国際物流の領域でDXを推進するスタートアップ、株式会社Shippio(シッピオ)様。日本初となるデジタルフォワーダーとして、フォワーディング(荷主と実運送事業者の間に立った輸出入業務の代行)とクラウドサービスを組み合わせた「デジタルフォワーディング」、貿易業務をクラウド上で一元管理して効率化するSaaS「Any Cargo」、国際物流事業者向けのコミュニケーションプラットフォーム「Shippio Works」を展開しています。
これまで、展示会をメインにマーケティング活動を展開してきた同社。新しい集客チャネルを開拓したいものの、マーケティング担当者が1人という組織的な課題があったといいます。第三者の支援の必要性を感じ、才流にご相談いただきました。
才流では2024年1月から現在に至るまで、マーケティング施策の伴走やPDCAサイクルの構築、戦略整理と幅広い支援をしています。才流の支援に対する感想や得られた成果について、同社の井上さん、真畑さんにお話を伺いました。
担当者1人のマーケ組織。モニタリング体制を整備したい
-事業内容と、今回ご支援をしたサービスの内容を教えてください。
真畑 当社はテクノロジーとオペレーションを掛け合わせ、貿易に携わる企業様の課題解決を支援しています。具体的にはフォワーディングの実務とクラウドサービスを一気通貫で提供する「デジタルフォワーディング」、荷主向けの貿易業務SaaS「Any Cargo」、そして2024年9月にリリースした国際物流事業者向けの新サービス「Shippio Works」を展開しています。
-才流にご依頼いただく前、どのような課題がありましたか?
真畑 顧客は貿易に携わるメーカーや商社、流通、小売といった企業様のうち、ミッドからエンタープライズと呼ばれる企業群です。狙うセグメントが限定されているため、展示会をメインの集客チャネルとしてきました。
しかし、対象となる展示会の数には限りがあります。今後、認知を広めてさらなるリードを獲得するために、新しい集客チャネルを開拓したいと考えていました。
井上 組織的な課題は、マーケティング部隊が実質、真畑1人で運営されていたことです。そのため、施策の企画と実行に注力せざるを得ず、モニタリング体制を整備できていませんでした。この状況を改善するために、外部の伴走支援が必要だと感じていました。
加えて、当社のマーケティング戦略の妥当性について、客観的な検証を行いたいと考えていました。第三者の専門的な視点を取り入れることで、より効果的な戦略立案ができるのではないかという期待がありました。
-才流にはどのような経緯で、ご依頼いただいたのでしょう。
井上 才流のことは、知り合いからの口コミで知りました。マーケティング支援という観点で広告代理店も候補に挙がりましたが、代理店は広告関連サービスに特化しているケースが多いですよね。才流であれば広告費に依存することなく、マーケティング自体を見てもらえる。問い合わせをしたところ、才流のコンサルタントは事業会社のマーケティング経験者が多いことを知りました。有意義な壁打ちができそうだと感じて支援を依頼しました。
課題感の強かった施策の実行とモニタリングを優先的に支援
-プロジェクトでは、どのようなことを行いましたか。
加藤 才流では戦略立案からスタートするプロジェクトが多いですが、今回はより課題感の強かった実行・モニタリングフェーズの見直しからスタートしました。
才流のセオリーを共有し、これまでの施策をひととおり点検。KPIシートのブラッシュアップに加え、施策ごとに振り返りシートを作成してモニタリング体制を整えました。
並行して戦略部分の整理も進めました。そもそもデジタルフォワーディングは日本ではまだ競合のいない新しいカテゴリーで、検索をベースにしたWeb集客は難しいものがあります。
SEM(Search Engine Marketing:検索エンジンマーケティング)に期待するよりは、もともと開催していたウェビナーの内容をブラッシュアップし、商談化につながる設計にした方がいい。現状の交通整理をしながら、より良い形を模索していきました。
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マーケティング施策管理シート|KPI・目標値・優先度・ネクストアクション管理・結果の管理に
ウェビナー開催の基礎知識/目的やテーマ選定のポイントをBtoB企業向けに解説
真畑 BtoBマーケティングという領域で、全てのチャネルにおける経験とナレッジを持っている点が印象的で、ありがたかったです。私たちは比較的ニッチなドメインで事業を展開しているので、参考情報を集めるのも難しい。
ところが加藤さんに悩みや課題感を共有すると、すぐに回答がもらえるんです。時には「才流内で確認します」と他のコンサルタントの意見やナレッジももらえるので非常に助かりました。
ウェビナー経由のリードは2-3倍増、新しい集客の柱に
-プロジェクトによる成果を教えてください。
真畑 一番の成果は、ウェビナー経由のリード獲得数が2-3倍伸びたことです。開催数を増やし、ウェビナーごとにゴールを設定。ゴールから逆算した内容で開催することでリード数を増やすことができました。
認知獲得のためのウェビナー、顧客接点獲得のためのウェビナー、お客さまの温度感を上げる興味転換のためのウェビナー、商談に結びつける商談転換のためのウェビナー…。といった具合に、お客さまの検討の段階に合わせたコミュニケーションを意識してウェビナーごとに目的とテーマを絞り、コンテンツを設計しました。
ウェビナー間の送客にも取り組みました。一度参加いただいたお客さまに、次のウェビナーにも参加してもらうことで、ウェビナー間の相乗効果を高めることができました。
結果としてウェビナー経由のリード件数が増えたことに加え、商談から成約までのコンバージョンレートも改善傾向にあります。ウェビナーという入り口でしっかり情報提供をできるようになった影響が大きいと考えています。ウェビナーが展示会に次ぐ、新しい集客の柱として育ってきています。
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-定性面での成果や変化はありましたか?
真畑 顧客像が明確になったことは定性的な成果だと感じています。これまでも、当社のサービスと親和性の高そうな業界の仮説は持っていたのですが、顧客セグメントの定義まではできていませんでした。ところが顧客インタビューを通じて、受注につながりやすい顧客像がクリアになりました。
こんな商材を扱っている、このセグメントの人たちに情報を届けよう。この人たちに響くコンテンツを考えようと、顧客像を起点に施策を考えるようになりました。
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才流はマーケティング領域のパーソナルトレーナーのような存在
-才流に依頼して一番良かった点は何でしょう?
真畑 マーケティングをしっかり機能させるには、幅広い知識やナレッジが必要です。新しい施策に取り組みたくても、一人でプランを練って段取りを決めるのは精神的にも業務量的にも重く、どうしても億劫になってしまうことがあります。
その点、才流に相談するとナレッジを共有してもらえるので、土壌整備が一気に進み、最初の一歩を超えるハードルが大幅に下がります。才流がいなかったら、どうなっていたか……想像したくもないですね(笑)。
井上 私から見ても、才流の支援を通じてマーケティングのPDCAが早く良くなったと感じています。毎週の定例では「これ進んでいますか?」「これはできていますか?」とコンサルタントが確認をしてくれる。
そして確認やディレクションだけではなく、必要に応じて一緒に動いてくれるんですよね。才流は私たちにとって、マーケティング領域のパーソナルトレーナーのような存在でした。
マーケティングのリソースが一人しかいない状況で、PDCAを回すサイクルが遅くならないよう、伴走仲間としてしっかり機能してもらえた。真畑が動きやすくなったことが何より良かったと感じています。
真畑 一人で担当をしていると、施策の実行に重きが置かれ、成果をドキュメントに残す優先度はどうしても下がってしまいます。その点も、モニタリングシートの改善や施策の振り返りシートの作成で、しっかりサポートしてもらいました。
井上 経営的な観点でも、マーケティングの数字が可視化され、課題や進捗が迅速にわかるようになったと感じています。
どんなテーマでもラフに相談できる、心地良い関係性
-才流のコンサルタントのコミュニケーションはいかがでしたか?
真畑 とにかくレスが早い。質問をするとすぐに返事をもらえるので、こちらのスピード感もアップしました。
井上 ざっくばらんに、どんなテーマでもラフに相談ができてコミュニケーションがとても取りやすかったです。クライアントワークというよりは、伴走相手という関係性もすごく心地よかった。事業会社を経験されているからこそ、私たちの置かれた状況に共感をしながら、一歩一歩、着実に前に進めてもらえるので助かりました。
あとは担当コンサルタントだけでなく、他のコンサルタントの方からも意見やフィードバックをもらえた点は印象的でした。プロジェクトの初期に当社のWebサイトを才流社内で見てもらい、多くのコンサルタントからさまざまな観点でコメントをいただいたんです。そのスピード感や視点の多さには感動すら覚えましたね。
-才流のサービスを他社におすすめするとしたら、どんな課題を持っている会社にフィットすると思いますか?
真畑 顧客のニーズに応じて臨機応変に支援してくれる会社だと思うので、幅広い会社にフィットするように思います。
もちろん、私たちのように少ない人員でマーケティング活動をしている組織や、参考になりそうな会社が少ない、ニッチな分野で事業を展開している企業には特におすすめです。質も量も満足のいくナレッジを提供してもらえると思います。
井上 1人のマーケターが持つ知見やノウハウには限りがあります。才流のBtoB領域での幅広い経験とナレッジに私たちも大いに助けられました。外部の知見を求めている企業には自信を持っておすすめしたいです。
国際物流の領域で、マーケティングの成功事例をつくりたい
-才流の支援は今後も続きます。才流への期待について聞かせてください。
真畑 私たちが対峙している国際物流の領域で、マーケティングに成功している企業はあまりいないのが現状です。
この領域でShippioがマーケティングの成功事例になれるよう、引き続き幅広い観点での支援を期待しています。
井上 進化するマーケティングの領域で、才流からはいつも新しい刺激をもらっています。業界をリードするなかで培ったナレッジで、引き続き当社の新しい挑戦、進化に伴走してもらえると嬉しいです。
水落 Shippioさんはレガシーな業界で、当事者が概念すら持っていないDXを推進しています。レガシー業界のDXに取り組む企業にとって、Shippioさんのプロジェクトは1つの成功事例になるのではと感じています。
加藤 真畑さんと一緒に働くマーケターの採用が決まったとうかがいました。Shippioのマーケティングチームが数十名体制になり、「昔は全部1人でやっていた」と真畑さんが語る姿を見たいです(笑)。私自身、プロジェクトを通じて多くの学びをいただいています。引き続き状況が許す限り、ご一緒させていただけると嬉しいです。
(撮影/植田 翔 取材・執筆・編集/藤井 恵)