コロナ禍を機に導入が進んだオンライン営業。定着化しつつあり、訪問とオンラインの分業を進めている企業も増えてきています。一方で、組織の業務設計から商談までのすべてをオンラインに最適化できておらず、課題を感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、オンライン営業に難しさを感じている営業パーソンや、成果を最大化させたい営業組織のマネージャーの方へ向けて、オンライン営業のコツを解説します。ぜひ業務にお役立てください。
■監修:才流(サイル)営業コンサルタント・宮戸章光
オンライン営業とは?
オンライン営業とは、Web会議システムなどを利用したオンライン上での営業活動です。コロナ禍において接触を避ける手段として導入が進み、現在は営業手法として定着しています。
オンライン営業で重要なのは、マイナス要素を最小限にすることです。コロナへの対応で急遽オンライン化を進めた企業の中には、オンライン最適化の準備が整っていない企業も多いと感じます。オンライン営業の特徴を知ったうえで、マイナス要素に対処しながらメリットを活かし、成果を最大化させましょう。
※関連記事:
・オンライン営業/商談大全。導入のコツからツール選定まで
・オンライン営業を成功に導く100のチェックリスト
オンライン営業のメリット
オンライン営業の主なメリットを3つご紹介します。
業務効率を改善できる
オンライン営業では顧客に会うための移動が必要ありません。移動時間をなくし、商談や資料作成にあてる時間を増やせるため、業務効率の改善につなげることができます。
画面を共有できる
訪問の場合、顧客側の設備によっては商談資料を投影できないことがあります。しかし、オンライン営業ならWeb会議システムで手軽に画面共有が可能です。特別な設備や準備の手間なく、資料やWebサイト、動画などのコンテンツを参加者全員に共有できます。
録画・録音できる
オンライン営業の場合、訪問と比べて録画や録音が簡単にできます。営業パーソン本人からの報告ではなく、マネジメント層は実際の商談内容をもとにフィードバックできるので、教育の質向上が期待できるでしょう。また、ハイパフォーマーの商談内容をもとにトークスクリプトを作成するなど、業務の平準化にも役立ちます。
オンライン営業のデメリット
信頼関係を築きにくい
オンラインは、対面と比べて信頼関係の構築が難しいというデメリットがあります。人物像が伝わらなかったり、雑談や接待の機会が減っていることも理由にあげられるでしょう。
オンライン営業で信頼感を高めるには、営業技術の向上が欠かせません。顧客がほしい情報をベストタイミングで提供する、レスポンスを早めるなど、顧客の要望に応えつづけることが重要です。
大人数が参加する大型商談を進めにくい
BtoBの商談には、さまざまな部署や役職から多くの関係者が参加する大型商談もあります。オンラインの大型商談で、顧客側はひとつの会議室から参加するというパターンでは、名刺交換もないまま、誰がどの役職で何を言っているのか把握しきれません。
訪問時と同じように大型商談を進めるのは至難の技です。事前に参加者の氏名や部署、役職を聞いておく、全員個別のデバイスからそれぞれ参加してもらうなどの対処をしましょう。
メリットも多いオンライン営業ですが、実際には訪問営業のほうが適している場面もあります。顧客の属性や営業状況によって、オンラインで対応する案件と訪問で対応する案件を使い分ける必要があります。
オンライン営業の成否を分ける3つの要素
オンライン営業の成否を分ける3つの要素を順に解説しましょう。
コミュニケーション
非言語コミュニケーション研究の第一人者とされるレイ・L・バードウィステルは、人間のコミュニケーションの65%は、非言語的なものであると指摘しました。しかしオンラインでは、アイコンタクトや動作といった非言語的コミュニケーションは限定的にしか伝わりません。雰囲気を作りにくく、人物の印象やキャラクターも伝わりにくいのです。
オンラインでは、話し方や説明の仕方など、言葉でのコミュニケーションに一層磨きをかける必要があります。意識すべきことは以下の4つです。
- わかりやすいメッセージ
何を伝えたいのか、話す内容や順序などをよく整理する。 - 丁寧な言葉遣い
信頼感のある言葉遣いを意識する。 - パラランゲージ
声の大きさやトーン、テンポに抑揚をつける。 - 細かい理解の確認
不明点や齟齬がないか、都度確認する。
顧客の商談体験
顧客が体験する商談は、訪問型営業とオンライン営業では大きく異なります。オンライン営業では、顧客が不便や抵抗を感じやすい点に注意を払う必要があります。たとえば、通信のタイムラグやツール準備の手間などです。
顧客の商談体験をそこなわないためのポイントは、以下の3つです。
- 安定した商談環境
万全な通信環境や安全なセキュリティ、雑音などが入らない環境を整備する。 - わかりやすい利用ツール
利用するのに手間が少なく、操作がわかりやすいツールを選ぶ。Zoomが一般的なものの、お客さまが利用するツールに合わせることが望ましい。 - オンラインならではの工夫と気遣い
ツール利用案内を洗練する、お役立ちURLをチャットで共有するなどの工夫を行う。
コンテンツ
オンライン営業では、商談資料や動画などのコンテンツを有効活用できるかが重要です。目の前にいない相手の説明に集中し続けるのは難しいもの。訪問を前提とした資料をそのまま使っている場合は、口頭説明をなるべく減らし、視覚的に理解しやすい資料にブラッシュアップしましょう。
Web会議では動画共有やチャットも可能です。定型化している説明やデモを動画にして流したり、役立つWebサイトのURLをチャットで送るなどの工夫もできます。
オンライン営業でコンテンツを最大限に活用するポイントは、以下の3つです。
- 商談資料の見直し
口頭説明や文章説明を減らし、表や図、グラフなどを使って視覚化する。 - 動画化の検討
定型化している説明やデモを動画にできないか検討する。 - お役立ち情報
WebサイトのURLで共有できるお役立ち情報をまとめておく。
※関連記事:
・オンライン営業を成功に導く100のチェックリスト|営業コンテンツの整備
・成果につながる営業資料・サービス紹介資料の改善プロセス
オンライン営業のやり方と成功させる9つのコツ
オンライン営業ではどのような点に気をつければよいのでしょうか。初回商談を例に、商談準備から商談後までの流れと成功させる9つのコツについて説明します。
商談準備のやり方
通常の商談準備に加えて、会議URLを発行してお客さまへ連絡します。ソフトのインストールやアカウント作成などの準備が必要な場合は、わかりやすい説明文を添えましょう。また、前日にリマインドをすることも忘れずに。リスケ防止につながるだけでなく、お客さま側も商談に必要な情報や質問を用意しておいてくれることもあるからです。
その上で、自社の営業側でやるべき商談準備のコツをお伝えします。
コツ1.参加者が誰なのか把握する
オンライン営業では名刺交換ができないため、参加者の情報を正確に知るためにはひと工夫が必要です。商談前に窓口担当者に聞いておき、参加者の部署名や役職、氏名を把握しておくとよいでしょう。ほかにも、名刺管理サービスを活用する、商談の最初に自己紹介をお願いするなどの方法も有効です。
コツ2.トークスクリプトを用意する
オンライン営業での進めにくさを解消するには、トークスクリプトの整備が効果的です。ヒアリングやサービス説明、事例紹介などの定型的なトークはスクリプト化しブラッシュアップしましょう。また、録音・録画の承諾や、Web会議システムの説明など、オンラインだからこそ必要となるトークをマニュアル化しておくことも必要です。
こちらのチェックリストもぜひ参考にしてください。
※関連記事:オンライン営業を成功に導く100のチェックリスト|マニュアル・スクリプトの整備
コツ3.視覚的にわかりやすい資料を用意する
オンライン営業の場合、顧客は画面共有された資料を中心に理解しようとします。オンライン営業で使用する資料は、視覚的にわかりやすくシンプルであることが重要です。これまで文章で説明していた箇所を、図や表、グラフなどでわかりやすくできないか検討しましょう。1スライド1メッセージを徹底し、見やすさに磨きをかけることが大切です。
コツ4.商談時間を短くする
商談は60分が一般的ですが、時には30分程度の短い商談にするのも効果的です。オンライン営業の場合、対面よりも顧客の集中力や緊張感が落ちるため、要点を絞った商談にすることが重要だからです。さらに、オンラインならお互いの負担が少ないので、間を空けずに次回商談を取り付けやすくなります。接触回数を増やしながらニーズに合わせた情報提供ができ、信頼関係構築につながるでしょう。
商談のやり方
初回商談の場合、以下のような流れで進めます。流れは通常の商談と変わりませんが、オンラインの商談では名刺交換ができません。冒頭で自己紹介をお願いするなど、参加者を把握する工夫が必要です。
コツ5.カメラ、マイク、背景に配慮する
オンライン商談では、顧客が不快に感じる部分をなくす努力が必要です。顧客からの印象を左右するカメラやマイク、背景に配慮しましょう。たとえば、カメラの角度や距離を調整する、雑音が入らないマイクを使用する、余計なものが映らないようバーチャル背景を使用するなどです。
名刺がわりに背景に名前や部署が入った画像を使用するといった工夫もできます。
コツ6.細かく顧客に質問する
オンライン商談では、相手の表情や会話中の空気から感情を読み取ることが難しくなります。疑問点がないか、理解に齟齬がないかを訪問営業のときよりも細かく確認していくことが重要です。「ここまでで何かご不明点はございますか」「◯◯という理解で相違ないでしょうか」など、都度質問し相互認識をすり合わせましょう。
コツ7.声の大きさ、トーン、テンポを意識する
オンライン商談中、顧客は説明資料やデモ画面に注目しているため、営業パーソンの表情やボディランゲージは十分に伝わりません。そのため、声の大きさやトーン、テンポなどの音声的な情報で補う必要があります。重要な部分は大きめの声でゆっくり話すなど、声の大小やトーンの高低、テンポのスピードなど、話し方の抑揚を意識しましょう。
コツ8.コンテンツを活用する
画面共有機能やチャット機能を使えば、動画やWebサイトなどさまざまなコンテンツを活用できます。定型化している説明やデモを動画化すれば営業パーソンの負担軽減につながるでしょう。
また、お役立ち情報のURLを事前にまとめておき、商談中にニーズに合わせて共有するなど、オンラインだからこその工夫もできます。
商談後のやり方
商談後のフォローは、顧客との信頼関係を構築するためにも重要です。商談後は当日中にお礼メールを送りましょう。
コツ9.商談後アンケートを活用する
オンライン営業ではURLでアンケートツールを共有しやすい環境にあります。商談後アンケートを実施することで、顧客の反応や状況、ニーズを知ることができます。説明のわかりやすさなど営業品質についてのフィードバック、顧客ニーズの再確認など、目的がある場合に活用するとよいでしょう。
オンライン営業の課題と対策
オンライン営業と訪問営業のギャップに課題を感じている方から寄せられることの多いお悩みに対して、才流コンサルタント・宮戸が回答します。
1.雑談が難しい
オンライン営業でしづらいことのひとつに雑談があります。雑談は、購買担当者から本音や非公開情報を聞く貴重な機会です。雑談ができなくなり、情報収集がしにくい、自身のキャラクターを知ってもらえないなど、課題を感じる方も多いでしょう。オンラインでも雑談の機会をもつにはどうしたらよいのでしょうか?
初回商談では難しいかもしれませんが、2回目以降で複数名の方が参加される商談であれば、購買担当者の方に10分程度早めにWeb会議室へ入ってもらうことを提案します。そこで、アジェンダや流れを確認しながら、「本日はこのような流れでよかったですよね?」「本日はお忙しいですか?」と話していくと、ラフにお話しできることがあります。また、商談の終わりに「今後の進め方でご相談したいので、◯◯さんとこのままお話できますか?」と言って残ってもらい、軽く話すのも有効です。
2.アイスブレイクのネタがない
訪問の際は、オフィスや会議室、名刺のデザインなどがアイスブレイクのきっかけとなりました。しかし、オンラインでは会話の糸口となる情報が少なく、いきなり本題に入ることもあるため、雰囲気作りに難しさを感じる方も多いでしょう。そもそもアイスブレイクは必要なのでしょうか?
個人的な感覚ですが、オンラインの場合は訪問ほどアイスブレイクが必要ないんじゃないかと思っています。オンライン商談の位置付けは訪問と電話の中間というイメージなので、最初から本題に入る流れでいいと思います。また、最近だと「今現在でも在宅ですか?」というアイスブレイクはおすすめです。間があったら、そこから入るというのはテクニックとして使えます。
3.製品のデモンストレーションが難しい
オンライン営業の場合、商談の場で実際に製品を触っていただくことができません。システムを販売している場合、トライアル中のフォローなどにやりにくさを感じている企業も多くあります。
各社どのように対策をしているのでしょうか?
今、多くの企業さまが悩みながら試行錯誤している課題だと思います。打ち手としては、営業側のデモ実演を画面共有するのが現実的です。定型化している内容は動画コンテンツ化する、システム内のチュートリアルを強化するなど、営業だけではなく他部門と協力しながら解決すべき課題だと感じます。
オンライン営業ツールと選定のポイント
Web会議システムなどのコラボレーションツールは、オンライン営業に欠かせません。代表的なWeb会議システムには、Zoom、Microsoft Teams、Google Meet、ベルフェイス(bellFace)、Cisco Webexなどがあります。以下「選定のポイント」を参考にしながら、自社の目的に合ったオンライン営業ツールを導入しましょう。
また、業界や対象顧客によって利用ツールの傾向が異なるので、顧客に合わせて複数のツールを使い分けることも必要です。顧客からのリクエストがあれば柔軟に対応しましょう。
選定のポイント
オンライン営業ツールを選ぶポイントは、主に以下の7つです。
- 通話品質
- 参加可能人数
- 機能(画面共有、チャット、録音・録画、トークスクリプト表示 など)
- アカウント作成の要否
- ソフトウェアインストールの要否
- 価格
- セキュリティ
よりくわしくは、こちらのチェックリストもご活用ください。
※関連記事:オンライン営業を成功に導く100のチェックリスト|ツールの選定
オンライン営業の成果を最大化させる5つのポイント
オンライン営業の成果を最大化させるには、オンラインに最適化させた業務設計を行うことが重要です。
オンライン営業を導入したものの、訪問を前提とした業務設計のままで、ルールや評価指標を修正していないことも少なくありません。営業パーソンによって判断が異なると統率がとれなくなり、営業品質や成果にばらつきが出ます。
営業組織として成果を高めるために、業務設計から見直すことが大切です。5つのポイントとチェック項目をご紹介しますので、ぜひ見直しにご活用ください。
1.理想の営業スタイルを定義する
オンライン営業の特徴を理解したうえで、訪問前提の営業プロセスを見直し、理想の営業スタイルを定義しましょう。
業務効率化やリードタイムの短縮といったオンライン化のメリットを活かしながら、顧客が登りやすい階段設計を検討します。
【チェックポイント】
・オンライン営業の導入目的について明文化できているか?
・オンラインを活用した理想の営業活動を明示できているか?
2.業務ルールを最適化する
どのような状況でオンライン営業を行うべきか、業務ルールを最適化できているでしょうか。オンラインと訪問の使い分けや商談時のトークが属人化していると、統率がとれず営業品質や成績にばらつきがでます。業務を平準化するには、オンライン化すべき対象をルール化したり、スクリプトやマニュアルを整備することが大切です。
【チェックポイント】
・オンラインと訪問の使い分けをルール化できているか?
・オンライン営業時のトークスクリプト・マニュアルを整備しているか?
3.評価指標を最適化する
訪問を前提とした評価指標のままだと、いくらルール化しても営業パーソンの行動は変わらず、オンライン商談を使いこなせません。オンライン営業の導入目的に沿った評価指標に修正する必要があります。
【チェックポイント】
・「商談」数ではなく「訪問」数など、訪問営業前提の評価指標のままにしていないか?
・商談数や受注率などの目標数値を訪問営業前提のままにしていないか?
・オンライン営業の活用度を評価指標に落とし込めているか?
4.教育方法を最適化する
オンラインに最適な教育体制を構築しましょう。オンライン営業で求められるスキルは訪問営業とは異なります。ツールの使いこなしはもちろん、顧客の反応の確かめ方など細やかなコミュニケーションスキルが必要です。オンライン営業に必要となるスキルを定義し、身につけられる環境を整えることが大切です。
【チェックポイント】
・オンライン営業独自の必要スキルを定義できているか?
・必要スキルを身につけられる教育機会を用意しているか?
・オンライン営業の成功事例やノウハウが組織内で共有される仕組みになっているか?
・オンライン営業スキルが中長期的なキャリアアップに必要なことを示せているか?
5.共通認識を形成する
成果を最大化させるには、個人だけではなく営業組織として取り組むことが大切です。目的や目標を共有し、部署やチームで動くために、新しい営業スタイルについてしっかりと共通認識を形成しましょう。
【チェックポイント】
・新しい営業スタイルについてマネージャー陣を納得させられているか?
・上記項目について営業メンバー全員に説明する機会を設けているか?
オンライン営業の成果を高めるには、組織的な取り組みが欠かせません。商談数や活動量を増やすためのKPI設計や、スキルを磨くための教育体制など、オンライン営業の強みを活かせる環境作りが必要です。
※関連記事:「フィールドセールスのKPI設定」10ステップ
まとめ
オンライン営業の成果を最大化させるには、特徴を理解したうえでマイナス要素を最小限にし、メリットを活かすことが大切です。営業パーソンが商談時に対策するだけでなく、組織として業務設計をオンラインに最適化する取り組みも欠かせません。
オンライン営業を含めた営業活動の成果最大化で迷うことがあれば、お気軽に才流へお問い合せください。
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(文:大江 健七郎)
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監修
Twitter:@akimitsu_miyato
繊維専門商社を経て営業特化のコンサルティング会社にて、個別企業支援、ミドルマネジメント層向けビジネススクール講師、シンクタンクでの講演を実施。営業プロセス設計、営業スキル向上の支援を中心にシニアコンサルタントとして従事。2022年より株式会社才流にてコンサルタントとして活動。MBA(経営学修士)。