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KGIとKPIをつなぐ「顧客価値」の指標策定でやるべき施策が見えた。プロダクトマネジメントの事例

NRIセキュアテクノロジーズ株式会社

https://www.nri-secure.co.jp/

業種

ITサービス(SaaS)

従業員数

500名〜999名

課題

プロダクトマネジメントにおける課題を解決したい

▲写真左から:NRIセキュアテクノロジーズ  DXセキュリティ事業本部 GRCプラットフォーム部セキュリティコンサルタント 神野 宰平様、同部セキュリティコンサルタント 川﨑 聡太様、才流 新規事業部門責任者 石田 啓、コンサルタント 藤原 健
コンサルタント
石田 啓
コンサルタント
藤原 健

セキュリティに関する調査・分析、戦略立案からソリューションの導入・運用、人材教育までトータルに支援するNRIセキュアテクノロジーズ株式会社。

才流では、2020年からマーケティングの戦略立案や施策実行を支援しています。今回はその過程で伺った「プロダクトの課題」に対し、才流の新サービス「プロダクトマネジメント支援」を行った事例をご紹介いたします。

戦略立案までの3か月、仮説検証の3か月を経て、どのような成果があったのでしょうか。プロダクトマネージャー神野様、ビジネスリーダーの川﨑様にご協力をいただき、率直な感想を伺いました。

支援プロダクトSecure SketCH(セキュアスケッチ)

2018年にリリースされたセキュリティ評価プラットフォームのSaaS。
各種ガイドラインに沿ったセキュリティ評価を、Web上で設問に回答するだけで実施・見える化。セキュリティの専門家ではない現場担当者や経営者でも、スコアリングでわかりやすく自社のセキュリティ状況を把握できる。グループ会社や委託先の評価も一元管理が可能。導入社数は、現在4,000社以上

プロダクト誕生の背景

  • セキュリティ対策評価のコンサルティングサービスを提供していたが、セキュリティへの脅威が高まり、社内の人的リソースが足りない状況にあった
  • セキュリティの評価を「難しい」と感じているお客様が多く、よりわかりやすいサービスを提供できないかと考えていた

プロダクトマネジメントの課題

  • 数値目標はあったものの、プロダクトの大きな戦略を考えきれていなかった
  • 限られた工数をどこに使うべきか、社内で統一されていなかった

プロダクト支援後の成果

  • 顧客価値指標が定まり、KGIとKPIや施策がつながった
  • やるべき施策が具体的に見え、効果の振り返りもできるようになった
  • 関係部署の顧客解像度が上がり、共通言語ができた

※KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標。売上高や利益率など、最終的な目標を表す指標
※KPI(Key Performance Indicator):KGIを達成するためのプロセスを評価する中間指標

企業のセキュリティ対策への危機感は高まっている

「Secure SketCH」はどのような背景で開発し、今に至るのでしょうか。

川崎 近年セキュリティ事故や問題が増え、お客様のニーズも急速に高まっています。

われわれは、セキュリティ評価のコンサルティングを提供していますが、人的なリソースの問題もあり、なかなかすべてのお客様にスピーディーに対応できないという課題を抱えていました。

そもそもセキュリティというのは、一般の方にとって「複雑で難しいもの」というイメージがあります。何からやったらいいのかわからない、という声もよく耳にしました。

そこで、製品でこの2つの課題を解決するために考えたのが「Secure SketCH」。人的リソースの制約がなく、自社のセキュリティ状態をWebでわかりやすく可視化できるSaaSです。

ポイントは、大量の統計データを駆使し、他社との違いなどをひと目でわかるようにスコアリングをしているところです。担当者も理解しやすく、経営陣に対して自社の現状を伝えやすいとご好評をいただいています。

リリースから3年、徐々にみなさまに認知していただき、導入社数は4,000社を超えました。

▲ビジネスチームのリーダーとして、セールス・マーケティング・サービスの企画を担当する川﨑様

「顧客の価値は何なのか」KGIとKPIをつなぐ指標の重要性

今後のさらなる成長のために、課題になると考えていたことはありますか。

神野 当然ながら売上の数値目標は立てていたのですが、プロダクトとして大きな戦略を練りきれていなかったことは課題でした。

例えば顧客訪問や営業の際「ここをこうしたほうがいいんじゃないか」「こういう機能もほしい」などのご意見があると、その意見に引っ張られてしまう。限られた開発リソースをどこにあてるべきか、迷ってしまうことも多かったんですよね。

そのような状態だったので、新しい機能を作っても、それが良かったのかどうか。評価できる仕組みもきちんと整えきれていませんでした。

また、「Secure SketCH」には1社単体で利用するPREMIUMプランと、複数拠点の評価ができるGROUPSプランがあります。2つのプランのどちらに重点を置いて施策を打つのか、社内でも統一の認識を持てていませんでした。

判断の軸となり、拠りどころとなる「大きな戦略」の必要性を感じていました。

▲プロダクトマネージャーとして、製品企画・開発・デザインチームの統括・プリセールスなどを行う神野様

石田 最初にヒアリングをさせていただいた中でも、KGIは決まっていたし、一つひとつの施策はしっかりと実行する体制を作っていらっしゃると感じました。

一方で、Secure SketCHとして、これから数年先何にフォーカスをしてプロダクトの方向性を決めていくのか。まだ定まりきっていない状況はあったと思います。 プロダクトマネジメントで重要なのは、「顧客がどのような価値を感じるか」という観点で方向性を設定すること。それを一緒にやっていきましょうとご提案をさせていただきました。

▲まず「顧客価値」を定義し、それに向けた機能やサービスを開発する必要がある

神野 ご提案の中でも、顧客の価値を定義し、指標化してから戦略を立てるというのは、まさにわれわれに足りない部分だと感じました。

KGIを達成するために、顧客価値指標をどのように分解し、KPIを作っていくのか。プロダクトマネジメントの定石のようなことができていなかったんだと、あらためて気づきました。 ※顧客価値指標とは:海外ではNSM(North Star Metric)と呼ばれ、Netflixなど急成長プロダクトで採用されている指標

顧客インタビューで解像度を高め、インサイトを発見

ー 提案後、具体的にはどのような施策を行ったのでしょうか。

石田 「顧客価値指標」を決めるためには、まず顧客の解像度を高める必要があります。そこで、見込み顧客、既存顧客にインタビューを行いました。また、直近3年くらいの受注・失注データを全部ご提供いただき、私と藤原で分析を行いました。

すると、「ある特定のニーズで問い合わせが多い」という大きなインサイトが見えてきたんです。そもそも、1拠点で利用する場合と、多拠点で利用する場合では、お客様のニーズはまったく違います。他拠点で利用するGROUPSプランに問い合わせをいただいた顧客は、明確な課題意識を持っていました。

▲ 才流 新規事業開発責任者 石田啓

Secure SketCHが「Must Have SaaS」になるためには、多拠点管理で顕在化している課題を解決するストーリーを提示しなければいけないと思いました。また、後に発生する経営現場とのコラボレーションを円滑に進めるためには、コラボレーションをいかに実現させるか。ここが顧客の価値に大きく影響するポイントだと判断しました。

▲ Secure SketCHの顧客価値を「多拠点管理」と「コラボレーション」と定義

期間としては、戦略を決定するまでに3か月、その後3か月は藤原が中心になり、仮説検証を行いました。

藤原 後半3か月の仮説検証は、前半に決定した顧客価値をいくつかの指標に分解し、特にボトルネックとなっている部分にフォーカスしました。

具体的には、課題感が強く、機能開発なしでクイックに検証できるという観点から、「登録からセキュリティ評価を行うまで」のオンボーディングフェーズを対象に決定。実際にセキュリティに課題を感じている才流のバックオフィスメンバーに、登録から初回のセキュリティ評価までを通して実行してもらいました。

正直、なかなか厳しい意見もありました。でも、お客様の成果を出すことが一番重要なので、遠慮して言わないという選択はなかったですね。

セキュリティに課題を感じている方に実際に使ってもらい、フラットに出てきた声というのはやはり説得力がある。しっかりとフィードバックをさせていただきました。

また並行して類似のSaaS企業がどんなオンボーディングを行っているかを整理し、顧客にどんなステップで利用を進めてもらうかを議論しました。

SaaSにおいてオンボーディングは、利用継続率に響く大きなファクターです。 副次的ですが、オンボーディングの仮説検証を行うことで、「一度セキュリティ評価をした後に継続利用を促すために、カスタマーサクセスはどうあるべきか?」という議論にもつながりました。

神野 プロジェクトを振り返ると、顧客解像度を高めて、顧客価値指標をきちんと定義できたことはとても価値があったと思います。顧客価値指標をもとに、具体的な施策について議論できるようになりました。

▲多拠点管理の価値指標を「アクティブ回答拠点数」と決定。価値指標の達成に向けて、必要な施策を打つ道筋を立てた

また、私自身は開発側の立場なので、これまでお客様と直接お話をする機会は多くなかったんです。顧客インタビューでお客様のリアルな声や課題を聞いて、まだまだ顧客への理解が足りなかったと感じましたね。プロダクトマネージャーとして、もっと積極的に営業同行などもしていこうと思うきっかけになりました。

川崎 私も、顧客インタビューは新鮮でした。中にいると、プロダクトの営業や導入に慣れすぎてしまって、どうしてもプロダクトを知らないお客様の視点とずれてしまうことがあると思うんです。

今回インタビューで、しっかりとお客様の思いを聞けたことで、解像度が上がりました。

神野 自分たちで顧客インタビューを行うというのは、実際なかなか難しいと思うんです。お客様も、われわれが直接聞くと、本音を言いにくい。ですから、第三者として才流に入っていただき、深掘りして話を聞いていただけたのはとても良かったと思います。

顧客解像度が上がり、共通認識を持って進める強いチームに

ー今回のプロダクト支援について、社内で共有されましたか。

神野 共有しました。デザイナーは、プロダクトのメンバーと同じで、顧客から直接話を聞いたりする機会はほとんどなく、これまでは顧客解像度が高いとは言えませんでした。ですから「顧客はこういう課題があるから、このデザインだよね」のような本質的な議論が、なかなかしきれていなかったんです。

今回顧客のことを深く知れたことで、デザインがしやすくなったという声がありました。 またエンジニアリングマネージャーとは、実際どういうふうにKPIを出していこうかと、戦略に沿って具体的な話ができるようになりました。ツールを使って施策の振り返りも進めています。

川崎 これまでは、チーム全体で持っている情報や見えている部分が違うという課題はあったんですよね。今回顧客の解像度が高まったことで、共通認識を持って前に進めるようになりました。これは大きな成果だったと思います。

「経験をふまえて、言いにくいことも本音で語ってくれる」

ー 才流とのコミュニケーションはどのように行っていましたか。

川崎 隔週の定例ミーティングのほか、仮説検証の際は個別にやりとりなども行っていました。わからないことや気になることがあればSlackで随時聞ける体制を作っていただいたので、やりやすかったです。

あとは、石田さんと藤原さんは、見つけたWeb記事や他社の事例、ベストプラクティスなどをよく共有してくださいました。これも非常に参考になりました。

神野 定例会の中でも、「競合サービスはこうやっている」「成功しているサービスはこう」など、事例を踏まえておっしゃっているので、とても納得感がありました。

ズバッと本音を言ってくださるのも、良かったですね。本当はわれわれが社内で言わなきゃいけないこととか、気づくべきことがあると思うんです。なかなかできていなかったことを、第三者視点ではっきりと言ってくださったので、すごく良かったと思います。

▲コンサルタント 藤原健

川崎 今回のプロジェクトを振り返ると、全体として、経験をふまえたご提案をいただけたことがとても心強いと感じました。

「Secure SketCH」は多くの企業に使っていただくために、無料プランから始められるサービスです。無料で使えることで利用企業が増え、セキュリティ評価状況などの統計データがどんどん溜まり、業種別の評価状況や設問別の対応状況などがわかるのです。

当社では企業内新規事業は複数ありますが、このようなSaaSを提供するのは初めてだったので、「本当にこれでいいのか?」と不安に思うこともありました。プロダクトやサービスを作っている人間としては、悩みはつきないんですよね。

いろいろな課題が出てくる中で、課題を体系的に整理し、判断に迷ったときに一緒に付き合っていただける存在はとてもありがたいと思いました。才流にプロダクト支援に入っていただいた大きな価値だと思います。

また、これは今後の期待ですが、顧客価値指標が出てきた後から、施策を実行する部分で伴走していただけると、よりプロダクト支援の価値は高まると思っています。 

神野 私は、アウトプットの部分。プロダクト戦略を策定でき、顧客価値指標やKPIを実現するための道筋ができたことは大きな価値だったと思います。 戦略を策定してもらったあとに、カスタマーサクセスの課題の洗い出しや取り組みの方向性などもご提案していただきました。今後は施策実行部分の伴走も期待しています。

ー 才流のプロダクト支援は、どのような会社やフェーズのプロダクトにおすすめしたいと思いますか。

神野 まだPMFをしていないプロダクトは、まず戦略をしっかりと作らなければいけないと思います。そういったフェーズのプロダクトには、おすすめですね。

あとは、PMF後でプロダクトが成熟してきたとき。方向転換をしたり、拡大したりするフェーズで、戦略をしっかりと考え直していく必要があると思います。そういうときにも、課題や方向性を整理するために才流に支援をしていただくのは良いと思います。

(撮影/矢野 拓実 デザイン/垰本 千代 取材・文/安住 久美子 編集/森 駿介)


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