10年悩まされたカバンの悩みが解決した
自分で言うのもなんだけど、僕は整理整頓が得意だ。PCのデスクトップにファイルは一個もないし、作業をしていてファイルが見つからない、なんてこともない。家が散らかることなんて年に数日あるかどうかだ。
そんな僕が、なぜかカバンの中だけは片付けられず、10年近く苦しみ続けていた。財布、スマホ、PC、ケーブル、本がカバンの中で散乱し、会計の時に財布が見つからないわ、本がグチャグチャになるわ、なすすべもなく、カバンのカオスに呑み込まれていた。
しかし、先日、ついに解決策を見つけることができた。それがこれ。
要は、カバンの中にPCケースを入れるようにしただけなんだけど、これを思いつくのに10年近くかかった。しかも、普段使っているPCを修理に出すために、チームメンバーからMacBook Airを借りた際、貸してくれた人がPCと電源をケースに入れて渡してくれたのを見て、「カバンの中にケースを入れれば良いんだ!」と偶然、気づいただけ。
とても簡単な解決策で、栗原バカだなぁと思う人もいると思うけど、人間は意外と、このようなプロセスで進歩しているらしい。
ティファニーはもともと文房具店だった
1837年、チャールズ・ルイス・ティファニーとジョン・B・ヤングによって創設されたティファニー・アンド・ヤングが当初販売していたのは文房具や装飾品だった。創業から約10年後の1848年。フランスで起きた二月革命で、国を逃れようとする貴族たちが宝石を売って現金に換え始めた。これに目をつけたティファニーは、安い値段で宝石などを買いまくり、瞬く間に宝石商としての地位を確立することになった。二月革命がなければ、ティファニーは宝石業に進出していなかったかもしれない。
あるいは、ノキア。1998年から2011年まで世界最大の携帯電話メーカーだった同社は、1865年に製紙会社としてスタートしている。100年後の1967年でも、ゴム製品の製造・販売をしていて、電気通信分野に進出したのは1970年代に入ってからのことだ。
「金鉱では、金を掘るのではなく、つるはしを売れ」というビジネス格言で有名なジーンズのリーバイス。創業者であるリーバイ・ストラウスは、カリフォルニアの鉱夫に必需品を売って一儲けしよういろんな商品を売ってまわった。その中でただ1つ、テント用の汚い帆布は誰も欲しがらなかった。それがきっかけとなって、ジーンズを売り始めることが決まった。
我々は、目標に向かって線形的に進んでいくのが苦手
今では当たり前のように使われている車輪付きのスーツケースも、普及したのは2000年頃。それまでの長い間、旅行者は重いカバンを必死で持ち上げ、各地を行き来していた。
旅行者の中には、本当に頭の良い人たちがたくさんいたにも関わらず、旅行カバンの底に車輪を付ける、というアイデアを誰も思いつけなかったのだ。古代メソポタミア人が6000年も前に車輪を発明してくれていたというのに。
一般的な認識とは真逆に、我々は、目標に向かって、線形的に進んでいくのが苦手な生き物だ。Startup Genomeのレポートによると「1回または2回の方向転換を経験したベンチャー企業は、そうでない企業と比べて、売上が2.5倍、ユーザー獲得率が3.6倍に増えている」らしい。
優れたビジョンや戦略の結果として語られる企業や個人の成功も、後づけで成功を語っているにすぎない。
人や企業は、規則的に進化するのではなく、僕のカバンのように偶然のチカラを借りて進化する。事前の計画に固執する人たちは、偶然やランダム性の恩恵をキャッチし損ね、いつまでも重い旅行カバンを運ぶことになってしまうのだ。