NTTグループの主要企業であるNTTコミュニケーションズ株式会社様は、働き方改革やワークスタイルDXを支援すべく、さまざまな新サービスを開発しています。
今回才流(サイル)がご支援したのは、経費精算サービス「SmartGo®︎Staple(スマートゴーステイプル)」の営業活動です。
リリースから約3年。まずは中小企業での実績をつくるために、マーケティングや営業活動に取り組んできたものの、商談化率や受注率が思うように上がらないという課題を抱えていたそうです。
営業プロセスやトークスクリプトの設計から見直すために、才流にご相談をいただきました。
同社でSmartGo®︎Stapleを含む3商材のプロモーションや営業活動を指揮する森下様に、プロジェクトで得られた成果や感想を伺いました。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携に課題
-才流にご依頼いただく前は、どのような課題感をお持ちでしたか。
森下 SmartGo®︎Stapleは、モバイルSuicaと法人プリペイドカ―ド(Stapleカード)が一体となっている新しい経費精算サービスとして、2020年9月にリリースしました。
「改札を通るだけ」「プリペイドカードで支払い、アプリで申請」ができるため、立替の必要がなく、申請者も経理担当者も効率的に経費を管理できるのが特長です。
森下 サービスのリリース当初は、大手企業向けに営業活動を行っていました。しかし、大手企業の経費精算システムを置き換えるというのは、実績がないサービスではなかなか難しいんですよね。
そこで、まずは中小企業に使ってもらって実績をつくりたいと考え、中小企業向けのマーケティング・営業活動に取り組んできました。
ただ、NTTグループは大手企業へのアプローチは得意ですが、中小企業向けのノウハウは不足しており、まだまだ改善の余地があると感じていたんです。
たとえば、インサイドセールスチームが架電し、商談を獲得してフィールドセールスに渡す際に、コミュニケーションのルールが複雑で、認識のズレやコミュニケーションロスが起きていました。
インサイドセールスはKPIに商談数が入るため、どんなお客さまでもとりあえず時間をとっていただき、商談をすることに注力をしてしまう。確度の低いお客さまをフィールドセールスにパスし、商談で「経費精算システムはいらないんだけど」と言われてしまう……。
商談化率や受注率も思うように上がらず、非常に効率が悪い状態でした。
そこで、才流にご相談したんです。
才流は数多くのメソッドをコンテンツにして公開しているので、言語化・構造化に長けている会社だと思っています。才流の知見を取り入れて、自社の型を持てれば、いずれ他の事業部にも横展開できるのではないかという思いもありましたね。
サービスの強みは「どの順番で、どう伝えるか」も重要
-本プロジェクトでの取り組み内容を教えてください。
宮戸 最初の1か月間で、市場と競合、顧客、NTTコミュニケーションズ様の社内認識などを調査しました。それをもとに、商談におけるトークスクリプトの設計、営業プロセスの改善提案、営業資料へのアドバイスなどを行いました。
宮戸 また、見込み顧客9社にインタビューを実施し、ニーズや課題がどこにあるのか、競合各社の立ち位置やSmartGo®Stapleの訴求ポイントを探っていきました。すると、SmartGo®Stapleの圧倒的な強みが見えてきたんです。
競合サービスは経費精算にかかる10の手間を5にする、ラクにするというコンセプトで展開されています。一方のSmartGo®Stapleは、「10の手間を0にできる」。ここには大きな差があるんです。
また、「10の手間を0にできる」という幹となる強みの上に、枝葉となるのが「初期費用ゼロ」「単月契約が可能」「1IDから利用できる」という強みです。競合と比較してもトライアルがしやすく、この点も大きなアドバンテージになります。
森下 枝葉の強みについては、才流からの指摘によって改めて認識しました。
正直、プロダクト開発サイドとしては、「ここを訴求してもお客さまの反応はよくならないだろう」という固定観念があったんですよね。それよりも、「10の手間を0にできる」のほうを一番に訴求したいという思いが強くて。
しかし、経費精算サービスに詳しくないお客さまからすると、初回商談でいきなり「10を0にできます」と言われても、イメージがつかないんですよね。
宮戸さんからは、価値を伝える順番を変えようとご提案をいただきました。
お客さまには、まず競合と比較して導入ハードルが低いという枝葉の価値をご案内し、その後に幹となるサービスコンセプトの大きな違いを訴求しようということですね。第三者視点での提案には、大きな気づきがありました。
顧客への解像度が上がり、深くヒアリングできる状態に
-プロジェクトを通して印象に残ったことがあれば、お聞かせください。
森下 営業チームの商談にフィードバックをいただけたこと、見込み顧客へのインタビューを実施したことは印象的でした。
とくにインサイドセールスの商談に対し、プロ目線でフィードバックをいただけたことは大変参考になりました。
担当者ごとに属人的な営業プロセスになっていたり、資料に沿ってサービス説明をするだけの場になっていたり……これまで漠然と課題を感じていたものの、具体的にどこをどう改善すればいいのか、言語化できずにいたんですよね。
お客さまの課題をしっかりとヒアリングし、会話を増やしていく必要性を改めて認識できたと思います。
またインタビューを通して、お客さまが何に悩んでいるのか、どのような意思決定のプロセスを踏むのか、解像度が次第に上がってきました。これによって、ヒアリングの精度も上がったと思います。
たとえば、お客さまの抱える課題を2つ3つ聞いた後に、「この点はいかがですか?」と違う課題も引き出せるようになってきました。
話をしているうちに、「たしかにその点も困っていて……」とお客さまが気づく。潜在的なニーズを掘り起こし、お客さまの興味・関心フェーズを引き上げるスイッチを入れられるようになってきたのは、大きな収穫ですね。
「商談化率は2倍、受注率も2倍を超える勢い」伸びを実感
-アウトプットの一つであるトークスクリプトもご活用いただいているようですね。
森下 トークスクリプトでは「SmartGo®Stapleは導入ハードルが低い」というわかりやすいメリット説明から入り、その後にサービスの根幹部分を説明する流れに変えたことで、商談がブラッシュアップされました。営業メンバーが話しやすく、自信を持って提案できるようになったと感じています。
またトークスクリプトに加え、才流に作っていただいた応酬話法のシートも営業現場でかなり役立っています。答えづらい質問に対して、お客さまの心象を損ねることなく断るところは断り、回避方法があればそれを説明する。スムーズな切り返しができるようになりました。
森下 「このトークは効かなかったから、次はこの切り返しでいこう」と、営業メンバーが自らシートをブラッシュアップしていく動きも出ています。応酬話法に対する社内の意識が高まっている、良い兆しを感じています。
営業が持っている武器が増えましたし、商談の密度が変わってきているのは間違いありません。
-定量的な成果は出ていますか。
森下 商談化率は2倍に膨らみました。現在検討フェーズのお客さまも複数いるため、受注率の正確な数字はまだ出せていませんが、2倍を超える伸びが期待できそうです。事業計画の達成に向けていい数字が出ているので、嬉しく思っています。
宮戸 私の目線でお伝えすると、私たちの提案をもとに、森下さんが最適なリソース配分をする意思決定を迅速にしてくださったことが、成果が出た大きなポイントだと思います。
調査の過程で、「SmartGo®Stapleには無料トライアルがないことが、商談に進みにくい理由」だとわかったときも、森下さんが社内で調整し、すぐに無料トライアルの画面を用意してくださいました。また、営業組織の体制も大きく変更してくださいましたね。
細田 大企業であればあるほど、これまでの経緯や組織の状況により「やりたいけど、できない」ということはよくあります。提案を聞いていただくのと、それを実行に移すのは別の話です。森下さんが現場と握り、実行に移してくださったからこそ、短期間で成果が出せたのだと思います。
「才流の支援は、ノウハウを提供して終わりではない」
-才流の良さをどういったところに感じましたか?
森下 才流は私たちにはないノウハウを持っていますし、そのノウハウを現場が使える形でしっかり落とし込んでいただけたところが良かったです。
当社の新しい営業チームに対し、今回新ルールの説明会も開催してくださいました。
営業メンバーがしっかりと成長できる道筋をつくろうと、密なコミュニケーションでサポートしてくださったと思います。
私たちから言われたことをやるという受け身のスタンスではなく、積極的にご提案をいただけたのもありがたかったですね。
営業支援の本筋とは違いますが、顧客インタビューの手法やカスタマーサクセスの社内向け勉強会も開催していただきました。
プロジェクトを通じて、マーケティングにもいかせるご提案が、たくさん盛り込まれていたと思います。
まだまだ自社でやれることはあると思っています。才流に教えていただいたことを踏まえ、引き続きチャレンジしていきたいです。
(撮影/ 植田 翔 取材・文/藤井恵 編集/安住 久美子)