パナソニックのICTソリューション分野を担うパナソニック ソリューションテクノロジー株式会社 様。パナソニックグループの現場で培った知見を活かし、デジタルテクノロジーを活用した現場の競争力向上を支援しています。
同社は2022年度を「マーケティング加速の年」と位置づけ、既存の全社の広報・宣伝部門のほかに、新たに事業部内のマーケティング部を立ち上げました。しかし、これまで体系的にマーケティングに取り組んだ経験はなく、戦略の必要性を感じていたそうです。
才流では、マーケティング部立ち上げのタイミングでご相談をいただき、AIチャットボット「WisTalk」のマーケティング戦略立案をご支援しました。
働き方改革ソリューション事業部マーケティング部の高見様、同部マーケティング課の中村様、全社の広報・宣伝を担うセールスプロモ―ション課の池前様に、プロジェクトの成果や率直な感想を伺いました。
マーケティングに注力し、さらなる事業成長を目指したい
ー 才流のプロジェクト以前は、どのような状況や課題があったのでしょうか。
高見 前提となる組織の話をしますと、当社にはAI&ICTソリューションと働き方改革ソリューションという二つの事業部があります。
われわれの働き方改革ソリューション事業部は、柔軟な働き方や生産性向上を支援するさまざまなSaaSを提供しています。
高見 今回才流に支援を依頼したサービスは、2018年にローンチした社内問い合わせ・ヘルプデスク向けのAIチャットボット「WisTalk(ウィズトーク)」です。
われわれはパナソニックグループ内にお客様がいるので、まずはグループ内で使ってもらいながらノウハウを蓄積。少しずつ一般のお客様にも展開してきました。
ローンチから3年。競合と並んで比較され、選んでいただけるサービスに成長してきたと感じています。
ただ、ここから更なる成長を目指すためには、これまでのやり方では立ち行かないだろうと考えていました。SaaSなので、The Modelの考え方に沿って、マーケティングや営業を変えるべきだと議論していたんです。
中村 手探りでマーケティングも進めていました。
セミナーを行ったり、メルマガやホワイトペーパー施策を実施したりして、一定の成果は出ていたと思います。ただ、「もっと成果が出るんじゃないか」「もっとたしかなプロセスがあるんじゃないか」と常に感じていたんですよね。
そんな中、会社としてこれまで以上のマーケティング投資を行う方針が決まりました。われわれの事業部内にも、2022年4月にマーケティング部を立ち上げることになったのです。
このタイミングでしっかりと知見を取り入れたいと考え、外部の支援会社に依頼することを決めました。
ー 才流を選んでいただいた「決め手」は何だったのでしょうか。
高見 当社としては、施策ありきではなく、全体を俯瞰して戦略を立ててから施策に落とし込みたいと考えていました。
さらに、全社でマーケティングをフラットに勉強する環境を作りたいとも考えていたので、戦略から施策の実行まで、全体をカバーしてくれそうな才流を選びました。
中村 2回目の打ち合わせのときに、「こういうアウトプットを出します」と150枚ぐらいの資料を見せてくださったんですよね。
これを当社のサービスに合わせて作っていただけるのであれば、われわれが実行する際にも迷わないだろう、きっちりとガイドしてくれるだろうと感じました。
高見 これまでコンサルティングを受けたことがなく、最終的にどうなるのかイメージが湧いていなかったので、完成形がしっかりと見えたのは良かったですね。
戦略立案プロセスとチームの共通言語づくりを進めた3か月
ー 2022年3〜5月まで、3か月のプロジェクトで行ったことを教えてください。
桂川 プロジェクトでは、大きく3つのトピックスがありました。
- 「WisTalk」のマーケティング戦略と施策の立案
- マーケティング部や関連部門における共通言語づくり
- 「WisTalk」から派生した新規プロダクトのご相談
桂川 まず、ご相談をいただいた「WisTalk」のマーケティング戦略立案です。
桂川 最初の1か月はユーザーインタビューやアンケート調査など、市場調査を行いました。
並行して、BtoBマーケティングのセオリーに沿って、成果がでやすい短期改善の施策をご提案しました。「短期で成果を出したい」とおっしゃっていたので、実は通常の3倍以上の改善案をお渡ししたんです。
でも、5月にはほぼすべてに着手してくださって、7月のWebサイト経由のリード獲得数は4月比の2.2倍になりました。これは間違いなく、みなさんの熱量と実行力あってのことだと思います。
二つ目は、マーケティング部や関連する部門で共通言語を持つための活動です。
新設されたマーケティング部門の社内プレゼンスを向上し、スムーズに施策を実行していくためには、かかわる人の目線をそろえる必要があります。そこで、全社の広報・宣伝を統括しているセールスプロモーション課の池前さんと連携しながら、社内レクチャー会を3回開催しました。
テーマは「BtoBマーケティングの基礎」「インサイドセールス概論」「コンテンツマーケティング」。延べ200名以上の方にご参加をいただき、ここでも熱量の高さを感じました。
桂川 また、セールスプロモーション課のみなさんからは、マーケティングのよろず相談のような形で、メルマガの配信頻度、広告投資の考え方、リーフレットの構成、Webサイト制作の効率化など、さまざまな質問をいただきました。
最初は、シートに質問を記入していただき弊社から返信する形をとっていたのですが、質問が多岐にわたることから、週次定例とは別にセールスプロモーション課だけの個別相談会も行いましたね。
そして三つ目は、「WisTalk」からの派生プロダクト「WisTalk for 営業DX」のご相談をお受けしたことです。
「WisTalk」は社内の問い合わせに対応する用途のチャットボットですが、「WisTalk for 営業DX」は営業担当者が顧客対応に利用できるサービスです。
もともとパナソニック ソリューションテクノロジー様の社内で、「営業の問い合わせ対応にも使えるのではないか」との仮説をお持ちだったので、仮説検証のプロセスでお手伝いしました。
開発メンバーの方と一緒に、既存顧客や見込み顧客、エキスパートインタビューを実施し、業界構造や顧客課題などを分析。それをもとに、ネーミングやマーケティング戦略・施策のご提案をさせていただきました。
2022年10月に、正式にリリースをされたということで、少しでもお役に立てたのであればうれしいですね。
顧客理解のプロセスで気づいた「自社に足りなかったこと」
ープロジェクトの中で、一番印象に残っていることは何でしょうか。
中村 あらためて、顧客理解が一番大事だということを実感しました。
ユーザーインタビューで顧客や見込み顧客の方にしっかりとヒアリングし、そこから戦略を作っていくプロセスを見せていただいたことが、印象に残っています。
高見 私も同じですね。これまでは、極端にいうと自分たちのお客様2〜3人に話を聞いただけで、「そうなのかな」と感覚的に納得していたところがあったんです。
今回さまざまなルートを使って、これまで接点がないような方にもインタビューとアンケート調査を実施していただきました。
そういう手法があること自体知らなかったですし、フラットに顧客理解ができる方法があるというのが、私には新鮮でした。
これまでも、製品ごとのペルソナを自分たちで作ってはいたのですが、それがどんな意味を持ち、何が重要で、本当に正しいのか。深く理解できておらず、活用しきれていませんでした。
中村 人によって認識にもずれがあったと思います。
例えば、みんなが大きな的の方向を向いているんですが、それぞれ50点のところと、30点のところを見ていて、真ん中の100点を見ていない。そんな感覚です。
今回才流に入っていただいたことで、ペルソナが浸透し、みんなで真ん中を目指せるようになったと感じています。
池前 私もプロジェクトのプロセスは非常に興味深く拝見していました。
どうやってバリュープロポジションを作っていくのか、どうやって顧客の声を聞いていくのか。実際のお客様に当社のWebサイトを見ていただき、生の声でご意見をいただいた経験はなかったので、とても有益でした。
これまで自社で取り組んできたことが「間違っていなかった」と確認できた部分もあれば、「まったく顧客視点が足りなかった」と感じる部分もあり、日々気づきがありました。
トップのコミットと取り組みの可視化で、社内の意識を醸成
ー「ペルソナが浸透してきた」というお話もありましたが、具体的にどのように組織に展開していったのでしょうか。
中村 才流とのプロジェクトでいただいたアウトプットは、すべて全社員が見られる社内ポータルで共有をしていました。
たとえば、戦略部分はもちろんですが、施策の一つひとつも「〇〇の顧客事例を公開しました」「イベントを行って、結果は〇〇でした」のように、ほぼすべての動きを可視化したんです。
Webサイトの改善やコンテンツ作成など手を動かすことも重要でしたが、何よりも「デジタルマーケティングが重要」「取り組まなければならない」という危機感を社内で醸成できたことは一番の成果だったと思います。
桂川 今回のプロジェクトでは、開発・営業・事業マーケティング・全社広報・宣伝など、部門横断で毎回10名くらいの方が定例に参加してくださいましたよね。他社のプロジェクトでは、あまり見られないことです。
高見 私と中村だけではできませんし、池前のセールスプロモーション課とも連動しないと動けません。何よりも、全社にこの取り組みを知ってほしいという気持ちが強かったですね。
とにかく社内の関与者を増やして、聞いてもらうだけでも価値があると思っていました。
それに、才流から直接言ってもらうほうが、われわれが言うよりも納得感がありますよね。業界の専門家なので、みんな熱心に聞くんです。
才流とのプロジェクトは3か月でしたが、思えばわれわれのプロジェクトは才流に依頼をするために、決裁をとるところからはじまっていました。
「SaaSビジネスはこれまでのやり方では成長を続けられない。デジタルマーケティングが必要です」と社長や副社長に説明し、トライしてみようと言ってもらえた。
まずは、トップがコミットしてくれたことが大きかったと思います。そして全社的にマーケティングに注力すると決め、事業部内にマーケティング部も立ち上げました。
才流とのプロジェクトで戦略立案プロセスを教えていただき、プロジェクト終了後は、別の3事業にも横展開しています。半年後の計測では、4事業のリード獲得数は1.8倍、商談化数は3倍、受注数は5.5倍に伸びました。少しずつ、成果につながってきていると思います。
池前 才流から得た知見は、社内のベースになっています。実は才流のプロジェクトが終了したあとも、「WisTalk」の定例は継続しているんです。
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの体制も整い、プロモーション活動・営業活動や受注の状態など、さまざまな数字を一気通貫で見える化し、共有しています。
市場や競合、お客様のニーズも変わっていく中で、いただいた知見をいかに進化させ、変化に対応できるか。われわれの次のステップだと思っています。
高見 メンバーの意識も変わったと思いますね。
これまでは、どちらかというと、プロモーションをやることが目的になっていた部分があったのかなと思うんです。でも本来やるべきなのは、売上につながる仕組みを作ることですよね。
最終ゴールに、ようやくすべてがつながってきた。数字を見て話をする、検討する意識が芽生えてきたと感じます。
プロジェクトに参加した方からのコメント(良かったこと・得られた成果)
マーケティング部 マーケティング課 仲村様
顧客インタビューなどで、今までなんとなく感覚で行ってきた顧客理解を可視化できたこと。顧客インタビューをもとにプロモ施策の設計や優先順位が決められたことは良かったと思います。
オフィスソリューション二部 開発課 佐藤様
プロダクトが検討段階であるにもかかわらず、積極的に支援いただきありがとうございました。外部知見者へのアンケートやインタビューなど、市場分析手法は、プロモーションだけでなくプロダクトの方向性を決めるうえで効果的な活動だと思います。今後も取り組んでいきたいと思います。
セールスプロモーション課 塚本様
マーケティング手法やWeb制作の知らないことをたくさん教えていただきました。
セールスプロモーション課 渡邊様
これまで、担当ごとに施策がバラバラと動いていましたが、全体視点からそれぞれの施策連動の流れ、基礎が見いだせたことはとても大きな成果です。担当者間、部門間の意思疎通と目標の共有が重要だと感じました。
セールスプロモーション課 小宮様
プロモーションを含めたマーケティング知識のレクチャー、商材にあわせたプロモーション計画の実践・アドバイスなどをいただきました。成果を見据えた取り組み方は勉強になりました。
「自己流のマーケティングで壁にぶつかる会社は多い」
ー 才流とのコミュニケーションは、いかがでしたか。
中村 Teamsにゲストとして参加いただいて、常にチャットでやりとりをさせていただきました。こちらのリクエストに対し、対応がとてもはやいのでありがたかったです。
池前 私は「こんなことも相談していいのかな」と思うような、細かなことも相談させてもらって。何でもお答えいただけるので、判断のよりどころになっていました。
これまで、モヤモヤしていたこと、正しいのかわからないことがたくさんありましたが、日々の悩みの多くがクリアになりました。本当に、ありがとうございました。
ー才流の支援は、どのような会社におすすめしたいですか。
中村 われわれと同じフェーズにいらっしゃる方には、最適だと思います。
マーケティングを体系立ててやっていきたいけれど、何をやっていいかわからない。今まで自分たちのやり方でやっていたけれど、壁にぶつかって成長できない。
そんな状況の組織はたくさんあると思うんですよね。業界関係なく、おすすめしたいと思います。
(撮影:矢野 拓実、取材・文・編集:安住 久美子)