株式会社マルチブック様は海外拠点管理に最適なクラウド型会計・ERPサービス「multibook」を展開するベンチャー企業です。才流(サイル)では、2021年4月からコンサルタントの金森がマーケティング支援を行ってきました。
その中で出てきた課題が、人材採用。より一層 事業を加速させるフェーズに入り、マーケティング担当者の採用について取締役CROの福井様から相談を受けました。 売り手市場であり、母数が少ないBtoBマーケターをいかにして採用するか。その課題を解決する「製品理解の解像度は高いBtoBマーケティング未経験者を、研修によるインプットと実務開始後の綿密なサポートとフィードバックで育てる」という一気通貫の施策について、取締役CROの福井様とマーケティング担当の福島様にお話を伺いました。
株式会社マルチブック
海外拠点管理に最適なクラウド会計・ERPサービス「multibook」の企画・開発・提供を手がける。上場企業から非上場企業まで、世界30ヵ国以上、250社以上で利用されている/2000年創業/従業員数48名(2022年3月時点)
【ご依頼前の課題】
- マーケティング担当者を採用したい
- しかし、BtoBマーケターの採用は難しい
- 採用後の教育体制も整っていない
どんな人がマーケティング担当者に適しているだろう?すでに全体戦略の支援で信頼していた才流に相談
ー 採用に関してどんな課題がありましたか。
福井 実は、当初マーケティングの仕事をなめていたんです。Webサイトを作ってGoogle広告でも使えば、何とか集客できるだろうと思っていました。しかし、実際に手を動かしてみると思い通りに行かない。そんな中で才流さんに支援を依頼し、施策提案をいただいて「マーケティングって、やることがたくさんあるじゃないか!」となったんです。
スピード感をもって回していくためには、やはり専任のマーケティング担当者が必要だろう、という結論にいたりました。
採用要件を決めるにあたっては、マーケティング戦略の支援で結果を出していただいた金森さんに相談しました(※戦略支援の内容はこちら)。マーケティング組織の立ち上げも一気通貫で見ていただくことで、さらに最適なご提案をいただけるからです。実際、マーケティング支援の経験をもとに最適な採用要件を取りまとめていただき、とても助かりました。
金森 特に今、BtoBマーケターの経験者は売り手市場ですよね。適任者を探して採用することは厳しい状況なので、製品理解・顧客理解の解像度が高い人を採用するべきだ、とお伝えしました。BtoBマーケティング知識のインプットは何とかなりますが、その業界の顧客理解の解像度を上げるのは、少なくとも5年以上の業界経験は必要だろうと考えたからです。
福井 製品理解・顧客理解の解像度が高い人となれば、同業界であるSAPやERPのコンサルタントだろうと候補者のイメージをふくらませました。売り手市場ながらもキャリアパスについて悩んでいる人は少なからずいる、という確信は自身の経験からもあったので、具体的な採用求人を用意できました。
今回入社した福島さんは、前職の経験がマルチブックの製品・サービスと同じERP領域だったため、製品理解・顧客理解の解像度が高かった点が採用の決め手です。必須となる英語力もあって、人柄もよくドンピシャな人材でしたね。
ー どのようにプロジェクトを進めたのでしょうか。
金森 もともとマーケティング支援の一環として、福島さん入社後のオンボーディングをする予定ではいたのですが、立ち上がりをしっかり面倒見て欲しいという福井さんの言葉に後押しされて、採用支援+育成支援というパッケージでご提案させていただきました。
育成支援に関しては、最初の1,2週間で90分×4回にわたるBtoBマーケティングの重要ポイントをインプット。その次にマルチブックのマーケティング戦略・施策の共有をして、これまでどんな状態でどんな活動をしてきて、どのような変化があったのか把握いただくようにしました。
入社後2週間目くらいから、私が代わりに行っていた実務作業を福島さんにレクチャーしながら少しずつパスして、着実に進めていただけるようにしました。実務を進める過程で気になる点はいつでも相談できるような体制も作りましたね。悩んだらすぐ相談、アウトプットしたら都度フィードバックするという形で、3か月のプログラムを提供しました。
ー 採用から研修まで才流に依頼した理由は?
福井 決して意思決定を丸投げしたわけではありません。マーケティング施策を加速させる選択肢のひとつとして人材採用が出てきたので、伴走してもらっている金森さんに相談をしたという経緯です。採用要件や育成支援など、金森さんの提案には説得力があったため、下手に口出しをせず金森さんにお願いすることに決めたという流れですね。
とにかく相談しやすい環境。
悩みながらも前に進み続けることができた
ー 実際の育成支援で、よかった点は?
福島 とにかく困ったらすぐ相談できることですね。私は未経験で右も左も分からない状況でしたが、金森さんが道先案内人として都度手を差し伸べてくださったので、とても助かりました。
悩んだときSlackに書き込んだらすぐに返信が来て、まるで専属の家庭教師がついたような感覚です。最初の2週間なんて、ほぼ毎日金森さんと連絡を取り合っていました(笑)。
金森 そうでしたね。30分の週次定例に加えて、いつでも相談できる仕組みを作ったのが良かったと思います。Slack上のDMでの相談と、打ち合わせ可能な時間をTimerexで共有。課題が発生したタイミングで即座にキャッチアップする、という体制をうまく活用していただけました。
福島 実際の業務においても「なぜやるのか」「どういうアウトプットをする必要があるのか」という点を明示していただけたので、自身の中でも業務をかみ砕いて着実に進めていけました。
その他でよかった点としては、書籍による事前インプットの補足説明をもらったことです。入社前に金森さんから共有されていた課題図書に目を通してはいたのですが、自分の中で完璧に腹落ちできていないパートがありました。 入社初期、4回にわたってBtoBマーケティングの重要ポイントを説明いただく際に、書籍にも記載されているようなセオリーを説明していただきながらも、「マルチブックさんの場合は、こうです」と金森さんが私たちに合わせた補足説明をしてくださって。解像度が一気に上がりました。書籍学習や一般的な研修との違いは、ここにもあると思います。
福井 福島さんが未経験ながらも、金森さんとやりとりしながら前に進んでいる様子を見ていたので、とても安心感がありました。もちろんすべてのタスクに対して何の課題もないわけではありませんでしたが、都度コミュニケーションを取って解決していってくれたので、大きな問題はありませんでしたね。
金森 福井さんからのご依頼で、福島さんの業務サポートの進捗を報告書にして毎月提出していました。「福島さんが今どのような状況なのか」をつぶさに共有できた点は、サービス品質を進める上でとても役に立ったなと感じています。
【業務サポートの報告書で共有していたことの例】
- 月ごとに、どんなサポートをしているか
- マーケティングにおける、どの部分は福島さんにお任せできるようになっているか
- 福島さんに、負荷がどれくらいかかっているか
- 福島さんの良いところと伸び代
福井 たった3か月の育成支援でも、福島さんは急速に頼もしくなりました。もう3年は在籍しているんじゃないかってほど心強いですね。
ー 強いて課題点をあげるとしたら?
福井 この3か月で完璧に立ち上がったので、正直なところ課題点はないです。
福島 金森さんが3か月間しっかりと伴走してくださったので、まずは及第点を出せるレベルまで成長できたかと思います。とはいえ、まだ3か月なので引き続き伴走していただきながら、ステップアップしていきたいと考えています。
金森 ありがとうございます!最終的には、私がいなくとも福島さんに戦略・施策を立案いただけるよう、今後もっと伸ばすべきところや、次に読むべき課題図書などをお伝えしました。
お伝えしていることの一例をあげます。
- マーケティングオペレーターになるのではなくマーケターになろう
- 顧客が見るコンテンツに用いる言葉にこだわろう
- ユーザーの気持ち、行動を推測できるようになろう
- PMFなど事業戦略レイヤーのインプットもしよう
契約が終了し私のサポートが終わった後でも、マルチブックさんがマーケティング戦略を立案・実行し続けられるよう、もうしばらく伴走していきたいと思っています。
福井 何度も「まだまだ逃がさないよ」と直接伝えていますが(笑)、引き続き金森さんにはご助力いただきたいと思っています。
ー どのような会社に、今回のサービスはおすすめできますか?
福井 おそらくマーケティングの組織をまだ持っていないスタートアップの企業でしょう。マーケティングに精通している人が社内にいない場合、採用要件を固めるのも難しいです。
仮に採用できたとしても、新しく入ったメンバーにマーケティング組織の立ち上げを丸投げすることは現実的ではありません。
大手企業であれば、すでにマーケティングの組織があり教育体制も整っているため、社内で完結できると思いますが、スタートアップでそのような体制を持つ企業は少ないでしょう。
才流さんにお願いしてよかったことは、マーケティングの戦略から入っていただき、採用支援、そして入社後の育成まで一気通貫に手伝っていただけたことです。
ー 改めて今回のサービスに関する総括をお願いします。
金森 福井さんに、「育成に対して投資をする」という意思決定をしていただいたことには本当に感謝しています。結果的にはとてもよい結果につながったと思います。
福島さんも予想以上のスピードで成長されました。まだまだ伸びしろはあるので、引き続き伴走しながら成長の後押しをしていければと考えています。
福井 金森さんのおかげで、マーケティング組織が立ち上がり本当に感謝しています。福島さんには3年〜5年のスパンで焦らずしっかり成長してもらい、弊社のマーケティングをリードしていってもらいたいです。
最終的には、SAPのコンサルタントがマーケターになるまで、というストーリーを書籍化するところまで持っていきたいですね(笑)。
福島 「マーケティングオペレーターになるのではなくマーケターになれ」という言葉は改めて非常に重く受け止めています。今まではコンサルタントとしてのキャリアを歩んできましたが、上流の戦略に関する意思決定は未経験の領域。いい意味でコンパクトかつチャレンジを許容してくれる環境をフルに活用して、しっかり経験を積んでいきたいと考えています。
(撮影/矢野 拓海 取材・文/奥川 隼彦 編集/前田 絵理、森 駿介)