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新規事業支援

日立製作所の新規事業支援。プロダクト開発前にテストマーケティングを行い、実現性の高い事業計画を策定

株式会社日立製作所

https://www.hitachi.co.jp/

業種

製造

従業員数

1000名以上

課題

社内の事業審査を通過するためにテストマーケティングを通じて事業計画の精度を高めたい

写真左から:株式会社日立製作所 土屋 亮平さん、堀 光孝さん、 才流コンサルタント 高橋 歩 、中島 孝輔
コンサルタント
中島 孝輔
コンサルタント
高橋 歩

1910年の創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、事業を通じてお客さまと社会の発展に寄与してきた日立製作所様。

そんな同社が近年注力しているのが、次の社会に向けた新しい価値の創出に向け、さまざまな事業領域のお客さま・パートナーとともにDXを通じた社会イノベーションに取り組む「Lumada(ルマーダ)事業」です。

今回才流が支援したプロジェクトは、2022年4月に発足した金融BU戦略本部 Lumada事業統括部からのご依頼。「新規事業のテストマーケティングを任せたい」というご相談でした。

プロダクト開発前にテストマーケティングを行い、顧客や事業理解を深めながら仮説検証・改善を繰り返し、新サービスを立ち上げていくのは同チームにおいて初めての経験。約3か月間(2023年7月~10月)のプロジェクトを振り返りながら、金融BU戦略本部 Lumada事業統括部 部長代理の堀さんと同チームの土屋さんに、才流の支援で得られた成果や率直な感想を伺いました。

才流のテストマーケティング支援事例_概要/顧客:株式会社日立製作所様

新規事業の背景にあった、組織改革への期待感

 私たちが所属しているのは日立製作所の「金融BU戦略本部 Lumada事業統括部」。2022年4月に新設された部署になります。

Lumada(ルマーダ)とは日立グループの成長戦略の柱の一つで、先進的な技術を活用してDXを加速する日立のソリューションやサービス、テクノロジー体系の総称です。

日立グループではLumadaを旗印にDXを推進し、お客さまの経営課題の解決や事業の成長、ひいては社会イノベーションの創出に貢献していきたいと考えています。当部署のミッションはまさに、金融事業においてこのLumadaを推進・統括していくことです。

才流のテストマーケティング支援事例インタビュー/堀 光孝さん/株式会社日立製作所 金融BU戦略本部 Lumada事業統括部 部長代理
堀 光孝さん/株式会社日立製作所 金融BU戦略本部 Lumada事業統括部 部長代理

 Lumadaの推進は、全社員に持っていてほしいマインドでもあります。しかし既存事業では、当然ながらお客さまのご要望にお応えする比重が高くなります。新たなソリューションの提案も担当顧客を中心に検討することが多いのが現状です。

そこで、まずは Lumada事業統括部が、金融事業部としての新規事業を促進する仕組みを立ち上げるために2023年9月に、インナーブランディングを目的とした「FIBU Incubation Lab」をスタートさせました。この取り組みを通じて、私たちの活動を発信したり、新規事業の公募などを行っています。

とはいえ仕組みを立ち上げて「新規事業に力を入れよう」と呼びかけ、座学で学ぶだけでは限界があると考えていました。そのため「FIBU Incubation Lab」を立ち上げる1年前から、我々の部門を中心に新規事業創生に取り組みました。

まずは私たち自身が顧客起点の事業創生プロセスを実践し、知見や体験談をシェアしながら社員を巻き込んでいくことで、メンバーの行動変容を促していきたい

成功する新規事業を生み出していくことも大切ですが、経営層が期待しているのは組織や社員に意識や行動の変化が生まれ、組織全体が活性化していくことなんです。

土屋 我々の部門で取り組んだ活動でこれまで約10〜15テーマ、新規事業のアイデアが生まれています。私が起案したテーマは現在も活動しており、才流にもご支援いただきました。

具体的には工場や製造業に向けた情報プラットフォームになります。

才流のテストマーケティング支援事例インタビュー/土屋 亮平さん/株式会社日立製作所 金融BU戦略本部 Lumada事業統括部 技師
土屋 亮平さん/株式会社日立製作所 金融BU戦略本部 Lumada事業統括部 技師

土屋 私の実家が町工場だったこともあり、解決したい課題がたくさんあることは知っていました。顧客となり得る方々に話を聞いてまわり、これなら事業化できるのではないかと新規事業案を描いていきました。

土屋 相談したのは、「誰のどのような課題を解決する事業なのか」が明確になってきた段階でした。

次に私たちが越えなければならないハードルは、蓋然性の高い事業計画書をつくること。

蓋然性の高い事業計画を策定するためには、より具体的な顧客像と顧客獲得の戦術を描き、その仮説通りに本当に売れるのかどうかを検証する必要がありました。「具体的にどのような顧客に対し、どうアプローチすれば、どのくらいの割合で購買に至りそうか」といった内容を、実際に検証した結果の数字として獲得することが大事だと考えていたのです。

ただ、私たちにはそのノウハウがありません。しかも限られた時間とコストでやり切る必要があったので、プロの力を借りることを検討しました。

※関連記事:新規事業計画書の作り方とプレゼン時の留意点【パワーポイントテンプレート付】

才流の決め手は、実績の豊富さと体系化された事業創生のフレームワーク

堀 才流のコンサルタントが出演するウェビナーに参加したことがきっかけです。「新規事業のPMFをどう実現するか」といった内容でした。ウェビナーの話を土屋にしたところ、彼もちょうど注目していたみたいで。

土屋 そうなんです。私もたまたま同時期に才流代表の栗原さんが書かれた書籍「新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書」を読んでいて。他社と比較検討もさせていただきましたが、最終的には実績の豊富さと体系化された事業創生のフレームワークが決め手となりました。

土屋 私たちがやろうとしていたのは、まだ立ち上がっていない新規事業のテストマーケティングでしたので、背景や状況が通常のBtoBマーケティングとは少し異なります。

事業案の状況も見ながら、プロダクトがない中でテストマーケティングの意義を明確に示しつつ、その実践方法まで体系化していたのが才流でした。私たちが今回大事にしたいポイントと一致し、その実現を支援してくれる会社であると感じました。

実際にご提案いただいた内容も納得感の高いものでしたし、手探りで進めていかなければならない中で、基本的な考え方を共有しながらストレスなくスピーディにコミュニケーションを図っていけるかどうかは重要だと考えていました。

土屋 それはもう、やっぱりありました(笑)。

才流のテストマーケティング支援事例インタビュー風景/顧客:日立製作所様

堀 過去の事例を拝見して実績が豊富であることはわかっていました。ただ、今回の新規事業のように製造業向けのサービスで、しかも工場などをターゲットとするようなニッチな分野でも同じように成果が出るのかどうか。一抹の不安は感じましたね。

土屋 なによりテストマーケティングは、私たちにとって新たな取り組みでしたから。

事業アイデアをつくり、テストマーケティングを行って仮説の精度を高めてから、プロダクト開発・事業化していく。新規事業立ち上げを支援する新たな型となることを期待して推進しました。

※関連記事:
PMFとは?読み方と定義、PMFしている状態のシグナルを解説
PMF(プロダクトマーケットフィット)達成ガイド~基礎から事例まで、新規事業を成功に導くためのコンテンツ集

戦略設計から施策実行の代行までを才流がリードし、幅広い施策にトライ

中島 本プロジェクトのゴールは、「新サービス案はどのようなターゲット・チャネル・メッセージ・価格・サービス内容であれば売れるのか」を実際の商談を通じて検証し、その検証結果やテストマーケティング活動の成果をベースに実現性の高い事業計画を作り上げることでした。

そのため「確度の高い顧客獲得手法・訴求内容の見極め」や「各施策の反応率の目安を得ること」を目的に、テストマーケティング活動を行っていきました。

才流のテストマーケティング支援事例/才流コンサルタント中島 孝輔
中島 孝輔 /株式会社才流 コンサルタント(https://sairu.co.jp/member/1495/

中島 まずは、これまでに蓄積していた才流の知見と見込み顧客インタビューで得た定性情報をもとに、ターゲットの購買行動を整理し、商談獲得の戦術を設計。

テストマーケティングの実行期間は4週間と限られていたので、商談までのリードタイムが短い施策を中心に、実行する施策を取捨選択していきました。

才流のテストマーケティング支援事例/プロジェクトの全体像
▲ 新規事業の仮説検証とネクストアクションの明確化が短期目標だった

中島 土屋さんを中心としたプロジェクトチームのメンバーの方々が、新サービス案の顧客ニーズを検証するインタビューを数十件程、すでに実施されていたため、顧客ニーズは高い解像度で整理できつつありました。

才流側でも顧客解像度を上げるため、見込み顧客や有識者の方々へのインタビューを実施。集まった定性情報をもとに顧客の現状の不満や実現したいこと、新サービス案の提供価値を整理していきました。

才流のテストマーケティング支援事例/バリュープロポジションと売れるロジック

中島 整理した内容はWebサイトや営業資料、スクリプト、広告文やバナーなどの営業・マーケティング施策の訴求メッセージに落とし込んでいきました。

本プロジェクトでは、戦術設計だけでなく、実行部分の代行も担当。準備期間も限られていましたから質よりもスピードを重視して、プロジェクトメンバーのみなさんや各社パートナーの方々と共に準備を進めていきました。

実行期間では、各施策の定量成果や商談での定性反応をベースに広告文やバナー、Webサイト、テレアポや商談のトークを週次で改善。私たちを中心に施策実行やクリエイティブ制作を行い、スピード感を持って各施策のPDCAを回していきました。

プロジェクト終了時には、本活動の成果をもとにアップデートしたターゲット像や訴求内容、事業化した場合の顧客獲得のシミュレーション、今後のフェーズで検証が必要な論点を整理してご報告。

また、別の新規事業でもテストマーケティングにトライできるよう、「テストマーケティングのガイドブック」のような形式で活動マニュアルをまとめ、提出させていただきました。

土屋 そうなんです。今回、DMやテレアポなどでファーストアプローチをする際には才流の名前を使わせてもらって、実際に商談へと進んだお客さまには日立製作所が検討している新規事業であることをお伝えする形をとりました。

看板は関係なく、まっさらな状態で、この新サービス案が市場にどう判断されるのかを知りたかったんです。それが実現できたのも、外部にテストマーケティングを依頼したからこそですよね。

結果的に、短期間でリードや商談を獲得できました。商談に進んだお客さまのほとんどがモニター協力に承諾してくださり、たしかな手応えを感じられました。

※関連記事:
バリュープロポジションとは?作り方と事例~テンプレート付きで解説~
売れるロジック

「プロダクト開発前に検証できることは多い」とわかった

土屋 まずは事業アイデアの仮説検証を、一歩も二歩も先に進められたこと。その結果、事業計画の立案に必要な指標を集められ、社内審査を突破できたのは一つの成果だと捉えています。質的にも、スピード的にも、僕たちだけでは成し遂げられませんでした。

ただ何よりも大きかったのは、私自身、テストマーケティングという手法に対して確信が持てたことです。

日立製作所はその成り立ちもあるかと思いますが、モノづくりやプロダクト開発をとても大事にしていますし、こだわりも持っています。僕らのDNAにはプロダクト第一という考えが根底にあると考えています。

もちろん、この考え方も非常に重要ですし、今後も大事にしていくポイントですが、顧客のニーズや課題をより精緻に深く捉えたり、仮説検証を繰り返したりと、プロダクトをつくる前にやれることもたくさんあるとわかりました。今回実際にテストマーケティングを実践し、事業創生におけるその有用性を肌で感じられたのは大きかったですね。

 今回、当社における新規事業開発の新たな選択肢を作り出せたと思っているんです。

当事業部ではもちろん他部署にも、新規事業を立ち上げる際に「こういう手法があるよ」と提示できますし、この取り組みが広がっていけば「この事業であれば、プロダクト開発の前にテストマーケティングをやるのは当たり前だよね」と社内の常識が変わるかもしれません。

才流が蓄積してきた新規事業を推進するためのメソッドを含めて、新規事業開発の新たなナレッジを組織内に蓄積できたのが、今回のプロジェクトのもっとも大きな成果だと思っています。

土屋 実際、社内向けに新規事業の取り組みについてご紹介した際に「このテストマーケティングって、どうやってやったの?」といった質問をいただきました。社員にとっても関心の高い施策なんだなと感じました。

高橋 私たちもご支援する際に、今回の新規事業のテストマーケティングを成功させるだけでは足りないだろうと考えていたんです。

才流のテストマーケティング支援事例/才流コンサルタント高橋 歩
高橋 歩 /株式会社才流 コンサルタント(https://sairu.co.jp/member/17799/

高橋 たとえば定例の打ち合わせ資料を作成してご説明する際にも、今回の新サービスに該当する箇所だけではなく、新規事業開発の全体の流れを意識的にお伝えするようにしていました。

堀さん、土屋さんからも「自分たちでやるときにはどうすればいいですか?」という質問を何度かいただいていましたよね。

次に社内で同じことができるように、新規事業の立ち上げを自走していくための支援を念頭に置きながら、日立製作所の新規事業開発に必要なプロセスを一緒につくっていきたいと考えていました。

 こちらにもその姿勢は伝わっていて、立場や所属する会社は違っても、お二人は一緒に新規事業に取り組んでいる仲間だと勝手ながら思っていたんです。

そして心強かったのは、私たちがぶつかる壁はたいてい才流にとっては経験済みの事象なんですよね。「一緒にゼロから悩みましょう」ではなくて、「それだったらこの事例が役に立ちますよ」とすでに型化されたものやメソッドを共有してくださる。

それを足がかりに当社ならではのプロセスをつくりあげていくことができました。当初、不安に感じていた製造業や工場の知見も十分にお持ちでしたし、一貫して心強かったですね。

※関連記事:【事例に学ぶ】新規事業を成功させるBtoBテストマーケティングのポイント

新規事業で大事なのは、“まずやってみる”マインド

土屋 とにかくレスがはやいです(笑)。

確認が必要なものや答えが出ていないことに関しても「今日中に返答します」とか、一旦レスをいただける。相談している側からすると安心感がありますし、とてもありがたかったです。

才流のテストマーケティング支援事例インタビュー風景/顧客:日立製作所様

土屋 加えて、これは才流にとっては当たり前の動き方なのかもしれませんが、中島さんご自身で見込み顧客や有識者へのインタビューなどを実際にやってくださることに、私は驚きました。

ここまでやってくれるんだって。強みや課題を含めて、私たちがやろうとしている事業についてしっかり理解したいという姿勢が伝わってきて、単純にうれしかったですし、心を動かされました。

 クライアントが要望してきたところだけ対応するというスタンスではなかったですね。新規事業のメンバーと同じように、この事業をどうすれば成功できるかを考えてくださっていた。

中島さんと高橋さんの深い事業理解が、テストマーケティングのフェーズで外部パートナーをディレクションされる際にも活かされていたと感じます。

「予想通り、このターゲット層は反応が薄そうなので、別の手法に予算をかけましょう」といった話し方をされることが多くて、仮説を立て、先を見越しながらアドバイスやサポートをしてくださっているのが印象的でした。

 実は、今回のプロジェクトを通じて才流のカルチャーに学ばせてもらう場面が多かったんですよ。

先ほどの「レスがはやい」のも、その一例ですよね。ステークホルダーが多い環境だと、どうしてもスピードよりも確実性を重視するカルチャーになりやすいと感じています。

ただ新規事業においては「まずやってみる」「すぐに反応する」といったスピード感はとても大切です。今回のプロジェクトではお二人がスケジュールをビシッと引いてくれ、短ピッチで物事を動かしていった。この体験ができたのも良かったと思っています。

また知見をまとめて型化し、誰もが使えるようにする姿勢にも学ぶところが多かったです。今後も当社に新たなカルチャーをどんどん紹介し、行動変容を促してくださることを期待していますし、新規事業に関しても引き続きご支援いただきたいと思っています。

才流のテストマーケティング支援事例インタビュー/顧客:日立製作所様

(撮影/関口達朗 取材・文・編集/ 猪俣 奈央子)

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