医療・介護領域に特化した経営コンサルティング事業を展開している株式会社日本経営様。経営戦略の策定や財務戦略、組織戦略など幅広いコンサルティングサービスを提供しています。
今回支援したのは、大病院の看護業務・病棟業務を改善・効率化する「NKリーン」。リーン生産方式を日本の医療にあてはめ、医療の質の向上を目指すコンサルティングサービスです。
サービスのリリースから1年が経過した頃、営業の属人化や提案内容のまとまりのなさが目につくようになったと言います。アカウントセールスを強化してサービスの認知を広め、大病院の開拓を進めたいと才流(サイル)にご相談いただきました。
才流では2024年8月から5か月にわたり、アカウントセールス強化のための基盤設計を支援しました。才流の支援に対する感想や得られた成果について、同社の東京支社 部長 兄井さんにお話を伺いました。

大病院を開拓したい。何から手をつけるべきか模索していた
-今回ご支援したサービスの内容を教えてください。
兄井 日本経営は、医療と介護領域に特化した経営コンサルティング会社です。今回支援をお願いしたサービスは「NKリーン」。リーン生産方式(※)を日本の医療にあてはめ、看護業務・病棟業務を見直し、病院経営の改善や医療の質の向上を目指すコンサルティングサービスです。
トヨタの生産方式として知られるリーン生産方式は、実は医療にも貢献する仕組みなんです。欧米ではリーンコンサルティングという形で医療業界に広がりを見せており、それを日本に逆輸入して当社で提供しているのが「NKリーン」です。
※リーン(Lean)は「贅肉のない」という意味。最小限のリソースで効率的な生産を行う生産システムとして名付けられた。

-才流にご依頼いただく前は、どのような課題がありましたか?
兄井 NKリーンは2023年10月に部門を新設し、400床以上の大病院をターゲットに営業活動をスタートしました。立ち上げから1年が経過し、大病院に対するサービス提供も進んでいたのですが、いくつかの課題に直面していました。
ひとつは、営業活動やコンサルティング内容がコンサルタント個人の能力に依存しており、組織としての一貫性が欠如していたこと。「NKリーンの価値」を自分なりに語れるコンサルタントが売上を上げていたものの、それぞれが独自の解釈でリーンコンサルティングを提供しており、サービスの品質にばらつきも生じていました。
また部門の新設にあたり、市場開拓のための具体的なアプローチ方法も確立できていませんでした。NKリーンを広く知っていただくにはどんな施策をしたらいいか、手探りな状況で。セミナーを開催しようにも、まとまった資料もなく。長期的な目線でアカウントセールスを強化して、大病院を開拓するには何から手をつけたらいいのか、やり方を模索していました。
-才流にはどのような経緯でご依頼いただいたのでしょうか?
兄井 当社は基本的に内製型の会社ですが、これまでと同じことをやっていても、過去の延長線上にしか未来が見えません。爆発的な成長につなげるには、新しいことにチャレンジする必要がある。そこで、外部の支援会社の力を借りようと考えました。
才流のことは、当社の別部門からの紹介で知りました。当時はまだ自分たちが何に悩んでいるのかを明確に言語化できておらず。数社に声がけして「大病院の開拓を進めたいので、やり方を教えて欲しい」と相談したんです。
部分的な戦術の提案が多いなか、才流はマーケティングの全体感を捉えたうえで「まずはここから手をつけましょう」とスコープを定めてくれました。別部門での実績もあったので、依頼を決めました。
サービスの提供価値を再定義し、営業ツールを刷新
-プロジェクトでは、どのようなことを行いましたか。

宮戸 まずはNKリーンについての理解を深めるべく、最初の1か月で各種調査を実施しました。日本経営の営業の方や、既存顧客を対象にインタビューを実施。400床以上の病院で働く看護師や院長先生、他社で400床以上の病院に対して営業をしているエキスパートにもインタビューを行いました。
大病院を開拓するうえでの課題がどこにあり、何から手をつければいいのか。仮説を出しながら皆様とディスカッションを重ねて、施策の優先順位をつけていきました。

宮戸 これまではインバウンドの商談が中心。そのため、顧客からの問い合わせを起点に、自然な形で課題のヒアリングを進めることができていました。
しかし、今後は大病院へのアウトバウンド営業にシフトします。この場合、いきなり課題のヒアリングを始めることはできません。まず自社のソリューションを説明する必要があります。
そこで営業資料を見直しました。すると、説得力のある具体的なメッセージが不足しており、顧客視点に立ったわかりやすい資料になっていないことに気づいたのです。
たとえば、営業資料では「NKリーンは患者さんとの時間を増やします」と理想論でサービスが語られている。たしかに、患者さんとの時間を増やしたいという願いは、どの病院も抱えている共通のニーズだと思います。
しかし、商談相手である医療現場や病院経営者の視点に立つと、より優先すべきバーニングニーズがあるのではないか。商談では、そこを伝える必要があると感じました。

宮戸 NKリーンの本当の強みや、お客さまへの提供価値は何なのか。選ばれる理由は何なのか。訴求メッセージを言語化し、営業資料やサービスサイトの改善など、営業基盤を整えることが急務だと考えました。
そこでプロジェクトのテーマを、大病院開拓のための営業基盤設計と設定。2か月ほどかけて提供価値や強みなど、必要となる要素について調査や議論をし、営業資料やサイトに落とし込んでいきました。
最後の1か月は、実際に大病院開拓の営業プロセスに伴走しながら、壁打ちを実施。本来であればていねいに設計をしてから動き出すべきところですが、プロジェクトの残り時間も限られていたので、行動をしていただきながら壁打ちで整えていく形をとりました。
※関連記事:成果につながるサービス紹介資料・営業資料の改善プロセス
提供価値が共通認識として浸透。商談のレベルが底上げされた
-プロジェクトで印象的だったことを聞かせてください。
兄井 私たちもコンサル業をしています。コンサルを受ける側の気持ちは一体どんなものなのか。顧客の気持ちを知りたい、体感したいという想いが、プロジェクトへの期待の1つにありました。
実際にコンサルを受けて印象的だったのは、こちらの間違いや足りていない点をストレートに指摘してもらえることの有り難さです。御用聞き的なコンサルになってしまうと、結局うまくいかないと思うんです。
その点、才流はゴールに向かうにあたって「そこは違うと思います」とか「ここが足りていませんね」と客観的な視点でフラットに指摘をしてくれる。外部のコンサルを入れる価値を感じましたね。

-プロジェクトによる成果を教えてください。
兄井 サービスのリリースから1年経ったこのタイミングで、NKリーンとは何かをみんなで考え直す機会を持てたこと。提供価値を論理立てて再定義し、営業資料という成果物に落とし込み、関係者に共通認識を浸透できたことが大きな成果だと感じています。
自分の言葉で価値を語れる営業が売上を上げていた状態から、皆が同じ言葉で、同じ資料を使って価値を語れるようになった。商談のレベルが底上げされたと感じています。
商談のポイントや話の流れが型化されたので、現場からは話しやすくなったという声ももらっています。

兄井 また商談準備にかける時間も短縮しています。これまでは顧客に合わせて、各自で2時間近くかけて営業資料を作成していました。それが、型となる営業資料ができたことで大幅な業務効率の改善につながりました。
営業資料をベースにサービスサイトもブラッシュアップすることができました。セミナーをいつでも開催できるレベルの資料も整って、当初の目的である、大病院開拓のための基盤が整ったと感じています。
リードタイムが長いので、受注件数のようなわかりやすい定量的な成果はまだ出ていませんが、今後は私の受注率と若手の受注率が同じになってくるだろうと推測しています。定量的な成果はまだ出ていないのにサービス満足度は高い。こう思わせてくれる才流のコンサルティングサービスはすごいと思います。
宮戸 嬉しいお話、ありがとうございます。リーンコンサルティングは知れば知るほど価値のあるサービスで、正しく伝えれば絶対に売れると才流の社内でも話していたんです。
藤原 支援開始前から、名だたる病院で目に見える成果が出ていましたよね。価値あるサービスという前提でプロジェクトをスタートできたので、調査やインタビューもしやすかったのが印象的でした。

-プロジェクトを振り返って、才流に依頼して一番良かったことは何でしょう?
兄井 NKリーンに関わるメンバーの意識や考えをひとつにして、言葉に落とし込み、ドキュメントという形でアウトプットできた点が良かったです。
宮戸 提供価値については、皆でディスカッションしていただきましたよね。ディスカッションの内容と私たちの調査内容を組み合わせて最終的なアウトプットができたので、プロセスも良かったと感じています。
兄井 実はこれまで、メンバー全員でディスカッションをしたことがなかったんです。まだまだ小さな部署なので、このタイミングで関係者が膝を突き合わせて議論をできたのは非常に有意義でしたね。
目指すは自走。「コンサルにやってもらう」スタンスではダメ
-才流のコンサルタントのコミュニケーションに対する満足度を聞かせてください。
兄井 量も頻度も適切で、コミュニケーションを取りやすかったです。定例会は週に1回開催されていたので、「次の定例会までにこれをやろう」とちょうど良いプレッシャーになりました。途中、わからないことがあるとSlackで質問もできますし、すぐに返答いただけるのもありがたかったです。
マーケティング領域での知見が幅広いので、何を質問しても的確な回答がもらえたのも満足度の高さにつながっています。
-才流のサービスを他社におすすめするとしたら、どんな課題を持っている会社にフィットすると思いますか?
兄井 「作業も含めて、すべてをやって欲しい」というスタンスの企業よりも、「自分たちで考えて手を動かすことがトレーニングになる」というスタンスの企業にフィットするように思います。
当社は後者のスタンスで支援を依頼したので、すごく噛み合った。結局支援をしてもらって終わりではなく、支援のあとも事業は続くわけです。才流と一緒につくった資料も、つくって終わりではなく、営業活動をしながらブラッシュアップし続ける必要がある。いずれ自走が必要になります。
コンサルを受けることは、トレーニングを受けることだと思うんです。ゴールはあくまで自走できるようになること。代わりに全部やってくださいというスタンスでは、双方が不幸になってしまうのではないでしょうか。
宮戸 NKリーンもまったく同じ思想ですよね。
兄井 まさに。顧客の自走を支援する、伴走型のサービスです。結果が出るまで時間がかかりますし、顧客の頑張り次第で結果が大きく変わる。才流とは目指すものが同じだと感じています。
-最後に、NKリーンの今後の展望について聞かせてください。
兄井 日本では医療従事者の働き方や、国民医療費の増加が社会的な問題になっています。NKリーンは病院経営を改善し、医療の質を向上するうえで価値のあるサービスだと自負しています。先日、リーンコンサルティングの価値を伝えるべく、書籍も発売しました。『“看護部”から病院を変革する! LEAN Innovation 「チェンジマネジメント」の実現で成果を出す手法』です。
今後も引き続き認知を広めながら、日本の医療業界の発展に貢献していきたいです。

(撮影/関口達朗 取材・執筆・編集/藤井恵)