2018年現在、これまでのコンテンツマーケティングでは、オウンドメディアによるSEOが主流でした。しかし、今後はYouTubeがそのプラットフォームとなる可能性が出てきています。本記事では、企業のYouTube活用の可能性について、データを用いて解説します。
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YouTubeへシフトする企業が増えるのでは?
5年くらい前からよく聞かれるようになった、“コンテンツマーケティング”。そして、この言葉と対応するように出てきた“オウンドメディア”。Googleトレンドで調べてみても、両者の検索トレンドは見事に対応しています。
私は以前SEOサービスの法人営業をしていたのですが、この2つの言葉について、当時以下のようなSEO文脈で話していました。
競合性の高いビッグキーワードや、購買行動に直結するトランザクショナルクエリだけのSEOを考えるのではなく、競合性が低い情報収集系キーワードで潜在顧客を集客し育成する、いわゆるコンテンツマーケティングをしていきましょう。その手段としてオウンドメディアでキーワードの受け皿となる記事コンテンツ制作に注力しましょう
本来コンテンツマーケティングにおける“コンテンツ”は記事コンテンツだけではないですし、届ける方法も検索エンジン経由だけではありません。しかし、この2つの言葉をSEOの文脈で使っている方も多いのではないでしょうか。つまり、Google検索からの流入(=SEO)を前提とした意味合いです。
しかし、ここ最近はコンテンツマーケティングの前提であった「Google」というプラットフォームから、徐々に「YouTube」というプラットフォームにシフトする企業が増えるのではないかと思っています。本記事では、このYouTubeシフトについて考察してみます。
視聴時間が伸びているYouTube
言わずもがなですが、テレビの視聴時間は年々減少している一方、ネット系動画の視聴時間が伸びています。以下のとおり、とくに10・20代はネット系動画の視聴時間が年々長くなっています。
また、どのメディアで動画視聴しているかというとやはりYouTubeが圧倒的な数です。以下のグラフで示されている通り、PC・スマホ、年代・性別問わず、YouTubeで動画を視聴しています。つまりこの2つのデータをもとにすると、YouTubeでの動画視聴が伸びていると判断できます。
YouTubeは商品の発見・検索の場にもなっている
YouTubeは、単純に動画視聴時間が伸びているだけではありません。以下のデータが示すとおり、10代にとってはYouTubeが「気になる商品・サービスを見つける場」にもなっています。
そしてこの調査がおもしろいのは、世代間によって商品を見つけるプラットフォームが異なるということ。30代はGoogle検索で商品・サービスを見つけており、このデータからでもプラットフォームシフトの一端が垣間見えます。
以下は30代女性の調査データですが、気になった商品・サービスをYouTubeで検索したことのある方は40%という結果。30代も商品をより深く知る・確認するというところでは、テキストや画像メインのWebサイトではなくYouTubeを活用していると考えられます。
企業視点で考えてみると、YouTubeは商品・サービスの発見~学習~購入前の確認まですべてのプロセスにおいて、ユーザーとの接点を持てるプラットフォームになっています。
CM置き場と化していた企業YouTubeチャンネル
一方、これまでの企業のYouTube活用はどのようなものだったかというと、恐らく以下の3つに集約されます。
- 広告(TrueView)
- YouTuberタイアップ
- 自社チャンネル
1、2は分かりやすく、費用を払って情報を届ける方法。注目すべきは3のチャンネル活用です。多くの企業は、自社でコンテンツを制作しYouTube上のユーザーにアプローチする施策をしてきませんでした。そしてチャンネルに動画をアップする場合も、コンテンツとして消費できるようなものでなく、TVCMやプロモーション用動画をアップしている場合がほとんど。
auのチャンネルのように、既存顧客向けに機器の設定方法などの動画をアップしている企業もありますが、潜在顧客に向けた、いわゆるコンテンツマーケティングを実施する企業はこれまでほとんどありませんでした。
YouTubeチャンネルを活用した「イヴイヴ」
YouTubeをうまく活用してコンテンツマーケティングを展開しているのが、婚活マッチングアプリ「イヴイヴ」を運営するMarketDrive社。大手競合がひしめくマッチングアプリ市場に後発参入ながら、YouTubeを活用したマーケティング施策がハマり、サービスを伸ばしています。
ご覧のとおり、イヴイヴというサービスを一番に訴求するチャンネルではなく、あくまで「恋愛サポートメディア」としてチャンネルを運営。開設2年弱で累計再生回数1億回を超え、チャンネル登録者数も10万人を超えています。
アップされている動画も、TVのような作られたコンテンツではなく、素人インタビューというYouTube受けするリアルさのあるコンテンツになっています。
潜在顧客である出会いを求める男女に対して、異性の本音というコンテンツでアプローチ。動画の最後にしっかりとアプリの紹介をすることでアプリダウンロードに繋げています。
MarketDrive社にインタビューしたところ実際に高い成果も上げているとのことで、CPI(インストール単価)は業界平均の50%ほどで抑えられているとのことでした。
※関連記事:コンテンツマーケティングの主戦場はGoogleからYouTubeへ。マッチングアプリ『EveEve』のYouTube活用に迫る
イヴイヴの場合、YouTubeのコンテンツが
- 潜在顧客へのアプローチ
- サービス認知
- 興味喚起
- アプリダウンロード
- 利用顧客の学習
といったそれぞれのプロセスで役割を果たしており、YouTube上でうまくコンテンツマーケティングを実施している好事例となります。
GoogleからYouTubeへシフトする上での注意点
コンテンツマーケティングをするうえで大事なポイントの一つが、どのようにコンテンツを届けるかという点です。GoogleとYouTubeでは、ユーザーのコンテンツ接触までが以下のように異なります。
Google:「キーワード」による「能動的な検索」
YouTube:「コンテンツ閲覧」による「半受動的なレコメンド」
Googleの場合、ユーザーが能動的に検索するので、どのようなキーワードで検索するか、そのキーワードの背景にある課題・ニーズを満たせるコンテンツ制作が重要になります。
一方YouTubeの場合、検索流入が10~20%で関連動画等のレコメンドによる閲覧が60~80%を占めるチャンネルが多いので、ユーザーがどのようなコンテンツを好んで閲覧しているか? 発信したいコンテンツはYouTube上のどのようなコンテンツと関連性があるか? という点が重要になります。
また、能動的な検索ではないので、レコメンドされた動画が興味を引くテーマであり、目を引くサムネイルになっているか? という点が重要になります。
ちなみにYouTuberもこのような点を考慮してネタを企画しており、YouTuber界隈で同じ企画の動画をアップするのは、関連動画等のレコメンドで自分の動画を見てもらおうとすることが一因としてあります。
懸念点となる制作費
施策を進めるうえで一番のネックになるのが、やはり制作費用です。動画コンテンツ制作費用はテキストの記事作成費用の数倍かかるため、一歩を踏み出せない企業も多いでしょう。
ただし、以下のような工夫を施すことで動画一本あたりのコストは下げられます。
- 動画フォーマットを画一化
- 画一化による分業・アウトソーシング活用
- 内製チームの組成
- 同日での複数本分撮影
先ほどの事例におけるMarketDrive社も、上記のような工夫をして動画一本あたりの制作コストを下げています。
また、過去のコンテンツが資産となり閲覧され続けるので、今後のプラットフォームシフトに備えて今からYouTubeチャンネルに投資しておくというのも考え方の一つです。競合が始める前にファーストペンギンとして多くのコンテンツを持っておくことは、大きなアドバンテージになります。
おわりに
コンテンツマーケティングの主戦場がGoogleからYouTubeへシフトしてきそう、と書いてきましたが、ユーザーがYouTubeで能動的に検索する習慣がつき始めると一気にシフトが進むと思っています。意図を持ったユーザーにアプローチしたい企業は多いからです。
「なりたい職業ランキング」にYouTuberがランクインしましたが、個人が多様なコンテンツをアップすると検索の受け皿が増え、徐々に検索ニーズに耐えうるプラットフォームになっていくのではないかなと思っています。
その時にはコンテンツマーケティングという言葉と対応するのは、オウンドメディアではなくオウンドチャンネルになっているかもしれません。
※関連記事:ゼロから学ぶBtoB企業のYouTube運営【基礎編】
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