ビジネスマッチングサービス「Ready Cerw(以下、レディクル)」を運営する、フロンティア株式会社様。
ビジネスマッチングとは、業務の発注先を探す企業へ、依頼要件や相性にマッチしたパートナー企業を紹介する事業です。2010年にスタートしたレディクルは、業界のリーディングカンパニー。サービス利用数は46,000(上場企業2,400社以上を含む※2023年4月1日時点)を超えています。
さらなる事業成長へ向けて、BtoBマーケティングの専門部署を立ち上げた同社。しかし、社内にBtoBマーケティングの深い知見がなく、マーケティングの勝ちパターンを見出せない日々が続いていたといいます。
才流は、2022年3月からBtoBマーケティングの戦略立案、同年6月から現在まで個別施策の伴走支援を続けています。
取締役 兼 広報・マーケティング部 部長の高瀬様、同部の糸岡様に、これまでの取り組みをふりかえり、率直な感想を伺いました。
さらなる事業成長へ、マーケティングの勝ちパターンを探る
ー 才流の支援前は、どのような課題があったのでしょうか。
高瀬 レディクルは、テレアポなどのアウトバウンドで成長してきたサービスです。
営業力に強みを持つ当社ですが、さらなる事業成長や組織拡大を目指すには、営業の生産性や効率性を重視しなければなりません。そのためには、レディクルの認知を高め、お客様からお問合せをいただくインバウンドマーケティングの強化が必要だったのです。
そこで、2021年にBtoBマーケティングの部署を立ち上げました。
しかし、社内には経験豊富なBtoBマーケターはおらず、成功パターンがなかなか見えてきませんでした。手探りで施策を実行し、トライアンドエラーを続けていたんです。
BtoBマーケティングの成功体験や基礎がない状態では、いくらトライアンドエラーを繰り返しても意味がないですよね。
マーケターの採用も考えましたが、人材不足といわれていますし、部署の立ち上げ期は採用が最適解とも限りません。
限られたリソースで効率よく成果を出すためには、「守破離(しゅはり)」が基本。BtoBマーケティングにおいても、まずは基礎を固めてやるべき型を身につけ、勝ちパターンを見つけたいと考えていました。
※「守破離(しゅはり)」:武道や芸道において目指すべき修練の過程や段階であり、師の教えを乞う人の取るべき態度や考え方を示した言葉である。はじめは「教えを忠実に守る」、次に「教えを土台としつつ応用する」、そして「教えを土台としない新機軸を見出す」という段階が「守破離」の3語で示されている。(引用:weblio辞書)
ー そこで、才流にご相談をいただいたのですね。 才流を選んでいただいた理由を教えてください。
高瀬 代表の栗原さんの書籍は読んでいましたし、社内には「コンサルティングなら、才流にお任せしたい」という意向がありました。BtoBマーケティングのメソッドを豊富に持っていらっしゃるイメージが強く、そこに価値を感じていたんです。
一方で、「コンサルティング会社って具体的には何をしてくれるのだろう」という意見も出ていました。
一般的なコンサルティング会社は「セオリーだけは提案してくれるけれど、そのあとはサポートしてくれない」というイメージが強かったんですよね。
ただ、実際に才流に依頼をしてみて、原稿や企画案、構成案のチェックなど実務までやってくださったり、聞けばなんでもすぐに適切な回答を教えてくださったり。イメージしていた以上に、現場に寄り添ったご支援をいただけたと思います。
見込み顧客に、サービスの価値や内容が正しく伝わっていない
ー 戦略立案(2022年3月〜6月)では、どのようなことを行ったのでしょうか。
土山 まずは顧客や事業の理解、競合や市場の状況を把握するために、調査・分析を行いました。
土山 想定見込み顧客8名にインタビューを行ったところ、「サイトを見ても何のサービスだか理解できない」「ほしい情報が見つからない」などの声があり、コミュニケーション設計の課題が見えてきたんです。
当時のサービスサイトは、「どんなメッセージをどんな順番で伝えるか」の設計が十分ではなく、よい構造とはいえませんでした。
また、「ビジネスマッチング」というタグライン(※)も、どんなサービスなのかがイメージしにくいものでした。
この状態で集客を続けても、見込み顧客は問い合わせてくれません。バケツの穴が空いた状態で、水を注いでいるようなものなんですよね。
そこで、レディクルの強みを明確にし、なめらかなコミュニケーション設計を行うためにも、売れるロジックに沿ったサイトのリニューアルをご提案しました。
またタグラインも、「ビジネスマッチング」から「ビジネスマッチングエージェント」とし、人が介するビジネスであることが直感的に伝わるようにご提案しました。
※タグライン:サービスの一般的な名称で、枕言葉になるもの。
高瀬 土山さんが「サイトのリニューアルから始めましょう」と優先順位をつけてくださって、背中を押された気がしました。
もともと、サイトリニューアルをしたほうがいいのではないかと考えてはいたんですが、ほかにも課題があるため、踏み切れずにいたんですよね。
第三者の視点で「優先すべきことだ」と言っていただけたので、社内も納得して決断できました。サイトリニューアル後のコンバージョン率は3倍、コンバージョン数は2倍になり、手応えを感じています。
展示会を自社の勝ちパターンへ。営業との連携強化にも着手
ー 伴走支援(2022年7月〜)では個別施策の実行・改善をどのように進めていったのでしょうか。
土山 最初に、もっとも優先度の高いサイトリニューアルを実施し、その後サービス認知の強化として、運用型広告、LPの改善、メールマガジンや展示会などの施策支援を行いました。
また、施策を実行する際に「絶対にやること・今はやらなくてよいこと」の優先順位をつけました。
土山 施策を実行するなかでも、展示会はフロンティア様の勝ちパターンになることが見えてきたんです。
レディクルの営業部のみなさんは、展示会の接客が本当に上手なんです。積極的で、いきいきしていらっしゃる。
この強みをいかし、展示会でしっかりと成果を出すためにも、インサイドセールスや営業のみなさんと連携し、進めるのが重要だとお伝えしました。マーケティング部として何をするか、展示会後のナーチャリングをどうするかを事前に検討しておくことはとても重要ですよね。
高瀬 才流に入っていただいてからは、展示会におけるインサイドセールスとの連携は意識するようになりました。
以前は、マーケティング部の目標である新規のリード獲得数だけを見ており、展示会準備までがわれわれの業務範囲だったんです。
しかし、事業の成長を考えるならば、展示会後のナーチャリングまで踏み込む必要がある。インサイドセールスとの連携強化の重要性をあらためて実感しました。
糸岡 才流の指示をもとに、展示会で名刺交換をした方にフォローメールを送信したところ、40件ほどの商談が生まれ、ここから100万円以上の売上も発生しました。
土山さんからも、「社内の関係が大事」とアドバイスいただいており、最近は営業部やカスタマーサクセス部のメンバーで、ランチを兼ねた定例会もはじめました。
まずはカジュアルに情報を共有しあい、スムーズな連携につなげたいと思っています。
当社は営業に強みのある会社です。営業とより良い関係を作ることで、マーケティングでも成果を最大化できると感じています。
コンテンツの質が向上し、Facebook広告のCVRは20倍に
ー プロジェクトを通して、どのような成果がありましたか。
高瀬 支援をお願いして1年が経ちますが、コンテンツの質は間違いなく上がりました。
戦略立案の過程でレディクルのペルソナや提供価値が明確となり、訴求の軸が整理された。結果として、広告やLPなど、どのコンテンツにおいてもブレない訴求ができるようになったと思います。
それにより、運用型広告の成果は大きく伸び、コンバージョン率はリスティング広告が3倍、Facebook広告が20倍にもなりました。
糸岡 メールマガジンも、以前は月に4通しか送信できていませんでしたが、今は週3通ほど送信できています。
才流に、メールマガジンの型、コンテンツ制作の視点を教えていただき、コンテンツ作りの土台ができました。
そのうえで、コンテンツの質を高めていくために必要なことを、社内で日々議論しているところです。セグメントごとのニーズを理解し、顧客にあったコンテンツを発信するために、自社でユーザーインタビューも実施しています。
水落 メールマガジンのネタは、才流のコンサルタント全員でブレストしたんです。それをベースに精査して、ご提案しました。
糸岡 今までは、月に4通のメルマガを配信し、4件の商談獲得が目標でした。1通につき1件の計算です。しかし、現在は月に12通ほどのメルマガを配信し、10件以上の商談獲得ができています。
中には、メルマガを配信した日ではなく、後から読み返していただき、商談化したケースもあります。それだけメルマガの質が上がっているのではないかと自信を持っています。このケースでは、時間が経っても商談が増え、累計10件以上の商談が創出できました。
高瀬 営業担当1名分にも匹敵するような商談が、糸岡さんの指先から生まれています。
組織全体でマーケティングに取り組む意識が生まれている
ー プロジェクトを振り返って、よかったことはありますか。
糸岡 私は、才流にサポートいただける環境がとてもありがたいですね。マーケターとしてのキャリアがまだ浅いので、才流の存在が福利厚生のような感覚すらあります(笑)。
自分の取り組みが成功して成果にもつながっていることが、とても楽しいです。
水落 フロンティア様は、確実に実行し、積み重ねていく会社だと思います。たとえるなら、家庭教師が出した宿題をやっておしまいではなく、さらにやるべきことを見つけて、実行しているような。数字も目に見えて改善していますし、私たちもご支援していて嬉しいです。
高瀬 才流との定例で録画した動画は、社内に共有し、BtoBマーケティングの理解やリテラシーの向上につなげています。
上席も動画は必ず見ています。ここぞというときは、土山さんが画面越しにビデオレターのように語り掛けてくださっていて、重要な点はしっかりと伝わっていると思います。社内で議論が必要なとき、迷ったときなどは「才流の視点や経験を踏まえたうえでも、こう思います」と伝えると、納得感が高まり、話も通りやすいです。
土山 BtoBマーケティングは、組織全体で取り組むことで、成果を最大化できます。展示会のように営業との連携が重要なときは、「〇〇さん、よろしくお願いします」と営業の方にもメッセージを送っています。
高瀬 早いときは、定例があったその日に動画を見て、翌日には「土山さんが話していた件、検討しているよ」と動いてくれています。
土山 嬉しいですね。今後は、もっとスピード感を出していきましょう。
高瀬さんたちのリソースは限られていますので、タスクの優先順位をつけていく。やったほうがよい施策の中から、目標達成に影響力のあるマストな施策に集中する。組織として共通認識を持ち、リソースを最適化する取り組みを進めていきたいと考えています。
BtoBマーケティングの立ち上げ期こそ専門家の支援が必要
ー才流のコンサルティングは、どのような企業におすすめだと思いますか。
高瀬 BtoBマーケティングの部署の立ち上げは、とても大変です。初めに設計がずれているとあとから整えることが難しい。
ですから、まっさらな更地のうちに才流に入ってもらい、しっかりとした基礎工事を行ったほうが、その後の工数はかからず、シンプルに進む。立ち上げ期に依頼するのが理想だと思います。
「最初からコンサルティングは早い」「まずは自分たちで取り組んでみてから依頼しよう」という考えもわかるんです。私も、最初はそう考えていました。
BtoBマーケティングに関連する書籍や情報はたくさんありますし、読めば理解はできる。でも、自社の実務に落とし込むことが難しい。悩みどころもたくさん出てきて迷ってしまうんですよね。
さらに、他部署もかかわることが多いので、まわりからあれこれ言われがちになる。その状態では、いくらやってもムダになるし、勝ちパターンは見つからない。
基礎ができていないと、トライアンドエラーも意味がないんです。
立ち上げ期に入ってもらい、最初の基礎を固めたほうが、コンサルティングの投資効果は高いと思います。
(撮影:矢野 拓実 取材・執筆:水谷 真智子 編集:安住 久美子)