企業としてYouTubeチャンネルを運営したいけれど、「そもそもYouTubeをやるべきか」「YouTubeが事業にもたらすメリットは何か」など疑問に思う方も多いと思います。
本記事では、企業がYouTubeチャンネルを運営するうえで知っておきたいこと、YouTubeに向いている企業の条件を解説します。
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企業のYouTube運営ニーズが高まる背景
企業でYouTube運営のニーズが高まっている背景は、4つのメリットがあるからです。
①情報伝達効率の良さ
動画1分間の情報量は、テキストに置き換えると180 万ワードの価値に相当するという研究結果があります。つまり、YouTubeではテキストコンテンツでは伝えきれない大量の情報を短時間で、ユーザーに届けられます。
出典:Why One Minute Of Video = 1.8 Million Words
②ビジネス層へのリーチ
YouTubeはビジネス情報を入手する媒体になりつつあります。
本記事を読まれている方も、ビジネス知識のインプットを目的に、YouTube動画を視聴した経験があるのではないでしょうか。
株式会社ガイアックスの調査によると、YouTube日本国内の月間アクティブユーザー数(MAU)は約7,000万人。世代別では40代が最もアクティブ率が高く、次いで50代、30代となっています。
つまり、YouTubeはビジネスシーンにおける管理職・決裁者層が多い年代にリーチできるのです。
出典:株式会社ガイアックス「2022年11月更新!性別・年齢別 SNSユーザー数」
③リーチの拡大・SEOの強化
YouTubeを利用することで、今までリーチできなかった層にリーチを拡大することができ、SEOにも寄与できます。
1. YouTube内検索に対応できる(V-SEO)
V-SEO(Video Search Engine Optimization)とは、動画コンテンツにおけるSEOのことを指します。
YouTubeは動画のプラットフォームです。検索結果の表示順位はGoogleと同じように独自のアルゴリズムで、キーワードと動画の関連性を評価して決まります。
さらに言えば、キーワードと動画内容の関連性、ユーザーとのエンゲージメント(※)、専門性、権威性、信頼性を基準に、検索結果の評価が決まると言われています。ユーザーニーズに合った有益な動画を作り、YouTube内の露出、視聴回数を増やしましょう。
※エンゲージメント:ここでは視聴回数、高評価、低評価、チャンネル登録者数など動画に対するアクションのこと。
2.Google検索時に表示される可能性がある(WPO)
WPO(Web Presense Optimization)とは検索結果における自社関連情報のシェアを最大化する考え方であり、YouTube動画はWPOに貢献するコンテンツとして有効な媒体です。
Google検索時、キーワード検索結果の画面に動画が複数表示されるケースを見たことはないでしょうか。YouTube内だけでなく、Google検索結果の露出にもYouTube動画が有効に働くケースがあります。
表示される基準はV-SEO同様、キーワードと動画の関連性、ユーザーのエンゲージメント、専門性、権威性、信頼性の指標で決まり、キーワードによっては1位のポジションが動画枠の優先表示になるケースもあります。
3.Webページ内に動画を埋め込み、記事コンテンツのリッチ化
記事コンテンツを制作している場合、文脈に合わせた形で動画を記事内に挿入することでコンテンツがリッチになり、SEOに貢献できる可能性もあります。
記事コンテンツ内に画像を挿入して内容をより充実させることは、さまざまなWebメディアで行われています。動画による記事コンテンツのリッチ化も似た概念で、「動画を観ることで滞在時間が伸びる+動画によって理解が深まってその後の精読率(※)も上がる」ことで、サイトの評価が上がる仕組みだと推測しています。
※精読率:読者が細かい所まで注意して読む割合
もちろん、闇雲に動画を埋め込めば良いというわけではなく、記事文脈に合致した内容で、理解の手助けになる情報であること、動画自体の評価も高いものであることが重要です。
例えば、「FXとは」で検索結果上位に表示されているみんなのFXの初心者向け記事は、冒頭に動画を4つ埋め込んでいます。
④さまざまな目的に使用できる
記事コンテンツがメディアやマーケティング、販売とさまざまな用途に用いられるのと同様に、YouTube動画もあらゆる目的に対応したコンテンツになり、複数の効果が期待できます。
YouTubeを活用する目的の例
・YouTubeの概要欄より自社サイトへ送客してリード創出
・YouTube広告の効果を最大化
・インサイドセールス時の顧客育成のコンテンツ
・社員向けの教育コンテンツ
企業のYouTube運営が難しい理由
一方で、企業がYouTubeチャンネルを運営する難しさもあります。
①企画の幅が狭くなる
YouTubeはメディアの特性上、エンターテインメント性のあるコンテンツに注目が集まる傾向があります。
個人のYouTube運営であれば、投稿主のキャラクターに合致している範疇でさまざまなコンテンツに挑戦しやすいです。
しかし、企業の場合、自社ブランドのイメージ、株主・顧客・社員など配慮すべきステークホルダーの範囲が広いため、企画の自由度が個人運営に比べると狭くなりがちです。
自社の顧客ニーズに応えながら、イメージを崩さずにYouTubeというメディアに適した企画を考える必要があり、個人で運営するYouTubeに比べて難易度も高くなります。
②動画制作の工数確保が必要
動画制作の実務だけでも作業ボリュームは多いため、通常業務と兼務で成功させるのは困難です。
人材不足は多くの企業が抱える悩みですが、YouTubeチャンネルを運営するのであれば、最低でもディレクションの専任社員が1名以上は必要でしょう。
どうしてもリソースの確保が難しい場合は、動画制作のディレクションや制作担当者を業務委託で調達もできます。その際も、チャンネル運営に対して責任を持つ担当者は社内に置くようにしましょう。
③マネタイズが難しい
YouTubeにはインフィード動画広告(※1)、スーパーチャット(※2)、メンバーシップ(※3)など、独自のマネタイズ機能があります。
※1:ユーザーが動画コンテンツを見つける場所(YouTubeの関連動画の横、YouTube検索結果、YouTubeモバイルのトップページなど)で動画をアピールするための動画広告
※2:YouTubeパートナープログラムを通じてチャンネルで収益を得られる手段。視聴者がスーパーチャットを購入し、チャットメッセージを目立たせることで得られる収益
※3:チャンネル独自の限定特典を購入してもらい、メンバーシップなってもらうことで得られる収益
しかし、マネタイズ機能は個人のクリエイター向けに用意されているものが多く、個人向けほど再生回数や登録数を伸ばしづらい企業運営のチャンネルだと、得られる収益金額も大きくはないです。売上の柱となる収益にはならないでしょう。
動画の概要欄にURLを設置して、自社サイトへ送客し、コンバージョンにつなげる方法もありますが、YouTubeはYouTube内で回遊する設計になっているため、サイトへの流入数を増やす手段としてはおすすめできません。
YouTube単体での収益を狙うよりも、「ユーザー接点として他の獲得チャネルをアシスト」「見込み顧客からの認知獲得」「信頼を醸成するための機能」として位置付けることで、YouTubeに取り組む意義を見出せます。
YouTubeを運営するべき企業の条件
ここまでの話を踏まえて、どういった条件が揃えばYouTubeチャンネルに取り組むべきか、例をあげて説明します。
条件①コンテンツを持っている企業
コンテンツを持っている企業は動画化することで初期の制作スピードを速められます。ゼロから企画出しが少なくて済む、という利点があるからです。
当てはまるケースが、SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」を運営するスマートキャンプ株式会社の「BOXIL CHANNEL」です。
同社はもともと自社メディアの「BOXIL Magazine」でSEOに強い記事コンテンツを多く保有しています。YouTubeチャンネルでも記事コンテンツを動画化し、「SaaSとは」や「経費精算システム」「電子契約システム」などのSaaS関連のキーワードでYouTube内検索の上位に表示され、チャンネル登録者は2022年11月時点で1万人を超えています。
関連記事:BOXIL CHANNELに聞く「BtoB企業のYouTube」立ち上げの軌跡
条件②顕在ニーズを持つ顧客が少ないビジネス
前項とは真逆のケースですが、「まだ一般化していない新しい概念のサービス」や「明確なビッグワードがなく、検索だけでは大きな集客が見込めない業種」では、情報伝達量が多い動画によってユーザーに知らない概念やサービスを伝えられます。
当てはまるケースが、越境EC・海外WEBマーケティングを専門にしている世界へボカン株式会社のYouTubeチャンネルです。2022年11月時点で登録者は8,000人以上、動画本数は270本以上になっています。
徳田代表に話を聞くと、ターゲットに深く刺さるコンテンツを配信し続けることで、以下のような効果を生んでいるようです。
定量成果
・動画経由でセミナーの登壇依頼:40~50件/年
・月の発生リード数:~15件/月
・月間2万再生、1500時間の顧客接点
定性成果
・他のチャンネルからのYouTubeコラボ依頼
・書籍出版
・メディアからの取材依頼
・見込み顧客からの認知度向上
・中途社員の採用
・社員教育のコンテンツとして利用
BtoB企業がYouTubeの価値を測定する際のポイント
YouTubeチャンネルは法人向けのマネタイズ機能が充実していないため、チャンネル運営だけで売上を立てる、収益を上げるといった使い方は向いていません。
そこで、「チャンネルを運営することで、複数の効果が生まれる」という考え方で、総合的に生み出した価値で評価しましょう。
複数の効果と測定方法の例
・概要欄に設置したリンクからの送客とコンバージョン件数(URLにパラメータを付与してGoogle Analyticsで測定)
・動画を観た視聴者からの問い合わせ(アンケートやフォームなどで聴取)
・顧客との接触機会の量(YouTubeアナリティクスで再生回数、視聴時間、視聴維持率
・コンテンツの露出機会(主要キーワードでのYouTube内検索順位や他サイトでの転載回数をカウント)
・Twitterなどでの動画のシェア数(Social InsightなどのSNS分析ツールで測定)
・採用募集時のファーストタッチ(アンケートなどで聴取)
・メルマガやオウンドメディアのコンテンツとして活用
・社内オンボーディングの教育コンテンツとして活用
まとめ
BtoB企業のYouTube運営に関する情報は現時点(2022年11月)では少なく、成功している事例を目にする機会も少ないです。
YouTube運営の意思決定に迷っている方にこの記事が役に立てば幸いです。
今後は「実践編」として動画の企画方法や、他社の事例取材などをリリースしていく予定です。才流でも「BtoB×YouTube最前線」と題したシリーズ記事を公開していますのでぜひご覧ください。
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※関連記事:コンテンツマーケティングはYouTubeへ? データが示す動画の可能性
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監修
Twitter:@yukimeru0305
YouTube:越境EC・海外WEBマーケティング_世界へボカン
「日本の魅力を世界へ届ける」というミッションのもと、日本企業の海外マーケテイングを15年に渡って支援する。越境ECで売上34億円→800億円、ゼロから年商1億越えの越境EC事業の支援をするなど、数多くの実績を残す。YouTube海外Webマーケティングチャンネルで年間100本動画を配信する他、JETROにて海外Webマーケティングの講師、中小機構アドバイザーも務める。著書「はじめての越境EC・海外Webマーケティング(WAVE出版)」