デジタルマーケティング領域でコンサルティングサービスを展開している株式会社パワー・インタラクティブ様。今回才流がご支援したのは、コンサルタントのスキルアップを目的としたカスタマーサクセス研修です。
全3回の研修では、担当顧客の課題やゴールを把握し、行動計画を明確にするための「カスタマー戦略マップ」を作成。講義はもちろん、個人ワーク・ディスカッション・プレゼンテーションを交えて学びの定着を図りました。結果として研修の参加満足度は5段階評価で4.91と、非常に高いものとなりました。
同社の事業戦略を統括する遠藤さん、営業戦略を統括する広富さんに、研修による成果や満足度、研修後に現場で起きた変化についてお話を伺いました。
パワー・インタラクティブ様が今回の研修を依頼するに至った経緯や研修で学んだことについては、以下の記事でも紹介しています。
信頼されるコンサルティングのあり方を追求し続ける|パワー・インタラクティブ
商談・会議のオンライン化で、顧客が見えづらい状況に
- 才流にご依頼いただく前は、どのような課題をお持ちでしたか。
遠藤 当社はデジタルマーケティングのコンサルティング事業を展開しています。とくにMAを核としたデータマネジメントや、デジタルマーケティングのコンサルティングを得意としています。
課題は大きく2つありました。1つはコロナ禍によって当社の営業活動がオンライン化し、お客さまの課題を捉える解像度が粗くなってきたということ。
コロナ前は最初の接点こそデジタルでしたが、その後はリアルセミナーを開催し、顔を合わせた状態からお客さまとの関係性がスタートしていました。ところがコロナによってセミナーもオンライン化し、リアルな接点が減ってしまった。
最初のうちは、「会議室という物理的な制約がない分、セミナー参加者も増えて良かった」とオンライン化をポジティブに捉えていたんです。ただ、リアルな接点が減ったことで、次第にお客さまの課題が捉えにくくなっていることに気がつきました。
遠藤 もう1つの課題は当社の顧客構成が変化したことで、コンサルタントに求められるスキルが変わってきたということ。
ここ4〜5年で、エンタープライズ企業が占める割合が高くなってきたんです。大手のお客さまは課題も多岐に渡りますし、関係者の数も多い。当社のコンサルタントが解決すべき課題が複雑化してきました。
お客さまの課題を自ら拾い、支援範囲を広げていけるコンサルタントもいれば、なかなか広げられないコンサルタントもいます。後者のコンサルタントに「こんな課題もあるだろうから、聞いてみたら?」と聞くと、「そこは別の部門が担当していて……」と。
お客さまとの会議もオンライン化が進み、顧客関係性が深まりにくく、広がりにくくなっていました。受注する前も後も、お客さまを捉える解像度が荒くなっている感覚がありました。
こうした課題に対して、コンサルタントのスキルアップを図りたいと検討する中、「カスタマーサクセス」という考え方に出会ったんです。
カスタマーサクセスの知見を求め、才流に研修を依頼
遠藤 カスタマーサクセスとは、製品を通じて顧客の成功を支援すること。SaaSビジネスの目指すべきゴールとして語られることが多いですよね。当社でお客さまと対峙しているのはコンサルタントですから、コンサルタントがカスタマーサクセスの鍵を握っています。
カスタマーサクセスの知見を、当社のコンサルタントに提供してもらえないかと情報収集していたところ、才流の高橋さんに行き着きました。
-そこで、才流にお問い合わせいただいたのですね。
遠藤 そうです。世の中に営業の研修はたくさんありますが、高橋さんはカスタマーサクセスという切り口でセールスの研修をされていて。当社の課題にまさにフィットすると思い、お願いしました。
ただ、一般的な座学の研修は「やって終わり」になりがちです。やるからにはコンサルタント一人ひとりが自分の担当するお客さまについて深く考え、アドバイスをもらえる時間にしたいという思いがありました。
また、ちょうど広富がアカウント攻略のため、アカウントシートというフォーマットをつくり、運用を始めたところでした。そこでアカウントシートを活用した研修ができないか高橋さんに相談しました。
-アカウントシートとはどういうものですか?
広富 マネージャーがアカウントの状況を把握できるよう、コンサルタントに記載を依頼しているシートです。お客さまの抱える課題と目指すべきゴール、そこに対してどのような支援をしたらいいか、1年間の活動計画を書いてもらっています。
ただ、シートに何をどう書けばいいかわからず、手が止まってしまうコンサルタントが多く、うまく活用できていませんでした。
高橋 アカウントシートを書くには、お客さまの課題を知り、関係性を構築する活動が必要です。そのことをカスタマーサクセスという観点で理解し、整理するとアカウントシートも書けるようになり、お客さまとのコミュニケーションが増える。そんなゴールを描いて研修を設計しました。
学びの定着を目指し、全3回の双方向型研修を実施
-どのような研修を企画し、実施したのでしょうか。
高橋 「カスタマーサクセスの考え方を実際のクライアントワークに取り入れたい」「やって終わりにならない、双方向型の研修を実施したい」。こうしたご要望を叶えるべく、個人ワークやグループワーク、プレゼンテーションを交えた全3回の研修を設計し、実施しました。
高橋 第1回はアカウントプランを作成する前段として、カスタマーサクセス戦略マップを作成しました。講義の後、ご自身の担当顧客1社を題材に、個人ワークとグループディスカッションをしながら戦略マップを埋めてもらいます。
高橋 その後、宿題として戦略マップを持ち帰り、完成させたものを第2回に持ってきてもらいました。
第2回は宿題を進める中で感じた課題をチームごとに共有し、ディスカッション。自分の課題感を腹落ちさせた状態で、アカウントシートへの落とし込みを宿題にしました。
高橋 第3回は参加した全員のかたに、完成させたアカウントシートとアクションプランを発表してもらいました。研修終了時にコンサルタントの皆さんがアカウントプランを描けており、ネクストアクションも決まっている状態を目指しました。
広富 グループごとに気づきを共有したり、発表の場があったり。インプットのみならずアウトプットの時間もあったことで、理解が確実に深まった印象を受けました。
「顧客の成功」をリアルに考えると、行動計画に魂が入る
-研修を受講してどのような気づきがありましたか。お二人の感想を聞かせてください。
遠藤 マーケティングの仕事をしているので、商談から受注に至るまでのカスタマージャーニーは日頃から意識しています。ただ、受注をした後、お客さまのニーズがどう変化していくのかはあまり意識してこなかった。もっと意識すべきだと強く思いましたね。
広富 私が印象に残ったのは3年後、5年後のお客さまとの関係性を考える、ということ。実際に手を動かしながらシートを埋めて、長期で考える視点を得られたのは大きかったです。
長期で捉えると、普段接している担当者のみならず、その上長や別の担当者とも接点を持つ必要が出てくると気がつき、ステークホルダーのゴールにも意識が向くようになります。
遠藤 ステークホルダーについては、もともとみんな頭に入ってるんですよね。アカウントシートにも書き込んでいますし。それが、高橋さんの研修では「その人をどうしたいのか」を考えて書く。すごく新しい視点だと思いましたし、実際に書くことでシートに魂が入る感覚がありました。
高橋 お客さまを「会社」として捉えると、どうしてもぼんやりしてしまいます。でも「目の前のこの人が成功する」となると、リアルにイメージが湧くんですよね。
広富 そうですね。戦略マップの作成を通じて顧客の解像度が一気に上がり、アカウントシートの運用がしやすくなった。この点が、今回の研修の一番の成果だと思います。
高橋 まさに、今回の研修で目指していたゴールが達成できたようで、私も嬉しいです。
研修後に顧客訪問数が増加、改善点も目につくように
-研修の参加満足度は5段階評価で4.91と、非常に高いものだったようですね。受講者からは、どのような反響・感想がありましたか。
広富 お客さまとの関係性において、自分なりの裏目標を持つこと。担当者の異動は顧客関係性をより強固にするチャンスでもあること。提案より、相談に乗ることが大事。このあたりのお話は印象的だったようです。
高橋 参加者から具体的な悩みを聞いて、対策案を出し合う場を用意したので、さまざまなトピックが出てきましたよね。
例えば、担当者のモチベーションや優先度が下がってきた、という悩み。それをどう察知し、どんなアクションを取るか、参加者一人につき5つ、全員で60個のアイディアを出してもらいました。
察知方法として出たのが会議中の質問が減った、タスク管理ツールに既読がつかないなど。他者の察知方法から「そういえば、私のお客さまでも似たようなことが……」と新しい気づきに繋がりました。
また取るべきアクションとして、定例後に1on1をセットする、振り返りの場で上司に一緒にアピールするなど、さまざまなアイディアが出ました。他の受講者からの学びが多く、明日から取るべきアクションが明確になったように思います。
広冨 そうでしたね。研修後は学びをいかすために組織として取り組むべきことについても意見を出し合いました。ゴールとステップは変わる前提で、定期的にお客さまと合意を得ながら進めることが大切。そのためにキックオフミーティングのテンプレートや、コンサルタントが共通で活用しているシートの改善が必要という声も出てきたので、これから見直しを進める予定です。
-実際、研修後に新たな動きは生まれていますか。
広富 先ほどもお伝えした通り、アカウントシートを日常の活動の中に取り入れるようになったのは大きな変化です。あとは、研修を通じて対面でのコミュニケーションの重要性に気づいたコンサルタントが、積極的に訪問をするようになりました。訪問をきっかけに新しい課題を拾ってきたメンバーもいて、今までとは違う動きが出てきています。
高橋 それは良かったです。オンラインとオフラインだと、情報量が全然違いますよね。オンラインだと公式な話以外しづらいですが、オフラインだと例えばエレベーターホールに行くまでの間に裏目標の話ができますからね。
遠藤 コンサルタントの意識変化については私も感じています。これまでは自分が関わっているプロジェクトのゴールだけを見ていたんですよね。例えば、見込み度の高いリード件数をどう生み出すかというように、設定されたKPIに目が向いていた。
ところが売り上げや効率化など、上層部が気にかける指標やゴールを意識した動きが取れるようになってきました。以前だと「そこは自分たちの範疇ではない」と引いていた部分についても、「マーケ部の担当者が評価されるには」と意識が向くようになっています。
高橋 お客さまが目指すゴールに目が向き、担当者が評価される状態をイメージできるようになっていますね。結果としてKPIの先にある売上にまで意識が向くようになった。
遠藤 おっしゃる通りです。私たちがお手伝いをしているマーケティングの成果を見える化するには、マーケティングのデータだけでは不十分です。以前はそのことを頭ではわかっていても、少し及び腰でしたが、研修をきっかけに前のめりになっている感じがしています。
広富 だいぶ前のめりですよね。素晴らしい効果だと思います。
-定量的な成果は出ていますか?
遠藤 売上は一部の顧客を除くと伸びてきています。売上の手前の提案数やコミュニケーションの量については、これから件数を把握するところです。ただ先ほどお話ししたように、コンサルタントの意識変化によって確実に増えてきた手応えがありますね。
異分子が入ると変化の質が変わり、スピードも上がる
-外部の支援会社を入れるメリットを、どのような点に感じていますか?
広富 外部の方の声で伝えると、吸収力が全然違うということを今回感じましたね。
高橋 普段されているお話と同じ内容も、たくさんありましたよね。
広富 そうなんです。でもそれを、外部の方が伝えると、すんなり入っていく。お願いした意味をすごく感じました。
遠藤 本当にそう。私たちも支援会社だからこそ、外部の方に気づかせていただくことは多いと感じています。
また、新しい視点がもらえるのも大きいですよね。会社にはいろいろな人材がいるとは言え、ある程度同質化していきます。そこにポツリポツリと入ってきた新しい視点が触媒となって変化のスピードが上がる。しかも必ずしもスピードだけではなく、変化の質も変わる気がします。
今回は、高橋さんが私たちにとってすごくいい触媒になってくださったと感じています。
~研修受講者から寄せられた声~
・カスタマーサクセスについて、再認識するきっかけになりました。
・体系的に顧客を整理することができました。
・ワークショップやチームディスカッション、発表があり考えを深めることができました。どのように行動するのか少し見えてきた感じがします。
・グループディスカッションも交えながら、程よくソフトに進行いただけて楽しかったです。気づきもたくさんいただきました。
・カスタマーサクセスとして取り組むべき視点や考え方が整理されていて、わかった気になっていた点が整理されました。
・自分が担当するお客さまのことなので取り組みやすかったです。
・カスタマーサクセスマップの全体像をつかむことができました。
・お客さまのゴールや課題を与えられたままではなく、自ら咀嚼し課題設定し、ステップの仮説を作りながら動くことが大事だと、研修を通じて理解が深まりました。
(撮影/矢野 拓実 取材・執筆・編集/藤井 恵)