新卒採用や社員教育、人事制度構築のコンサルティングによって組織開発や経営を支援する株式会社Legaseed(レガシード) 様。「はたらくを、しあわせに。」を企業理念とし、これまでに650社以上の企業の経営課題を解決してきました。
数多くの実績を持つ同社。しかし近年はリードが増加しているものの、それに比例して受注が増加しないという課題を抱えていました。
才流は2023年6月から3か月間、同社の営業チームのプロジェクトに参画。トップセールスの営業の進め方をヒアリングし、そのノウハウを言語化・フローチャート化するなどして、営業スキルを向上させるための仕組みづくりを支援しました。才流とのプロジェクトの感想や成果について、セールス部マネジャーの小池さん、同部の山本さんにお話を伺いました。
トップセールスが感覚的であるため、そのスキルを言語化できていなかった
—才流に依頼された背景を教えてください。
小池 当社は新卒採用をメインとしたコンサルティング事業を行っています。ただ、私がマネージャーを務める営業チームでは、前期1年間の成果の大半が私の売上によるものでした。
今期はチームメンバーも増え、教育しながらさらに売上を伸ばしていかなければという状況。私の営業活動のやり方や考え方を棚卸しして、見える化・仕組み化しなければならならないという課題感があり、才流に支援を依頼しました。
山本 商談では事前に仮説を立てることが大事ですが、当時の私はその仮説が正しいのかがよくわかってませんでした。そのうえ、何がトリガーになって契約に至っているのかもわかっていなかったのです。
とりあえず、商談で得た情報を小池に報告すれば、その案件の注意点や進め方などを指摘してくれるので、それに頼っていましたね。
あと、小池は感覚的なタイプであり、本人も受注率が高い理由を言語化できていませんでした。小池の隣で商談を見ながらその勘所みたいなものを探ってはいましたが、真似をするのは難しいなと感じていました。
それに小池はお客さまが何を考えているのかを瞬時に汲み取って、その場で相手の波長に合わせられる能力が高いです。一方で、私は事前にきちんと準備をしないと商談に臨めないタイプ。小池のように現場で臨機応変に対応できないことに悩んでいました。
顧客ニーズをシンプルにまとめたフローチャート作成
—今回のプロジェクトはどのように進めましたか。
原口 まずは小池さんを含めたチームメンバーの方々へインタビューを実施しました。その結果、顧客へのヒアリング方法と提案する商材の選び方において、小池さんとチームメンバーとの間では大きなギャップがあると感じました。
Legaseed様は商材が数多くあるため、商材選びが非常に重要です。しかし、その選び方が言語化されていなかったので、適切な商材を選ぶための考え方を可視化する必要性を感じました。
原口 商材選びの考え方を可視化するために作成したのがフローチャートです。はじめはお客さまのニーズを細かく20パターンほどに分けて、それぞれに合った商材を紹介するような内容を考えていました。
しかし、5〜6パターンくらいに収束させないとメンバーの皆様が悩んでしまうのではと考え、完成したのがこのフローチャートです。小池さんには「これだけじゃ収まらない」と言われるかもしれないとおそるおそる提案したのですが、受け入れていただいてよかったです(笑)。
小池 このフローチャートを最初に見たときは、これだけの項目で提案する商材を決められるのだろうかと半信半疑でした。しかし、原口さんから説明を聞くと、確かにシンプルなほうが使いやすいし、意思決定の基準や分岐点もこれぐらい集約できるなと思いました。
山本 このフローチャートをもらったとき、自分は難しく考えすぎていたんだなと気付きました。小池の真似をしようとしていたのが、これだけを考えればいいんだと視界がクリアになり、考え方がシンプルになった気がします。
あと、企業情報やホームページを見て仮説を立てたほうがよいことは理解していましたが、お客さまの意思決定に関係のない、的を射ていない仮説を立てていたということも痛感しましたね。
小池 フローチャートによって聞くべき問いとそうでない問いがきちんと分けられ、短時間で的確に商談が進められるようになったのも大きいですね。それまでは無駄な仮説がある分、ヒアリングに時間がかかりすぎていたのです。フローチャートができてからは初回商談での受注が増えました。
宮戸 Legaseed様は商材がたくさんあって、顧客である経営陣の課題感もさまざまなので、一見するとこのフローチャートだけでは意思決定が難しいと感じるかもしれません。
しかし、提案する商材を選ぶ際の判断基準はそこまで多くはなく、このようにシンプルにまとめることができます。ただ、それは小池さんと我々がコミュニケーションを重ねた結果だと思っています。
原口 小池さんとの議論にはすごく時間をかけましたからね。
宮戸 小池さんはお客さまへのヒアリングをもとに最適な商材を選ぶことに長けていますが、チームメンバーの方々は、商材がたくさんあるだけにどれが最適なのかを迷ってしまう、沼にはまることがあったのかなと思います。
小池 私は「選択と集中」を大切にしています。我々が持っているソリューションのなかで、お客さまにとって最も必要かつ本質的な価値が伝わる商材を提案すること、そこに至るまでのストーリーを的確に伝えることが大事だと思っています。
それに核となる商材は抽象度が高いので、お客さまの課題に対して2段階くらい抽象度を上げて話さないと納得してもらえません。具体的な課題に対して、こういう商材がありますよと提案していると、決まるときは決まるけれど、決まらないときは決まらない。そこが大きな課題でしたが、このフローチャートによって大きく改善されました。
フローチャートによって見えた「提言」の重要性
—今回のプロジェクトでは、ヒアリングシートのなかに「提言」という概念を提案しましたが、どのような意図があったのでしょうか。
原口 お客さまへのヒアリングは、プレゼンの側面があると思います。それを端的に表現したのが「提言」です。「提言」という言葉はチームメンバーの方々へインタビューをしたときに思いつきました。「小池は自分とは違って、お客さまにも『それじゃダメですよ』と言える」という答えが返ってきたことがきっかけです。
営業担当者は、お客さまである経営者と「新卒採用のプロ」として対等な関係にならないと受注には至らないので、その視点を持ってもらうために「提言」を加えました。
小池 まさにその通りで、商談における私とチームメンバーの一番大きな違いはそこだなと思っていました。メンバーが行っているヒアリングは、一問一答に近い。私の場合は、Aという質問をしてBという答えが返ってきたら、「BということはCのような状況にもなっていると思うので、Dはどうなんですか」というように、自分の見解を入れて次の問いに発展させています。
それが信頼につながり、経営者様のパートナーになるきっかけになっているのかなと思っています。
営業メンバーが活用しやすいように膨大なコンテンツを整理
—今回のプロジェクトではLegaseed様のコンテンツを整理しましたが、これはどのような背景があったのでしょうか。
小池 当社では一次商談が終わって検討期間に入ったお客さまに、当社代表の書籍やセミナー、YouTube動画などを見ていただくようにしています。ただ、その数が膨大になってきたので、クロージングまでにお客さまにどのコンテンツを案内すればいいのかがわかりづらくなっていました。
そこで、才流にコンテンツの整理を依頼しました。先方の状況や心情に合わせて索引ができるようにしてもらったので、とても使い勝手がよくなり、頻繁に使わせてもらっています。
原口 営業活動において、コンテンツ活用の方法は属人化しやすい傾向にあります。社内情報やコンテンツを営業ツールとして利用する場面においては、営業の感覚が優れている人であれば、このセミナーを見てもらおう、この動画を見てもらおうという嗅覚が働きます。
しかし、それが言語化、ルール化されていないと、個人個人で利用するコンテンツやタイミングがバラバラになってしまいます。
現在はまだ問題として表面化していませんが、将来的にメンバーが増えたりコンテンツが増えたりしたときに、どこかで起きる問題だと思っていたので、今後更新が必要になりそうなコンテンツは、その更新時期も踏まえて整理しました。
山本 これまではお客さまに送るコンテンツは自力で探して、小池とすり合わせて決めていましたが、そのやり方もゆくゆくは形骸化すると思います。下の世代が増えてくると、どこにどんなコンテンツがあるのかがわからないメンバーも増えてくるので、まとめてもらえてありがたいですね。
トップセールスのスキル可視化で売上20倍を達成
—今回のプロジェクトの手応えはいかがでしょうか。
小池 山本は、このプロジェクトが終わってから半期で前期の10倍の売上を記録しています。年間に換算したら20倍というペースです。受注単価も上がっていますね。
山本 才流に関わっていただく前は、「僕でも売れるんじゃなかろうか?」というように、「?」マークが付いている状態で、高い目標を掲げてチャレンジはしたいけれど、なかなか吹っ切れない感じでした。
それが小池の脳内を言語化してもらったことで、今まで考えていたことは間違いではなかったんだという自信が生まれ、それがよい結果をもたらしてくれました。すごく価値のある体験でしたね。
—今までは、小池さんの売り上げが一番大きかったとお伺いしていますが、その状況は変わりましたか?
山本 昨年度は小池と他のメンバーの売上の割合は9:1という感じでしたが、今期は5:5くらいになっていますね。
小池 もう超えられると思いますね(笑)。
山本 そろそろ小池を楽にしてあげないと(笑)。
—今回のプロジェクトを終えて、今後Legaseed様はどのようなステップに進んでいきたいと考えていますか。
山本 会社として掲げる「はたらくを、しあわせに。」という世界観を実現できる経営者様が一人でも増えるようにしたいです。
あとは、今インサイドセールスのチームをインターン生を中心に立ち上げている段階なので、ここでも才流に教わったことをもとに試行錯誤していきたいなと思っています。
小池 今回才流に支援してもらったことで、チームの力で契約が取れるようになりました。より多くの経営者様に価値を届けられるようになったことが何より嬉しく感じてます。
ただ、当社が目指す目標からすると、もうふた頑張りくらいしなければならないのも事実です。Legaseedという船に乗っているからには、この船が目指すべき場所により早く辿り着けるように今後もチーム改善に取り組んでいきます。
(撮影/関口達朗 取材・執筆・編集/三浦一紀)