オーダーメイドで工業炉を製造しているサンファーネス株式会社様。中長期戦略を見据え、デジタルマーケティングや営業力強化に取り組むために、才流にご相談をいただきました。
才流では、2021年7月から1年にわたってマーケティングの戦略立案、施策の実行をご支援。代表取締役の渡邊様、マーケティング担当の古田様に、提案内容から成果まで、プロジェクトの率直な感想を伺いました。
「製造業に特化したマーケティング戦略立案の支援」を才流に相談する
問い合わせは半年に1件。手探りの施策に限界を感じていた
— 才流に相談する前から、自社でさまざまなマーケティング施策を実行されていたそうですね。当時の状況や課題を教えてください。
渡邊 もともと中長期の成長を見据えると、営業とマーケティングのデジタルシフトが必要だと考えていました。工業炉業界はまだデジタル化が進んでいないので、先駆けて取り組めば成果が出せるのではないかと思ったからです。
ちょうど、コロナ禍で社会全体がデジタル化に向けて動きだした時期でもありました。自社でやれることをやってみようと話し合い、2020年の夏ごろから、デジタルマーケティングに取り組みはじめたのです。
渡邊 Webサイトをリニューアルしたり、工業炉用語集などのコンテンツを作ったり。試行錯誤しながら取り組んでいましたが、なかなか問い合わせ数は伸びなかったんです。Web経由の問い合わせは半年に1件程度でした。
自社でやっている施策は、なにか方向性が間違っているのではないか。最先端のマーケティングを取り入れるためには、自社だけでは限界があるのかもしれない……。
そこで、外部の専門家に相談をすることにしたのです。ネットで検索をかけてみたところ、才流のWebサイトを見つけ、問い合わせをしました。
古田 偶然にも、才流の代表栗原さんが執筆された『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』という本を買っていたので、才流とはじめての面談をする前は、関係者全員で目を通しました。
実は才流以外にも、2社にお声がけをし、話を聞いていたんです。ただ、その2社ができることは、すべて才流でもできることでしたし、営業プロセスも含めた全体的な伴走支援をしていただけるのは才流だけでした。
ひとつ懸念材料として社内で話に上がったのは、才流の実績を拝見すると、製造業の事例が少ないのではないかということ。そこで、最初の面談で「製造業においても才流のメソッドが通用するか」質問をさせていただいたんです。
栗原さんはその場で、「製造業でも、ちゃんと成果は出ます」と言ってくださった。これが依頼の決め手になったと思います。
自走するためのマーケティングプロセスを1年かけて構築
— 1年のプロジェクトになりましたが、どのようなことをしてきたのでしょうか。
桂川 最初の3か月間は、マーケティング戦略と施策の立案、デジタルマーケティングの土台固めを進めました。
「誰に」「何を」「どのように伝えるか」をしっかりと見定めるために、見込み顧客インタビューや競合分析を行いました。
当初私が苦労したのは、工業炉に関する専門用語がとても多く、用語の意味がイメージできないことでした。そこで、サンファーネス様にお願いして、浜松にあるお客様の工場にご案内をいただきましたね。実際に工場で実物を見ながらご説明いただき、理解が深まりました。
桂川 戦略が固まってきたタイミングで、施策のPDCAサイクルを回せるよう、Google Analyticsの設計、HubSpotやLooker Studio(旧:Google データポータル)を導入し、基盤を構築しました。
桂川 次の半年間は、リード数と商談数の増加をゴールに設定し、Webサイトの全面リニューアルを実施。リード数を増やすために、リスティング、メール、業界の専門媒体などチャネルを広げて顧客接点を作っていきました。
桂川 そして最後の3か月は、サンファーネス様がマーケティング活動を自走できるように、土台づくりを行いました。自分たちでコンテンツが作れる状態を目指し、コラム記事を作っていただき、才流がフィードバックさせていただく。「コンテンツマーケティングのライザップ」みたいなイメージですね。
このタイミングで「リード数は増えたものの、商談につながらない」という課題が出てきたので、営業資料を改善し、初回商談から2回目の商談へ。転換率を上げる取り組みも行いました。
1年間取り組んだ結果として、Webサイトの訪問者数は5.3倍、月間リード獲得数は8.2倍、商談数は6.5倍となり、BtoBマーケティングで自走するための土台は出来上がったと思います。
Webサイトの全面リニューアルを決意した理由
— 才流は当初、Webサイトの全面リニューアルではなく、サイト改善をご提案されたそうですね。
桂川 デザインも含めた全面リニューアルに時間をかけるよりも、コンテンツそのものの改善に注力したほうがいいのではないかとお伝えしました。
BtoBのWebサイトにおいて成果につながりやすいポイントは、デザインや見た目の印象よりも、キャッチコピーやコンテンツ。ユーザーが求めている情報を提供し、いかに行動を喚起させるかなんです。
ですから、全面リニューアルでなく、必要な部分の改善でも成果は出せると考えました。
古田 ただ、当社としては、多少時間はかかっても土台をしっかり作りたいという思いがあったんですよね。
才流に依頼する1年前にWebサイトリニューアルをしたとき、当然問い合わせが増えるものと見込んでいました。
でも、実際はWebサイトからの問い合わせは半年で1件。関係者の方から「Webサイトの印象がいまいち」と言われることもけっこうあって……自分たちで行ったサイトリニューアルでは、成果は出せなかったという評価をしていたんです。
社長の渡邊もWebサイトを刷新したいという気持ちが強く、この機会に全面リニューアルをかけたいと桂川さんにご相談しました。
桂川 部分的な改善か、全面リニューアルか。毎週ディスカッションを重ねて検討しましたね。
最終的には、伴走支援の期間が半年以上あり、全面リニューアルを実施した後も才流でサポートができるという点から、「100点のWebサイトを狙って、全面リニューアルをしましょう」とお伝えしました。
「デジタルマーケティングの軸として、長く使えるWebサイトにしたい」という思いに応えるために、MAツールの活用やアクセス解析の視点を意識したサイト構造に見直し。リード獲得数の最大化を目的にページ構成やCTAの設計も行いました。
またコンテンツを軸にしたマーケティング施策に注力するため、リニューアルのタイミングで、SEOを意識してキーワード群の洗い出しも行いました。
古田 全面リニューアルをした後も才流が伴走してくれたのは、ありがたかったです。階段設計に沿って、潜在層から顕在層の方に向けて、どのタイミングでどんな情報を提供するか。接点作りをしっかりと行ったことも、リード数の向上には大きく影響したと思います。
桂川 興味深いインサイトが見つかったのは、見込み顧客へのユーザーテストの時でしたね。取引実績に大手企業の名前が掲載されていることが、サンファーネス様への信頼性向上に大きく寄与するとわかったんです。このインサイトはページ構成にも反映しました。
古田 オンライン商談の場でも、お客様から取引実績に関してコメントをいただくことは多いです。認知度が高い企業との取引実績が、新たなお客様からの問い合わせにつながっており、大変ありがたいですね。
工業炉の第一想起を目指す、コンテンツマーケティング
— Webサイトのリニューアル後は、コンテンツマーケティングにも着手したそうですね。運用体制を作るまでに苦労したことはありますか?
古田 Webサイトをリニューアルする際、工業炉に関する情報はほとんどインターネット上に掲載されていないことがわかったんです。情報が欲しい方はいるので、われわれが役立つ情報を定期的に提供すれば、お客様との接点がしっかり作れると感じました。
ただ、実際にどのようなコンテンツを出すべきかはとても悩みましたね。
古田 工業炉というのは、さまざまな材料や部品の溶解・加熱・熱処理を行うことで形状や性質を変え、目的に合った加工をするためのものです。
われわれは工業炉の専門家ですが、熱処理事業の専門家ではありません。したがって、どの範囲まで語っていいものか悩む部分もありました。
私自身、一人で記事をライティングできるほどの知識も持ち合わせていない。誰にどんな内容の記事を書いてもらえばいいのか。コンテンツマーケティングを継続していけるのか、正直不安はありました。
桂川 リード獲得に繋がるコラム記事の書き方やSEOのノウハウは、勉強会を開催してインプットしていただきました。ただ、「わかる」と「できる」は違う。一歩目のイメージが湧かないと、不安に感じてしまい、動き出せなくなってしまいますよね。
そこで、私のほうでライターさんを探し、記事を1つ書いてもらいました。そこから、古田さんに実際に手を動かしていたただくようにしました。古田さんが企画と見出し構成を作り、フィードバックを繰り返し行いましたね。
コンテンツの切り口は、見込み顧客インタビューを参考にして、検索上位を狙うキーワード群と需要のある記事テーマを設計しました。
古田 実際に記事の制作までやっていただけるとは思っていなかったので、とても助かりました。工業炉に関する記事を書けるライターさんを見つけていただいたおかげで、外部のリソースを活用した量産体制も作れました。
企画と見出し構成案をわれわれが作り、外注のライターさんが執筆する。原稿を社内の技術者がチェックし、公開するというプロセスです。定期的に情報を発信できるようになり、検索結果の上位に自社のコンテンツが表示されるようになっています。
少しずつWeb検索結果の面を増やせている実感があり、嬉しいですね。
初回商談の営業資料を改善し「次につながる商談」を実現
— 先ほど「施策の成果としてリード数は上がったものの、商談につながらないという課題が出てきた」という話がありましたね。どのような状態だったのでしょうか。
渡邊 Webサイトリニューアルやコンテンツマーケティングにより、オンライン商談数は増えました。しかし、初回の商談で使う営業資料をまったく準備していなかったんです。
カタログの電子データはありましたが、情報としては不十分だという実感もありました。そこで商談から次のステップにつなげるために、「資料をすぐ用意してほしい」と古田に伝えたんです。
古田 当たり前のことなんですが、問い合わせをして商談に臨んでいるお客様は、カタログのデータも含め、サンファーネスの情報を一通り入手しているわけです。
桂川さんと相談し、「どんな情報を、どの順番で伝えると良いか」を考え、営業資料を作成しました。
桂川 私も初回商談に同席させていただき、実際にどのように商談を進めているのか調査しました。その結果、営業メンバーによって商談の進め方にばらつきがあること、相手にサンファーネス様の良さが伝わりきっていないことがわかったんです。
誰が商談に臨んでもばらつきが出ないように、そして2回目の商談につなげられるように、営業資料を刷新しました。
古田 実際に営業メンバーに使ってもらった結果、伝えるべきことを伝えられるようになったというフィードバックをもらっています。取引先実績や導入事例を交えることで信頼感を高め、具体的なケーススタディをきっかけに、お客様課題のヒアリングが進むようになったようです。
「やれば成果が出る」マーケティングの楽しさと成果を実感
— プロジェクトを通して、どのような成果がありましたか。
古田 才流と一緒にプロジェクトを進めていくうちに、目に見えて施策の結果が出てきました。プロジェクト開始前と比較して、月間の集客数は5.3倍、月間のリード数は8.2倍、商談数は6.5倍まで伸びました。
「やればこれだけ成果が出る」。1年間で体験できたことは、自走に向けて大きな自信になりました。
才流のようにスキルの高い方々に追いつきたいという気持ちでプロジェクトに取り組んでいたので、この1年間はとても楽しかったです。最後は「もう終わりなんだ。聞きたいことはしっかり聞いておこう!」という気持ちでしたね。
渡邊 「本当に良い投資をしたな」ということに尽きます。一緒にプロジェクトに取り組み、結果を出していただき、古田のスキルも上がりました。
マーケティング戦略の立案から、営業プロセスの改善まで。一気通貫で見てもらえたので、現場の動きも変わったと実感しています。正直、ここまでやっていただけるとは思っていませんでした。また何かあれば、ご相談したいと思っています。
古田 当初、才流はデジタルマーケティングに強い会社というイメージでした。しかしプロジェクトを通じて、才流のフレームワークは業界業種問わず活用できるものだと感じました。
「工業炉業界で、検索結果1位を取りたい」という目標も現実になりました。何かを変えたいと思っている企業には、才流の支援をおすすめしたいです。
渡邊 工業炉メーカーは、新規のお客様と取引する際の壁が高く、特に大手企業の場合は、キーパーソンとの面談を実現できない課題があったんですよね。お客様から問い合わせてもらえるような体制にするのは、ずっと前からの希望でもありました。
渡邊 才流にはプロジェクトを通して、希望を実現していただきました。おかげさまで、今ではすべてのお客様に対応しきれず、お断りせざるを得ないぐらい、問い合わせをいただいています。まさにうれしい悲鳴ですね。
桂川 毎週欠かさず打ち合わせをして、ほぼ毎日チャットでやりとりをした1年のプロジェクト。古田さんをはじめプロジェクトメンバーのみなさんは、モチベーションが高く、私としてもたくさんの刺激をいただきました。自走できる体制まで伴走でき、しっかりと成果でお返しできたことは嬉しいです。ありがとうございました。
本事例をお読みいただいた方に、製造業向けのBtoBマーケティング診断を無料で行っています。自社のマーケティング戦略の方向性を確認したいと考えている方、施策の実行に課題を抱えている方は、以下よりお問い合わせください。
(撮影/矢野 拓実 取材・文/奥川 隼彦 編集/安住 久美子)