オムロン株式会社イノベーション推進本部様では、社会的課題の解決に向け、データを活用した新規事業penguを展開しています。同事業本部初となるSaaSサービスのため、代理店開拓の相談をしたいと才流(サイル)にご相談いただきました。
才流では2023年2月から、代理店戦略の立案と実行の支援をスタート。セールスツールの整備や契約書作成、開拓すべき代理店のリストアップや商談のサポートなど、幅広くご支援しました。
本記事では、才流のコンサルティングによって得られた代理店開拓のプロセスと成果について、同社の今江さん、金子さん、田代さんにお話を伺いました。
才流にご依頼いただいた背景については以下の記事で紹介しています。
関連記事:代理店開拓・Webマーケ・CS運用と多角的な支援で、オムロン新規事業の成長パートナーに
代理店側のメリット明確化に焦点を当て、初期調査を実施
-代理店を開拓したいとスタートした本プロジェクトでは、どのような取り組みをしたのでしょうか。
桂川 最初の2か月をフェーズ1として検証期間と位置付け、そもそもpenguに代理店戦略がマッチするかを確認すべく、各種調査・分析を進めました。見込み代理店や既存顧客へのインタビュー、競合分析、penguの商材特性とポジショニングを通じてマッチしそうだとわかり、戦略立案・検証フェーズへと進みました。
その後、フェーズ2として代理店向けのセールスツールを整備し、報酬や契約形態などのパートナープログラム設計を支援。代理店向け契約書の準備と並行してアタックすべき代理店をリストアップし、開拓を進めました。
-検証期間は、さまざまな関係者にインタビューを行っていますが、新たな気づきはありましたか?
田代 penguを販売することが代理店にとってどのような価値を持つのか。仮説がインタビューを通じて着実に検証、ブラッシュアップされたことが印象的でした。
たとえばpenguの74万円というプランは、代理店が扱うには単価が安いのではないかと思っていました。ところが代理店にとっての評価ポイントは単価だけではなく、さまざまな視点を持っていることが分かりました。penguの魅力として「お客さまの興味を引くフック商材として興味深い」という声をいただくなど、多くの気づきがありました。
また、penguにはRPA(※)で一連の業務を自動化するツールもあるのですが、他社製品と比較して手離れがいい、と。代理店目線でみたpenguの強みが何なのか、浮き彫りになりました。
※RPA:ロボティック・プロセス・オートメーション/Robotic Process Automationの略。AIや機械学習等を含む認知技術を活用して業務を自動化できるソフトウェアロボット。
金子 お客さまにとってのpenguの価値と、代理店さんにとっての価値は違いますよね。ただ、私たちの中ではそれが必ずしも明確に分けられていなかった。お客さまにとっての価値はこれ、代理店さんにとっての価値はこれ、としっかり整理できたことがすごく良かったです。
代理店が価値を語れるよう、サービス紹介資料を刷新
-とくに満足いただいたサポートはありますか?
金子 代理店向けサービス紹介資料の改善です。自分たちはpenguの価値を熱く語れるのですが、代理店の方に価値が伝わっているのか、自信を持ちきれない部分もありました。その点を桂川さんから見事に指摘されまして……(笑)。
桂川 そうでしたね(笑)。初月に見込み顧客にインタビューを行った際、penguのサービス説明をして気がついたんです。今江さんや金子さんから説明を受けると「素晴らしいサービスだ」と思うのですが、いざ自分が説明すると、見込み顧客の反応がイマイチでした。訴求したいメッセージがサービス資料に落とし込まれていないので、口頭で補足しなければ伝わらない……と。仮想代理店のような才流がサービスの魅力を伝えられないということは、これから代理店になる方も話しにくいだろうと課題感を持ちました。
今江 指摘を受けて、サービスのキャッチフレーズを変更し、代理店向け資料、お客さま向け資料、Webサイトも変更したんです。バケツの穴が一気に塞がり、大きく前へ進んだ感覚がありました。
※Webサイトの改善など、全体的な支援の詳細については記事で紹介しています。
関連記事:代理店開拓・Webマーケ・CS運用と多角的な支援で、オムロン新規事業の成長パートナーに
才流と作成した顧客リストで一気に開拓。日々の課題に壁打ち
田代 私が価値を感じたサポートは、アプローチすべき代理店を具体的に挙げていただいたことです。代理店は何万社もいるので、戦略なく当たってしまってはオムロンにとってはもちろん、商談をされる代理店にとっても良い結果になりません。
そこで桂川さんから、代理店は大きく4種類から5種類に分類できる、というセグメントの仕方から教えていただきました。さらにpenguでアプローチすべき800社、なかでも早めにアプローチすべき100社、ファーストステップの30社と、優先順位の提案をいただいたんです。
金子 具体的なリストがあることで、圧倒的な時間短縮に繋がりました。たとえば、この代理店はRPAを扱っていないが、この分野では有名。この代理店はこのエリアでは押えておいた方がよい……など。自分たちで同じ情報は絶対に集められないですし、仮に集められたとしても膨大な時間がかかります。
田代 実際に代理店へのアプローチをスタートすると、商談のたびに新しい課題や疑問が浮かんできます。そうした疑問にも都度、対応いただきました。
また単に疑問を解決するだけではなく、それに付随してやるべきことを投げかけてくださる。「この手の要望は他の代理店からも出てくると思うので、こういう資料を用意しておいた方がよいですよ」と。
とにかくいろいろな角度から相談をしていますが、何であれ絶対に受け止めてくれるので、まず才流に相談しようというスタンスになっています。
金子 日々の課題解決という面では、代理店取引のお作法に関するアドバイスも助かりましたね。たとえば他社とバッティングしたときはどうしたらよいのか。動き出したことで浮上した疑問ですし、誰かに聞かないと絶対にわからないので。
新規事業を進める上で、社内コンセンサス醸成にも貢献
田代 お作法という観点では契約書の作成サポートも非常に助かりました。全く新しい事業・代理店との契約なので、例えば契約書の雛形を作るにあたっても、法務や知財を交え、ゼロベースでリスクアセスメントもしながら契約書を作り上げていきます。代理店ビジネスの経験が少ない者だけで進めてしまうと、必ずしも実ビジネスにそぐわない内容になってしまうこともありますよね。
そこで桂川さんに、契約の際にカバーしておくべきリスクを議論する社内会議に出ていただいたんです。一般的にはこうです、ここまで盛り込むと相手の不信感が増してしまいます……など、知見を提供いただいたことで社内メンバーも「なるほど」と。私たち事業サイド的には、話を通しやすくなり、ものすごいスピードアップに繋がりました。
2か月で10社と合意というスピード感はサポートあってこそ
-定量的な成果は出ていますか?
今江 代理店へのアプローチを開始して2か月で10社程から契約の意向を頂戴しており、40社超と商談が進行しています。当初は今年度中に二桁くらいいければ、という目標を掲げていたので、すでに目標を大幅に達成。
代理店目線で見たときにツボをおさえたサービス紹介になっていて、条件も明確。「三方よし」のプログラムで契約までのハードルが低く、スムーズに商談が進んでいます。サポートがなければ、このスピード感では進まなかったでしょう。
金子 代理店開拓という面で素人だった私たちが短期間で10社から契約の意向をいただけたのは、ピントがずれないよう事前に準備できていたからこそですね。
水落 私たちもpengu事業のスピード感には驚いています。先月お話ししたことが今月にはもう実現されている。意思決定やアクションに移るスピードがものすごく早いんですよね。だからこそ打ち手の数も多く、PDCAを高速で回す良いサイクルが作れていると思います。
才流と進めればきっとうまくいくと、現場はアクセルを踏める
-外部の支援会社を入れる価値を、どのような点に感じていますか?
田代 戦略立案はもちろん、戦術をブラッシュアップするスピード感の早さに価値を感じています。代理店というお客さまに価値を届ける時間を大幅に短縮できている感覚があります。
今江 代理店募集のWebサイトを作ろうとした時もすぐに骨子を考えていただいて、こんなワーディングでいきましょうと。本当にスピード感が違いますね。
田代 現場は商談がうまくいかないと、モチベーションがどんどん下がります。その点、penguは代理店の方にも好評で、順調に進んでいるため現場の士気も高い。関わるみんなが楽しみながらサービスの成長にコミットできているのは大きいです。
金子 短期間で複数社との合意に至れたのは、われわれに自信があったからだと思うんです。アドバイスをいただきながら多角的に考えてきた経緯や、お作法もしっかりポイントを押えられているという自信。
自信があるので臆することなく商談に行ける。スムーズに話が進むのでますます自信がつき、さらに強い気持ちで攻めることができる。才流のアドバイスがなかったら、もっと慎重に進めていたはずです。当初の想像以上に早く、大きく仕掛けられているのは支援があったからこそ。
今江 金子が言うように、専門家の支援があることで現場は不安なくアクセルを踏むことができる。事前準備で手応えがあったから、今こうしてアクセルを踏めているのだと思います。
田代 そうですよね。何か起きても、桂川さんと水落さんがいれば何とかなる。おふたりの存在が私の中でセーフティーネットになっています(笑)。
今江 penguは今後もさまざまな課題に直面すると思います。まだまだ大変なステージは続きます。現場のIT化が進まず、悩んでおられるお客さまは本当に多いので、社会の役に立つ大きな事業になれるよう、引き続きご支援をお願いします。
(撮影/植田 翔 取材・執筆・編集/藤井恵)