになっている
  • 顧客データや案件データが組織ごとやシステムごとに生成される場合、データの繋がりを維持するためのインターフェースが設計されている
  • 特定顧客や特定案件が、リード獲得~受注~サポート~追加契約までどのような経緯を辿っているか把握できる
  • 顧客に対する過去から現在の活動が一元的に把握できる
  • 入力されたデータにタイムラグがなく、リアルタイム性が担保されている
  • 年次→月次→週次、事業部→チーム→個人のようにデータがドリルダウンできる構造になっている

営業データの取得・入力

営業データ活用に関して最も多くご相談いただくのが「データ入力が徹底されない」という課題です。入力ルールを浸透させることや、営業パーソンの意識を高めることも重要ですが、営業パーソンが営業活動を行う中で自然と入力していける仕組みや工夫も必要です。

■診断ポイント

  • 各データが漏れなく入力されている
  • 各データがリアルタイムに入力されている
  • データ入力にかかる労力を測定している
  • データ入力の労力を適正化するために、不要な入力項目や入力ルールの見直し、入力アシスタントの設置等の判断をしている
  • 企業情報や名刺情報など、外部データベースやOCRからのデータの自動取込を活用している
  • MA、SFA、CRM、見積システム、請求システムなどシステムごとに多重入力する必要がない設計にしている
  • メールやチャットで報告した内容を、SFAやCRMに転記するなどの多重入力を回避できるようツール間のAPIを活用している
  • 営業パーソンの業務の流れに沿ってデータ入力できるようUIや項目の並びを設計している
  • 営業パーソンが案件の振り返りや計画を行う際に、目的に沿って閲覧しやすいUIや項目の並びになっている
  • 電話やメール、Web商談などの履歴が自動的に記録される仕組みになっている
  • 特定顧客・特定案件の情報入力をする際、何度も画面遷移する必要がない仕様になっている
  • 入力ルールを作成している
  • 営業データ管理に利用するツールのマニュアルを作成している
  • マニュアルが営業プロセスに沿った内容になっている
  • 入力ルールや効率的な入力方法を浸透させる取り組みを定期的に行っている
  • 入力状況が担当者別に可視化されている
  • データ項目ごとに入力内容や選択肢について基準が定義されている
  • 営業データが揃わないと各種会議が開催できない運用設計をするなど、マネージャーやリーダーのデータ入力に対する意識を高める工夫をしている
  • 入力のしにくさなど、現場の不満を吸い上げる仕組みを整備している
  • テスト入力等の不正なデータを排除する仕組みになっている

最後に

せっかく取得した営業データも、タイムラグがあったり、組織によってデータが分断されていてはその価値が半減してしまいます。顧客満足度を高めていくためには、マーケティングからカスタマーサクセスに至るまで、全過程で取得した顧客データに基づき、顧客の現状に適した価値を即座に提供していくべきです。

前半でご紹介したグラフやダッシュボートによる見える化も必要ですが、それ以前にデータ活用の目的や意味のあるデータ入力を行うための設計がより重要です。

顧客に寄り添った営業活動を行うためにも、SFAやCRMなどツールありきのデータ管理を行うのではなく、目的から逆算したデータ管理のあり方を設計する必要があります。

また、株式会社Magic Momentでは顧客との関係性(顧客エンゲージメント)を簡単に可視化する営業支援クラウドソフトウェア『Magic Moment Playbook』を提供しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

営業の型化コンサルティング

株式会社Magic Moment


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作成協力者(営業データ活用の診断表)

村尾 祐弥
株式会社Magic Moment 代表取締役

中央大学法学部卒。毎日コムネット、マイナビを経て、Googleでは営業統括部長として代理店営業・モバイル・ダイレクトセールスを次々と立ち上げ、そのすべてのオペレーションは、グローバルへ展開・標準化される。2015年にクラウド会計ソフトfreeeに参画。インサイドセールスを参画1ヶ月で倍、設立初の予算達成、パートナーセールスの垂直立ち上げなど執行役員営業統括兼パートナー事業本部長として成長を牽引。2017年からRapyuta Robotics 執行役員ビジネス統括を経て会社経営を本格化。

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