人事労務業務クラウドソフト「オフィスステーション」シリーズを提供しているエフアンドエム様。オフィスステーションシリーズの一つ「オフィスステーション 労務」は、現在35,000社以上の企業に導入されており(※)、労務管理クラウド市場で3年連続シェアNo.1を獲得しています。※2023年10月末日時点
同社では順調にシェアを拡大している一方で、営業のノウハウがメンバー全員に浸透しておらず、営業担当者のスキルが属人化しているという課題を抱えていました。
才流(サイル)は2023年4月から3か月にわたり同社のセールスイネーブルメントのプロジェクトに参画。営業マニュアルや提案資料のフォーマットの作成をはじめ、オンボーディングプログラム、研修後テストの作成など、営業の「型化」を支援しました。
才流とのプロジェクトの感想や得られた成果について、オフィスステーション事業本部 副部長の池邉さん、同部の安藤さん、伊藤さんにお話を伺いました。
営業スキルの「型化」を進めたかった
—貴社ではどのような課題を抱えていましたか?
安藤 一番の課題は、営業担当者のスキルが属人化していることでした。オフィスステーション 労務のトップセールスは池邉ですが、池邉の営業スキルを言語化できていないところが多く、他のメンバーに浸透できていないことに課題を感じていました。
池邉 オフィスステーション事業本部は当社のなかで一番若い部署なので、ノウハウが少ないという側面があります。また、事業拡大に伴ってメンバーが増えていったので、私の持っているノウハウの伝達が追いつかずに属人化していました。
—才流に依頼した背景を教えてください。
池邉 営業スキルの底上げ、営業の型化を進めたかったからですね。以前から社内でも営業の型化には取り組んでいましたが、アウトプットがとても難しいと感じていました。
安藤 私が営業の型化を担当していたのですが、ほかの業務をやりながらだったので、どうしても進みが遅くなっていました。そこで、以前からメソッドを参考にしていた才流に依頼しました。
自社では難しかった提案資料のマニュアル化を実現
—今回のプロジェクトは、どのように進めましたか?
井出 まずは営業マニュアル作成のメソッド(※)に沿って、オフィスステーション 労務の場合はどうすればいいのかを整理することから始めました。営業マニュアルはエフアンドエムさんと意見を出し合いながら作成し、足りない部分は追加していくという方向で進めていきました。
その後は提案資料フォーマットや切り返しトーク集の作成、営業資料の改善提案など、営業現場の武器となるツールの整備に取り組みました。
プロジェクトの後半には営業研修のためのオンボーディングプログラムと研修後のテストを作成しています。
※関連記事:営業マニュアルの作り方【テンプレート付き】
原口 営業マニュアルの作成にあたっては、池邉さんの持つ営業スキルを言語化することに重点を置きました。
そのために、池邉さんへのヒアリングはもちろん、見込み顧客へのインタビューや実際の商談の録画データをいただき、「オフィスステーション 労務の営業はこうあるべき」ということを定義しました。
—今回のプロジェクトではさまざまな施策を行ってきましたが、とくに良かったことは何ですか?
池邉 提案資料のフォーマットを作ってもらったことですね。オフィスステーション 労務というサービスはお客様のニーズによって提案内容が変わるため、マニュアル化するのを諦めていました。
何度もチャレンジしては頓挫していたので、「これだけやってもうまくいかないんだから、提案書はなくてもいいかな」と妥協しそうになっていたんです。それが今回のプロジェクトでは私が才流にイメージを伝えて、それを正確に提案書に落とし込んでもらいました。
伊藤 才流に作ってもらった提案資料のフォーマットは、現在でもかなり活用されています。お客様に合わせてテキストを調整するだけで提案資料が作れるフォーマットなので、作成に時間がかかりません。たとえば与件整理とビフォーアフターの2枚の資料であれば、30分あれば作れます。
見込み客への商談時には才流の提案資料を使うことを徹底していますが、実際に商談でもお客様からの反応がよく、手ごたえを感じていますね。
打ち合わせが毎回楽しみだった
—そのほか、才流とのプロジェクトではどのような取り組みをされましたか?
池邉 新入社員の研修用に、オンボーディングプログラムを作ってもらいました。
原口 オンボーディングプログラムは、私が提案して作成しました。プロジェクトを開始する際に営業メンバーを増員するという話があったので、効率的に新人研修を実施できるようにしたいと思ったのがきっかけです。
オンボーディングプログラムがあるとマネージメントがしやすくなるだけでなく、研修を受ける側としても3か月の間でやるべきことが明確になりますよね。
オンボーディングプログラムで学んだことが定着するようにテストも作成しました。そのテストはほとんどの営業シーンで活かせる内容になっています。
—才流とのプロジェクトを振り返って、とくに印象的なことは何ですか?
池邉 才流に作ってもらったマニュアルを見たときですね。ここまで言語化されているということに感動しました。あまりの出来のよさに、自部署だけではなく社内の他部署にもお披露目をして、一部を参考にしてもらっています。
才流のおふたりは私の鼻歌を楽譜にしてくれる作曲家なんです。なので、打ち合わせが毎回楽しみだったんですよ。私がオファーしたことに対して、毎回期待を超えて表現してくださったので。
井出 それはうれしいですね。
伊藤 私は初回商談マニュアルが一番心に残っています。今期はたびたび期中入社があったので、オフィスステーション 労務について教える場面が増えました。
初回商談マニュアルのような型がない状態で研修を行っていたときは、その時々に自分が抱えている課題にフォーカスしてしまうので、研修ごとに話す内容にばらつきが出てしまっていたんです。入社のタイミングによって教える内容が異なるので営業チームの中で共通認識が持ちにくい状態でした。
マニュアルを作ってもらったことで、商談における重要ポイントや営業活動における共通認識が持てたことがとても大きかったなと感じます。
営業の型化の結果、受注率が1.4倍に
—営業の型化の取り組みの成果について教えてください。
池邉 伊藤が担当しているフィールドセールスのチームが、昨年度1年かけて達成した数字を10月末に達成しました。当社は3月末決算なので、1クォーター以上短縮できたということになります。
伊藤 シンプルに数字で言うと、営業の型化に取り組む前と比較して、受注率は1.4倍になりました。従業員規模の大きい企業からの受注も増え、受注規模(金額)は1.7倍になっています。
今期は新規メンバーが多かったにもかかわらずこれだけの成果が出ているのは、才流に営業マニュアルや提案資料のフォーマットを作ってもらい、営業を型化できた成果だと思っています。
安藤 くわえて、今年入社で初月目標未達のメンバーがいません。才流に作ってもらったマニュアル、私たちは教科書と呼んでいますが(笑)、その教科書のおかげだと思っています。
営業メンバーのマインド面にも成果を感じていて、とにかく資料を作る、使うという文化が根付いたと感じています。
フォーマットは、テキストを当てはめていくものになっているので、「楽しめる」という要素があります。社内の研修でも、こういう条件の企業だったらどういう与件整理スライドを作るのかみたいなことを、ゲーム感覚で取り組んでいます。
井出 成果の部分に関しては、才流が支援したからではなく、才流をうまく使っていただいた結果だと思います。
今回のプロジェクトは、「営業の型化」という明確な構想が御社にあったので、私たちはそのスピードアップのお手伝いをさせていただいたというイメージです。
ー才流に依頼されていなかったら、どのような未来があったと思われますか?
安藤 仮にセールステック的なものを導入していたとしても、私たちの抱えている課題の10%くらいしか解決されず、残りの90%は解決できてなかったのではないかと思います。
才流に作ってもらったマニュアルやツールは、自分で考えて使うことでより成果につながるものだと捉えています。型化ができただけでなく、メンバーの考える力を養えたことは大きいと思いますね。
(撮影:関口 達朗 取材・執筆・編集:三浦 一紀)