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インソース大解剖。月200本のデジタルコンテンツ制作、年5,000件の問い合わせ獲得の仕組みの裏側とは

BtoBマーケティング
サイル学院中等部・高等部 学院長(株式会社サイルビジネス学院 代表取締役社長)
松下 雅征

「1つひとつの質にこだわりすぎるよりも、とにかく数を打つことが重要だと思います。目標としては月に200ページ公開を数値目標として掲げています」

こう語るのは、企業向け研修やコンサルティングを展開する株式会社インソース 執行役員の帰山 智幸 氏です。同社はIR資料に掲載するKPIとしてWebページ数を掲げ、月に200本もの質の高いコンテンツを公開しつづけています。結果、1日20~30件、年間約5,000件の問い合わせを獲得しているようです。

デジタルコンテンツを活用した問い合わせ獲得は、大きなコストをかけずに始められるマーケティング施策としてニーズが高まっています。一方、いざデジタルコンテンツ制作に着手したものの、思うような成果が出ないというご相談も増えています。

  • コンテンツの質を担保できない
  • 人材不足でコンテンツを量産できない
  • コンテンツを作れる人材が育たないetc.

どうすれば質の高いコンテンツを量産し、顧客の心を動かすことができるのでしょうか。

デジタルコンテンツへの考え方や組織体制などについて、株式会社インソース 執行役員の帰山氏とメディア事業部 部長の北澤 紀大 氏に話をうかがいました。

画像【右】帰山 智幸 氏
株式会社インソース 執行役員 営業統括室 副室長 兼 メディア事業部 管掌
画像【左】北澤 紀大 氏
株式会社インソース メディア事業部 部長

株式会社インソース 
“あらゆる人が「働く楽しさ・喜び」を実感できる社会をつくる”を理念として掲げ、講師派遣型研修、公開講座、e-ラーニング事業などを提供する企業。2016年に東証マザーズに上場、2017年に東証一部に市場変更。IR資料にWebページ数のKPIを公開するなど、全社をあげたデジタルコンテンツへの取り組みを行っている。

目次

【背景と現状】なぜ、インソースはデジタルコンテンツへ投資するのか

「情報資産の価値」に注目。Amazonのロングテールを参考に

ーーまず、デジタルコンテンツに注力しはじめた背景についてお聞かせください。

帰山  智幸 氏(以下、敬称略) われわれインソースは、2003年1月にコンサルティング業からスタートし、その後、研修事業を軸に成長してきた会社です。そして創業当初から、デジタルコンテンツに注力してきました。

代表の舟橋は、大学時代に読んだ『商業論』がきっかけで、「情報資産の価値」に注目していたそうです。情報流、金融流、物流といったさまざまな流れのなかで、情報流だけはなくならない。情報はストックでき、積みあがっていくと。社内ではよく、Amazonのロングテール(※)の考え方を参考にしています。

※ロングテール:ECサイトなどで、ヒット商品だけに頼らず、販売機会の少ない商品群の売上を積み上げていくことで、全体の売上を伸ばしていく戦略のこと

ですから、かなり早い段階からデジタルコンテンツの作成に取り組み、今とまったく同じWebマーケティングに着手していました。

これまでは売上や従業員数なども含めて、3年間で約2倍、年率平均でいうと127%のペースで成長をしてきました。Webマーケティングの実績でいうと、PVは月間100万で、研修ページだけでみると約40万。そこから1日20~30件、年間約5,000件のお問い合わせをいただいています。

また、専属のインサイドセールスは置いていませんが、発生したお問い合わせは、具体的な案件につながるかどうかをお問い合せ窓口担当者が判断し、営業にパスしています。

陣形は柔軟に。時流に合わせて人員配置を変える

ーーWebマーケティングの立ち上げ当初は、世に出回っているノウハウもまだ少ない時期だった思います。どのように進めてきたのでしょうか。

当時は本当に手探りでしたし、今でも手探りなんですよ(笑)。当社ではOODAループ(※)という組織経営のモデルを採用しているので、走りながら考えるというスタイルですね。

※OODAループ(ウーダループ):Observe(観察)、Orient(方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字をとったビジネスメソッド。変化に柔軟に対応し、現場で素早く意思決定をしていくことでスピードを上げ、成果が出るまでループを回し続けることで競合優位性を持つ。

人員配置も時流に合わせて変えてきました。たとえば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が深刻化してきた2020年3月の1週目くらいには、社内の有志を集めてオンライン営業部が立ち上がりました。

彼らは「研修のオンライン化」というミッションを達成し、6月2週目に解散して、それぞれの部署に戻りました。同じように、Webマーケティングのクリエイターが足りなければ、他部署の人間に異動・兼務してもらってWebマーケティング業務を担当するといったケースはよくあります。

戦国時代の戦争で例えるならば、右軍が攻め込まれていたら中央軍や左軍から援軍を出すイメージです。状況によって陣形を変えることで予想外の状況にも対応しやすくなります。

サイト作りは、業界横断の視野とBtoBのロジックとのかけ算

ーーAmazonの考え方のほかに、サイト作りで参考にしている会社やページなどはありますか。

帰山 競合の研修会社や教育、コンサルティング業界はあまり参考にしていないですね。既視感のあるサイトは嫌だと、代表の舟橋も言っています。

参考にしている会社は、上新電機さんですね。あとは、Webページのカラー見本はエルメスさんを参考にしていました。

情報量が多く、うるさいと感じる方もいるかもしれないWebページにも実はロジックがあって。デパートのバンドワゴン効果(※)を狙っています。閑散としたところでは、購買意欲は高まらないので。

※バンドワゴン効果:ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果。他人の消費量が多ければ多いほど、自分がその財を消費することの効用が高まる

北澤  紀大 氏(以下、敬称略) 公開講座のお申し込みページはANAのページ、Q&Aは無印良品。顧客目線でのわかりやすさで参考サイトを選んでいます。ただ、BtoCはどうしてもイメージ訴求になってしまうため、そこにBtoBのロジックをプラスしてチューニングしています。

稟議を通すために必要なのは、ロジックです。なので、文字量は意識していますね。それぞれのいい部分を吸収しながら、独自の実績を作っていくという考えです。

【制作・運用】インソースがコンテンツを生み出し続けられる仕組みとは

コンテンツを評価するのは顧客。だから、数を打つ

ーー貴社の中では、「いいコンテンツ」とは、どのような定義ですか。

帰山 顧客から見て、わかりやすくて面白い。これに尽きると思います。

決して専門家を喜ばせるコンテンツは狙っていません。音楽で例えるなら、芸術性が高いクラシックではなく、マジョリティから支持されるオリコン1位のポップスです。そこに向けてのチューニングを意識しています。

どんなに時間をかけても、何が当たるかはわからないし、予想外のコンテンツがバズる場合もありますよね。ですから、1つひとつの質にこだわりすぎるよりも、とにかく数を打つことが重要だと思います。ノルマはありませんが、月に200ページ公開を数値目標として掲げています。

北澤 最近の現場では、「営業がオンライン商談で使える」「新人が勉強できる」といったコンテンツを考えています。当社には営業が150人以上在籍していて、マーケティング部門のメンバーより圧倒的に多いし、顧客と強いコネクションが取れる。営業が使えるものは、顧客にも伝わりますので、そこを狙っています。

顧客ニーズをつかむ努力「問い合わせ内容はサマリーにして全社員にメールで共有」

ーー新しいコンテンツを生み出す際、顧客のニーズはどのように汲み取っていますか。

帰山 新聞やWeb関係の記事、Googleトレンドなどはよくチェックしていて、気になったキーワードがあれば検索上位の獲得を狙いにいきます。あとはやはり、営業の現場の声や顧客からの問い合わせですね。

問い合わせ内容は、サマリーになって毎日全社員にメールで流れてくるんです。全社員が問い合わせ内容を把握できる体制のため、最近のニーズが感覚的にわかるようになります。

どんなキーワードがいいのか、どんな新しい研修があるといいのか。みんなが考えますし、コンテンツに対して当事者意識を持てるんだと思います。

スピード感の鍵は、多能工化にある

ーーコンテンツ作りにスピード感を持って取り組むために、どのような工夫をされていますか。

帰山 多能工化している、マルチスキルこそ、スピード感を出せる一番の要因だと思います。ディレクターでデザインをする人もいれば、簡単なコーディングなら自分でできる人もいる。自分でできる範囲が広いということは、ボトルネックがそれだけ少なくなりますね。

北澤 個人のできる仕事の幅を増やし、どんどん自分で仕事をつくる。個人の仕事領域が増えて行けば、必然的にスピードも上がってくるし、質も上がってくるんだと思います。

帰山 あとは決裁ルートが少ないことも要因のひとつです。

Webなので、もし間違っていたらすぐに修正できますし、アップされたコンテンツは社員みんなが見るので、いろいろなところからツッコミがくるんですよ。それをもとにまた修正しています。「数」と「共有」は、当社の大きなカルチャーだと思いますね。

コンテンツ作りは1人でやらない。会社全体でコミットする

ーーコンテンツを生み出しつづけるために、もっとも重要なことは何だと思いますか。

帰山 クオリティに対してあまり厳しくしすぎないことだと思います。クオリティを求めすぎると、アウトプットを生み出し続けるのが難しくなってきます。

それに、経験豊富なライターが書いた記事よりも若手が書いた素人っぽい記事がヒットすることも多々あります。見る人によってコンテンツの評価は変わるということを念頭において、チェック項目を増やしすぎないことが大事です。

また、結果というのは、その時々の環境に左右されるのでコントロールできないが、プロセスはコントロールできます。だから、しっかりとプロセスを踏もうと言っています。

北澤 以前は、代表が大号令をかけて、全社で「1人1つ原稿を書く時間」を設けていました。みんなでセールスメールを書くとか、メールの冒頭挨拶文を書くとか。「挨拶文オリンピック」というのをよくやっていました。

研修コンテンツを見て、そこにまだないものが発見されれば、一覧化します。上場後は、KPIにWebページ数を掲げ、会社としてコミットする姿勢を打ち出しています。

引用: 株式会社インソース 2020年9月期 第3四半期決算説明資料

帰山 だからこそ、1人でやろうとは言わないんですよね。目標に到達できなそうだと判断すれば、必要に応じてそこに人を投入する。組織を柔軟に動かすことが、すごく大事ですね。柔軟な組織力こそ、創業以来ずっと一定の成長を続けてこられた大きな理由の一つだと思います。

【評価】インソースが実際に行う、公開後のコンテンツで見るべきポイント

全体評価が大切。1つひとつのページ評価はあまり気にしない

ーーページに対する評価は、どのように行っているのでしょうか。

帰山 1つひとつのページは詳細に評価せず、トータルで成果が上がればいいと考えています。これもロングテールの考え方ですね。

逆にクオリティにこだわりすぎてしまうと、制作のスピードが落ちてしまい、数が打てなくなってしまいます。当社にはコンテンツ作りのスーパースターはいませんが、誰でもお客さんと接したことがあるし、誰でもコンテンツを作れる仕組みがある。

打率4割の選手が100打席しか立てないとしたら、ヒットは40本です。でも打率2割5分の選手でも、200打席立てば50本ヒットが打てる。だから2割5分の人が2人いるほうが、組織として強いと思うんです。

企業経営では最終的に打率よりも売上額や利益額が評価されるので、50本打てるほうがいいし、そのほうがスーパースターを生み出すよりも簡単です。社員全員がコンテンツ作りに参加して、結果として大きくなるという考えでやっています。

PVは重視しない。顧客の声や動きを注視する

ーーいろいろなデータが取れると思いますが、見るべきポイントはどこでしょうか。

北澤 「サイト内検索ワード」は、よく見ています。当社のページに入り、当社の研修に興味がある人が、どういうワードでサイト内検索しているのか。「当社ではまだ用意できていなかったけど、こういうワードで検索しようとして来てくれたんだな」とわかるので、コンテンツを作る際の参考になります。

あとは、問い合わせをしてきてくれた方がどういう遷移をしているのか、サイト内で迷っていないかを見ていますね。サイト訪問から問い合わせに至るまでの具体的な成功パターンを蓄積していくことが狙いです。

それ以外には、新しく作ったページやその時々の注力したいページは、個別に分析しています。

帰山 その時々の状況によって、リードジェネレーション重視なのか、リードナーチャリング重視なのかも違うので、それによって見るポイントも変わります。基本的なところでは、前年比でIRに出している、セッション数とページ制作数のKPIは見ていますね。逆にPVはそれほど重視していないです。

とにかく数を打つことと、あとはコンテンツからきちんと相互リンクを貼っているかですね。他のページに流れるように作っているかとか。ここは代表もかなりチェックしていて、「このページ、リンクあってもいいんじゃないか」とか、そういう突っ込みが入ることも多いです。

多方面からのフィードバックでコンテンツを磨き、多重活用を徹底する

ーー作ったコンテンツは、その後どのように運用していますか。

帰山 まず公開したら全社に共有されるので、いろいろな人からフィードバックを受け、調整します。SEO記事だったら、公開後2〜3週間は反応を見ながら、1か月くらいで上位を獲れるようにチューニングしていきますね。

結局、自分たちがいいと思っているだけではダメで、決めるのはまわりの人や顧客からの評価です。なので、とにかくたくさん作って、晒して、評価してもらう。もしヒットしたらブラッシュアップし、それをさらに伸ばしていけばいい。そのやり方は綿密に計画を立てて進むよりも、より遠くの最終到達点まで速く行けると思いますね。

また、研修コンテンツを作ったら、Webページも作りますし、それをTwitterやメール、パンフレットなど、横展開して使い倒します。逆に複数の効用が発揮されない施策、たとえばリスティング広告のように流れていってしまうフロー型の施策は、創業以来あまりやったことがありません。

【役割分担】コンテンツの量産を可能にしたインソースのチーム体制とは

分業はしない。マルチスキルのデジタルマーケター

ーーコンテンツ作りに関わるチームの体制について教えてください。

帰山 Webページ制作に関わる人としては、ディレクター、デザイナー、コーダー、ライターがいます。職種としては「デジタルマーケター」と呼んでいて、30名弱のチームです。

北澤 一般的な「デジタルマーケター」と呼ばれる人たちとは、ちょっと違いますね。はっきりとした分業はないので、先ほども言ったように、マルチスキルを持った人が、自分のできることを自分でやるというスタイルです。ディレクターでデザインもする人もいれば、ライティングも自分でする人もいます。

この人数で月に200本というと、かなり多いように聞こえると思いますが、ゼロから作るページはそんなに多くはなく、パターンに流し込んでいくコンテンツが多いですね。

新しいコンテンツというと、1か月に1回くらいの頻度で出る新しいパッケージやサービスのページ。あとは狙っている流行りのワードの対策などです。

「みんなで生き残ることが大切」という価値観を共有する

ーー異動に柔軟という話がありましたが、KPIやチームが急に変わることで、個人の納得感はどのように担保しているのでしょうか。

帰山 みんながこの会社はそういうものだと理解しているんです。そうじゃないとOODAループは回らないですし、「会社の利益を上げるために」というゴールをみんなで共有している。

ですから、「この仕事しかできません」という人は、当社には合わないですよね。採用面談のときにも、異動が多いということは伝えています。

縦割りで、右軍は右軍、左軍は左軍。それぞれ頑張る、という組織は多いですし、それはそれで合理的な部分もありますが、当社は必ずしもそうじゃない。当初の役割に固執することなく、みんなで生き残ることを一番大切にしている。そういう価値観をみんなで共有しています。

評価すべきは「取り組み状況」と「アウトプットの量」。コンテンツあたりの受注は、1人の成果ではない

ーー人材の評価はどのようにしていらっしゃいますか。

帰山 結果を見て評価をするのではなく、基本的には取り組み状況とアウトプットの量で評価しています。Webコンテンツからどれだけ受注につながったかという結果は、1人の成果ではないですよね。メディア事業部として成果はどのくらいで、それに対し個人のアウトプット量がどうか、を重視しています。

【育成と採用】マルチスキル人材を増やすインソースならではの育成法

個人の振り返り機会を増やし、部署間の連携を強める

ーーマルチスキルを身につけるために、社内での育成はどのように工夫されていますか。

帰山 われわれは人材育成を扱っている会社で、ある意味、育成は得意分野です。OJTとフィードバック、振り返りの機会を増やし、経験学習サイクルの回転を速くすることが重要だと思っています。

代表は、社員の日報や週報をかなり詳細に見ているので、個別に直接連絡が来ることもあります。現場寄りの人間なので、土日に何百人の日報に目を通していることもありますね。

北澤 日報や週報からのフィードバックのほかに、1か月半〜2か月ごとの1on1やペアミーティングも行っています。もともと1on1は上司と部下でやっていたんですが、最近はメンバーが増えてきて、もっと横の繋がりを作っていくということで、メンバー同士のペアミーティングになっています。

マルチスキルで仕事をするためには、他の人の考えや業務を知ることが重要です。同じデザイナー同士でも、仕事の仕方が違いますし、それぞれの良い部分を吸収し合える。悩みを共有できる場にもなっていますね。

帰山 あとは、配置転換を育成目的で行うこともあります。Webコンテンツの担当からメール担当に変わってもらったり、Googleアナリティクス分析をやってもらったり。

今後リーダーを目指すならこれはできてほしいとか、これは身につけるべきという業務に役割を転換して学んでもらう。ある程度スキルが身につくと、違う部署に引き抜かれたりするので新たにやってきた人を同様に育てていくという感じです。

北澤 メディア事業部から営業部に行ったり、逆に営業部から最新の現場の声を持ってきてもらったり。

帰山 営業経験のある人材のほうがやっぱり現場を知っているし、具体的に顧客が何を求めているのかを理解しているので、メールとかWebコンテンツを作ってもらうと具体的で刺さる言葉が出てくるんです。

記事系のコンテンツって、つい「あるべき論」になってしまいがちじゃないですか。でも、現実とのすり合わせはすごく重要です。コンテンツとして専門性が高いかどうかはさておき、顧客にとって響くコンテンツができるんですよね。

要約力を測る採用と、顧客視点を鍛える育成

ーー採用ではどのようなポイントを見ていらっしゃいますか。

帰山 採用の際、全員が受ける文章のテストがあります。2,000字ぐらいのプレスリリースを、200字に要約するテストなんですが、ここでは要約力を見ています

要約で問われるスキルって、要点を絞る力と相手目線で伝えることなんです。たとえば、上司への報告が上手い人、下手な人っているんですけど、偏差値とかはあまり関係なくて。相手目線で上司が欲しい情報を想像して、それをうまく伝えることが大事ですよね。

ただやはり、当社は採用よりは、入社後の育成に力を入れていると思います。

北澤 ずっとずっと顧客のことを考えて、どうやったら課題解決できるかを考え続けるために、新入社員は大抵1回は営業に出るんですよ。管理部門系の人やシステムの人もです。

顧客のことを知って、現場で課題解決するためにコミュニケーションをとり、真剣に考える。現場を知ると、自分の持ち場に戻った後の感度が変わってきます。そうやって中長期的な視点で、問題解決に向き合う能力を伸ばしていきます。

帰山 やっぱり営業を経験しておくと、ユーザー目線を持てるんですよね。そこって結構教えるのが難しいので、自分で経験したほうが絶対早いですね。

【インソースの今後】SNSや動画活用で認知拡大を目指す

ピンチはリプレイスのチャンス。今だからこそ、挑み続ける

ーー今後注力していきたいことについて教えてください。

帰山 リアルな営業活動が制限されている中で、やはり現場の営業量は減っていると思います。ですから、SNSを活用し、認知を上げていきたいと思っています。

当社の公式Twitterも、これまではニュースだけをつぶやいていたんですが、コロナ禍を経て自我を持ち始めまして(笑)。あとは、公式noteも始めました。

今まではGoogleの検索の範囲でのコミュニケーションでしたが、少しずつこちらからもアプローチをしていく。SNS認知から検索エンジンにきてもらい、新しい顧客と出会えたらいいなと思っています。

■note   インソース メディア事業部
■Twitter   社員教育・研修のインソース【公式】
■facebook   社員教育・研修の株式会社インソース

ほかにも、新規プロジェクトが立ち上がり、7月末に動画百貨店というサイトをオープンしました。e-ラーニングのレンタルや、買い取りなどができるサイトで、会員の方はポイントも使えます。

百貨店って下火だと言われていますけど、当社がメインターゲットとする顧客の世代にはマッチしているんです。リリースから1か月ですが、多くの反響をいただいています。

この動画プロジェクトのチームメンバーも10名くらい。ここも、出たり入ったりで、柔軟にチームは変わっています。

いろいろなことに挑戦するのは、危機感が大きいからですね。5年ぐらい前までは、教育研修系でデジタルマーケティングに力を入れている企業はほぼわれわれしかいなかったのですが、今はどの会社も当たり前にやっている。先行者利益で、ある程度のドメインパワーはあると思いますが、油断しているとすぐに足元をすくわれてしまうと常に意識しています。

また、最近は世間がデジタルにばかりシフトしているので、あえて紙媒体も使うようにしています。無料会員の顧客に紙のDMをお送りしているんですが、メールと比較して30倍近くの反応がありますね。それもまたいつも同じだと飽きてしまうので、会員誌という形にしています。これは、ブランディングという側面が強いです。

不景気になると、研修費、広告費、交通費のいわゆる3Kはどうしても削られがちだと言われています。でもピンチの時こそ、リプレイスするチャンスだとも思っているんです。既存の研修会社から、当社に乗り換えてくれる絶好のチャンス。リーマンショックにはじまり、その後も幾度となく訪れた不況時にもリプレイスのニーズに乗って伸びてきました。

今後ますます、企業も人口も減っていきますよね。その中で、もっと多くの顧客に利用していただけるようになりたい。そのためにも、1人ひとりのメンバーが楽しく適材適所で働きながら、みんなが伸びていけるように頑張っていきたいと思います。

最近、弊社公開講座のコンセプトムービーを公開しており、ぜひ皆さまにご覧いただきたいと思っております。

■Insource 公開講座 コンセプトムービー『出会いと課題解決


さいごに

インタビューは以上です。

今回のインタビューを通じて、BtoBマーケティングを成功させるために大切だと感じたことを2つ記します。

  • 顧客解像度の高さ
  • 実行力の高さ

顧客解像度の高さは、「施策の成功確率」に大きく影響します。才流では、成功確率の高い施策を提案をするために、どんなクライアントとのプロジェクトでも顧客解像度を高める取り組みからはじめます。

インソースでは「全員に営業を経験させる」「問い合わせ内容はサマリーにして全社員にメールで共有する」「サイト内検索ワードをよく見る」などの顧客解像度を高める取り組みを徹底することで、施策の成功確率を高めていました。

実行力の高さは、「打ち手の数」に大きく影響します。才流がこれまで支援してきた顧客事例を見ると、BtoBマーケティングの成否を分ける大きな要因の一つは、実行力の高いチームづくりができているか否かです。

BtoBマーケティングにおいては結果として上手くいった施策はありますが、必ず上手くいく施策は存在しません。成功確率の高い施策をいかに多く打てるか、という「打ち手の数」が成功の鍵を握ります。

インソースでは「マルチスキルを持った人を育成する」「KPIにWebページ数を掲げ、会社としてコミットする」「取り組み状況とアウトプットの量を評価する」などの実行力を高める取り組みを徹底することで、打ち手の数を担保していました。

他社の成功施策を部分的に取り入れても上手くいかない場合があるのは、自社の顧客解像度が低かったり、実行力が低かったりすることがおもな要因でしょう。

インソースでは、顧客解像度と実行力を高める組織体制が、採用や育成から役割分担や評価制度まで一気通貫しています。インソースを創業した舟橋代表が情報資産の価値を信じ続け、圧倒的な顧客視点でコンテンツ作りをやりきると決めたからこそ、こうした組織体制を構築し、成果を出しつづけることができているのではないでしょうか。

これから新しい施策に取り組まれようとされている事業責任者の方、マーケティング担当者の方は「その施策は自社の顧客にあっているのか」「実行力の高いチームづくりができているか」などの観点から見直してみると、本当に取り組むべきことが見えてくるかもしれません。今回のインタビュー記事が、少しでもBtoBマーケティングに取り組む方々の参考になると嬉しいです。

(写真:矢野 拓実、取材・文:安住 久美子、編集:松下 雅征,中島 孝輔

また、才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、マーケティング戦略立案から施策実行まで支援しています。マーケティング活動で課題がある方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら

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