採用や社員教育、人事制度構築のコンサルティングによって組織開発や経営を支援する 株式会社Legaseed(レガシード) 様。2013年に創業し、まもなく10年。メインの新卒採用支援の実績は650社を超え、順調に成長を続けてきました。
同社では、コロナ禍でカンファレンスや展示会に出展できなくなったことから、新規リードの獲得強化を検討していました。営業支援会社を活用した新規受注強化にも挑戦したものの、なかなか思うような成果が出なかったそうです。
才流は2022年1~3月、マーケティング戦略と施策の立案をご支援。同社の取締役 田中様、事業企画部マネージャー井上様、当時マーケティングを担当していた西澤様に、プロジェクトの率直なご感想をうかがいました。
新規顧客の獲得へ、「勝ちパターン」をたしかなものにしたい
ー これまでのマーケティングの状況について教えてください。
井上 当社のメイン事業は、新卒採用のコンサルティングです。売上は会社全体の8割を占めており、会社として安定的に成長を続けるための土台となっています。
また、IPOやその先の未来に向けた投資として、HRTech事業にも取り組んでいます。
2軸で継続的な成長を目指し、新規顧客獲得のためのマーケティングや営業数字の可視化などに取り組んでいるところです。
井上 マーケティング部門を立ち上げたのは4年ほど前。それまでは、ほぼ紹介によって新規のお客様を獲得していました。
しかし、年120~140%の成長を目標に置いたとき、紹介だけでは再現性がなく、これ以上の伸びは難しいだろうと考えたんです。そこで、インバウンドで新規のお客様を呼びこむために、マーケティング部門を立ち上げました。
メルマガや郵送DMを送ったり、広告を打ったり。さまざまな施策に取り組む中で「セミナーに参加していただくことで、成約率が上がる」という、当社の勝ちパターンも見えてきました。
ただ、セミナーの集客にはムラがあり、成約しても受注金額はばらばら。たしかな手応えがある、とまでは言えませんでした。
田中 コロナ禍による影響もありました。
コロナ以前は、年に2~4回、経営者が参加するイベントで講演の機会をいただいたり、HR関連のカンファレンスに出展したりするだけで、一定のリードを獲得できていました。
そこから自社で開催するセミナーに呼び込み、当時の会社規模には十分なお客様を創出できていたんです。
しかしコロナ禍で展示会やセミナーがオンライン化したことで、成約率が下がりはじめました。
代表の近藤は対面で話すことに強みがあり、1時間の対面セミナーで高い満足度をいただき、成約につながるケースが多かったんです。それがオンラインになり、短時間になったことで、満足度が下がってしまったのだと推測しています。
ありがたいことに既存のお客様からのリピートもいただけており、すぐに経営としての危機的状況になるという事態ではなかったのですが、「今後新規のお客様が減っていくかもしれない」という懸念はありました。
「施策を改善してもうまくいかないのは、戦略がないから」
ー そこで、外部の支援会社に依頼をすることになったんですね。
田中 実は才流に依頼をする前にも、別の営業支援会社に決裁者アプローチを進めてもらっていましたが、なかなか結果が出なくて。才流も含め別の数社に相談をしたんです。
才流以外の会社は、どこも施策の実行や改善の話が中心だったのですが、才流からは「どんなに個別に施策を改善しても、戦略に沿って設計しないとうまくいかない」と言われました。BtoBマーケティングのドーナツ化の話ですね。
田中 まさに、施策を改善しても成果が出ないことを実感していたので、「たしかに」と思いましたね。
金額的には才流の半額以下で支援してくれる会社もありましたが、戦略の部分からしっかりご支援いただきたいと考え、才流を選びました。
西澤 実は才流にお声がけをする以前から、メソッド記事や栗原さんの書籍を読んでおり、参考にしていたんです。
田中にも本を紹介して、一緒に「勉強になるね」「才流に頼めたらいいね」という話もしていたんですよね。
田中 実際に才流に依頼する段階では、社内の役員会では「またコンサルを入れるの?」みたいな空気は若干ありました。
何度かコンサルをいれてうまくいっていなかったですし、われわれとしても「どのくらい成果が出ます」とは言い切れない時期だったので……。
ただ、「才流から学びたい」「才流のメソッドがすごい」ということを伝えたところ、代表が「そんなにすごいなら、学んでみたらいい」と言ってくれたので助かりました。
きちんと成果を出さなくちゃいけないというプレッシャーもありながら、プロジェクトをスタートした感じです。
ニーズが顕在化していないターゲットへ「軸ずらし」の提案
ー プロジェクトでは、具体的にどのようなことを行ったのでしょうか。
山本 先ほどマーケティングのドーナツ化の話がありましたが、成果を出すためには「何を、何のためにやるのか」を見極める必要があります。そこで、まずは見込み顧客や既存顧客へのインタビューからはじめました。
ターゲットが中小企業の経営者なので、どういう態度変容があって契約に至るのか、くわしくお聞きしていきました。
山本 加えて、採用人事の経験者や採用コンサルティング会社の方など、計8名の業界エキスパートへのインタビューも実施しました。
中小企業の経営者をターゲットにビジネスをしている方が、どのようなタッチポイントを持っていて、どういう手法があるのかを把握し、その中からLegaseed様は何をやるべきなのかを検討していくプロセスです。
調査の中から見えてきたのは、中小企業経営者の方は、新卒採用への課題が顕在化していないこと。または、課題は認識していても、なんらかのサービスで解決しようとは思っていない人が多いことです。
実際、トランザクショナルクエリ(取引行動のための検索クエリ)はほとんどなかったんですよね。
山本 そこで、商品そのものの宣伝ではなく、中小企業の経営者の方が関心のあるテーマをフックに、セミナーで集客する「軸ずらし」をご提案しました。
顕在ニーズが少ない市場では、どんなに課題解決の訴求をしても顧客の関心ごととは一致せず、集客に苦戦する場合があります。
そこで、セミナーやホワイトペーパーなどのコンテンツのテーマを、企業が訴求したい軸ではなく、顧客の関心ごとに近い軸で作成するのが「軸ずらし」です。
Legaseed様の場合は、採用ど真ん中のテーマではなく、中小企業の経営者が関心のあるテーマに軸をずらし、そこから次のステップにつなげようということです。
田中 実は才流のプロジェクト開始当初、ブランディングチームのほうで別の支援会社を入れて、サイトリニューアルの話が進んでいたんです。
ブランディングチームからはサイトリニューアルの一部について、われわれに相談があったのですが、全体像をみたときにそもそも違うんじゃないかという話になったんです。
井上 「才流に教えていただいたセオリーと真逆のことになりそう」と、気づいたんですよね。
土山 すでに話が進んでしまっていたので、われわれとしても「どうやって軌道修正をしようか」と悩みました。でもお客様の成果にかかわることなので、遠慮せずに言わせていただきましたね。
田中 才流からフィードバックをいただき、結局Webサイトリニューアルのプロジェクトは中止しました。現在、才流に教えていただいたセオリーに沿って改修を進めています。
「自分たちの中に答えはない」チームに生まれた共通認識
ー 顧客やエキスパートインタビューで実際の声をお聞きになり、どのようなことを感じましたか?
田中 エキスパートインタビューでは、同業の方がどんなふうに顧客と接点を作っているのか、広告にどのくらい予算をかけているのかなど、自分たちでは知りえないことをたくさんお聞きできました。
「意外と泥臭く、オフラインのタッチポイントを作っている」「あの会社もこんなに予算をかけているんだから、われわれもやらないといけない」など、さまざまな気づきがありました。
また、既存顧客や見込み顧客のインタビューにも何度か同席させていただき、学ぶことも多かったです。
当社のサービスは、導入の意思決定をするのは中小企業の経営者の方たちなんです。マーケティングチームは、経営者が何を求め、何を課題に思っているかを知らなければなりません。
一方、サービス導入後は人事・採用担当者の方が窓口です。現場のコンサルタントは、どのように採用を進めれば成功するのかを見極めるために、採用に必要な情報を知りたいわけです。
マーケティングチームが欲しい情報と、コンサルタントが欲しい情報がそれぞれ違うため、現場からの情報収集はなかなかできていなかったんですよね。
ユーザーインタビューで、「Legaseedのことをこんなふうに思ってくださっていたんだ」「サービスのここに、価値を感じてくれているんだ」と理解が深まりました。
西澤 一連のプロセスを拝見して、経営者の方が普段どういう媒体で、どんな情報に触れているのか、アンテナを張りきれていなかったと感じました。お客様の目線で考える観点を学ばせていただいたと思います。
井上 どんなにお客様のことを考えても、お客様とまったく同じ立場にはなれませんし、自分たちの脳内だけで考えたところでわからない。
だからこそ、お客様の声を聞いたり、現場で聞いた話から議論したりするのが大切だし、「自分たちの中に答えはない」とあらためて感じました。
チームでも共通認識ができたと思います。
セミナーリード10倍、受注金額2倍。営業しやすい状態を構築
ー プロジェクトを通じて印象に残ったことや、良かったことはありますか。
井上 顧客インタビューなどのインサイトをふまえて、売れるロジックを整備し、根本の戦略に沿って優先度の高い施策をご提示いただいた。マーケティングの基盤ができ、施策の選択肢もかなり広がった印象があります。
プロジェクト終了後も、新しい商材を作るときや商材のチラシを作る際には、「売れるロジック」に沿って考えるようにしています。
田中 私は「階段設計」「軸ずらし」が印象に残っています。これまでの設計では、お客様にとても高いオファーをしていたんだと気づきました。
西澤 私も軸ずらしが一番印象に残っています。
コミュニケーションの階段を作ったうえで、組織の悩みにフォーカスして間口を広げていくことで、これだけ成果が出るんだと実感できました。
井上 これまでセミナーごとに点で完結していたものを、面で最適化できるようになってきた。これが大きいですよね。
才流にご支援いただいたのが2022年1~3月。8月の経営者向けセミナーでは前年の10倍のリードを獲得でき、ほかの月も圧倒的に伸びています。新規の受注金額も、前期の2倍になっています。
田中 セールスからも「売りやすくなった」と感謝の声をもらっています。
これまではセミナーに参加していない人に対し、白地で提案をしなければならないので、電話をかけてもなかなかアポが取れない。商談しても受注できない状態があったんですよね。
今は、セミナーに参加して「話を聞きたい」という人にアポをとっているので、受注率も上がっています。毎日4アポだったところが7アポに増え、その状態を継続できています。
山本 Legaseed様は、現場のみなさんの実行力が高い。
われわれの提案を聞いて終わりではなく「実行するんだ」「成果を出すんだ」という前提で動いてくださったからこそ、今の結果につながっていると思います。
土山 既存顧客のインタビューでは、「Legaseedのコンサルタントが優秀だから、こんな新人を育てたいと思ってLegaseedに発注した」というお客さまもいましたね。
もともとLegaseed様が持っていた武器があったので、われわれもご支援しやすかったです。
戦略と自分たちで実行し続ける意思があれば、成果は出る
ー 才流のサービスは、どのような会社にフィットすると思いますか?
田中 もともと点で施策を打っていたのですが、才流に「何のために、どこに向かっているからこれが重要」という方向性を整理していただいたので、私たちも重要なポイントをおさえて実行できました。
コンサルに依存するだけでなく、自分たちもやり続けるという意思がある会社だと、より大きな成果が期待できると思います。
井上 才流に依頼する前は、すべての施策が点で実行されていて、費用対効果は悪く、成果を最大化できていませんでした。とてももったいない状態だったと思うんですよね。
ですから、マーケティングをこれから立ち上げる会社には、早いタイミングで導入をおすすめしたいですね。
コンサルティングを依頼する費用はかかりますが、上流から戦略を立てて実行することで、トータル的にみると費用は抑えられ、効果が何倍にもなると思います。
西澤 私は井上と逆の考えで、ある程度マーケティングをやってきたけれど、頭打ちになってしまった会社にもいいと思いました。
どうすればいいのかわからないときに、一緒になって最適なプランや戦略を構築してくださることで、突破していけると思います。
(撮影:植田 翔、取材・執筆・編集:安住 久美子)