企業価値を高める段階から支援し、出口戦略である事業継承・M&Aのコンサルティングまで。一気通貫の支援を行う株式会社M&Aコンサルティング様。「M&A仲介会社の仕事は単なる買い手探しのマッチングではなく、事業理解をベースとした顧客との信頼関係が重要」という信念のもと、2019年に会社を設立。顧客の思いと事業理解をベースに、適切な企業評価・マッチングを行っています。
これまで戦略的に取り組めていなかったBtoBマーケティングを強化するために、才流にご依頼をいただきました。才流では、21年6~8月にBtoBマーケティングの戦略立案を支援。代表取締役社長の松栄様に、支援を受けた成果や率直な感想をお聞きしました。
M&Aコンサルティング様との取り組み
【課題】
- 今後5〜10年を見据えた際に、M&A仲介会社として明確な差別化戦略を打ち出したい
- これまでマーケティングに戦略を持って取り組めておらず、一度洗いざらい整理して施策の優先順位や取り組み方を決めたかった
- 潜在顧客の関心は何か、どのようなメッセージを届ければいいのかを明確にしたかった
【提案内容】
- 業界ごとのペルソナ定義と課題の整理
- ペルソナごとのマーケティング戦略の立案
- Webサイトの改善提案
【成果】
- ゼロからのマーケティング活動の基礎ができた
- 事業成長に向けて、これから進むべき道筋が見えた
- 潜在顧客の考え方や関心を再確認でき、ペルソナごとのマーケティング戦略を明確にできた
- 社員のマーケティングに対する意識が高まった
「潜在層の顧客は何を考え、どんなメッセージが届くのか?」
ー才流に依頼をする前のマーケティング活動の状況について、教えてください。
松栄 BtoBマーケティングにはほとんど取り組めていませんでした。Web広告運用などのマーケティング施策を単発で実施したこともありましたが、全体戦略を立てていたわけではなく、PDCAも回せていない状態。私を含め、役員が4名とコンサルタントが十数名の組織ですし、ベンチャー企業なので、まずは売上第一でやってきたんです。
ようやく当社のコンサルティングサービスの質が安定し、業界の中でも「勝てる」自信がついてきたのが、創業から1年半~2年たった頃でした。少しずつ私も現場から手が離れるようになってきたので、それまで着手していなかったマーケティングにしっかりと時間をかけていきたいと考えました。
特にM&Aの業界で潜在層と呼ばれる「将来的には事業や会社を売却したいけれど、今じゃない」「M&Aという選択肢さえも視野に入れてなかった」というお客様へのアプローチに課題を感じていました。
一般的には、M&Aの領域では目の前の「すぐに事業を売却したい」お客様を優先せざるを得ませんが、当社がM&Aにおける潜在層の方もしっかりとフォローできれば、業界全体的に意義があると考えていました。
M&Aにおける潜在層の経営者が何を考え、どのようなメッセージを届ければいいのか。まさにマーケティング活動の中で解決したい課題でした。
ー才流に依頼を決めた経緯を教えてください。
松栄 マーケティングに取り組もうと考えたものの、いざやろうとなっても、わからないことが多かったんです。そこで、いろいろと書籍を読み漁り、代表の栗原さんの著書『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』に出会いました。私の中では内容が一番しっくりきたので、才流に相談することにしました。
同時に他社にも話は聞いたのですが、どの会社も得意な領域が限られているように感じました。例えば「デジタルマーケティングで価値を発揮できます」「SEOで、こう勝ちましょう」という提案ばかりだったんです。
でも、M&Aの領域はデジタルだけでは勝てないですし、まずはフラットな視点でマーケティングの現状の課題を棚おろしして全体的な戦略を描いてから、最適な手法を選びたかった。その考えに、才流のやり方がマッチしていたと思います。
ユーザーインタビューで「業界ごとに異なる」ペルソナの仮説を検証
ー取り組んだプロジェクトについて、具体的に教えてください。
井出 3カ月間でユーザーインタビューや見込み顧客インタビュー、競合分析などを行いBtoBマーケティングの戦略立案を行いました。私と黒須が担当をさせていただきましたが、最初に2人でポイントだと話をしていたのは、業界によってターゲットの傾向が違うことだったんです。
黒須 各業界のお客様がどのチャネルで、どういう情報を探しているのか。まずはペルソナの解像度を上げることが重要でした。経営者といっても年齢も関心事項も違い、情報収集の方法も違う。業界ごとのペルソナ設計のために、見込み顧客や既存顧客の方々にヒアリングを重ねて検証をしていきました。
松栄 狙う業界の経営者が、何をどのように考え、何に関心を示すのか。心の動きというのは、とても難しいですよね。
私は、才流がやってくださったインタビューの中でも「M&Aで実際に売ったことがある方」へのインタビューが印象に残っています。私たちのお客様ではない方ですし、そういう方に話を伺う機会は貴重なので、とても参考になりました。
当社のHPをご覧になられ、「ご自身が売却したときに戻ったら、当社に問い合わせをしますか?」という質問に「問い合わせはしない」と言われてしまいましたが……(笑)。率直なご意見は、改善できる部分がわかるのでありがたいですね。
また、当社は特に製造業界のM&Aで力を発揮したいと考えていました。実際に製造業界の方に話を伺い、これまでイメージとして持っていたペルソナの仮説が間違いなかったと確認できました。
井出 競合他社の動きを見ても、マーケティングに注力している会社はなく、M&A業界でどのようなマーケティング施策が当たるのか、各社がDMでどのような内容を送っているのか、事例もほとんどありませんでした。そこで、M&A仲介の会社で働いたことがある業界に対して専門的な知見を持つ方へインタビューも集中的に行い、事業承継・M&A仲介事業の解像度を高めることにも注力しました。
黒須 あとは、Webサイトの改善ポイントもまとめてご提案しましたね。これまでのWebサイトではセッション数は多かったのですが、コンバージョンが非常に少なかったんです。CTAがあまり置かれていないこともありましたが、そもそもメインのターゲットがサイトにアクセスしていなかったんです。改善次第で伸びしろはあると感じていました。
才流は経営と同じ目線で壁打ちができる相談相手
ー才流に依頼をして、良かったことは何ですか。
松栄 自分が経営をやっていて、同じ目線でマーケティングに対して壁打ちできる相手は、なかなかいないんですよね。一緒に議論しながら、プロとしての意見をいただけるのがとてもありがたかったですし、自分の中の思考がかなりクリアになった気がします。
マーケティングって答えがない中で決めなくてはいけないので、本当に合っている判断なのかわからない部分があります。でも、今回の才流とのプロジェクトでは、BtoBマーケティングの施策を行っていく上で根幹となる考え方を提供していただいたと思います。
また、同じコンサルタント業を行う者としては、プロジェクトの進め方や、クライアントを動かす力なども勉強になりました。資料の作り方も、さっそくまねして、社内で取り入れています。
ー社内では、マーケティングに関する変化は何かありましたか。
松栄 才流からいただいた提案書は社内で共有していますが、新しく入社してくる社員への説明材料としても使っています。自社の事業戦略、メインターゲットとなるお客様、カスタマージャーニーなど、才流からの提案書によってより伝えやすくなったと思います。
また、先日社員みんなでミーティングをして、これからの目標について話し合ったんですが、マーケティングに関する意見がいろいろと出てきて。会社全体で「いいリードをとっていこう」という意識が出てきたと感じました。
マーケティング施策の実行はこれからなので、数字的な成果はまだ出ていませんが、それ以外の部分でも得るものはたくさんあったと思います。
「毎週月曜日の朝のミーティングにも参加し、当社への理解を深めてくれました」
ー普段のコミュニケーションはどのようにとっていましたか。
松栄 Slackで主にやりとりをしていました。なかなか対面でのコミュニケーションが難しい状況でも、こちらからの質問に対し、しっかりとお答えいただけたので満足しています。井出さん、黒須さんの人柄が良くて。コロナ禍でなければ食事でもしながら、もっといろいろお話してみたかったですね。
井出 私は、松栄さんから毎週月曜日の朝のミーティングに参加するよう誘っていただけたのは、とても良かったと思います。
そこでは、M&Aコンサルティング様の中で事業進捗を共有したり、各コンサルタントの方々がその週に得た学びなどが共有されます。参加させていただいたことで、ターゲットや事業戦略についての解像度がかなり高まりました。間違いなく才流からのマーケティング戦略の提案にも活きていますし、今後の他のプロジェクトでも同様に実施してていきたいと思いました。
松栄 私たちも才流とのプロジェクトを行うにあたって、役員陣でかなり議論をして、他への予算投資をストップして第1優先でBtoBマーケティングに取り組もうと決めていたんです。だからこそ、せっかくやるなら才流に全部見てもらって、理解を深めていただこうと思ったんですよね。
業界的には、コロナ禍によって売り手も増え、厳しい売却も増えてしまったと思います。東日本大震災のときもそうだったんですが、こういうネガティブなきっかけがあると、経営者は次に備えようと考えるものです。いざというときの事業継承の準備のためにも、M&Aにおける潜在層のお客様にしっかりと私たちのメッセージを届けられたら嬉しいですね。
ー才流の支援はどのような会社におすすめしたいですか。
松栄 何か「きっかけ」があった会社には、良いと思います。例えば経営者が代替わりしたタイミングで、違うマーケティング戦略を作ろうと考えているとき。今までのマーケティングが正しかったのか、しっかりと課題を棚おろしして、整理してもらうのは良いと思います。
M&Aをしたタイミングもひとつですよね。一度マーケティングを見直してみようと考えたときに、才流がいてくださると心強いと思います。
(撮影/矢野 拓実 取材・文/安住 久美子 編集/中島 孝輔)