採用では、母集団形成や選考プロセスなどのあらゆる場面で課題が発生しがちです。実際に、企業の採用担当者からご相談いただく課題の種類は多岐にわたります。
しかし、採用のさまざまな課題を解決するのに役立つ施策があります。それは、実際に入社した社員のリアルな声を集めること。転職活動時の自社に対する印象や、入社後の想いをつぶさに語ってもらうインタビューやアンケートです。入社者のリアルな声には、採用活動にいかすことのできるエッセンスがたくさん詰まっています。
そこで本記事は、入社者アンケートのやり方と、アンケートを採用の改善に活用する方法を解説。簡単にコピーしてそのまま使えるGoogleフォームのテンプレートをご用意しました。
アンケートの意図や活用方法を正しく理解し、自社の採用活動の改善にぜひお役立てください。
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入社者アンケートとは
入社者アンケートは、自社に入社した社員に対して、入社するまでの転職活動の詳細、また転職活動時や入社後の自社の印象についてヒアリングする施策です。Googleフォームなどのツールを活用すれば、オンラインでアンケートを実施できます。
対面でのインタビューとは異なり、オンラインでの入社者アンケートは自社で活躍している社員の業務時間を大きく拘束することなく、好きなタイミングで回答してもらえるというメリットがあります。
入社者アンケートを実施する前に、まずは目的と実施タイミングについて確認しておきましょう。
実施の目的とタイミング
入社者アンケートを実施する目的はいくつかあります。ただし、目的によってアンケートの実施タイミングが異なるため、注意が必要です。
1.入社時アンケート
応募者へのアプローチ方法や面接方法など、採用プロセスにある問題点を把握したい場合、また競合と比較して自社が優れている点など、採用における自社の強みを把握したい場合は、入社時にアンケートを実施するのが効果的です。
入社から間もない社員は、自社の選考を受けた当時からさほど時間が経過していません。自身の転職活動における体験や思いなどが記憶に新しく、より深い情報を社員から聞き出せます。
アンケートでは、転職活動中に体験したこと、転職活動時にどうやって自社を知ったか、自社に対し魅力的に感じたこと、入社の決め手についてヒアリングしましょう。
2.入社3か月後または6か月後アンケート
入社前と入社後のギャップや自社の魅力を把握したい場合、入社3か月後または6か月後にアンケートを実施するのが効果的です。
入社後3か月または6か月が経過した社員は、入社から一定期間経過し、かつ入社前の転職活動も記憶に新しいはず。自社について理解を深めたタイミングで、正しく情報をヒアリングできる時期です。
アンケートでは、入社して印象が変わったこと、実際に働いてみて発見した自社や仕事の魅力について聞いてみてください。
TIPS:全社員にアンケートを実施したほうがいいケース
アンケートを活用して早期に採用活動を見直したいのであれば、いますぐ在籍している社員に同様のアンケートを実施するのがおすすめ。全社員を対象にするなどできるだけ広くアンケートを実施しましょう。
先ほど述べたように、入社者アンケートは入社後すぐのタイミング、入社後3か月または6か月のタイミングで実施するのが効果的。しかし、現時点で入社者がいない場合は、在籍している社員を対象にアンケートを実施します。なぜなら、未来の入社者を待ってアンケートを実施するだけでは、十分な量の情報を取得するのに時間がかかってしまうからです。
全社員へ広くアンケートを実施することで、職種や入社時期が多岐にわたる社員の声を集められます。あらゆる採用ペルソナにおいて、自社や自社で働くことの魅力を発見・言語化し、応募者に向けて効果的にメッセージを伝えるためのデータを収集できるでしょう。
入社者アンケートの作成方法
入社者アンケートを実施する前に、まずは設問の内容を検討します。アンケートを採用の見直しに活用するためには、それぞれの設問の目的を把握し、採用活動の改善に貢献できるように設計しなければなりません。
また、入社者アンケートでは、できるだけ多くの情報を集めるために回答率を上げることが重要です。社員に負担がかかりすぎないよう、設問の項目数を絞る必要があります。
しかし、ゼロからアンケートを設計するのは大変です。そこで才流では、そのまま使える入社者アンケートのGoogleフォームテンプレートをご用意しました。
テンプレートでは、10分程度で回答できる内容に絞って設問を作成しています。自社の状況に合わせて、回答数を調整してご活用ください。
入社者アンケートの準備
才流のテンプレートを使った入社者アンケートの作成方法について解説します。
- まずはGoogleフォームをコピーするために、以下のテキストリンクをクリックしてください
入社者アンケートのテンプレートをコピーする(Googleフォーム)
※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとフォームをコピーできます。
※フォームのコピーにはGoogleアカウントへのログインが必要です。
2. 以下の画面が出たら、「コピーを作成」ボタンをクリックしてください。Googleフォームがコピー(※)され、編集画面に遷移します
※マイドライブに保存されているかどうかを確認してください
3. Googleフォームの編集画面が出たら、必要に応じてアンケート文中の「自社」を自社名に変更してください(例:自社→才流)
4. アンケートの項目数や設問の内容を自社の状況に合わせて修正してください。完成したら、右上の「送信」ボタンをクリックして、対象社員へ展開します
収集した回答は、スプレッドシートなどにエクスポートして分析に活用しましょう。
各設問の目的と活用方法
テンプレートの設問に沿って、アンケートを採用活動の改善に有効活用するためのポイントを解説します。各設問にどのような目的があるのか、どのように活用するのかを把握しましょう。
設問1:入社時期(〇〇年入社)
設問の目的:個人の特定による回答率の低下や記載しづらさを避けつつ、入社時期による傾向を分析する
活用方法:時期別の打ち出し方の評価・改善に活用する
入社者数が少なければ「◯年入社」、入社者数が多ければ「◯年上半期入社」のように単位を調整しましょう。
設問2:前職の業界・職種
設問の目的:異業界や異職種からの採用にどのような傾向があるかを把握する
活用方法:採用ペルソナの作成や改善に利用する
同業界×同職種に限定した採用を実施している場合、本設問は不要です。
設問3:転職を考えはじめたきっかけ
設問の目的:転職意欲の背後にある動機を理解し、訴求メッセージの精度を高める
活用方法:採用ペルソナの作成や改善に利用する
回答は選択型ではなく自由記述がおすすめ。人事が想定していない意外な回答が期待できるためです。
設問4:今回の転職活動で応募していた業界や職種
設問の目的:採用競合を把握する
活用方法:自社の立ち位置を理解し、競合との差別化を図る
設問5:転職活動で利用した媒体名・サービス名
設問の目的:自社の採用に効果的な採用手法、サービスを探る
活用方法:新たな採用手法、サービスを検討する。既存の手法、サービスを見直す
転職希望者は複数の媒体や手法を併用するケースがほとんど。自社への応募経路だけを利用していたとは限らないためです。
設問6:転職活動でもっとも利用したサービス名
設問の目的:採用手法の優先順位をつける
活用方法:採用手法やサービスを利用する際の優先度を判断する
自社に応募した際のサービスを単体あるいはメインで利用していたとは限らないためです。
設問7:自社と同時に応募した社数
設問8:自社と同時に面接した社数
設問9:内定が出た社数
設問の目的:採用競合となる企業数や転職者目線でのリアルな競争環境を把握する
活用方法:採用プロセスを改善する。自社のオファーに魅力があるか評価する
内定数が1社(=自社のみ)の社員が多い場合、併願先で内定が出ていれば自社を辞退されていた可能性もあります。どんな競合にどのような理由で負けているかを把握し、対策しましょう。
設問10:応募時(面接前)の自社への印象
設問の目的:採用ブランディングどおりの印象を与えられているかを把握する
活用方法:採用サイトや求人票のメッセージ、掲載情報を改善する
設問11:自社への入社を決めた理由(複数ある場合には決め手となった順に記入)
設問の目的:自社が選ばれている理由から採用が成功した要因を把握する
活用方法:成功要因を強化し、類似する経歴を持つ転職希望者への訴求に活用する
設問12:入社後の自社の印象
設問の目的:オンボーディングに対する満足度を評価する
活用方法:ポジティブな声は採用サイトや求人票に反映し、訴求内容を改善する
設問13:入社前後でのギャップの有無
設問14:(上記で「あった」と回答した方は)その内容
設問の目的:採用メッセージと実際のギャップを特定する
活用方法:ギャップが生まれないように求人のメッセージを改善する
入社前後のギャップは発生しないことが望ましいです。面接のときから正しい情報と印象を与えられるよう心がけましょう。
設問15:自社の魅力だと感じている点
設問の目的:採用ターゲットに対する新たな訴求ポイントを発見する
活用方法:採用サイトや求人票に反映し、訴求内容を改善する
設問16:入社前に面接官・採用担当者から応募者へ伝えたほうがいいと感じていること
設問の目的:各採用プロセスで候補者に伝えておくべき内容の不足項目を把握する
活用方法:候補者へ提供する情報を最適化する
設問17:自社で活躍できると思う人材の特徴
設問の目的:採用ターゲットを定義するための参考情報を収集する
活用方法:採用ターゲットを再定義する。訴求内容を改善する
入社者アンケートを採用活動の改善に活用するポイント
入社者アンケートを通じて集めた貴重な声は、採用活動を改善するためにさまざまな形で利用可能です。以下のような候補者との接点を改善する場合も、入社者アンケートを有効活用できます。
【候補者との接点の例】
- 自社の採用サイト
- 求人媒体に掲載する原稿
- スカウト文面
- 人材紹介会社へ共有する情報、求人票
- 採用面接
- 会社説明会
- SNSでの情報発信
ここからは、入社者アンケートを活用した採用活動改善のポイントについて解説します。
1.ポジティブな回答は訴求ポイントとして活用
採用サイトや求人媒体など、候補者との間にはさまざまな接点があります。それぞれの接点を改善する際は、入社者アンケートで得られたポジティブな回答を活用しましょう。
たとえば、社員のリアルな声や自社の魅力は訴求ポイントになります。また「先輩社員の声」としてそのまま紹介すれば、自社で働く魅力を候補者に上手く伝えられるでしょう。
2.ネガティブな回答は要因を把握して改善
アンケートによって、入社後にネガティブなギャップが発生している社員が一定数いることが発覚した場合、今後の早期離職につながっていくおそれがあります。ネガティブなギャップがなぜ生まれているのかを正しく理解し、求人票などに誇張された表現はないか確認しましょう。また面接時や入社前のフォロー時に正しく期待値調整をすることが望ましいです。
ただし、回答を「全社員の総意」とひとくくりに捉えないよう注意が必要です。職種や入社タイミングによる違い、併願企業数の変化などさまざまな切り口から回答を分析してみることをおすすめします。自社を取り巻く環境がどのように移り変わっているのか、候補者の思考がどのように変化していくのかを知るヒントが見つかることもあるでしょう。
3.アンケートは目的によってカスタマイズ
アンケートの設問は目的によってカスタマイズできます。たとえば「併願していた企業名」を聞くことで採用競合企業を把握できる、「面接時の面接官の印象」を聞くことによって面接改善に役立てられる、などです。
また、匿名で実施するか、記名で実施するかも目的によって選択します。たとえば、匿名形式の場合は忌憚のない意見を集められるというメリットがあります。記名式の場合、ポジティブな回答をそのまま社員インタビューに反映できること、採用説明会での社員登壇者の検討や内定時のフォロー要員の発掘に活用できることがメリットです。
本記事のテンプレートをベースとして、自社が知りたい入社者の声を収集できる項目を追加・活用してください。ただし、設問の数は短時間で答えられる範囲内で設定することを推奨します。
採用活動の改善において、入社者のリアルな声は大変重要な、また貴重な情報源。アンケートという手法によって、入社者に大きな負担をかけることなく集めることができます。
ぜひ本記事のテンプレートを活用いただき、採用活動のブラッシュアップをご検討ください。一人でも多くの候補者に皆様の会社の魅力が伝わることを願っております。
(執筆・編集/金田明子)