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BtoBのテストマーケティングで使える5つのプロトタイピング手法

新規事業
インハウスエディター
南 大友

新規事業に失敗はつきもの。一説によれば、スタートアップの成功確率は7%程度しかないといわれています。新規事業が失敗する理由のひとつに、顧客のニーズを検証せず、自分たちの思いつきや思い込みのままに製品をリリースしてしまうことが挙げられます。

新規事業の成功確率を高めるには、テストマーケティングによる仮説の検証が欠かせません。才流(サイル)では、BtoB企業様向けにテストマーケティングのコンサルティングを提供しています。

今回は才流のノウハウをもとに、BtoBにおけるテストマーケティングの手順、プロトタイピングの手法について解説します。

才流では「テストマーケティングをおこないたい」「仮説検証をおこないたい」企業さまを支援しています。新規事業でお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら

■監修:才流(サイル)コンサルタント・小島 瑶兵

テストマーケティングとは?

テストマーケティングとは、本格的に製品をリリースする前に限定的な範囲で試験販売を行うことです。有名な例として、全国展開をするコンビニは静岡で新商品の先行販売をすることが多いです。静岡が選ばれる理由は日本の平均的なデータが取れるためと言われています。

テストマーケティングはBtoCのイメージが強いですが、BtoBにおいても有効です。見込み顧客に向けて試験的に販売し、そこで得られたデータを検証、整理して製品を改良することで「思ったほど売れない」というリスクを回避できます。

テストマーケティングの流れ

テストマーケティングの主な目的は、その時点で売れる/売れないを見極めることではなく、製品の企画・開発の段階で想起した仮説を検証することです

また、仮説検証の対象となるのは製品やサービスだけでなく、ターゲット顧客のペルソナから検証する必要があります

BtoBでテストマーケティングを行う3つのメリット

売れないリスクを防げる

新規事業が失敗する原因は、売れない製品を作ってしまうことです。「もし自分が顧客なら欲しい製品だから売れるだろう」という推測でリリースした結果、ほとんど売れなかったというケースはよくあります。

事実、スタートアップの撤退要因として最も多いのが「市場が存在しなかった」です。

スタートアップの撤退理由
※出典:「STARTUP 優れた起業家は何を考えて、どう行動したか」(NewsPicksパブリッシング) 

どれだけ素晴らしい製品を作ったとしても、そこに市場が存在しなければ売れません。見切り発車で製品を作り、リリースするのではなく、テストマーケティングというプロセスを挟むことで売れないリスクを防げます。

顧客ニーズの解像度が高まる

顧客解像度

多くの企業が新規事業を行う際、見込み顧客に「この製品を購入したいかどうか」をヒアリングします。しかし、「ぜひ購入したい」と答えてくれた方が本当に購入してくれるとは限りません。ニーズは売れることではじめて証明できるものです

テストマーケティングでは簡易的な資料やLP(ランディングページ)を用意して、リード獲得、商談を行います。その一連の流れの中でリアルな反応が得られるため、顧客の解像度を高めることができます。

フィードバックにより改善できる

見込み顧客からのフィードバックによって、製品の機能やコンセプトは磨かれます。

また、見込み顧客だけでなく社内からフィードバックを得ることもできます。外部に見込み顧客が見つからない場合、ターゲット層に近い社内のメンバーに模擬商談を依頼するのもよいでしょう。

テストマーケティングの手順

テストマーケティングは、新規事業の戦略が正しいかどうか、その仮説を検証するための調査です。以下、5つの手順で進めましょう。

  1. 仮説の整理
  2. プロトタイピングの制作
  3. テストマーケティング実施
  4. モニター商談
  5. 検証結果の整理

1. 仮説の整理

テストマーケティングは、情報収集ではなく仮説検証の場。「誰の」「どんな課題に」「どのような解決策を」「いくらで」提供すれば売れるのかを仮説として洗い出し、整理します。限られた時間と資金で事業を軌道に乗せるために、検証する仮説には優先順位をつけましょう。

優先度が高いのは、以下のような仮説です。

  • 外れた際に大幅な修正が必要となる仮説
  • メンバーにとって未知の領域である仮説

仮説は、ペルソナ仮説と製品仮説に分けて考えるのがおすすめです。

ペルソナ仮説

ペルソナ仮説例

BtoBにおいては購買目的がはっきりしていることが多いため、「誰の」「どんな課題に」売れる製品・サービスなのかをできるだけ明確にする必要があります。顧客になり得るペルソナをいくつか考え、具体的に仮説を立てましょう。

ペルソナ仮説を立てる際は、以下のような項目を具体化するのがおすすめです。

・業界、業種
・部署、役職
・購買理由
・実現したいこと
・情報収集の方法

テストマーケティングを通して、ペルソナに近い人物が「本当にその課題を持っているのか」「どういったセグメントに多いのか」「お金を払って購入する気があるのか」などを検証しましょう。

※関連記事:
ペルソナを作る|商談・受注数を最大化する「リードナーチャリング」のプロセス
BtoBマーケティングはペルソナで決まる。

製品仮説

売れる製品を作るためには、以下のようなことを検証する必要があります。

  • 顧客が必要としている解決策なのか
  • その解決策が製品として実現可能か
  • 製品にする意味があるかどうか

製品のコンセプトや機能だけでなく、デザインやUI/UXまで、あらゆる仮説を立てましょう。テストマーケティングでは「コンセプトはよいが機能が足りない」「使いにくい」「デザインが良くない」といった、さまざまなフィードバックをもらえます。

すべてを一度に検証せずに、製品のコンセプト、機能、デザイン、UI/UXなど、それぞれを段階的に検証していくのもよいでしょう。

2. プロトタイピングの制作

プロトタイプとは製品の試作品のことですが、仮説の検証に必要なものを制作することを「プロトタイピング」といいます。プロトタイピングによって、アイデアや思考を可視化できます。

なお、ニーズを検証できればよい段階では、必ずしも実際に使用できるプロトタイプ(製品)が必要なわけではありません。提案資料やLPを作り、ニーズの手応えを得るだけでも十分です。

BtoBにおいては以下のようなプロトタイピング手法が有効です。

  • 提案資料
  • LP・ティザーサイト
  • ビデオプロトタイプ
  • コンサルティングサービス
  • コンシェルジュサービス

それぞれの手法については、後述の「BtoBのテストマーケティングで使えるプロトタイピング手法」で詳しく解説します。

MVP制作

実用化に必要最小限の機能を備えた製品のことを「MVP(Minimum Viable Product)」といいます。製品開発においては、最初から作り込みすぎると無駄にコストがかかる上に、軌道修正が難しくなる恐れがあるため、MVPから徐々に軽微な改善を繰り返して完成形に持っていくことで、これらのリスクを回避できます。

ただ、MVP制作には一定のコストがかかってしまうため、プロトタイピング制作を通じて、ある程度コンセプトや機能がはっきりしてから着手しましょう。

3.テストマーケティング実施

テストマーケティングは製品の仮説・検証の場であると同時に、商談を行うためのリード獲得も目的のひとつなので、今後製品を販売する経路(チャネル)に近い場所で実施しましょう。

BtoBにおけるテストマーケティングには、以下のような方法があります。

  • Web広告
    • ニーズが顕在化しており、特定の検索キーワードがある場合Google広告
    • ニーズが潜在的で、特定のキーワードがない場合Facebook広告
  • 既存顧客やハウスリストへの営業
  • DM(ダイレクトメール)
  • チラシ配布
  • テレアポ
  • 展示会

【事例】才流の新規事業マーケティング支援

才流が株式会社ディバータ様へ向けて行った新規事業マーケティングの支援では、予算30万円でGoogle広告とFacebook広告への出稿を1か月間実施。比率は柔軟に調整する前提で、当初はGoogle広告に比重をおき、Google20万円、Facebook10万円に設定しました。

しかし、1週間も経たないうちに予算消化ペースに差が現れ、Google広告の予算消化は想定よりも進まず、Facebook広告の方が伸びるという結果に。最終的な出稿費はGoogle5万円、Facebook20万円。つまり、この製品は顕在的ニーズよりも潜在的ニーズの方が大きいことが分かりました。

※関連記事:製品なしでも有料モニター4社獲得!新規事業マーケプロジェクト4か月半を全公開

この事例のように、テストマーケティングでは当初は想定していなかった結果が出るケースもあります。むしろ、BtoBにおいてはそういったケースが多く、ゆえにテストマーケティングを実施する意味があるといえます。

4.モニター商談

テストマーケティングで獲得したリードに向けて商談を行います。この時点ではモニター契約や返金保証の提示など、顧客のリスクを抑えた提案がおすすめです。

ただし、モニターとはいえ、価格を下げ過ぎないようにしましょう。安さが決め手となって購入する層は本来のターゲットではありません。「テストマーケティングでは売れたが、市場に投入したら売れなかった」という結果にならないためにも、実際に販売するときとかけ離れすぎない価格に設定しましょう。

5.検証結果の整理

テストマーケティングやモニター商談で得られた情報をもとに、検証結果を整理します。ここでは仮説の検証だけでなく、実際に販売した際に起こり得るリスクや課題を洗い出しましょう。

なお、検証結果を整理する中で、当初は想定していなかった新たな仮説が生まれることもあります。その場合は再度テストマーケティングを行いましょう。

BtoBのテストマーケティングで使えるプロトタイピング手法

BtoC企業におけるテストマーケティングでは、実際に販売する製品を使って実施することが多いですが、BtoB企業が行う場合は先述したプロトタイピングを用いることが多いです。というのも、BtoBは市場のニーズが見えにくいという特徴があるため、製品を作る前にプロトタイピングによってニーズを検証する方が賢明だからです。

BtoBのテストマーケティングで使えるプロトタイピングには、以下のような手法があります。

BtoBテストマーケティングにおけるプロトタイピング手法

1. 提案資料

提案資料をもとに営業することで、実際に売れるかどうかを検証できます。​​ニーズを捉えた製品であれば、たった1枚のコンセプト資料だけでも売れるといいます。まずは1枚のスライドに集約したコンセプトの検証からはじめ、顧客の反応を見ながら方向性を探りましょう。

株式会社ディバータ「DocDog」のコンセプト例
※1スライドに集約したコンセプト検証 株式会社ディバータ様「DocDog」の例

なお、検証のための営業資料なので、細かく作り込む必要はありません。10分程度の短い時間で紹介できるように意識して、多くとも15ページ以内に収まるように作成しましょう。

※関連記事:
営業資料の作成・改善に使える62のチェックリスト【テンプレートあり】
“パワポ一枚で売れる”強いコンセプトの発見で、導入が加速。BEARTAILのPMFストーリー

2. LP・ティザーサイト

株式会社ディバータ「DocDog」のティザーサイト例
※ティザーサイト 株式会社ディバータ様「DocDog」の例


簡易的なLPやティザーサイト(製品やサービスを販売前にユーザーに対して情報を発信するためのサイト)を作成し、広告として出稿することで、問い合わせが発生するかどうかを検証できます。Web広告経由で販売する製品におすすめの手法です。

正式リリース時に使うものではないので、先述した提案資料と同様に短期間で制作しましょう。

※関連記事:BtoB商材のLP(ランディングページ)の標準ワイヤーフレーム

3. ビデオプロトタイプ

ビデオプロトタイプとは、製品のコンセプトが伝わる映像や実際の使用イメージを録画した動画です。動きや音声を通じて多くの情報を伝えられるので、製品のコンセプト、デザイン、UI/UXを効果的にアピールできます。

スライド資料だけでは伝わりにくい挙動やデザインが重視される製品におすすめの手法です。

【事例】Dropbox

2022年現在、世界に7億以上の登録ユーザーを有しているクラウドストレージサービスDropboxは、2007年にデモを録画した3分間のビデオプロトタイプをITメディアで公開。

簡易的なLPでメールアドレスを取得し、翌年にベータ版の利用希望者を募ったところ、一晩で5,000人から75,000人になり、多くの質の高いフィードバックを得られたことがリリースにつながったといいます。

創業者でありCEOのドリュー・ヒューストン氏は、「必ずしもコードになっている必要はないので、できるだけ早くリアルなフィードバックを得たほうがよい」という教訓を得ています。

※参考:Dropbox Startup Lessons Learned

4. コンサルティングサービス

製品を開発する前に、提供する機能をコンサルティングサービスに置き換えて試験販売する方法もあります。社内にノウハウを持つ人材がいる場合におすすめの手法です。

実際のコンサルティングで得た知見を基にして製品化するので、余計な機能が作られにくく、無駄なコストも省けます。

初期投資を抑えつつも、顧客ニーズを捉えた製品を開発できるので、リリース初期の段階から売り上げにつながりやすい傾向があります。

【事例】ノバセル

テレビCMなどの広告動画の企画・制作・放映・分析まで、一貫したサービスを提供するBtoB広告プラットフォーム「ノバセル」は、コンサルティング活動から手応えを得たコンセプトを「ノバセルトレンド」などのプロダクトへ落とし込み、事業の幅を広げていきました。

コンサルティングという“手売り”によって、プロダクト価値を検証した良い例です。

※関連記事:1年に500回の商談で「誰に何を売るか」を徹底分析。運用型テレビCMサービスで急成長のノバセルに学ぶ、PMFの鉄則

5. コンシェルジュサービス

先ほどのコンサルティングサービスと同様に、製品の機能を人が担う手法です。顧客に合った提案や​​分析といった、専門知識を持ったコンシェルジュでないとできないサービスを製品化する場合に用いられます。

コンシェルジュが行う業務を自動で行うためには、人工知能など高度なテクノロジーを搭載する必要があるため、MVPを制作するだけでも大きなコストがかかります。テストの段階では、サービスが動いているように見せて、裏でコンシェルジュが手を動かす方法にすることで、無駄な機能を追加する必要がなくなり、開発コストは抑えられます。

テストをしたユーザーは本当にそのサービスがあるように感じるので、実際の使用感をもとにフィードバックを得られるのもこの手法のメリットといえます。

BtoBでテストマーケティングを行うときの3つのポイント

BtoBマーケティングを行うときの3つのポイント

最後に、実際にBtoB企業がテストマーケティングを行う上で押さえておきたいポイントを紹介します。

1. 検証したい仮説を明確にする

テストマーケティングは、仮説を検証するために行われるものです。検証する仮説はできるだけ焦点を絞って、明確にしましょう。仮説を明確にすることで、それに適した検証方法も明確になります。

たとえば、同じWeb広告でテストマーケティングを行う場合も、すでに売りたい製品・サービスを探している人がいるという前提であれば、特定の検索キーワードから流入を見込めるGoogle広告が効果的ですが、そうでない場合は展示会の出展やテレアポ、Facebook広告が適しています。

当然ですが、ペルソナの仮説が異なると実施すべきプロトタイピング手法も異なります

例. 顧客情報を一元で管理するサービス(SFAツール)を展開する場合

ペルソナ仮説
検証方法
(プロトタイピング手法)

必要最低限の機能のみを適切な価格で利用したい

オプション機能別に料金が異なることを示す提案資料を作成する

機能面はともかく、使いやすさを重視している

実際に使用しているビデオプロトタイプを作成する

2. 十分な数の検証を行う

テストマーケティングを行う上で、1件だけで売れる/売れないを判断することはできません。広範囲に販売する製品の場合は、十分な数のテストマーケティングが必要です。

一般的には、検証したいセグメントにつき2〜5件程度のテストマーケティングが必要といわれています。さらに精度を高めたい場合は、新しい情報がなくなるまで続けるとよいでしょう。

才流が株式会社ディバータ様へ向けて実施した新規事業の支援では、最終的に合計23名への調査インタビューを実施。2名に話を聞いてすぐに検討中止になったセグメントもあれば、7名に話を聞いて新たな調査セグメントの発見につながることもありました。

※関連記事:製品なしでも有料モニター4社獲得!新規事業マーケプロジェクト4か月半を全公開

3. 時間や資金をかけすぎない

検証したい仮説を列挙すると、時間とコストが膨大になりがちです。短期間で市場にフィットした製品をリリースにこぎつけるには、いかに最小限の時間とコストで十分に仮説を検証できるかがポイント。

事業の意思決定を行うには、100%まで調べる必要はありません。情報が出そろうのを待っていては遅いという場合がほとんどです。Amazonの創業者ジェフ・ベゾス氏は、「70%程度の情報で意思決定しなければ遅い」。同様に、ソフトバンクの創業者である孫正義氏も「70点で意思決定をするべきだ」と述べており、その考え方は「七割思考」とも呼ばれています。

テストマーケティングでは、時間や資金が限られていることを意識して、できるだけコストを抑え、短期間のうちに仮説検証を繰り返すことが大切です。

まとめ

新規事業や新商品の成功確率を高めるには、本格的なリリースの前にテストマーケティングを行い、仮説の精度を高めることが重要です。

提案資料やLP・ティザーサイト、ビデオプロトタイプなど、さまざまなプロトタイピング手法があり、製品そのものがなくてもテストマーケティングを行えます。

才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、新規事業の立ち上げからPMFに至るまで一気通貫で支援しています。新規事業で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)

以下のようなご相談もお受けしています。

  • 製品開発前に仮説検証を通じて勝ち筋を見つけたい
  • 新製品の売れる証明をしたい
  • 成長した事業の「次の売れるセグメント」を見つけ出したい

個別相談も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはこちら

(文:大江 健七郎

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監修

コンサルタント
小島 瑶兵

2013年にWebコンサルティング事業を行う株式会社GENOVAへ入社。営業部長として100件以上のマーケティング支援を行う。その後、新規事業開発を行う部署を立ち上げ、医療メディア「Medical DOC」をローンチ。公開から2年で年商10億円を達成。現在は才流にて上場企業やスタートアップのマーケティングコンサルティングを行う。
Twitter:@yooheykoji

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