こんにちは。才流代表の栗原 @kotakurihara です。
過去10年以上、BtoBマーケティングに関わり、数千のWebサイトを見てきたため、Webサイトを見るだけで、その会社が顧客志向を持っているかどうかを判断できるようになりました。
今回の「SAIRU NOTE」では、顧客視点を持っている企業のWebサイトかどうかを判断する5つのポイントと、顧客視点が強いWebサイトの事例を合わせてご紹介します。転職先や投資先を探している方、自社のWebサイトを判断してみたいマーケターの方は参考にしてみてください。
顧客志向を見極める「BtoBマーケティング版『スリッパの法則』」
顧客志向を持っているかどうかを見極める5つのポイントを、私は「BtoBマーケティング版『スリッパの法則』」と呼んでいます。これは、著名投資家であるひふみ投信の藤野英人氏の著書『スリッパの法則―プロの投資家が教える「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方』から着想した法則です。
本の中で藤野氏は、社内でスリッパに履き替える会社に訪問すると、悪しき家族主義や閉鎖的な社風など、ネガティブな印象を持つため、投資を見送ると明かしています。
さらに他の投資の判断基準として、
- 晴れの日に傘立てに傘が多く刺さっている
- 会議室の時計が5分以上ズレている
- コピー機周りやトイレが汚い
などの要素に当てはまると、社員の当事者意識が欠如しているシグナルと捉えると語っています。
藤野氏が提唱する「スリッパの法則」をBtoB企業のWebサイトに当てはめ、「BtoBマーケティング版『スリッパの法則』」として、顧客志向を見極める5つのポイントとしてご紹介していきます。
1.KV(キービジュアル)のキャッチコピーにミッションやビジョンを掲載
まず1つ目のポイントが、WebサイトのトップページのKV(キービジュアル)。例えば、「日本を変えていく」や「社会に貢献する」のような、会社のミッションやビジョンのコピーを大きく載せている会社は要注意です。
本来、Webサイトに訪れるユーザーはその会社がどのような課題を解決するか、どのような価値を提供するかを知りたいはず。
自社サービスの提供価値や導入メリットを正しく伝えるためにも、ユーザーが理解しやすいキャッチコピーにしましょう。
2.サイト読み込み時の自社ロゴ表示
2つ目のポイントは、Webサイトの読み込み時に現れます。読み込み時間が長く、会社やサービスのロゴがくるくると回りながら待たされるサイトを見かけることがあります。
読み込みに時間がかかることはユーザーフレンドリーではないですし、ユーザーは決してロゴを見たいわけではありません。
読み込み時の自社ロゴ表示は、「サービスやロゴを覚えてほしい」という企業側の都合を優先しているシグナルと捉えています。
3.英語のグローバルナビゲーション
Webサイトのグローバルナビゲーションが、「About」「Service」「Company」のように英語で書かれている場合も要注意です。
もちろん、ファッションブランドのように世界観が重要なビジネスの場合、英語のグローバルナビゲーションでも問題ありません。しかし、日本人向けのサービスにも関わらず英語のグローバルナビゲーションにしている企業は、ユーザー視点ではなく、自らの世界観を表現したい気持ちを優先してしまっているといえます。
ユーザビリティ向上のためにも、グローバルナビゲーションは日本語表示がオススメです。
4.専門用語の多用
Webサイトの中に自社メンバーや業界人しかわからないような専門用語が多く使用されている場合も注意が必要です。
この場合もユーザー視点よりも自社が発信したいメッセージを優先してしまっているシグナルです。
5.メインビジュアル直下の「お知らせ」
最後、Webサイトのメインビジュアルのすぐ下に「お知らせ」があるかどうかです。
4〜5行を使って新機能のリリースや展示会の出展について掲載しているサイトもありますが、ユーザー視点に立つとニーズがない情報です。
ユーザーが知りたい情報は、「どのような課題を解決してくれるか」や、「どのような価値があるか」、もしくは「どのような企業に導入されているか」などです。
顧客志向が強いWebサイトの参考事例
逆に顧客志向を強く感じられるWebサイトを2つほど紹介します。
両社とも業績が非常に良い会社で、顧客志向が会社のカルチャーとして徹底されていると感じ取れます。
事例①:光通信
1社目は、売上が4,800億円、営業利益600億円のモンスター企業である「光通信」です。驚くほどに、ユーザーが知りたいことしかWebサイトに書かれていません。
ご覧の通り、白背景にテキストリンクという極めて簡素なデザインです。デザイン性はないかもしれませんが、ユーザーが求める情報にストレスなくたどり着ける構造です。決算資料についても、白背景で文字が大きく、理解しやすく設計されています。
ユーザー視点が非常に強いと感じるWebサイトなので、ぜひ参考にしてみてください。
事例②:バークシャー・ハサウェイ
もう1つの参考事例は、世界最高の投資家との呼び声も高いウォーレン・バフェットが会長を務める「バークシャー・ハサウェイ」。
「バークシャー・ハサウェイ」のWebサイトも「光通信」のWebサイトと似通った構成です。デザインに関しては、もはや1990年代のWebサイトと言えるほど、シンプルなサイトになっています。
とはいえ、ユーザーが求めている情報にはダイレクトに到達できるため、顧客志向が高いサイトであると感じます。
まとめ
今回の「SAIRU NOTE」では、以下の5つを「BtoBマーケティング版『スリッパの法則』」として紹介しました。自社のWebサイト改善にぜひ役立ててみてください。
- KV(キービジュアル)のキャッチコピーにミッションやビジョンを掲載
- 読み込み時の自社ロゴ表示
- 英語のグローバルナビゲーション
- 専門用語の多用
- メインビジュアル直下の「お知らせ」
他にも、BtoBマーケティングに関する話を、YouTubeにて今後はお話していいきますので、ぜひチャンネル登録をお願いします。
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<編集=中島 孝輔 @KosukeNakajima_>