通信・金融・製造・公共機関などの幅広い顧客基盤を持ち、ITライフサイクルのすべてにおいてソリューションを提案できるマルチベンダー・システムインテグレーターである伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下CTC)様。既存顧客に対する定期訪問時のサービス紹介資料を改善したいと、才流にご相談をいただきました。
才流では、2022年8月から4か月間、BtoBマーケティングの戦略立案・実行と並行して、営業資料の改善と営業活動の戦略立案をご支援。情報通信第1本部 通信キャリアビジネス営業推進課 課長の谷村様、マーケティング担当の栗原様にプロジェクトの率直な感想を伺いました。
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営業70名が顧客に定期訪問をする際の営業資料を刷新したい
― 才流に依頼をする前は、どのような課題をお持ちだったのでしょうか。
谷村 当社では、サービスや顧客ごとに事業グループが分かれており、私が所属する情報通信第1本部は、900社を超える企業群を抱える大手通信グループを顧客としています。既存顧客への定期訪問の際に使用している営業資料をリニューアルしたいというのが、今回の依頼でした。
CTCでは、私たちが強みとしているITインフラの構築以外にも、AIやIoT、アジャイル開発などの技術力を活用したさまざまなDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行っています。
定期訪問時には、それらのサービスを紹介する資料を使っていますが、これまでは会社案内をベースに、個々の営業担当がそれぞれ作成した資料しかありませんでした。
谷村 私個人としても、お客様にいただいた時間をさらに有益なものにしたいという思いがありました。「現状の資料で、お客様は商談の時間を楽しんでくださっているのか」懸念を持っていたんです。
加えて、当本部には約70名の営業パーソンがいますので、70名全員が定期訪問時の提案をアップグレードできるような型をつくりたいと考えていました。
― 才流に依頼を決めたのは、どのような経緯があったのでしょうか。
谷村 才流を知ったそもそものきっかけは、代表の栗原さんが書かれた書籍「事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践」を読んだこと。その後、才流が主催する営業支援のウェビナーも受講しました。
ウェビナーには井出さんが登壇されていて「商談ではお客様が聞きたいことと、営業が話したいことが乖離しているケースがある。この2つをフィットさせることで、顧客の関心を正しく把握して新しいニーズが掴める、商談を有意義なディスカッションの場にできる」といった趣旨のお話があり、とても納得感があったんです。
当時の私たちが抱えていた課題や実現したい姿と合致していたため、才流に依頼しました。
営業資料改善の3ステップは、徹底的な顧客理解から
― 本プロジェクトで取り組んだことを教えてください。
井出 2022年8月からの4か月間、顧客理解・商談の目的設定・資料化の3ステップで、営業資料を改善していきました。
井出 今回のプロジェクトで特徴的だったのは、提案先である顧客が、とある大手通信グループと決まっていたこと。ですから既存顧客や見込み顧客インタビューでは、大手通信グループ企業ならではの固有のニーズがあるのか否かを注意深く見ていきました。
また、顧客に実際に改善前の営業資料を見ていただくユーザーテストも実施。率直なご意見をいただいたことで、改善すべきポイントが明確になりました。
井出 また顧客は、すでにCTC様とお付き合いのある企業ばかりなので、CTC様に対する期待やイメージをきちんと理解すべく探っていきました。
一方で、営業資料で訴求したいと考えていた「DX支援サービス」についても、どのような方が購買者となり、購買者はどんな商談相手であれば相談したいのかを調査しました。
DX案件の場合、何を購入するかが決まっていないケースが多く、「いい提案があればやってみたい」「何が自社に適しているのかを一緒に検証してほしい」というニーズが多いんです。購入に至るまでの顧客側の情報ニーズや期待を、あらためて確認していきました。
井出 次に行ったのは、顧客理解に基づいた商談の目的設定です。営業の方々が、いつ、どのようなタイミングで資料を活用するのか。お客様のどんなアクションを促したいのか。谷村様やチームの方々と相談し、一つひとつ決めていきました。
谷村 井出さんは、私たちのビジネスの理解はもちろん、「なぜこの領域をこれから伸ばしていきたいのか」「そのためにどんな商談の場にしたいのか」といった背景をとても丁寧にヒアリングしてくれました。
営業資料って、背景や目的を知らなくても、つくろうと思えばつくれてしまうもの。ページを埋めるための情報を当てはめていけばいいわけですから。でもそれって、木を見て森を見ずの状態ですよね。
才流の場合は、時間をかけて「顧客の視点」と「自社の視点」双方を丁寧に調査・分析し、両者の目線を合わせてくれた。だからこそ機能する営業資料が作成できるのだろうと感じました。
説明しなくてもわかり、次のアクションにつながる営業資料
― 実際に、営業資料の改善では、どのような点に気をくばりましたか。
井出 今回の営業資料は、あくまで定期訪問時に使用する簡易的なもの。CTC様では数多くのサービスを扱っているため、どうしても一つひとつのサービス紹介に割ける紙面は少なくなります。小さなスペースでも出来るだけ具体的な情報を記載したり、次のアクションにつながるCTA(※)を置いたりして工夫しました。
※CTA:シーティーエー/Call to Actionの略。ユーザーに起こして欲しい行動をボタンやリンクで表示したもの。「行動喚起」と訳される。
既存顧客や見込み顧客インタビューからヒントを得て、新たにつくったページもあります。CTC様は情報通信第1本部様の顧客である大手通信グループ各社との取引実績が豊富ですが、顧客内では、グループ内でどの企業が、どんなDX支援サービスを受けているのか認知されていなかったんです。
グループ内での取引実績が豊富であることは安心材料の一つになりますから、取引一覧をつくり、グループ各社への支援内容を紹介するページを新たに作成しました。
谷村 才流は、営業資料の読まれ方もひと工夫してくれましたよね。商談の場で活用するだけではなく、商談に同席していない上司や他チームの方にも共有いただくことを想定し、説明がなくても目を通せば伝わる内容に仕上げてくれました。その点も、すばらしかったと感じています。
― 実際に営業を担当されている方の反応はいかがでしょうか。
谷村 リニューアルした営業資料を現場で活用してもらうのは、これからなんです。ロールプレイングなどを通じて現場でうまく実践できるように、今準備を整えているところです。
ただ、事前に何人かの営業に資料を見せたり、他部署のメンバーも閲覧できるSlackに資料を投稿したりしたところ、反応はとてもよかったです。「とても助かる」「他部署でも役に立ちそう」「早く使ってみたい」との声が聞かれました。
これまで当社では、会社やサービス紹介の資料は、オールマイティに対応できることを優先してつくっていました。さまざまなケースに対応できる分、お客様によってはメッセージが刺さりにくい部分も多かったと思います。
今回、定期訪問時のサービス紹介資料をリニューアルしたことで、一つの型ができました。この学びを活かして、営業シーンや商談の目的別に、どんどん新たな資料をつくっていきたいと思っています。
「型」をもとに、提案の品質均一化と若手の商談力強化を狙う
― 才流との仕事で、良かったことや印象に残っていることはありますか?
谷村 井出さんの自走力がすごいなと思いました。当社の社員ではないのに、当社の営業資料をここまでつくれてしまうのには驚きました。
井出 プロジェクトスタート時に、膨大な量の資料をみなさまが共有してくださったので。私としても進めやすかったです。
谷村 才流のコンサルタントの方は、みなさん自走力が高いですよね。どんどん自ら情報をキャッチアップされて業界やビジネス、サービスの理解をしてくれます。顧客理解をもとに営業資料をどう改善するかの戦略を立ててくれるので、成果が出るんだと感じました。
栗原 私としては、才流がつくられた営業資料の各スライドに、そのページで伝えたい概要や目的、注意点などのガイドをしっかり記載いただいていた点が印象に残りました。
事前にプレゼンテーションのトレーニングはしますが、それでも各営業によって伝える力の差が出るものだと思います。ガイドをつけてくださったことで提案の品質が均一化されますし、とくに若手営業の商談力強化につながるのではないかと見ています。
谷村 そうなんですよね。完成した営業資料を見ると、説明する営業のことを考えてつくられていることが、よくわかります。パッと見の印象はキレイで、よく整えられているけれど、誰もうまく説明できない資料では困りますから。資料をつくることが目的ではなく、その資料を活用して、お客様のどんなアクションを促したいか。先々の成果につなげるための営業資料になっていると感じています。
また、井出さんには当社の社員に向けて「営業資料作成の勉強会」を開いてもらいました。これまでの経験から培ってきた営業資料のつくり方が、営業ごとにあると思います。今回、外部の専門家の立場から「こう改善すると、もっと良くなりますよ」という秘訣を教えていただいたことで、一人ひとりが自分自身のやり方をアップデートできる機会になったのではないでしょうか。
― 最後に、今後の才流に期待することを教えてください。
谷村 今回、営業資料を改善していただいて、一旦プロジェクトは終了しました。ただ、折をみて、引き続き伴走支援をお願いしたいと考えているんです。
まずは才流からのアドバイスをもとに自分たちで試行錯誤してみます。その知見がたまったあとに、また別の角度からご支援いただけたら。もしも私たちが間違った方向に向かっていたら正しい道を指し示してもらえたら、ありがたいですね。また次のステージで、どのように才流にご支援いただけるか、私たちも楽しみにしています。
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(撮影/矢野 拓実 取材・文/ 猪俣 奈央子 編集/安住 久美子)