InstagramのDM自動化・チャットボットサービスの「iステップ」を展開する株式会社ネルプ様。2022年2月に創業したスタートアップ企業ですが、導入アカウントは3,500以上と急成長を遂げています。導入の大半をインフルエンサー(個人)が占めており、法人開拓の道筋が立てば、より早く大きな事業成長が見込めるとの狙いから、才流(サイル)にご相談いただきました。
才流では2023年5月から4か月に渡り、利用者の分析、顧客セグメントの設計、法人プランの新設、コミュニケーションの刷新といったBtoBマーケティング全般をご支援をしました。
その後の状況を事業責任者の後藤さんに伺ったところ、「才流と取り組んだアウトバウンドでの法人開拓には、現在注力していません。それでも事業はおかげさまで急成長を遂げています。」との返答が。どのような経緯で、アウトバウンドでの法人開拓に注力しないと決めたのか。
また「それでも才流を使って良かった」と語る背景や、才流との取り組みで得られた成果について同社の後藤さん、増倉さん、森さん、中村さんにお話を伺いました。
法人開拓によって事業を拡大したいと、才流に相談
-才流にご依頼いただく前、どのような課題感がありましたか。
後藤 2022年2月に当社を創業し、「iステップ」というInstagramのDM自動化・チャットボットサービスをリリースしました。同年6月に当社代表の稲葉が「令和の虎」というYouTube番組に出演したのを皮切りに、認知が爆発的に広がり、1日に100件を超えるお問い合わせが来るようになりました。
この追い風に乗って事業を継続的に拡大するにはどうマーケティングを展開すればいいのか。模索を続けていました。
増倉 とくに課題を感じていたのが法人開拓です。当時あったのは、業界最安値の月額2万2,000円のプランのみ。インフルエンサーの皆さまからは大変好評をいただいている一方、法人を開拓するには複数回の商談や稟議の支援、導入後のサポートとやるべきことが異なり、2万2,000円では採算が取れません。
法人プランを新設し、アウトバウンドでの法人開拓の道筋が立てば、より早く大きな事業成長が見込めるのではないかと考えました。とはいえ社内にはエンタープライズ領域に強い営業メンバーもおらず、自分たちで模索するのは難しい。外部の力を借りたいと、才流に相談しました。
後藤 法人開拓は営業のハードルこそ高いですが、一度使っていただけると継続率も高く、事例化しやすい。会社として力を入れたいと相談先を探していたところ、人づてで知ったのが才流でした。
初回の打ち合わせで僕たちのような会社をいくつも支援されてきた実績や、実際にどうサービスを伸ばしたのか、類似事例も見せていただいて。「この会社ならお任せして大丈夫だろう」と感じたのを覚えています。
増倉 当時は課題もスコープも明確に定まっておらず、誰に相談したらいいかもわからない状況だったんです。マーケティングなら広告代理店に相談すべきではないか?でも認知をあげて解決する話でもないし……と。
それが才流との初回打ち合わせでクリアになったことが印象的でした。法人向けのマーケティング戦略立案、商品設計をやっていきましょうとスコープが明確になり、大きく動き出した感覚がありました。
調査・分析を通じて狙うべき顧客、戦略の骨子が明確に
-本プロジェクトでの取り組み内容を教えてください。
横山 iステップのコアターゲットを見極めるべく、事業・顧客・競合理解のための調査分析からスタートしました。既存アカウントの利用状況を分析し、既存顧客や見込み顧客にインタビューを実施。直販で法人顧客を開拓するために必要なマーケティング戦略を立案しました。
具体的には、短期・中長期で狙うべきターゲット企業をバイネームで定義するとともに、その企業を開拓するのに必要なコミュニケーションを設計し、法人向けプランを新設しました。
なかでもポイントとなったのが、Instagram運用ノウハウの言語化です。3,500を超えるアカウント支援の中でネルプさんが培われた圧倒的な知見を、顧客獲得に活かすべく顧客接点ごとに適した形で整理。営業資料やウェビナー資料など、ノウハウを顧客獲得に活用できる状態を一緒に整えました。
石田 個人と法人では入り口となる獲得方法はもちろん、サポートのプロセスも大きく異なります。サポートを手厚くすると既存の2万2,000円のプランでは採算が合わない。ユニットエコノミクス(1社あたりの採算性)を試算して法人プランを新設しました。それに合わせてマーケティング戦略やカスタマーサクセスも設計しました。
-調査・分析フェーズで新しい気づきはありましたか?
後藤 今まで見えていなかった部分が可視化されたことが印象的でした。当社は少数精鋭で、つぎつぎと新しい施策を打ちながら、ひたすら前に向かって走ってきました。立ち止まって分析したり、振り返ったりする時間を正直あまり取れていなかった。
iステップをご利用いただいているお客様はどういう業種・ジャンルで、どういう機能がよく使われているのか。継続されやすいお客様の特性、継続利用のヒントがたくさんありました。
増倉 これまで個人・法人の定義は自己申告制にしていたので、法人と言っても法人化したばかりの個人事業主も多く、実態を正確に把握できていませんでした。そこで才流のおふたりがメールアドレスのドメインを元に個人・法人を分類。意外と法人顧客もいることがわかったので、月額5万円の法人プラン新設に至りました。
森 調査・分析フェーズの後には、ターゲットの細分化と戦略ターゲットをの設定をしました。当社が成功に導きやすい顧客は誰なのか、攻めるべきターゲットの優先順位が明確になり、戦略の骨子が出来上がりました。これまで曖昧だった戦略が固まったことがありがたかったです。
またインタビューを丸ごと引き受けてくださったのも非常に助かりました。自分たちで設計から準備、実行まですると、かなりの工数がかかってしまうので。インタビューでは当社のサービスに厳しいご意見もいただき、第三者だからこそ引き出せた本音に触れることもできました。
セミナーの設計サポートで、集客数は7倍に増加
-調査の後に法人プランを新設し、セミナーも開催していますね。
中村 セミナーの開催サポートは本当に助かりました。これまでもセミナーは開催していたのですが、何をテーマにしたらいいのか、ターゲットも曖昧で集客に苦戦していました。
もうセミナーは開催しない方がいいのではないかと考えていたのですが、才流のサポートで集客社数は7倍に増加しました。当社が持っているリストからこんなにもたくさんのお客様が集まることに驚きました。
-過去のセミナーからどのような変更を加えたのでしょう?
中村 まず、テーマ設定を大きく変えました。以前はiステップを使う直前の層に向けた内容にしていました。それをもっと手前の「Instagramの運用に迷っている方に向けた内容」にすることで、ターゲットを広げました。
告知内容も再設計し、全体スケジュールを引き直しました。告知メールやリマインドメールでコンバージョンの取りこぼしがないよう、アドバイスいただきました。
石田 ノウハウやリストなどアセットは十分にあったんです。ただそれを十分にいかしきれていなかった。お客様が知りたいであろう情報をセミナーに落とし込むことで、しっかり集客することができました。
後藤 セミナーは現在、貴重な集客源となっています。才流との取り組みでセミナーに必要なパーツが揃い、定期開催の素地ができた。法人向けなのか個人向けなのか、受講者から逆算してパーツを組み合わせるだけでコンテンツを作れるようになり、開催に必要な社内教育もしていただきました。お陰様で現在は楽に開催できるようになっています。
リソースの選択と集中で事業は急成長。ナレッジが資産に
-本プロジェクトで法人プランの新設に至っていますが、定量的な成果は出ていますか?
後藤 実はその後、アウトバウンドでの法人開拓には注力しないという決断をしました。インバウンドと代理店を通じた開拓に徹することに決めたのです。
法人取引を伸ばすために必要な材料をテーブルに並べていただいたことで、今のタイミングでは積極的にリソースを投下しないという決断ができた。才流とのプロジェクトが選択と集中をするきっかけになりました。
現在、法人開拓は代理店にお任せしています。代理店さんを増やすための戦略も才流に相談し、取引社数が増えたのはもちろん、質もかなり向上しました。法人を意識したUI改善も進めたことで、有料プランへの転換率は1.5倍に増加。一般的なSaaSサービスからは考えられないほど高い数字になっています。
社内のリソースを自分たちの得意領域に配分したことで、売上は右肩上がりに増えています。今後再びアウトバウンドでの法人開拓に注力することがあれば、「こう進めていけば良い」という骨格が出来上がっていることが安心感にも繋がっています。
増倉 法人顧客のLTVが大きく伸びたのも、今回のプロジェクトの定量的な成果です。法人顧客とのコミュニケーションを設計したことで、単月契約から年契約へと切り替えが進みました。才流に作ってもらった営業資料はコンサルの現場で大活躍しています。
横山 嬉しいですね。法人顧客がInstagramを活用してどう売上を伸ばすか。その道筋を一緒に可視化できたことが、現在の素晴らしい成果につながっていると感じました。
-定性的な成果についても聞かせてください。
増倉 調査や分析の仕方、議論の尽くし方を見せていただいたことで、当社の仕事のレベルが一段上がったと感じています。たとえば解約と課金の分かれ目はどこにあるのか。管理画面のデータ分析を通じて、今まで社内の誰も把握できていなかった事実が明らかになりました。何を目指し、そのためにKPIをどう設定すればいいのか。言語化できたことは大きな成果です。
これまでは若い会社であるが故に「よくわからないけど、とりあえずやってみよう」と見切り発車で走り始め、裏目にでることがありました。才流のおふたりから「仕事ってこういうもの」と見せていただいたことは、当社の財産になりました。
森 言語化されたナレッジとドキュメントは未だに資産としてしっかり残っていますし、フル活用しています。言葉で伝えるだけでなく、資料化されていることは社内への浸透を考えると非常に重要です。
才流と共に作成したお客様向けのマニュアル「インスタの教科書」もバージョンアップを重ね、セミナーで活用したりと多方面で役立っています。
スピード感と親しみやすい伴走でワンチームになれた
-当初とは違う動きになっていても、定量・定性の両面で素晴らしい成果が出ているのですね。才流のコンサルタントとのコミュニケーションにはどのような印象を持ちましたか?
後藤 当社の強みは足を止めず、小さくてもPDCAを回し続けるスピード感にあると自負しています。おふたりはこのスピード感にしっかりついてきて、時に先回りしてくださいました。
プロジェクトのスコープ外の話題が出ても「興味があったので調べてみました」と持ってきてくださる。言われたからやるのではなく、自分も興味を持ったと積極的に取り組んでいただけたことがすごく嬉しかったです。本当に僕らのことを考え、一緒にサービスを伸ばしたいという想いが伝わってきました。
横山 みなさんのスピード感についていけるよう必死でした(笑)。プロジェクトのスタート時に欲しいデータをお伝えすると、「今日中に出します」と。抽出に手間のかかるデータだったので、「今日!?」と驚いたことを覚えています。
スタートアップだからこそ、戦略を作って終わりにはしたくない。セミナーなど実行フェーズもしっかりご支援したいという想いが私たちにもありました。そこで3か月を予定していたプロジェクトも1か月延長していただきましたね。
森 そうでしたね。僕たちのリズムに合わせて伴走いただけたので助かりました。また個別に壁打ちの時間を設け、いろいろなお話ができたのもありがたかったです。壁打ちを通じて自分の考えがアップデートされていく感覚がありました。
中村 私は途中からプロジェクトに参加したので、わからないことも多かったのですが、何でも相談できるオープンで親しみやすいコミュニケーションに何度も助けられました。「弊社と貴社」という関係性ではなく、同じチームの一員という感覚で楽しくできたことが結果につながったのだと思います。
-才流のサービスを他社におすすめするとしたら、どのような課題を持った会社にフィットすると思いますか?
増倉 整理できていない課題や、社内のリソースだけでは攻めきれない課題があり、もやもやしている経営者の方がいたら一度才流に話を聞くことをおすすめしたいです。僕たちのような少人数の会社でも、結果的に支援内容が「非注力」となっても、才流との取り組みはしっかり資産として残っています。スタートアップにも是非おすすめしたいですね。
後藤 逆に「才流に任せておけばいい」というスタンスだと、調査期間も長引いてコストパフォーマンスが悪くなる可能性があります。才流が進めやすいよう、必要な情報を集めるメンバーを配置し、一緒に作っていくスタンスの企業さんであれば有益なアウトプットを出せるのではないでしょうか。
横山 スピード感を持って情報やデータを開示していただけると、事業理解の解像度も上がります。少ない人数で全く余裕がないはずなのに、ネルプの皆さんは「才流がやりやすいように」といつも気を回してくださいました。
その姿勢から「ネルプさんのためなら」という気持ちが日に日に高まっていきました。そういう意味でも、ネルプの皆さんはとてもうまく才流を使っていただいたと感じています。ありがとうございました。
(撮影/関口達朗 取材・執筆・編集/藤井恵)