法人向けにパッケージ・ソフトウェアの販売や技術支援をしている株式会社アシスト様。60を超える製品のプロダクトマーケティングを担っているのが、同社のビジネス推進本部です。各所に散らばっていたマーケティング機能の集約、マーケティング業務の標準化を目指して3年前に結成されました。
才流(サイル)では、同事業部から「BtoBマーケティングの型をインストールしてほしい」との依頼を受けて研修を実施。その後、部門内のチーム間の連携に課題を感じているという相談から、チームごとのKPIを見直し、再設定する支援をしました。
同部署の岸和田さん、栗原さん、勝田さんに才流の支援に対する感想や、得られた成果について伺いました。
全社マーケティング組織にBtoBマーケの型を教えてほしい
-今回ご依頼をいただいたビジネス推進本部は、どのような部署ですか。
岸和田 アシストで取り扱っている60近い製品のプロダクトマーケティングを横串で担当している組織です。
発足したのは2021年の5月。それ以前は製品事業部ごとにマーケティング機能がある部署もあれば、ない部署もあり。マーケティング活動の内容も、プロモーションの実行に特化している部署もあれば、上流の戦略から施策の検討・実行までをしている部署もあるというバラバラの状況でした。
社内に散らばっていたマーケティングの担当者を一同に集め、業務の標準化に取り組むべく結成されたのがビジネス推進本部です。
-才流にご相談いただいた背景には、どのような課題感がありましたか?
岸和田 集まったメンバーはこれまでプロモーション業務に関わってきた人、まったく関わったことがなく社内異動してきた人、自らマーケティング業務に携わりたいと手を挙げてきた人の3タイプでした。
マネジメントする立場として、事業戦略からマーケティング戦略を考え、プロモーション施策に落とし込むことの重要性を浸透させようとしましたが、なかなか思うように伝わらない。皆のベースラインを整え、共通言語をつくりたいという想いがありました。
-才流にはどのような経緯で、ご相談いただいたのでしょう。
岸和田 第三者にBtoBマーケティングのセオリーや型を教えてもらいたいと考え、行き着いたのが才流です。
才流のことは、Webの記事を読んで知っていました。BtoBマーケティングの戦略はもちろん、実務の部分までをメソッド化・型化している。うちの組織には実務に長けているメンバーが多かったので、才流のメソッドであればメンバーも受け入れやすいのではないかと思いました。
才流の支援を通じて組織に共通言語をつくり、マーケティングの上流からオペレーションまでを、広い視野で見られるようになって欲しい。メンバーの視座をあげると同時に、既存のオペレーションの改善部分にも気づいてくれたらという期待感から支援を依頼しました。
BtoBマーケティングの基礎研修で組織に共通言語をつくる
-プロジェクトでは、どのようなことを行いましたか。
澤井 BtoBマーケティングの基礎研修を全6回にわたり開催しました。上流のマーケティング戦略の考え方から、施策の実行部分にまで踏み込んだ研修です。座学よりも参加型の形式をご希望とのことで、ワークショップ形式で、チームごとのディスカッションもはさみながら開催しました。
栗原 研修を通じて、共通言語をつくることの大切さを痛感しました。異なる組織から集まったメンバーなので、言葉の定義1つをとってもバラバラだったんです。
才流のメソッドが共通言語として皆にインストールされると、同じ前提に立って話せるようになるので、その後のマネジメントがとてもスムーズになりました。
勝田 現場目線では、研修で行われたワークショップがとても印象に残っています。アシストのWebページを題材に、改善ポイントをディスカッションした後、メソッドを教えてもらった回がありました。自分たちの実務に直結した内容だったので、納得感がすごく高かったですね。
一気通貫のKPIを再設計し、チーム間の連携を強化
澤井 研修の後は、部門内のチーム間の連携に課題を感じているとご相談いただいたので、各チームへのヒアリングを実施しました。すると、KPIの設計に課題があることがわかりました。
KPI設計において大切なのは、組織の最終目標であるKGIを分解し、目標までのマイルストーンとなるKPIを設定することです。しかし、事例作成チームを例にあげると、事例の作成本数がKPIになっていた。このようなKPIだとチーム間の連携がとりにくくなってしまいます。そこでKPIの再設計をご支援しました。
具体的にはチームごとにディスカッションを重ね、自分たちで追うべきKPIを考えていただきました。事例作成チームであれば、事例経由のリード獲得数やコンバージョン数をKPIに置いた方がいいのではないか?といった具合です。
岸和田 そうでしたね。一般的にKPIにはこういう指標を置く、たとえば他社ではこんな風にしている、と第三者から指摘してもらうことで、自分たちが追っていたKPIが少しずれていたことに気づけました。
最終的にはチームごとに設定したKPIを1つにまとめ、ビジネス推進本部のKPIツリーを完成させました。2023年の年末には「2024年はこんな全体感でKPIを追いましょう」と方向性を示すことができました。
※関連記事:KPIの設定・運用でよくある失敗例と解決策15選
本来追うべきKPIに気づき、主体的に動けるようになった
-今回のプロジェクトによる成果は何でしょうか?
栗原 KPIツリーとともに、昨年の実績をベースにマーケティングの成果をシミュレーションできるシートをつくったんです。たとえばWebサイトを改善するとどうなるのか、イベントでリードを集めるとどうなるのか、案件化の数やそこから生まれる金額までをシミュレーションできるシートです。
どの変数を動かすと、どれくらい結果が変わるのか。あらかじめ予測できることでメンバーを巻き込みやすくなりましたし、アクションを起こすまでの時間も短くなっています。マネジメントしやすくなりましたね。
勝田 私は事例作成を担当しているのですが、KPIの再設定による大きな変化を感じています。これまでは事例の作成本数がKPIに置かれていたので、事例経由の問い合わせを意識したことはありませんでした。そもそも、事例記事の中にCTAも設置していなかったんです。
ところが事例経由の問い合わせ件数やCVR(コンバージョン率)がKPIとして置かれたことで、記事内にCTAを設置し、PVはもちろん、資料ダウンロード数やCVRをモニタリングするようになりました。チームの動き方が大きく変わっています。
※関連記事:読んでそのまま使えるBtoBオウンドメディア版CTAの設置パターン
澤井 現場のみなさまの意識と行動は、本当に大きく変わりましたよね。プロジェクトスタート当初は、私からお伝えするメソッドが果たしてみなさまに受け入れられるのか、多少の反発もあるのではと思いましたが、まったくなく。
むしろ「そんな発想はなかった」と新鮮な気持ちで受け止めていただいて。KPIを再設定し、方向性が明確になってからは動き方が見違えるほど変わりましたね。
岸和田 事例チームやデザインチーム、ウェビナーチームなど、マーケティングの施策を実行するチームの動き方は本当に大きく変わりました。
以前は、施策の実行そのものが目的になってしまっていた。でも事例をつくることが目的ではなく、事例からどう案件をつくるのか。デザインチームであればデザイン制作がゴールではなく、デザインを通じてどれだけCVRを高められるかを考えて行動できるようになった。
上流の戦略からオペレーションまでが一気通貫でつながり、そのなかで自分たちは何をすればいいのか。皆があるべきゴールを意識するようになった結果、自律的に動けるようになりました。仕事の質が変わったと思います。
-定量的な成果も出ていますか?
岸和田 リードタイムが長いので、最終的な成果が数字に表れるにはもう少し時間がかかりそうですが、プロセスにおける定量的な変化は出ています。
先日開催したキックオフでは、「CVRがこれだけ上がった」と具体的な発表もあって。これまでとは報告内容も大きく変わってきていることを嬉しく感じています。
栗原 行動量そのものが、明らかに増えているのも定量的な成果です。共通認識ができ、KPIが明確になったことでコミュニケーションコストが減っています。施策を考えて実行するまでのサイクルが短くなり、リードの件数目標も達成しやすくなっています。
BtoB専門だから、納得感を持って提案に耳を傾けられた
-才流のコンサルタントのコミュニケーションはいかがでしたか?
栗原 スピード感がすごく早いのと、問いをしっかり捉えてくれるのでコミュニケーションにズレがなかったことが印象的でした。
岸和田 たしかに、スピード感はかなり早い。Slackで聞くとすぐに答えてもらえるので、キャッチボールの頻度も上がるんですよね。
あとは線を引かないので話しやすい。「ここで困っているのですが、どう考えればいいですか?」と聞くとすぐに返してもらえるので。何かあったらとりあえず澤井さんに聞いてみようと思える。とても仕事がしやすかったです。
-外部の支援会社を入れる意義を、どのようなところに感じましたか。
栗原 メンバーと利害関係のない第三者であることの意義を、個人的には強く感じました。私や岸和田が話をすると、どうしても「管理者の言葉」として捉えられてしまうんですよね。第三者だからこそ、メンバーからしても提案内容が受け入れやすかったように思います。
さらにBtoB専門なので、引き出しがとにかく多い。私たちのような業態を知り尽くしているからこそ、納得感も高かったです。
-最後に、才流のサービスを他社におすすめするとしたら、どのような課題を持っている企業にフィットすると思いますか?
岸和田 新しくマーケティング組織を立ち上げた会社や、営業が強いが故にマーケティング組織のマネジメントに苦労している会社、プロモーションのHowに目がいきがちな企業にはぜひおすすめしたいです。
才流の支援によって共通言語が生まれ、社内のコミュニケーションがスムーズになったり、関係部署との連携がしやすくなったり、上流からHowに落とし込む思考が浸透すると思います。
(撮影/関口達朗 取材・執筆・編集/藤井恵)