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オンライン営業・オンライン商談大全。導入のコツからツール選定まで

こんにちは。才流の井出@takahisa_ideです。

新型コロナウイルスの流行を機に当社でも「営業のオンライン化」に関する多くのご相談をいただいております。

そこで今回の「SAIRU NOTE」では、当社の営業活動および過去100社以上のプロジェクトから蓄積したオンライン営業の導入のコツを「オンライン営業・オンライン商談大全」と題してご紹介します。

営業活動の生産性向上支援

オンライン営業のコンサルティング・内製化支援​​​​​​​

※2万5000字近い文字数ですが、最後までご覧いただけますと幸いです

※才流ではオンライン営業導入時のチェックリストも公開しています

目次[非表示]

  1. 1.営業に関するトレンドを理解する
    1. 1.1.日本の非訪問型営業の導入率は低い
    2. 1.2.顧客が訪問型営業を望む理由は「気持ち」かもしれない
    3. 1.3.BtoB購買はオンラインシフトしている
    4. 1.4.いわゆる「営業マン」は減少していく
  2. 2.訪問営業との違いを理解する
    1. 2.1.非言語コミュニケーションの減退
      1. 2.1.1.非言語コミュニケーションの減退とは
      2. 2.1.2.非言語コミュニケーションの減退を埋めるポイント
    2. 2.2.商談体験の減退
      1. 2.2.1.商談体験の減退とは
    3. 2.3.オンライン営業の意義
      1. 2.3.1.顧客にとっての意義
      2. 2.3.2.営業にとっての意義
  3. 3.オンライン営業を最適化する
    1. 3.1.オンライン営業導入の目的を明確にする
      1. 3.1.1.オンライン営業の理想を描く
      2. 3.1.2.オンライン営業の理想を描くためのヒント
    2. 3.2.オンライン営業体制の構築
      1. 3.2.1.専任か兼任か
      2. 3.2.2.トップのコミットメント
      3. 3.2.3.プロジェクトリーダーの配置
    3. 3.3.運用設計
      1. 3.3.1.KGI・KPIの設定
      2. 3.3.2.マニュアル作成
      3. 3.3.3.トークスクリプト作成
        1. 3.3.3.1.商談方法の説明
      4. 3.3.4.営業資料・営業コンテンツの作成
        1. 3.3.4.1.商談用動画
      5. 3.3.5.事前研修
      6. 3.3.6.情報提供用URLのリスト化
      7. 3.3.7.名刺交換の代替手段
      8. 3.3.8.商談後アンケートの運用設計
      9. 3.3.9.録音・録画の活用
  4. 4.営業担当者のためのオンラインで売れるTips
    1. 4.1.顧客認識確認の徹底
    2. 4.2.参加者情報確認の徹底
    3. 4.3.顧客のインフラの変化にアジャストする
    4. 4.4.購買担当者とのオンライン雑談
    5. 4.5.ビジュアルを活用し、口頭説明を減らす
    6. 4.6.売れている営業担当者のシャドーイング
    7. 4.7.「瞬発力」よりも「寄り添う力」
  5. 5.オンライン営業ツールと周辺機器の整備
    1. 5.1.オンライン営業ツールの選定
      1. 5.1.1.選定のポイント
      2. 5.1.2.主要なオンライン営業ツール
    2. 5.2.周辺機器等の準備
      1. 5.2.1.ネットワーク環境
      2. 5.2.2.PC・タブレット・スマホ
      3. 5.2.3.カメラ
      4. 5.2.4.照明
      5. 5.2.5.ヘッドセット
      6. 5.2.6.デュアルディスプレイ
      7. 5.2.7.バックペーパー・バックスクリーン
  6. 6.参考文献・参考URL

営業に関するトレンドを理解する

日本の非訪問型営業の導入率は低い

国内におけるオンライン営業への関心は確実に高まっていますが、電話営業を含む非訪問型営業の導入率は欧米企業と比べて大きく遅れていると指摘されています。2019年12月にHubSpot Japanが発表した『日本の営業に関する意識・実態調査』によると、非訪問型営業の導入率は米47.2%、欧州37.1%に対し、日本は11.6%です。この差が営業組織の生産性の差を生んでいることは想像に難くありません。

また、同調査は日本では創業年数が長い企業ほど非訪問型営業の導入率が低いほか、「インサイドセールス」という言葉を知っている経営者は全体の35.6%に留まったと報告しています。古くからある業界を中心に非訪問型営業の導入による生産性改善の余地があると予測されます。

参照元:HubSpot Japan『日本の営業に関する意識・実態調査』

顧客が訪問型営業を望む理由は「気持ち」かもしれない

非訪問型営業導入の最大の障壁は、顧客の訪問型営業への要望です。前述したHubSpot Japanの調査では全体の60.7%が「営業担当者の訪問を希望する」と回答しています。この要望を無視してオンライン営業などの非訪問型営業を推進するわけにはいきません。まずはこの要望の理由を理解することから始める必要があります。

同調査はその理由について以下のように指摘しています。

営業担当者の訪問を希望する人(全体の60.7%)にその理由を質問したところ、1位「顔を見ずの商談には誠意を感じない(35%)」、2位「営業担当者の顔を見ると安心感がある(24.8%)」となり、明確な理由や合理性があるわけではなく、気持ちの面での理由が大きいことが明らかになりました。

つまり、非訪問型営業を推進する際には「顧客の気持ち面への配慮」が重要なポイントとなるということです。

同アンケートで「ビデオ会議や電話で説明を受けるには複雑すぎる商材だと感じる」と回答した人の割合は13.2%に留まり、非対面での情報伝達自体に難しさを感じる購買担当者は多くありませんでした。顧客の気持ちを理解し、行き届いた配慮さえできれば、非訪問型営業は思ったよりスムーズに浸透するかもしれません。

尚、同調査の対象者は「ビジネスシーンで商品やサービスの買い手となる経営者・役員・会社員」の310名です。n数が多くなく、業界や企業規模による偏りも予測されるため、実態把握には自社ビジネスのペルソナとなる顧客に実際にインタビューしてみることをおすすめします。

参照元:HubSpot Japan『日本の営業に関する意識・実態調査』

BtoB購買はオンラインシフトしている

e‐コマースの登場により日用品などBtoCの購買活動は大きくオンラインシフトしました。BtoB購買においても同様の動きが見られます。企業の購買担当者の多くは、オンライン上で購買候補を見つけて比較するようになりました。

その傾向を明示するのが、米Forrester社が2019年に発表したレポート『Digital Ups The Stakes For B2B Sales Pros』です。本レポートによると、2015年にはBtoB購買担当者の53%が「営業担当者と対話するよりも自分でオンラインで情報を収集する方が優れている」と回答しましたが、2018年の調査ではその割合は61%に上昇しています。同様に、2015年に「営業担当者とのやりとりを第一の情報収集源としたくない」と回答したBtoB購買担当者の割合は59%でしたが、2018年の調査では67%に上昇しました。

米Accenture社が2014年に行った調査『2014 State of B2B Procurement Study』の結果も同様の傾向を示します。調査・選定の段階で「営業担当者と直接会って相談したい」と考えるBtoB購買担当者はわずか12.4%でした。77%のBtoB購買担当者は営業担当者とは必要なときに電話やチャットで連絡が取れれば十分だと考えており、残りの10.5%は営業担当者は不要と答えています。

これらの調査はアメリカにおけるものですが、デジタルネイティブ世代のBtoB購買担当者が増えるに連れて、日本でもこの傾向は強まっていくことでしょう。この傾向にアジャストするためにも営業のオンライン化は各社にとって避けられない取り組みです。

参照元:Forrester Research, Digital Ups The Stakes For B2B Sales Pros


参照元:Accenture, 2014 State of B2B Procurement Study

いわゆる「営業マン」は減少していく

米Forrester社が2015年に発表した調査レポート『Death Of A (B2B) Salesman』は、2020年には2012年比で100万人のBtoB営業担当者が職を失うと指摘していました。実際に100万人減ったかどうかはまだ明らかになっていませんが、BtoB購買のオンラインシフトを背景にいわゆる「営業マン」が減少していく傾向を示しています。

日本国内では「営業マン」が減少しているのでしょうか。総務省統計局が発表している労働力調査によれば、2005年に904万人いた国内の販売従事者人口は2015年には856万人に減少。10年間でおよそ50万人減っています。

生産年齢人口減少の影響を指摘する声もありますが、この間実際の就業希望者数をあらわす労働力人口は増加傾向にあることから、10年で50万人もの販売従事者が減少した背景にはオンライン化を中心とした販売の構造的変化があると見るのが妥当です。また、この販売従事者減少の主要因はBtoC販売員の減少だと予測されますが、BtoB営業担当者についても今後こうした減少傾向が進んでいくものと考えられます。

今回の新型コロナウイルス流行によるテレワーク化をきっかけに、接待やゴルフ、対面でのハイタッチな人間関係を構築して受注を獲得していた営業担当者よりも、提案書や動画などのコンテンツを作れる営業担当者や見込み客案件創出するマーケターに組織の比重が移るのではないか、という声もあります。BtoBの購買担当者がオンラインでの購入を望んでいる以上、この流れは避けられないでしょう。

参照元:Forrester Research, Death Of A (B2B) Salesman

訪問営業との違いを理解する

非言語コミュニケーションの減退

非言語コミュニケーションの減退とは

非言語コミュニケーション研究の第一人者とされるレイ・L・バードウィステルは、人間のコミュニケーションの65%は非言語的なものであると指摘しました(厳密には二者間の対話を想定した指摘)。オンライン営業ではこのコミュニケーションの非言語的要素が限定的にしか伝わらないために訪問営業と比べて意思疎通の難しさが増します。こうした傾向を当社では「非言語コミュニケーションの減退」と呼んでおり、オンライン営業と訪問営業の重要な違いとして認識しています。

では、具体的に非言語コミュニケーションとはどのようなものなのでしょうか。コミュニケーション研究者のマジョリー・F・ヴァーガスは著書『非言語コミュニケーション』においてコミュニケーションの非言語的要素を以下9種に分類しています。

  1. 人体 (身体的特徴の中でなんらかのメッセージを表すもの)

  2. 動作 (姿勢や動きで表現されるもの)

  3. 目 (アイコンタクトと目つき)

  4. 周辺言語 (パラランゲージ/話し言葉に付随する音声上の性状)

  5. 沈黙

  6. 身体接触 (相手の身体に接触すること、またはその代替行為による表現)

  7. 対人的空間 (コミュニケーションのために人間が利用する空間)

  8. 時間 (文化形態と生理学の2つの次元での時間)

  9. 色彩

オンライン営業と訪問営業とのコミュニケーション上の違いとして、この9要素の多くが減退する点を認識することが重要です。

オンライン営業については「慣れればオンラインで十分」「訪問営業は時間のムダ」といった声も聞きますが、円滑な商談の進行には非言語コミュニケーションの減退を埋める工夫と努力が必要となります。

非言語コミュニケーションの減退を埋めるポイント

メッセージのわかりやすさ

非言語コミュニケーションが減退を避けられない以上、言語コミュニケーションを普段以上に研ぎ澄ます必要があります。何を伝えたいのかをよく整理し、話す内容や順序、メインメッセージのわかりやすさを追求しておくことの重要度が増します。

言葉遣い

「人は見た目が9割」と言われるように、多くの営業担当者が衣服の着こなし、清潔感、姿勢、表情、目線、体型などの身体的特徴から連想されるイメージを利用して顧客からの信用を得ています。しかし、オンライン営業においてはこうした非言語的要素が十分に活用できません。オンライン上で顧客から「しっかりした人だな」という印象を得るためには、言葉遣いの重要性が増します。

パラランゲージ

先述したコミュニケーションの非言語的要素のうち、非対面であっても伝達しやすいのが声の大きさ・トーン・テンポなどの音声的性質です。これらはコミュニケーション研究の世界で「パラランゲージ」と呼ばれるもので、笑い声や相槌などを含むとされています。

オンライン営業では顧客は主に説明資料やデモ画面を注視しており、小さな画面に表示される営業マンの表情やボディランゲージは十分に伝達されません。この減退をパラランゲージで補えるよう、声の大きさ、トーンの上げ下げ、テンポの良さについていつも以上に工夫や訓練が必要になります。

相互理解の確認

対面でのコミュニケーションにおいて「お互いに話の内容を理解しているか」を判断する際には、対話相手の発言だけではなく表情や頷きなど非言語的要素を判断材料にしています。オンライン営業ではこうした要素の読み取りが難しくなるため「相手が自分の発言内容を理解しているか」「自分が相手の発言を正しく理解しているか」を都度口頭で確認することが重要です。

「ここまでで何かご不明点がございますでしょうか」「おっしゃられたのは○○という理解で相違ないでしょうか」といったコミュニケーションは対面でも行われますが、オンラインではよりも意識的に行うことをおすすめします。

信用を高めるツール

非言語的要素を十分に活用できない状況下で顧客の信用を獲得するには、企業としての実績や評判、質の高いコンテンツ、営業担当者の経歴等を利用することがより重要になります。営業個人の人柄などが通用しにくい分、十分なアピールができるPRツールを準備すべきです。

商談体験の減退

商談体験の減退とは

オンライン営業では、顧客が不便や抵抗を感じやすい要素があり、それらが商談体験を減退させていると考えられます。以下に挙げる顧客の商談体験の減退要素を理解し、それらに注意を払う必要があります。

通信障害

  • 音声のタイムラグや不通

  • 動画のタイムラグや不通

  • ノイズの発生

  • 画質の低下

心理的抵抗感

  • 顔が映ることへの抵抗感

  • 録音・録画されることへの抵抗感

ツール利用準備の手間

  • 利用方法の理解

  • アプリのインストール

  • アカウント作成

  • 推奨ブラウザのインストール

  • カメラ・マイクの設定

設備上のハードル

  • PCのOSがツール非推奨

  • カメラ・マイク搭載のPCがない

セキュリティ上のハードル

  • リスク管理部門によるツールのセキュリティチェック

  • 録音・録画を許可するかどうかの企業としてのセキュリティ方針確認

雑音ストレス

  • 営業側オフィスの雑音

  • 営業のキータッチ音

  • フィラー(「えー」「あのー」などの発言の合間を埋める発声)を不快に感じやすいこと

製品実物確認のハードル

  • 物理的な製品の場合、実物を確認しながら商談できないこと

名刺情報交換の不便さ

  • 物理的な名刺情報交換ができないこと

  • 営業担当者側にデジタル名刺の用意がない場合、部署・氏名・連絡先等を記録しておく必要があること

  • 自身の肩書き、氏名およびその漢字、連絡先等もいちいち口頭で伝えなければならないケースがあること

商談体験の減退を埋めるポイント

安定した商談環境

どんなに良い商談をしても商談環境の不具合によって顧客に不快な思いをさせてしまう可能性があるのがオンライン営業の怖い点です。安定した通信、安全なセキュリティ、様々な環境下で利用できる汎用性、音声的なストレスが生じない通話等を実現するためのツール選定・環境整備を進めていくことが重要です。

利用ツールのわかりやすさ

オンライン営業を受ける顧客の中には、オンライン営業ツールの利用に難しさを感じたり、セキュリティリスクを気にするなどの抵抗感を持っている人物が少なからず存在します。利用方法を端的にわかりやすく説明することはもちろん、セキュリティ上の安全性、録音・録画の有無や利用目的、情報管理方針等を明確に説明できる状態にしておく必要があります。

オンラインならではの工夫と気遣い

オンライン営業ならではの行き届いた工夫や気遣いはアピールポイントにもなります。今後顧客はオンラインでの商談を様々な企業と行っていきます。ツール利用の案内が洗練されていること、高性能マイク導入により顧客に伝わる雑音が最小限に抑えられているなど、小さなポイントが他社商談との違いとして認識されるようになります。

また、お役立ち情報のURLを事前に用意しておき、オンライン営業ツールのチャット機能を用いて商談中に共有するなど、オンラインならではの商談体験を顧客に提供していく工夫も必要です。

オンライン商談での情報提供例。才流では予め用意した補足情報を商談中に共有し、フォローアップを行っています。

オンライン営業の意義

顧客にとっての意義

購買リードタイムの短縮

営業側の移動、顧客側の会議室調整等が不要になる分、商談を早期に実施できます。そのため、顧客にとっては情報収集〜選定までのリードタイムを短縮できるというメリットに繋がります。

在宅勤務への対応

新型コロナウイルスの感染流行により、在宅勤務をしている顧客が増えており、今後在宅勤務の一般化が予想されます。在宅勤務下の顧客にとっては、オンライン営業によって自宅で購買検討を進められること自体がメリットとなります。

商談依頼の気軽さ

購買側に立ったことがあれば「営業にわざわざ足を運んでもらうのであれば、本気で検討しなければならない」という気持ちを持った経験があるのではないでしょうか。オンライン営業ではそんな気持ちが弱まるので、顧客が気軽に情報収集を進められます。

「1. 営業に関するトレンドを理解する」の項目で参照した各種調査は、BtoB購買担当者の多くがオンライン検索の補足として商談を利用したいと考えている傾向を示しました。オンラインで気軽に商談できる環境は、近年のBtoB購買プロセスの要望に沿ったものと言えます。

営業にとっての意義

業務効率の改善

移動に奪われていた時間を受注に直結する活動(商談)に充てることができ、業務効率が改善されます。日本能率協会コンサルティング社は『営業マンの有効活動時間の拡大ポイントとは』という記事において、日本企業では営業職が実際に営業活動をしている時間は稼働時間の25~31%に過ぎず、アメリカ企業よりも10〜16%も低い水準であることを指摘しています。オンライン営業はこうした営業職の非効率を解消できる手段と言えます。

リードタイムの短縮

営業側の移動、顧客側の会議室調整等が不要になる分、商談を早期に実施できる点は営業にとってもメリットです。「鉄は熱いうちに打て」を実現して受注確度の向上が期待できます。また、商談開始〜受注までのリードタイム短縮に繋がり、リードさえ十分にあれば一定期間に扱える案件数の大幅増が期待できます。

コストの削減

営業の効率化による人件費削減のほか、交通費や資料印刷等のコスト削減にも大きなインパクトが期待できます。営業活動の在宅化を推進できれば、不動産コストの抑制にも繋がる可能性があります。

副次的な意義

コロナ禍の移動抑制によって営業のオンライン化がより一般化するのは間違いありません。こうした潮流の中で営業のオンライン化を進めないことは、企業評価のマイナスポイントとなり得ます。直近では採用対象となる求職者からの評価、中長期的にはオンライン購買を望む顧客からの評価に関わるため、オンライン営業の推進には企業評価を高める副次的な意義もあります。

オンライン営業を最適化する

オンライン営業導入の目的を明確にする

オンライン営業の理想を描く

新型コロナウイルスの流行をきっかけに各社がオンライン営業に本腰を入れ始めています。必要に迫られた動きかと思いますが、アフターコロナにおけるオンライン営業の理想型を定義できているでしょうか。

当社ではオンライン営業推進の真価はアフターコロナのタイミングで問われると考えています。「コロナ対策としてオンライン営業を推進し、窮地を凌ぐ」という企業と、「コロナをきっかけにオンライン営業を推進し、中長期的に営業の生産性を上げていく」という企業とでは数年後に大きな差が生まれるためです。

アフターコロナの状況においてオンライン営業を用いてどのような状態を実現したいのか。そもそも営業活動のオンライン化によって解決される課題は何なのか。それらを描いておくことが重要です。理想がなければ、ツール選び・人材育成・制度設計・顧客への対応方針などに一貫した軸を持てなくなり、ちぐはぐな体制が出来上がる恐れがあります。オンライン営業の理想型について組織で共通認識を持って取り組むことが重要です。

オンライン営業の理想を描くためのヒント

オンライン営業の理想を描くためには、以下の視点での検討が有効であると考えます。検討時の参考としていただければ幸いです。

オンライン化によって期待する効果の検討

  • オンライン化による売上増

  • オンライン化によるコスト減

  • オンライン化によって顧客貢献度を高められるポイント

  • オンライン化によって余ったリソースの活用

  • オンライン化による副次効果(自社に対する評価等への影響)

これまでの訪問営業の棚卸し

  • これまで訪問営業で行ってきた活動を目的別に分類

  • 分類した活動別の人的リソース投下割合の現状を算出

オンライン化の可能性評価

  • 上記で分類した活動のうち、今後オンライン化の可能性がある活動のリストアップ
  • 上記で分類した活動のうち、今後も訪問営業でなければならない活動のリストアップ
  • 以下スライドのように検討完了後にオンライン化前後の営業担当者の役割を比較できるアウトプットをイメージする

オンライン化の障害要素のリストアップと評価

  • オンライン化を推進する際に障害となる要素を以下の分類別にリストアップ

  • 社内の反発

  • 顧客の反発

  • インフラの不足

  • 予算の不足

  • 各障害要素について、解消の可否、どの程度の期間で解消し得るかを検討

オンライン化の目的を明確化する

  • 障害要素の評価を踏まえ、いつまでに、どの活動を、どの程度オンライン化するかを決定する

  • これまでの訪問営業の棚卸し結果を踏まえ、全体の営業活動の何割をオンライン化するのかを明確にする

  • これによってどのような効果を目指すかの明文化する

オンライン営業と訪問営業の位置付け

オンライン営業を推進する上でポイントになるのが、オンライン営業と訪問営業の位置付けです。

一言にオンライン営業と言っても、商材の性質や単価、受注リードタイム、顧客側の購買に関わる人数などによってその役割は大きく異なります。オンラインのみでの売り切りを目指す企業もあれば、リードを温めるフェーズまでをオンラインで営業し、本提案〜クロージングのフェーズは対面で営業することを適切とする企業もあります。

いずれにしても、営業プロセスを定義し、どのプロセスのオンライン化を目指すのかを決めることが第一歩と言えます。おそらく多くの企業では一律に決めることが難しく、最終的には「状況Aでは完全オンライン販売を目指すべき」「状況Bでは訪問営業を重視すべき」といった状況別の定義が必要になってくるかと思います。

この定義を行うには顧客属性・商材属性・営業状況という3領域それぞれでオンライン化を優先する条件を評価しなければなりません。この評価に際しては以下スライドを参考にしてください。

オンライン営業体制の構築

専任か兼任か

オンライン営業の推進体制を構築する際、専任部隊を作るのか、フィールドセールスの一手段としてオンライン営業を導入するのかを検討する必要があります。検討の軸となるのは、上述したオンライン営業と訪問営業の位置付けです。両営業機能の位置付けが以下を満たす場合には専任部隊を組成することが適切と言えます。

  • オンライン営業の対象について、顧客属性・商材属性・営業状況の基準で明確な線引きができる

  • オンライン営業の対象のボリュームが十分に見込める

  • オンライン営業フェーズと訪問営業フェーズとで担当者が替わっても大きな問題が生じない

トップのコミットメント

営業のオンライン化の取り組み初期では、思わぬ障害やクレーム、社内の諦めムードや反発が発生する傾向にあります。そうした場面で組織トップのコミットメントが重要です。現場に会社としてやり抜く重要性を示し、多少の障害発生で取り組み自体を止めさせないためには組織のトップがその意義を定義し、明確なメッセージを出すことが重要です。

プロジェクトリーダーの配置

専任部隊を組成する場合でも、フィールドセールス組織の一手段として組み込む場合でも、取り組みを先導するプロジェクトリーダーが必要です。その役割は、先に決めた取り組みの目的を明示し続け、取り組みをドライブさせることです。プロジェクトの進捗評価の役割も期待されます。

また、営業のオンライン化は営業部門で完結する取り組みではありません。ツールの導入や運用設計にIT部門の協力は欠かせませんし、新たにマーケティング部門との役割分担や連携方法を検討する必要もあります。顧客とこれまでの営業プロセスを理解しており、且つ、部門を横断した調整に適した人物を配置することが重要です。適した人材がいない場合には、部門間の意思形成を外部コンサルに先導してもらうのも一つの選択肢です。

運用設計

KGI・KPIの設定

運用設計を始める際にスタートラインとなるのがKGI・KPIの設定です。オンライン営業の目的を数値に落とし込み、いつでも振り返りができる状態を作っておきましょう。初めての試みの中で設定するKGI・KPIは仮説性が高いですが、その仮説検証によって適切な目標設定に徐々に近づいていくことができます。

受注額

過去の受注実績と全受注の何割程度をオンライン営業で獲得するのかを目標数値として設定する必要があります。取り組みのスタートにおけるKGI設定は仮説に基づく部分が大きい一方で、営業メンバーにとっては自身の評価指標であることに変わりありません。一定の納得度があるロジックを準備する必要があります。

商談数

商談数は営業のオンライン化によって大幅な増加が期待できるKPIです。リードや過去リストに余剰がある状態であれば、これまで移動に費やしていた時間を商談時間に充てられるためです。

基本的には訪問営業時の商談数を超えるKPIをセットし、どの程度の商談数増加を実現できるのかを検証していく必要があります。

移動削減による余剰時間を触れていなかった過去リストコールに充てるのであれば、「リード起点の商談数」「過去リスト起点の商談数」などとカテゴリごとのKPI設定を行うべきです。

遷移率

営業ステータスを次ステップに遷移させることができた比率(遷移率)も重要なKPIとなります。ヒアリング→本提案、本提案→受注といった各ステータス間の遷移率が訪問営業と比べて低くなってしまえば、商談数が増やせたとしてもその意義を半減させてしまいます。

少なくとも商談数増分による期待受注増を打ち消さない程度の遷移率を目標にしましょう。オンライン営業の明確なビハインドが見当たらなければ、訪問営業と同等の遷移率をKPIとして設定しても取り組みを開始してみても良いのではないでしょうか。

マニュアル作成

ツール利用方法

まずマニュアル化すべきはオンライン営業ツールの利用方法です。顧客が戸惑わないよう営業が詳しく機能を理解しておく必要があります。基本的な機能についてはツールベンダーから標準マニュアルをもらって転用すれば問題ありません。

FAQ

初期の運用で出てきた営業からの質問や不具合はFAQとして資産化していきましょう。多く発生する事象については、基本機能の説明に組み込んでいき、疑問や不具合を未然に防げるマニュアルにアップデートしていきます。

トークスクリプト作成

訪問営業であってもトークスクリプトを作成している組織は多いのではないでしょうか。実際の商談内容は対面でもオンラインでも根本は変わらないので、既存の営業スクリプトにオンライン特有の要素を付け足す微調整で済むかもしれません。

ただし、オンライン営業の場合、録音・録画データで第三者と振り返りができる点が大きく異なります。商談後の振り返りで営業メンバーのスキルを向上させるためにも、トークスクリプトを「あるべき姿」として定義しておくことをおすすめします。明確な基準があれば、振り返りの効用は高くなります。

オンライン営業への誘導

オンライン営業を開始する際の第一ハードルとして、顧客とオンラインで商談を行う合意を取り付ける必要があります。これまで訪問での商談がメインであった顧客は抵抗感を持つかもしれません。スムーズにオンラインに誘導するためのスクリプトをいくつか用意しておいたほうが良いでしょう。

例えば、ベルフェイスさんが「5秒で接続」と謳っているように接続が短時間で済むことを明示する、「訪問ですと再来週になりますが、PC画面を使えば今すぐご案内できます」といった顧客側の時間短縮メリットを伝えるなど、効果的なスクリプトを準備します。

  • 誘導トークの有効な切り口としては以下が挙げられます。

  • 商談機会の前倒し

  • 訪問営業前に事前商談をしておくことのメリット

  • 手軽で短時間で済むこと

  • 画面共有(資料・動画共有)によるわかりやすさ

  • 「画面越しのご挨拶」という建前

商談方法の説明

商談の合意ができたら商談方法を説明する必要があります。必要最小限の説明でわかりやすいトークスクリプトを作成しましょう。チェックポイントとして以下が挙げられます。

ツール説明は行わず、最小限の案内で開始

「商談方法の説明」というと、「弊社では〇〇というツールを利用しております。大手企業の利用する実績豊富なツールでして、便利な画面共有機能やファイル共有機能もございます」といったツール説明を積極的に行ってしまう人がいます。基本的にこうしたツール説明は顧客に求められた場合のみで良いでしょう。多くの顧客が望むのは「短時間でのスムーズな情報取得」です。

「メールでお送りするURLにアクセスしてください」「検索エンジンで○○と検索してアクセスしてください」といった最小限のアクセス方法を案内して商談を開始し、細かな機能は使用するタイミングで説明すれば問題ありません。

セキュリティ関連の疑問に備える

トークスクリプトには顧客からのセキュリティ関連の疑問にどう答えるかを明記すべきです。

オンライン営業では顧客の機密情報をやり取りする可能性があるため、ツールのセキュリティについて関心を持つ顧客も少なくありません。直近ではZoomの脆弱性が大きく報道されるなど、セキュリティへの関心はより高まっていく可能性があります。暗号化の方法やISOの取得等を根拠に、顧客が安心できる説明を用意することは重要です。

ただし、セキュリティに関してこちらから積極的に案内を行う必要はありません。セキュリティを気にかけない顧客が大半なので、スムーズな商談の進行を優先しましょう。

録音・録画の説明方針を決める

オンライン営業の録音・録画したデータを商談の振り返りや教育で利用する企業も多くあります。録音・録画については敢えて顧客に案内を行わない場合が多いかもしれませんが、顧客から質問されるケースもあります。そうした疑問に対する説明もトークスクリプト化しておくことが望ましいです。

ヒアリング

顧客を理解するために必要な質問をあらかじめ用意し、ヒアリングに漏れがないようにしましょう。顧客の回答内容にあわせて次に行うべき質問や説明は変わっていきますので、パターン別の質問を用意する必要があります。

簡単なWEBアンケートをあらかじめ作成しておき、URLを送って商談前やその場で答えてもらうこともできます。確認事項の数とバリエーションが少ない場合には検討してみてはいかがでしょうか。

才流で商談前に送るメールでのアンケート

サービス説明

サービス説明についてもパターン別のスクリプト作成が必要です。ヒアリング結果に応じて適切な説明内容と説明方法を定義しましょう。

オンライン営業では画面共有機能でスムーズに動画を流しやすい環境にあるので、定型的な説明は動画化してしまうのも一つの手段です。訪問営業と違って「目の前にいるのに動画で説明を流す」という違和感は小さくなります。営業担当者によって説明スキルに差が出ないので、顧客にとってのわかりやすさを標準化できます。

動画は業務効率改善・受注数アップに有効だと考え、当社では『Sales Movie Cloud』を提供しています。

サービス説明は事前に動画を閲覧してもらい、当日のオンライン商談は質疑応答を中心に行う、反転学習(※)のような営業手法も今後、主流になるかもしれません。

※反転学習:新たな学習内容を自宅でビデオ授業を視聴して予習し、教室では講義は行わず、授業の演習を通してインプットした知識をアウトプットする学習形態

クロージング

クロージングに関しても、受注確度に応じたスクリプトを準備しておきましょう。

オンライン営業特有の要素としてはクロージング訪問を提案する判断基準があります。「商談した相手以外に選定者が複数人いる」「提案額が大きい」など、訪問によって受注確度を高められると判断する基準と言い換えることもできます。

また、受注確度が低いと判断した顧客にも成功事例の動画URL共有やWEBセミナーの案内するなど、何かしら後工程の導線を残しておきましょう。

営業資料・営業コンテンツの作成

商談用スライド

オンライン営業で利用するスライドは基本的には訪問営業で利用しているもので問題ありませんが、わかりやすさとシンプルさに磨きをかける余地がないか検討すべきです。特にこれまで口頭で説明してきたことをビジュアルに置き換えることが有効です。目の前にいない相手の声に耳を傾け続けるのは対面以上に集中力を要します。話す量を減らし、目でわかる資料に置き換えることを意識しましょう。

また、営業担当者の人間性で信用を築くことの難易度が増すため、会社やサービスの実績など信用のエビデンスになる情報に磨きをかける余地がないかあらためてチェックしておきましょう。

当社ではBtoB製品・サービスの受注までに必要な情報を「売れるロジック」という独自フレームワークで定義しています。「売れるロジック」内にあるそれぞれの要素をWebサイトや営業資料、記事や動画などのコンテンツで、見込み客に伝えられるようにしましょう。

商談用動画

トークスクリプトの項目で触れたとおり、オンライン営業では動画をシームレスに利用できます。定型化された説明やデモシナリオを動画として商談に組み込むことも検討すべきです。

営業担当者による説明スキルのバラつきを解消できるだけでなく、営業担当者が説明以外(たとえば、ヒアリング結果に応じた商談シナリオ修正や提供したい情報の掘り起こし等)に意識を割くこともできます。

デモについては、通信障害などのトラブルを回避できますし、営業担当者が操作に意識を取られずに済むので動画化必須と言っても過言ではありません。ヒアリング結果によって見せるべきデモが変わる場合にはパターン別に準備しておきましょう。

事前研修

オンライン化の目的

営業活動のオンライン化によって会社として何を目指すのか。研修では、まずこの点について明示しましょう。場当たり的な取り組みではなく、中長期的にに営業のオンライン化に注力することを示します。あわせてオンライン営業のスキル獲得がキャリアアップにつながることを意識させましょう。

繰り返しになりますが、現場の取り組み姿勢を強化するには、代表取締役などトップに近い役職者が自ら説明することが有効です。トップがコミットした取り組みであることを示しましょう。

訪問営業との違い

訪問営業との違いについての説明を準備します。上述した①コミュニケーションの質の違い②顧客にとっての商談体験の違い③オンラインにすることの意義の3要素を切り口に、これまでの営業活動との比較を整理するとわかりやすいのではないかと思います。

言葉遣い

上述のとおり、オンライン営業においては一人の社会人としてしっかりとした印象を与える際に「見栄え」が通用しにくくなります。同じく「可愛げがある」「フレッシュさがある」といった若手営業に抱かれやすいイメージも通用しにくくなるため、言葉遣いの丁寧さや正確さが「人としての印象」に大きく影響するようになります。頻出する言い回しについては尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けをインストールしておいて損はありません。

また、オンライン営業では「えー」「あのー」などの発言の合間を埋める発声(フィラー)を顧客が不快に感じやすいと言われています。研修を通じてフィラーを多用する癖を修正することも必要です。

パラランゲージ

パラランゲージとは声の大きさ・トーン・テンポなどの音声的性質のことを意味します。オンライン営業ではコミュニケーションの非言語的な要素が減退する分、発声や抑揚をはっきりさせないと無機質な印象を持たれやすい傾向にあります。本質的な要素ではありませんが、研修において訪問営業以上にはっきりとしたコミュニケーションを意識するよう説明しておくと良いと思います。

ロールプレイング

訪問営業と同様、研修の中心はロールプレイングです。十分な時間を割いて実施しましょう。

想定される複数のシナリオに基づいて演習するのは訪問営業の場合と変わりませんが、形式は実戦と同じオンライン通話で行うことが重要です。営業役と顧客役が社内の違う場所からオンラインでロールプレイングを行うと、オンライン営業ツールの使い方や対面との違いなどを体得しやすくなります。

ロールプレイングは録画・録音しておき、営業役と顧客役で一緒に振り返りましょう。指導者が顧客役となってフィードバックを行うことが基本ですが、研修受講者を顧客役にして顧客の立場からオンライン営業を体験させることも有効です。

情報提供用URLのリスト化

オンライン営業の特色として商談中に手軽にテキスト情報のやりとりを行える点があります。商談中に提供できる有益情報を組織でリスト化しておくと便利です。自社や商材に関するメディア掲載記事、顧客の課題解決の参考となる統計情報や記事などをストックする仕組みを作っておきましょう。

営業個人が都度調べた情報を顧客に提供することも多々あると思いますが、そういった情報も組織の資産として蓄積される仕組みにすることが大切です。

名刺交換の代替手段

オンライン営業の問題点として名刺を交換できない点があります。顧客の情報の取得、営業担当者の情報の提供という二点を埋めるために以下の準備をしておきましょう。

顧客情報取得の工夫

名刺交換なしに顧客の部署名・役職・氏名(漢字表記含む)を正確に把握するには手間がかかります。基本的には聞き取った情報を口頭で確認しますが、オンライン営業ツールにチャット機能が付いている場合には、営業側で聞き取った情報をチャットに入力して顧客に確認してもらう、もしくは、顧客にチャット上で記入してもらなどの工夫もできます。 

先日、クラウド名刺管理サービスを展開するSansanが2020年6月にSansanユーザーどうしの名刺交換機能を追加することを発表しました。オンライン名刺を顧客からもらえる時代も近いかもしれません。

デジタル名刺・プロフィール資料の準備

営業担当者側の情報提供はプロフィール資料を準備しておき、画面共有すれば問題ありません。過去経歴や出身地、趣味など名刺では伝達できない情報を伝えられるメリットがあります。やりすぎない程度の自己紹介をアイスブレークやラポール形成に活用しましょう。

また、Eightの情報を最新に更新しておき、URL共有することも一案です。顧客がEightユーザーであればEight上でつながるきっかけにできます。

商談後アンケートの運用設計

オンライン営業ツールには商談後アンケートの機能が実装されているものがあります。また、ツールに機能がなくてもURLを共有してアンケート依頼しやすい環境です。必要に応じて「説明のわかりやすさ」等について確認するアンケートを検討してみても良いかと思います。

やみくもに行う必要はないので「オンライン営業への移行による顧客の反応を確認する」「営業品質が向上したかを確認する」などの目的がある場合に実施を検討してみてはいかがでしょうか。

録音・録画の活用

トークスクリプトやロールプレイングの箇所で触れたとおり、商談の録音・録画ができる点はオンライン営業のメリットです。訪問営業では営業担当者とその同行者しか商談を見聞きできませんが、オンライン営業では録音・録画によって誰でも実際の商談を確認できます。

このメリットは大きく二つです。一つは商談を適正評価できる可能性が高まること。第三者が商談にフィードバックすることで営業担当者の過大解釈・過少評価等を整え、適正な現状認識をもとにネクストアクションを決めることができます。

二つめは教育のしやすさです。同じく第三者のフィードバックを実際の商談内容に対して行えるので、営業担当者からの報告に基づくフィードバックよりも指導の精度が上がります。また、ハイパフォーマーやローパフォーマーの商談を分析することで「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を体系化しやすくなります。ブラックボックス化しがちだった商談を分析するチャンスとして捉えると、営業担当者育成のブレイクスルーにつながるかもしれません。

営業担当者のためのオンラインで売れるTips

ここまでオンライン営業に関して「訪問営業との違い」「違いを埋めるポイント」「組織的にどのような準備が必要か」を中心に見てきましたが、営業担当者個人が実際にオンラインの商談で「売れる」ためのTipsについてもご紹介しておきます。

顧客認識確認の徹底

「非言語コミュニケーションの減退」を埋めるポイントとして「相互理解の確認」を挙げたとおり、オンラインの商談では顧客の反応が見えにくい(表情が見えない、雰囲気が感じられない、顧客も口をはさみづらい)ので、顧客認識の確認頻度を上げることが重要です。

確認のポイントは以下5点ですので、都度認識にズレがないかを確認しましょう。

  • 顧客が語った意味合い

  • 顧客の質問の意味合い

  • 営業担当者が語ったことを理解しているかどうか

  • 営業担当者が語ったことに対する反応

  • 今後の流れ(スケジュールやお互いのタスクなど)

顧客との認識のズレは訪問営業でも度々発生する課題です。オンラインではやりすぎだと感じるくらいの確認が調度良いかもしれません。

参加者情報確認の徹底

顧客側が複数人参加する商談では、参加者情報の事前確認を徹底することが大切です。事前に参加者の氏名・役職・商談参加の目的をヒアリングしておくことで適切な情報提供やリスク対策が行えます。

これは訪問営業においても言えることですが、特にオンラインでは名刺交換や雑談する雰囲気づくりが難しいので、商談中に参加者の情報を掴みにくい傾向にあります。顧客の購買担当者に依頼して必ず事前に情報を得ておきましょう。

顧客のインフラの変化にアジャストする

コロナ禍においては顧客のオフィス不在が増えた分、顧客への着電率が下がり、リードからの商談化率が低下しています。顧客のインフラ環境が変わってきているので、個別にカスタマイズしたメールで商談依頼を行うなどの工夫が必要です。既存顧客の場合には携帯電話番号を交換しておくことをおすすめします。

通電率が下がるのは顧客から営業担当に電話する際も同様です。オンライン営業システムが利用できないなどのトラブルが生じた際、すぐに連絡が取れる電話番号を必ず伝えておきましょう。

購買担当者とのオンライン雑談

営業活動のオンライン化によって失われるものとして購買担当者との雑談機会があります。営業未経験であれば「雑談なんて」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、訪問先のエントランスから会議室に移動する間などで交わされる雑談は購買担当者から本音や非公開情報を取得する貴重な機会です。

購買担当者は他の同僚がいる場では話せない意見や情報を持っている可能性が高いので、複数人が参加するオンラインの商談の前後で雑談の機会を作れるように工夫しましょう。

以下、当社が行っている雑談に関する工夫の一例です。

  • 商談前に購買担当者に対し「商談の流れを簡単に認識合わせしたいので、○○さんと私は10分前にWEB会議室に入りましょう」と提案する

  • 商談の終わりに購買担当者に対し「今後の進め方でご相談したい点があるので、○○さんと私でこのまま10分ほどお話できますか」と提案する

  • 特に購買担当者に確認したいことがない場合にも、WEB会議室には開始10分前にログインし、早めに参加してきた方と雑談して情報を得る

ビジュアルを活用し、口頭説明を減らす

「商談用スライド」の項目でも触れましたが、口頭での説明量を減らし、ビジュアル化されたスライドや動画を活用することが重要です。顧客が営業担当者の説明に集中力を保てる時間は対面よりも短いので「目でわかる」を意識した商談を設計しましょう。

口頭説明を減らすことで、商談の進め方、顧客の反応の注視、反応への対応、顧客課題の深掘りなどにエネルギーを割けるようになることもメリットです。相手の反応ベースで柔軟な対応がしにくいオンラインで説明に意識を取られてしまうと、余計に対応は後手になってしまいます。顧客が内職できる環境で「ながら聞き」もされやすいので、口頭説明は簡潔にして対話の促進に注力しましょう。

顧客の購買活動のオンラインシフトに伴い、営業担当者の役割は「説明」から「課題整理」「有効なアドバイス」により重心を移していきます。営業としてのキャリアを考えても「説明を動画に任せたうえでどんな付加価値を提供できるか」に取り組んでいくべきではないでしょうか。

売れている営業担当者のシャドーイング

オンライン営業は録音・録画がしやすいので、これまで感じていた「あの人はどうやってあんなに売っているんだろう?」という疑問を解消できます。会社が売れている営業担当者のノウハウを体系化してくれるかもしれませんが、体系化が進んでいない場合には売れている営業担当者から録音・録画データをもらいましょう。

新人看護師の研修に先輩看護師の業務を一日中観察するシャドーイングというトレーニングがありますが、録音・録画データを用いれば売れている営業担当者のシャドーイングが可能です。とにかく真似ることでオンライン受注のコツを早期に掴むことができます。

「瞬発力」よりも「寄り添う力」

オンライン化によって「人間力」「プレゼン力」といった力技が通用しにくくなった分、「なぜ顧客が発注するべきなのか」の客観的なロジックづくりが重要になっています。これは当社の営業活動においても痛感している点で、力技に頼ってきた部分は見直さなければならないと考えています。

ポイントは「顧客の購買プロセスを理解し、どれだけ丁寧に購買担当者とそのプロセスを進められるか」です。営業担当者は「今日は見積提出を合意しよう」「今日は役員に向けたプレゼンの約束を取り付けよう」といった受注プロセスでものごとを捉えがちですが、「なぜ顧客が発注するべきなのか」を整えるには購買プロセスに沿った活動が必要です。

顧客内で「誰がどのような判断軸を持っているのか」「いつどんな会議があり、何が議論されるのか」「誰がどのような手続きを経て発注に至るのか」「発注に至るにはどの程度の情報やロジックが求められるのか」といった購買プロセスを購買担当者からヒアリングし、必要な条件を購買担当者とひとつひとつ整えていく丁寧さが求められていくと考えます。

商談間のメールと電話での連携(オンライン商談後は必ず電話番号を交換する)、購買担当者が集めている情報の提供、稟議を進めるための資料提供、顧客内理解を促すための勉強会の実施など、「瞬発力」よりも「寄り添う力」が重要です。

オンライン営業ツールと周辺機器の整備

オンライン営業ツールの選定

選定のポイント

オンライン営業ツールを選ぶ際には以下に挙げる機能の有無や品質を比較する必要があります。自社の目的と照らし合わせて必要性や優先度を判断しましょう。

接続品質

音声および動画の接続品質はツールによって異なります。高音質・高画質であるかどうかの他に、その品質の安定性があるか(曜日や時間帯によって品質に大きな差がないか)等を確認する必要があります。

通話手段

オンライン営業ツールは通話にインターネット回線を用いるものと電話回線を用いるものとに分かれます。前者はオンラインで完結する点、後者は電話の安定した通話品質を享受できることや、電話で通話しながらビデオ通話に誘導できる点がメリットとして挙げられます。

音声品質の重要性や顧客のITリテラシーなどを基準にどちらが適切か判断しましょう。また、海外との商談が多い場合には国際通話料などの通話コストについても考慮が必要です。

参加可能人数

ひとつのオンラインMTGに何名が参加できるかを確認する必要があります。ツールやプランによっては上限もしくは推奨人数が設定されているためです。

米CEB社(現在はガートナー社に統合)が2015年に実施したBtoBサービスの顧客関係者5,000名に行った調査によると、BtoBサービスを購入する際に意思決定に関わる顧客関係者は平均5.4名でした。BtoBの営業活動をオンライン化する場合には、複数名の顧客に商談に参加してもらえる仕組みを考慮することが特に重要になってきます。

メモ・チャット

オンライン営業中にテキストでやりとりを行える機能。顧客とのやりとりを議事録としてメモし、商談の最後にテキストを共有しながら認識に相違がないかを確認するなどの利用方法があります。情報提供時にURLを簡単に共有できる点も便利です。ひとつのメモを双方から編集ができるツールがあるなど、細かい機能差があるようです。

録音・録画

オンライン営業を録音・録画する機能。主に商談の振り返りに利用します。これまで商談の良し悪しを判断できるのは商談に参加した社員だけでしたが、オンライン営業の録音・録画によって第三者が客観的に商談を評価できるようになりました。重要な商談の次の打ち手を検討する際や、商談の進め方についてアドバイスを行う際、また、ハイパフォーマーの商談分析などにも活用できます。

画面・ファイル共有

オンライン営業中にプレゼン資料・動画などのファイルや画面を共有できる仕組みで、多くのツールに実装されています。営業と顧客が同じ資料の異なるページを閲覧できる機能の有無など、ツールごとに細かな機能の違いがあります。

トークスクリプト表示

商談中に営業側の画面にのみトークスクリプトを表示できる機能です。別ファイルを開く必要がなく、オンライン営業のオペレーションにトークスクリプトを組み込みやすくなるので、商談の進め方やヒアリングの標準化に寄与します。

自動議事録作成

一部のツールには音声データをテキストデータに変換する自動議事録作成機能があり、議事録作成の効率化に繋げることができます。変換精度は要確認です。録音データをエクスポートできれば、Amazon Transcribeなどの外部サービスでも代替可能です。

海外商談への対応

海外拠点との商談が多く想定される場合、海外との通信の安定性について確認する必要があります。国内で有名なツールでも、海外との通信については十分な検証を行っていないとするものもあります。また、通話に電話を利用する場合には国際通話料金でコストが膨れ上がる可能性にも配慮しなければなりません。

価格

オンライン営業ツールの料金体系は、アカウント数(利用者数)、ルーム数(商談数)、同時接続数など課金単位が様々です。利用する人数、時間、頻度などを想定して、ツールまたはプランごとにコストパフォーマンスを評価する必要があります。

セキュリティ

ツールのセキュリティ対策も十分考慮する必要があります。商談は自社および顧客の機密情報を扱う場であり、情報漏洩によるインシデントリスクが高いためです。暗号化の方法やISO取得状況など、社内のIT部門やリスクマネジメント部門と選定基準をすり合わせておく必要があります。

顧客側からツールの安全性を問われるケースもあるため、万全なセキュリティ対策の有無がスムーズなオンライン営業を左右します。

実績

ツールの導入実績も評価ポイントの一つです。オンライン営業ツールは歴史が浅く、認知度が高いサービスでも通信障害が発生したり、セキュリティの脆弱性が指摘されたりしています。一般的には、利用ユーザーが多いほどこうした不備が発見され解消されていくスピードも速いため、導入実績は必ず評価しておきましょう。セキュリティ基準が厳格な大手金融企業の導入実績の有無も参考情報になります。

活動データ集計

オンライン営業部隊をマネジメントする視点では、ツール内での活動ログがどの程度可視化できるかも確認しておきたい点です。一日の商談数や一商談あたりの所要時間等が可視化されているか、データをエクスポートできるか等が確認のポイントです。

他システム連携

SFAやMA、BI等の他システムとのインターフェースについても事前確認しておきましょう。オンライン営業の活動履歴のSFAへの連携がスムーズに行える仕様であれば、案件の管理や分析が効率化できます。

接続可能デバイス

PC・スマホ・タブレットそれぞれにどの程度最適化されているかを確認します。基本的にPCには対応しているので、スマホやタブレットでの運用を検討している場合には推奨環境を確認した方が良いでしょう。

ソフトウェアインストールの要否

利用時にソフトウェアやアプリのインストールが必要かどうかを確認しましょう。顧客側にインストールを求める必要がある場合、オンライン営業に誘導するまでのハードルをひとつ増やしてしまいます。基本的にはインストール不要なツールが理想的です。

アカウント作成の要否

利用時に顧客側のアカウントが必要かどうかを確認しましょう。こちらもソフトウェアインストール同様、アカウント不要なものが望ましいです。

推奨ブラウザ

多くのツールが一般的なブラウザに対応していますが、念の為、自社で多くのメンバーが利用しているブラウザが推奨環境かどうか確認しておきましょう。

主要なオンライン営業ツール

国内で主に使われているオンライン営業ツールはどのツールでしょうか。残念ながらオンライン営業ツールに特化した国内市場レポートは見当たらず統計的に示すことができません。ここでは当社顧客における利用が多いツールを挙げさせていただきます。

周辺機器等の準備

ネットワーク環境

通信の安定性はストレスなくオンライン営業を進めるための基盤です。情報システム部門と連携して、社内および社外・在宅にて利用するネットワークがオンライン営業に適した速度になっているかを確認しましょう。

PC・タブレット・スマホ

近年製造されたデバイスであれば問題ないかと思いますが、念のためオンライン営業ツールの推奨環境に適合しているかどうかを確認しておきましょう。バーチャル背景を利用する場合、最新デバイスでもグリーンスクリーンの用意が必要なケースがあるので注意が必要です。

カメラ

基本的にPC内臓のカメラで問題ありません。ただし、PC内臓カメラは撮影角度がPCモニタと同角度で固定されてしまうため、顔映りが下からのアングルになりがちです。撮影角度が調整ができるWEBカメラを設置すれば、顔映りを改善することができます。多くのWEBカメラは小型でノートPCにも簡単に設置できます。

照明

オンライン営業では顔に影ができやすいため、できるだけ明るい環境で行うことをおすすめします。十分な照度を得られず暗い印象を与えてしまうようであれば、小型の照明を利用することで簡単に問題を解消できます。

ヘッドセット

オンライン営業において安定した音質で通話するにはマイク付きイヤホンまたはヘッドセットが必要です。

オフィス音やキータッチ音など顧客側にとっての雑音に配慮したい場合には、ノイズキャンセリング機能付きのマイクを搭載したヘッドセットの利用が効果的です。在宅で生活音が聞こえてしまう心配も解消できます。

また、無線のヘッドセットもありますが、機器同士の相性によって音声遅延やノイズが発生する恐れがあります。電池切れという不安要素もあるので、顧客とのコミュニケーションでは有線のものが安全です。

デュアルディスプレイ

オンライン営業では説明資料、顧客の映像、メモ帳、トークスクリプトなど様々なブラウザを立ち上げなければなりません。顧客の表情や反応を読み取りつつ、適切な情報提供を行うにはデュアルディスプレイ環境で各ブラウザが見やすい状態を整える必要があります。

バックペーパー・バックスクリーン

オフィスや自宅でオンライン営業を行う場合、人の行き来などが映り込んでしまう不便さがあります。多くのオンライン営業ツールに実装されているバーチャル背景で大抵は解決しますが、自然な映りにしたい場合には撮影用のバックペーパーやバックスクリーンを立てかけておく手段もあります。

最後までご覧いただきましてありがとうございます。当社では、ここまでご紹介してきたような「成果の出るメソッド」を開発・提供しています。本稿では紹介しきれていないメソッドも数多くございます。営業・マーケティング活動でお困りの方はぜひご相談ください。

営業活動の生産性向上支援

オンライン営業のコンサルティング・内製化支援

<文・編集/井出 孝尚@takahisa_ide、情報提供/栗原 康太@kotakurihara 小島 瑶兵@yooheykoji、デザイン/藤田 春華>

参考文献・参考URL

(文献)

御手洗昭治『異文化にみる非言語コミュニケーション―Vサインは屈辱のサイン?』

マジョリー・F・ヴァーガス『非言語コミュニケーション』

マシュー・ディクソン他『隠れたキーマンを探せ! データが解明した最新B2B営業法』

Forrester Research, Death Of A (B2B) Salesman

Forrester Research, Digital Ups The Stakes For B2B Sales Pros

Accenture, 2014 State of B2B Procurement Study

(URL)

日本能率協会コンサルティング『営業マンの有効活動時間の拡大ポイントとは』

HubSpot Japan『日本の営業に関する意識・実態調査』

総務省統計局『労働力調査年報』

中小企業庁『中小企業白書』

Harvard Business Review, Making the Consensus Sale

著者/ 井出 孝尚
株式会社才流 コンサルタント

大阪大学を卒業後、小売チェーンを経て基幹系ITベンダーでエンタープライズ向けの法人営業に従事。3年間で約5億円の受注を経験。その後、エス・エム・エスキャリアに入社し、医療法人・官公庁向けの法人営業や採用コンサルティング、営業推進のマネジメント等を担う。2020年より株式会社才流にてコンサルタントとして活動。

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