案件の進捗管理やチーム全体の受注率の向上を目的として実施される案件レビュー。報告する営業メンバー、レビューする営業マネージャーの双方にとって大きな負荷になってしまうこともあり、才流(サイル)でも運用方法に関するご相談をいただきます。
案件レビューは、実施する時間は最小限に抑えつつ、得られる価値は最大限にしたいもの。そこで本記事では、参加者全員にとって有意義な時間になるような案件レビューの進め方について解説しました。
営業メンバーが案件報告に使うためのトークスクリプトや議事録テンプレートもダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
案件報告のトークスクリプト(PowerPoint形式)をダウンロードする
議事録テンプレート(Excel形式)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
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案件レビューの定義とよくある課題
はじめに、本記事における案件レビューの定義とよくある課題について説明します。
案件レビューとは
案件レビューは、「案件進捗会議」「ミーティング」「案件報告」など、企業によってさまざまな呼称があると思います。
本記事では、案件レビューを以下のように定義します。
案件レビューとは
見込み案件について担当営業が状況を共有し、第三者であるマネージャー、他のメンバーが客観的な視点で案件進捗の懸念点を洗い出し、案件進捗の精度を上げるために必要なアクションを提案・決定する時間
マネージャー、メンバーそれぞれの知見を集約して案件を進捗させ、チーム全体の受注率の向上を目指します。
案件レビューでよくある課題
案件レビューについて、営業マネージャーから以下のような声を耳にします。
- メンバーからの報告に抜け漏れがあり、適切なアドバイス・指示ができない
- メンバーがレビューした内容に沿ってアクションができているかわからない
一方、営業メンバーからよく聞かれる課題は以下のようなものです。
- マネージャーから案件に関して深く質問されるので精神的に億劫
- 他のメンバーの報告を聞いている時間がもったいない
- 案件レビューに参加することへのメリットが感じられない
冒頭でも触れたとおり、案件レビューは実施する時間は最小限にとどめ、得られる価値を最大限にすることが大切です。参加者全員にとって有意義な時間にすることを意識して設計しましょう。
案件レビューに取り組む前に組織で決めておくこと
続いて、案件レビューに取り組む前に組織で決めておくべきことを解説します。
実施目的
案件レビューは営業会議のなかで、現在の見込みの状況や活動状況の確認とあわせて実施されるケースがほとんどです。多くの営業パーソンが参加するため、結果的に膨大な時間を費やすことになってしまいます。
したがって、マネージャーだけがメリットを享受するのではなく、全員にとって参加する価値のある時間にすることが重要です。そのためには、案件報告を行うメンバーたち自身にも利点があることを理解してもらう必要があります。
メンバーには以下のような実施目的を設定し、浸透させるとよいでしょう。
- 案件の進捗に役立つヒントを得て、アクションの精度を上げる
- 他のメンバーのレビューを聞き、自身の営業活動に取り入れられるナレッジを得る
実施方法と参加者
実施目的を定めたあとに、案件レビューの実施方法と参加者を決定します。
案件レビューの実施方法には、大きく分けて2つの方法があります。営業会議のようなチームメンバーが全員参加する場で行う方法と、マネージャーとメンバーで案件ごとに個別に行う方法です。それぞれメリット・デメリットを紹介します。
①チームメンバーが全員参加する場で行う
- メリット:他のメンバーにも案件進捗のナレッジを共有できる
- デメリット:チーム全体で多くの時間を使ってしまう
この方法は、メンバーのスキルや知識の差が大きい営業組織に向いています。多くの時間がかかってしまいますが、チーム全体として案件を進捗させるためのアクションを整理する場にしましょう。
②マネージャーとメンバーで案件ごとに個別に行う
- メリット:メンバーそれぞれにかかる時間は最小限にできる
- デメリット:マネージャーは多くの時間を費やすことになる
メンバー全体で見るとそこまで多くの時間はかかりませんが、工数がマネージャーに集中します。チーム間でのスキルのばらつきが大きくなく、メンバー全員がそれぞれ自立している組織であれば、こちらが効率的でしょう。
いずれにせよ、案件レビューは直接的な営業活動ではなく、営業活動の質を上げるための補助的な役割を担う時間です。費やしている時間に対して、チーム全体の活動の質は上がっているかを点検しながら取り組んでいきましょう。
役割
事前にファシリテーター、議事録担当者を決めておきます。
ファシリテーターは以下の2点に注意しながら、案件レビューを進行する役割を担います。
- 短い時間で議論ができる場にする
- 決定事項に抜け漏れがないか確認する
また議事録担当者も重要な存在です。案件レビューは、いつ、何をして、どのように進捗させるのかを決定する時間。議事録がない、または曖昧な議事録では決定したアクションを明文化できず、実行されたかどうかも振り返ることができません。
必ずファシリテーター、議事録担当者を決めておきましょう。
頻度・時間帯
頻度と時間帯も事前に決めておきます。週に1回、月曜日の午前中に実施することを推奨します。
案件レビューは、案件を進捗させるための実施アクションを整理する時間でもあります。週末を挟んでアクションが漏れてしまうことを防ぐためにも、週の前半での実施がおすすめです。
案件レビューの進め方
ここからは、案件レビューの進め方について解説していきます。案件レビューは以下の5つのステップで進めます。
- 案件情報の入力
- 案件情報の事前確認
- 案件報告
- 案件レビュー
- ネクストアクションの決定
1.案件情報の入力
担当者は各案件の担当メンバーです。
- OK例
- 進捗している案件のすべての項目が入力されている
- 一読するだけでチームメンバー全員が理解できる内容になっている
- NG例
- 入力漏れがある
- 情報が欠けており、内容が薄い
担当している案件ごとに、SFA※や案件を管理しているシートなどに必要な情報を入力します。案件の基本的な情報や口頭説明が不要な項目を案件レビューを実施する前に入力しておくことで、報告時間を短縮できます。
※SFA:エスエフエー/Sales Force Automationの略。営業活動の記録、進捗状況、顧客情報などを管理するシステムのこと。
入力すべき情報は営業組織によって多少変わると思いますが、どの組織においても以下の項目は最低限入力しておきましょう。
- 商談企業の基礎情報
- 過去の商談内容
- 現在の商談フェーズ
- ネクストアクション内容
- ネクストアクション実施日
- 受注予定日
週に一度、案件の情報を入力・更新することで案件の進捗方法を検討する習慣が養われるというメリットもあります。
2.案件情報の事前確認
担当者はマネージャーです。
- OK例
- 事前確認を行っている
- レビューするポイントが具体的になっている
- NG例
- 内容を確認していない
メンバーが入力した情報を事前に確認しておきます。事前確認を怠ると、案件レビューの際にメンバーからの報告に時間を要し、本来の目的であるアクションの決定に十分な時間をかけられません。
以下のルールを設け、メンバーの入力漏れやマネージャーの確認漏れを防ぎましょう。
- 案件情報の入力期限を決める(週次)
- 案件情報の事前確認の時間を決める(週次)
- 該当の時間帯に商談や他の会議を入れることを禁止し、入力・確認の時間を確保する
3.案件報告
担当者は案件担当メンバーです。
- OK例
- 事実と所感が切り分けられている
- 案件進捗の方向性や懸念点を端的に伝えられている
- NG例
- 事実と所感が混在している
- 端的に内容を伝えられていない
- 状況説明だけになっている
各案件に対して、メンバーから報告を行います。案件の詳細、過去の商談内容は参加者が事前に確認している前提で、今後の案件進捗の方法を端的に伝えるように心がけましょう。
具体的には以下の流れで報告します。
- 案件のかんたんな状況
- 商談先と合意が取れている事項、取れていない事項
- 想定できる懸念事項とリカバリープラン
- ネクストアクションの内容、日付、目的、ゴール
- 相談事項
また、案件報告がなかなかうまくできない、と悩んでいる方のためにそのまま使えるトークスクリプトを用意しました。サンプルも入れてあるので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
※BANTCH:バントチャンネル/Budget(予算)、Authority(決裁者)、Needs(ニーズ)、Timing(検討時期)、Competitor(自社の競合相手)、Human resources(組織の人員体制)の略。
案件報告のトークスクリプト(PowerPoint形式)をダウンロードする
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4.案件レビュー
担当者はマネージャーです。ただし、営業会議のような営業メンバーがそろった場で実施する場合は、マネージャー以外のメンバーもコメントします。
- OK例
- メンバーの報告を鵜呑みにせず、案件の仮説をたてたうえで必要な打ち手を考えられている
- 指示出しと問いかけを使い分けて、各メンバーに応じたフィードバックができている
- NG例
- メンバーの報告を鵜呑みにする
- 指摘を続ける(詰める)
マネージャーは、メンバーからの報告内容をもとに具体的な指示やアドバイスを伝えます。メンバー本人だけでは想定できていなかった事態の対処案、案件進捗をより確実なものにするためのアクションを提言しましょう。
以下のような視点でアドバイスすることが重要です。
- 営業メンバーが認識している案件状況に相違はないか?
- ほかに想定される懸念事項はないか?
- より精度が上がるアクションはないか?
客観的な視点で進捗方針やネクストアクションを提示しましょう。
またレビューを行うにあたって、どうしても以下のような質問が出てくると思います。
- 〜は確認できているか?
- 〜は合意は得られているか?
- 〜について顧客の反応は?
マネージャーからの質問が続くと、報告するメンバーはプレッシャーを感じてしまいます。メンバーが答えやすい質問を投げかけることを心がけましょう。
5.ネクストアクションの決定
最後に案件担当メンバーを中心に、ネクストアクションを決定します。
- OK例
- ●月▲日■時など、具体的な日付と時間が決まっている
- 懸念事項から起こり得る状況を想定し、リカバリープランまで策定できている
- NG例
- アクションや目的が明確になっていない
- 具体的な日付や時間が定まっておらず、上旬、〜の週、午前中のような表現が見られる
案件を進捗させるため、いつ、誰に、何を目的に、どんなアクションを行うかを明確に定めましょう。
ただし、ここで決めたアクションが実行されたとしても、想定どおりの結果を得られるとは限りません。
たとえば、「●月▲日■時に顧客の検討の進捗を電話で確認する」というネクストアクションを決めても、当日顧客と連絡がとれなかったというケースは往々にしてあり得ます。そのような事態になってしまった場合でも、メンバーが迷うことなく次のアクションをとれるよう、リカバリープランもあらかじめ検討しておきましょう。
案件レビュー議事録テンプレート
案件レビューを行う際は、必ず議事録をとり、ネクストアクションを詳細に記載します。最低限押さえておきたい項目を議事録テンプレートとしてまとめました。
議事録テンプレート(Excel形式)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます
今回お届けする議事録テンプレートの項目は、以下の10個です。
- 顧客名
- 担当者氏名
- 案件金額
- ヨミ
- フェーズ
- 懸念
- 受注予定日
- ネクストアクション
- 結果
- マネージャーからのコメント
議事録によって、いつ、誰に、何を目的に、どんなアクションを行うのかを記録できます。
また、アクションを起こしたあとにその内容を記載すれば、次回の案件レビューの際に振り返りを実施できます。いずれも案件が決着するまでの間、抜け漏れなく行うことで案件進捗の精度が向上します。
まとめ
営業組織においては、社内会議やミーティングはできる限り削減して、商談に時間を割きたいという方が多いと思います。
チーム内で案件レビューのルールや実行方法を事前に定めておくことで、より生産的な時間にすることができます。今回の記事が参考になれば幸いです。
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