「代理店と契約したものの、なかなか売ってくれない……」メーカーが代理店(パートナー)ビジネスを進めるうえで、よくある課題です。
代理店はどのくらいの数の製品・サービスを取り扱っているのか?
代理店はどうやって売る製品・サービスを選んでいるのか?
代理店は、メーカー(ベンダー)に何をしてほしいのか?
現場で代理店戦略に取り組んでいるメーカーの方でも、これらの問いに答えられる方は意外と少ないと感じています。
そこで、メーカーが代理店を理解することの重要性を周知し、より良い関係構築を目指していただくために、「代理店(パートナー)ビジネスの実態調査」を実施しました。
同調査は2023年2月、システムインテグレーター、商社・卸売、OA機器サービスのいずれかに所属し、他社の製品・サービスを自ら販売した経験がある方200名を対象に行いました。
本記事では、調査内容と得られた示唆を解説します。
代理店(パートナー)ビジネスの実態調査(PDF形式)※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとダウンロードされます。
※本調査データを引用・転載する場合は、社名「株式会社才流」と本記事URLをあわせてご記載ください。当社への事前確認は不要です。
代理店と契約してからも、競合との戦いは終わらない
まず、同一カテゴリ内で競合する製品・サービスが平均何種類あるのかを聞きました。
すると、代理店の80%以上が複数の製品・サービスを取り扱っていることが明らかになりました。中でも6個以上の競合製品・サービスを取り扱っていると回答した方は、4分の1以上にのぼります。
つまり、代理店と契約をしても、複数の競合製品・サービスから自社を選んでもらわなければ、顧客には売ってもらえないわけです。
自社の製品を販売しているセールスでも、販売する製品やサービスが多岐にわたれば、把握しきれないことがあります。代理店のセールスならば、なおさらのこと。
「代理店が売ってくれない」という課題には、代理店側のこうした背景があったのです。
代理店に選ばれる決め手は「コミュニケーション」だった
では、どうすれば代理店は自社の製品・サービスを選び、売ってくれるのでしょうか。代理店側が注力する、または頻繁に販売する製品・サービスを選ぶ理由を聞きました。
結果は、メーカーとコミュニケーションしやすい・連携が取れているが37%で最多。次いで、自社製品・サービスとセット売りできるなど相乗効果があること、機能や価格が優れていることが挙がりました。
機能や価格面で競合と差別化をはかろうとするケースは多いので、意外に思う方もいるかもしれませんが、代理店戦略の肝は「コミュニケーション」なのです。カスタマーサクセスならぬ、代理店サクセスを目指し、営業担当者が売りやすい情報やセールスツールを提供しながら、コミュニケーションを深めていく必要があります。
また、代理店の製品・サービスと、自社の製品・サービスをセットで提案できるストーリーがあると、販売に注力しやすいこともわかりました。
販売する製品・サービスの選定基準は会社53%、現場45%
つづいて、提案する製品・サービスをどのように選んでいるかを聞いた設問では、販売する製品・サービスは会社の方針で決まっていると回答した方が53%で最多。次いで顧客に応じた提案をしている方が30%となりました。「方針はないが、結果的に偏りがある」と回答した人と合わせると、現場での意思決定は45%にものぼります。
この結果から、自社の製品・サービスに注力してもらうためには、会社方針を決める事業責任者や経営層へのアプローチだけでなく、現場の営業担当者にもアプローチする必要があるとわかります。
経営層や事業責任者へのアプローチ
・事業課題をヒアリングする
・パートナーが抱えている課題を解決できる絵を描く
現場の営業担当者へのアプローチ
・製品やサービスを顧客に提案する際に意思決定をしているのは誰なのか(現場なのか?会社の方針なのか?)、選定基準や営業担当者が抱えている課題をヒアリングする
・パートナーの営業担当者が抱えている課題を解決できる施策を練る
なお、パートナーへのインタビューについては、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事:パートナービジネスで解像度を高めるための「パートナーインタビュー」テンプレート付き
代理店がメーカーに提供してほしいのは、実績事例や比較表
次に、メーカーの支援で満足しているもの、支援はないがあると嬉しいものを聞きました。
実際に受けている支援で満足度が高いのは、「相談したいときにすぐに連絡が取れる」「セールスツールが充実している」「導入後のアフターサポートが充実している」が上位でした。
また、あると嬉しい支援では「モチベーションを高める表彰制度」が1位でした。
メーカーに用意してもらいたいセールスツールは実績事例、比較表、デモ環境が上位でした。これらは顧客のメリットを裏付ける資料や体験として有効です。
実績事例や比較表の例
事例や競合比較のテンプレートは、以下の記事内からダウンロードできます。
※関連記事:SaaSビジネスがパートナー(代理店)契約で「選ばれる」ための提案書テンプレート
また、特定のパートナーとの取引を拡大したい場合は、特定企業向けの実績集を作ることも有効です。以下のテンプレートも、記事内からダウンロードできますので、ご活用ください。
※関連記事:大企業で信頼を獲得し、取引拡大につなげるための「特定企業内の実績集」
「代理店が抱えている課題はなにか?」向き合うことが重要
調査結果から、代理店はメーカー(ベンダー)とのコミュニケーションを重要視していることがあきらかになりました。
代理店ビジネス自体は、製造業やレガシー業界では古くから重要な販売チャネル施策の一つとして存在します。代理店ビジネスに造詣が深い方からすると、これまでの経験から肌感覚として持っていたものをデータで証明されたと感じるのではないでしょうか。
UB Ventures「SaaS Annual Report 2022」でも触れられていますが、SaaSはアーリーアダプターだけではなく、地方企業・中小企業といったマジョリティへも導入が進み、産業化に向け着実に前進しています。
そのなかで、代理店ビジネスは「マジョリティ攻略」や「エンタープライズ攻略」を実現できる選択肢のひとつとして、非連続の成⻑を生む可能性を秘めています。
代理店が抱えている悩みは何か。この問いに向き合うことが、代理店ビジネス成功のファーストステップです。
代理店ビジネス有識者からのコメント
ジャフコグループ株式会社 ビジネスディベロップメント部 プリンシパル 西中 孝幸氏
スタートアップ企業が急速に事業拡大をするためには、代理店にプロダクトやサービスを扱ってもらい販路拡大を実現することが重要です。一方で、スタートアップ企業では、代理店ビジネスの経験不足により、代理店経由の売上向上に苦労するケースがあります。
今回の代理店側への実態調査は、代理店がメーカーに対して期待することを把握できるため、代理店ビジネスに馴染みがないスタートアップ企業にとって示唆深い内容になっています。 こうしたヒントを上手く活用し、スタートアップ企業がパートナー企業と共創することで革新的なプロダクト・ソリューションを生み出し、新市場を切り開いていくことを期待しております。
調査概要
調査対象:以下の条件をすべて満たす22~65歳の会社員男女
・システムインテグレーター、商社・卸売、OA機器サービスのいずれかに所属
・他社の製品・サービスを自ら販売した経験がある
・製造業、情報通信業、商社・卸売り・小売業、その他
調査期間:2023年2月16日
有効回答数: 200
調査手法:インターネット調査
調査機関:株式会社才流
調査データのダウンロード
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※本調査データを引用・転載する場合は、社名「株式会社才流」と本記事URLをあわせてご記載ください。当社への事前確認は不要です。