株式会社セラクCCC様はクラウドシステムの定着・活用支援事業を展開しています。中でもSalesforce定着・活用支援サービスは数百名規模のコンサルタントが在籍する主力事業ですが、支援内容はコンサルタント個人の経験やスキルに依存する部分が大きく、サービス内容のばらつきが課題となっていました。
こうした状況を改善したいと才流にご相談いただき、2023年の4月から3か月に渡り支援サービスの提供フロー設計、顧客ミーティング資料の型化、作成支援を行いました。
同社にてSalesforce定着・活用支援事業を担う安部様、H様、N様に抱えていた課題やプロジェクトの成果についてお話を伺いました。
コンサルタントのスキルに依存した「サービスのばらつき」が課題
-貴社の事業内容を教えてください。
安部 Salesforceを主としたクラウドシステムの定着・活用を支援する事業を展開しています。東証スタンダード市場に上場している株式会社セラクにて2013年よりSalesforce定着支援事業を開始し、その事業が2022年12月に分社化することで誕生したのが株式会社セラクCCCです。前身から数えて10年以上の定着支援実績があります。
日本には今、多くのクラウドサービスが流通しています。導入には漕ぎ着けたものの定着に課題を抱えている企業が圧倒的多数です。定着に向けた取り組みが上手くいかない企業の多くは定着支援サービスがあることを知りません。
我々はそれがアウトソース領域であることを認知してもらうことで、定着支援サービスの市場を開拓しています。クラウドサービスの最適な活用を支援することで、日本の生産性を上げていく。多くのビジネスユーザーが、クラウドシステムを抵抗なく使いこなせる「新しいあたりまえ」を目指して事業を展開しています。
-どのような課題感から才流にご依頼いただいたのでしょうか。
H様 Salesforceの定着支援は、システム面に特化したものと、Salesforceを現場が使いこなせるようサポートするものがあります。後者のサービスでは、お客さまのご要望に基づき、Salesforceの利活用全般に向けたご提案支援をしています。ただ、実際のご支援では当社のコンサルタントが優秀であるがゆえに、属人化が進み、支援内容にばらつきが生まれていました。
例えばお客さまと最初に行うKPI設定では、誰とどのような議論をし、承認を得て進めていくか、各コンサルタントに任せていました。結果、後になって現場や上長から「これでは進められない」と指摘が入り、後戻りが発生。支援が進まないこともありました。
また、支援時に使う資料も各コンサルタントに任せていたので、統一化されたものがありませんでした。ニーズも成功事例もあるので、型化を進めればもっと多くのお客さまに価値を届けることができるのではないかと考えるようになりました。
そこで、これまで各自で取り組んできた支援内容を持ち寄って最適な支援プロセスを型化し、ドキュメントに落とし込もうと試みました。ただ業務に転用できるレベルのものかというと、なかなかそこまでのものは出来ず……。外部のエキスパートにお願いしたいと考えました。
-それで才流にご相談いただいたのですね。
安部 そうです。才流には過去に2回ほど、支援をお願いしたことがあります。2回とも、期待を上回る支援でした。われわれの事業や関わる者の人間性も含めて解像度高くご理解いただき、その理解度が、アウトプットの質に大きく表れていたと感じています。
今回お願いしたかったのは、Salesforceの定着・活用支援サービスの型化と再現性のあるドキュメント作成です。才流の社名には「メソッドやナレッジを発信し、才能を流通させる」という意味があると聞いていますので、まさに才流に依頼するのがぴったりなのではないかと思いました。
コンサルタント一人ひとりの経験値を、型に落としこんだ3か月
-プロジェクトでの取り組み内容を教えてください。
政次 最初の1か月はサービスの現状把握からスタートしました。セラクCCCさまのコンサルタント複数名にヒアリングし、大まかなフローや利用している資料を確認。プロセスごとの達成基準も確認し、最終的なアウトプットとして求められている資料は何か、合意形成を行いました。
政次 2か月目にはサービスの提供フローを作成し、型化の対象となる資料の設計やアドバイス、作成支援を行い、顧客ミーティング資料のプロトタイプを完成させました。3か月目にはプロトタイプを用いた調査も行いました。
具体的にはビザスクを活用し、見込み顧客を対象にインタビューを実施。プロトタイプをベースに顧客ミーティング資料の品質に問題がないか、ヒアリングを重ねました。セラクCCCさまのコンサルタントにもヒアリングをし、実用性を確認した上で最終納品させていただきました。
-プロジェクトで印象的だったことがあれば聞かせてください。
安部 コンサルタントが経験値でやってきたことを、まさに言語化していただいたという印象が強く残っています。これまではお客さまの課題に対し、それぞれが持ち前のスキルで対応してきました。
その対応策や支援の流れをあらかじめパターン化し、グルーピングして整理整頓する。このときに必要なドキュメントはこれです、と用意しておくことで、スムーズなご支援が可能になります。
当社のほかのプロジェクトでも、参考にしたいと思いました。
H様 プロジェクトの初期から、社内で利用している資料を細かくチェックしていただきましたが、特に印象に残っているのは用語集です。当社のコンサルタントがお客さまと会話する際に使用する用語の意味合いを定義する、用語集フォーマットをまとめていただきました。
これまでも社内で作成はしていたのですが、定期的に内容をアップデートできていたかというと、必ずしもそうではなく。きちんとアップデートすることで社内の共通理解が進み、型化に繋がると教えていただきました。
N様 少し観点が変わりますが、私的には才流のミーティングの進め方が大変印象に残りました。
才流は毎回、ミーティングの冒頭でゴールとアジェンダ、スケジュールを確認するんです。参加したメンバーも「才流さんのミーティングは締まりますね」と言うほどで。プロジェクトや会議はこう進めればいいのかと、すごく参考になりました。
宮戸 セラクCCCさまとのミーティングは私もすごく印象に残っています。多いときには5~10名の方が参加することもありましたよね。通常、大人数での打ち合わせとなると、発言者がフロントの方に偏る傾向があります。しかし、セラクCCCさまは現場の方もみなさんがしっかりと意見を言ってくださる。
現場の意見をベースに当社がアウトプットし、そこにみなさんからフィードバックをいただく。手戻りがなく、着実にステップアップしていけたことが印象的でした。
ヒアリングの型化で顧客理解を深め、後戻りを防ぐ
政次 私自身、前職がSalesforceだったのでよくわかるんですが、Salesforceは非常に重要で強力なツールであると同時に、進め方を間違えてしまうと、後戻りが発生することがあります。
H様も課題としてあげていたように、顧客理解が浅い状態でKPIを設定し、プロジェクトが進むと「実はこういう観点もある」と議論が戻ってしまうんですよね。そこでフロー前半の顧客理解が重要だと考え、ヒアリング用のフォーマットシートも作成しました。
H様 今回、私たちがすごく幸運だったのが政次さんのご経歴です。Salesforceを定着させることへのご理解があり、課題意識も非常に近かったので相性の良さを強く感じていました。顧客理解についてもご指摘の通りです。
これまでは必要な情報をその都度、お客さまにヒアリングしながら顧客理解を積み重ねてきました。そこに長い時間を費やしていたんですよね。
才流が「最初に聞くべきこと、伝えるべきこと」を型化してくださったことで、顧客理解を深める時間が大幅に短縮されました。抑えるべきポイントも引き出しやすくなったと実感しています。
N様 聞くべきことがあらかじめ明確になったことで、営業現場でも漏れのないヒアリングができるようになっています。お客さまが本当に不満を感じているポイントをしっかりピックアップする、非常に価値のあるフォーマットだと感じています。
政次 ありがとうございます。ヒアリングは担当者の経験によってもバラつきが出てしまうものなので、今後もご活用いただけると嬉しいです。
見込み顧客へのヒアリングで得られた、サービスへの自信
-提供フロー、型化資料のプロトタイプを作成後、プロジェクト3か月目にはビザスクを活用して、品質ヒアリング調査をしていますね。見込み顧客へのインタビューを通じて、気づきはありましたか?
H様 もともと市場に対して訴求していこうと思っていた内容、提供してきたサービスは顧客ニーズから大きくずれていないことがわかりました。これは大きな自信につながりました。
方向性が間違っていないのであれば、ご提供いただいた型を活用し、ブラッシュアップしながらしっかりご支援していきたいと、気持ちを新たに感じたところです。
政次 インタビューの中でも「1年前にこのサービスを知っていればSalesforceを解約をせずに済んだ」という声がありましたね。せっかく導入しても、使いこなせずに諦めてしまうお客さまが実際にいらっしゃいましたし、世の中から求められているサービスだと私も強く感じました。
安部 開発・導入=外注という発想になるのですが、定着・活用となると自分たちでやらないといけない、そんな思い込みがあるのでしょう。当社の認知度をあげていく必要性も感じました。
フロー設計、営業トークの型化で現場に大きな手ごたえも
-今回のアウトプットはサービスの提供フロー設計と、コンサルタントが使う顧客ミーティング資料の型化ですね。最終アウトプットには、どのような感想をお持ちでしょうか。
H様 属人化されていたサービスの提供フローを詳細に設計し、営業トークの型も作っていただいたことで、営業現場で説明の仕方が均一化されました。お客さまからの引き合いがかなり強くなっており、プリセールスでは特に手ごたえを感じています。
H様 営業トークの型化は、当初スコープ外でしたが、プロジェクトの効果がより高まるであれば、ということでサポートいただきました。ちなみにプロジェクト後半のビザスクを活用した調査も+αの取り組みでした。
「アウトプットが現場で受け入れられるものかを調査をし、より精度の高いものを納品したい」という、政次さんからのご提案でした。前向きに取り組み、想定以上の提案を提供いただいたこと、本当に嬉しく感じています。
-今回のアウトプットについて、現場からの反応はいかがですか。
N様 フローが設計されたことで、コンサルタントのやるべきことが標準化され、わかりやすくなりました。個人のスキルに依存しない再現性のあるものが出来上がり、メンバーの育成も格段にしやすくなったと思います。「こういうのが欲しかった」という声が現場からも多く上がっています。
政次 嬉しいお言葉、ありがとうございます。フロー設計に当たって特に意識したのは「幹」となる大きな流れを作ることです。日々の業務にあたっていると、どうしても「枝葉」の改善案に目が向いてしまいますよね。でも幹が1本あることで議論が進み、PDCAは格段に回しやすくなると考えています。
専門家に頼む、「時間をお金で買う」ことの価値
-今回、外部の支援会社を入れることのメリットをどのようなところに感じましたか?
N様 当社にはスペシャリストが多いので、外部の目線で「一般的にはこうですよ」と考えをならし、なおかつ底上げしていただけたところに価値を感じました。
安部 今回お願いしたアウトプットと同じものを自分たちで作るには、とんでもない時間がかかります。競合企業も少しずつ出てきている中、「時間をお金で買う」ことのメリットは大きいですよね。
才流のご協力によって当社の価値をお客さまにお届けするスピードが格段に向上し、セラクCCCのコンセプトである「Contribute to Customer Continuing(顧客の持続的発展に貢献し続ける)」が進んだと実感しています。
H様 安部の言う通り、自分たちでやれないこともないですが、相当な時間がかかったでしょうし、アウトプットの品質もまったく違うものになったと思います。餅は餅屋だと、改めて感じたプロジェクトでした。
-最後に、今後の展望について聞かせてください。
H様 拡販のための方法論として非常に有用なものを作っていただきました。今後は提供いただいた方法論を現場で活用し、さらにブラッシュアップすることで、もっともっと成果を出していきたいです。そしてタイミングが合えば、また相談に乗っていただけると嬉しいです。
(撮影/矢野 拓実 取材/水谷真智子 文・編集/藤井恵)