通信・金融・製造・公共機関などの幅広い顧客基盤を持ち、ITライフサイクルのすべてにおいてソリューションを提案できるマルチベンダー・システムインテグレーターである伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下CTC)様。
同社では、コロナ禍で商談スタイルがオンラインに移行したことで、これまで以上に「顧客の声」を積極的に聞きに行く必要があると感じていたそうです。顧客解像度を上げ、BtoBマーケティングに本格的に取り組むために、才流にご相談をいただきました。
才流では、2022年8月から4か月間マーケティングの戦略・施策の立案と実行をご支援。情報通信第1本部 通信キャリアビジネス営業推進課 課長の谷村様、同課 マーケティング担当の栗原様にプロジェクトの率直な感想を伺いました。
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顧客の解像度を上げ「コミュニケーションの質」を高めたい
— 才流に依頼する前のマーケティング、営業のご状況について教えてください。
谷村 当社は、サービスや顧客の企業ごとに事業グループが分かれています。私が所属する情報通信第1本部は、900社を超える企業群を抱える大手通信グループが顧客です。
提案先が明確に決まっているため、マーケティングの担当者は大手通信グループ内の企業に対し個別に最適化した戦略を立て、営業担当者はリレーションを築けている顧客のフォローをメインに行ってきました。
しかし、一時的に取引が止まっている顧客に情報提供をしたり、当社が手がける新たなサービスの認知を広げたり、まだまだできることがあるのではないかと感じていたのです。
さらに、コロナ禍をきっかけに、対面からオンライン商談へ切り替えたことで、従来どおりのコミュニケーションを踏襲すると、顧客解像度が著しく落ちてしまうのではないかという懸念を持っていました。
谷村 オンラインでのコミュニケーションは非常に効率的ですが、アジェンダ以外の話はしにくいですよね。
とくに当社の場合、お互いミーティング参加者が多く、画面に10名以上の顔がずらりと並んだりします。画面オフで参加している方もいる中で、フランクに「○○さんは、今どの仕事に注力しているんですか?」などとは、やはり聞きにくいんです。
顧客が今、何に興味を持っているのか。どんな業務課題を抱えているのか。対面だからこそ話せること、感じられる空気感があります。オンラインでもコミュニケーションの質を高めていくためには、もっとお客様のことを深く理解しなければならないと感じたのです。
顧客解像度を高め、お客様に最適なソリューションを提供するために、BtoBマーケティングを強化したい。そのためには専門知識を有しているコンサルタントの力を借りたほうがいいだろうと考えました。
— 才流に依頼しようと思った決め手は何だったのでしょうか。
谷村 私は一年前まで営業のマネージャーをしており、営業支援に関するウェビナーに参加したり、本を読んだりしてインプットしていました。その中で、才流代表の栗原さんが執筆された『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』を読み、はじめて才流を知りました。
才流に依頼した最終的な決め手は、コンサルタントの層が厚いこと。才流の場合、代表の栗原さんだけではなく、さまざまな方が表に出ていますよね。ウェビナーに登壇したり、コンテンツを自らの名前で発信したり。みなさん優秀で、それぞれが豊富なメソッドを持っている。どなたに担当いただいても安心してお任せできそうだなと感じたんです。
とくに当社の場合、顧客はすでに決まっています。当社側のリソースやできることも限られている中で、どのようなBtoBマーケティング戦略を立てれば、成果を最大化できるのか。豊富なメソッドを有している才流なら、成功に導いてくれるだろうと思いました。
また、BtoBマーケティングの戦略立案と並行して、営業資料の改善もご依頼しました。
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既存顧客にも「待ちの姿勢」ではなく主体的な情報提供が必要
— 今回のプロジェクトは3か月間がBtoBマーケティングの戦略立案、その後1か月間が伴走支援でした。具体的には、どのようなことを行ったのでしょうか。
金森 今回、特徴的だったのは新規顧客の開拓ではなく、既存顧客に対していかに質の高いコミュニケーションをとっていくかが焦点だったことです。
顧客とすでに関係を築けている分、待ちの姿勢になりがちなスタイルを変え、こちらから主体的にアプローチや情報提供をして商談につなげていく必要がありました。
そのために本プロジェクトでは、「顧客が求めている情報の理解」「顧客理解にもとづくコミュニケーション設計」「商談創出につなげるコンテンツ設計」に力を注ぎました。
— まずは「顧客が求めている情報の理解」から始めたわけですね。
金森 そのとおりです。CTC様の営業やマーケターの方へのヒアリング、顧客の大手通信会社にお勤めの方、その中でもまだCTCの情報通信第1本部とお取引がない部署の方などにインタビューを実施しました。
金森 インタビューから見えてきたのは、CTC様が得意とするインフラ領域のみならず、それ以外の情報提供にも需要があること。また、CTC様が有しているラボに、専門性の高い相談窓口としての役割や、情報を期待していることもわかったのです。
既存顧客の方は、新規性の高い領域については、Web検索や技術メディア、SNS、セミナーなどで情報収集をしています。ですからCTC様が持っている情報を、コンテンツとして提供していけば、顧客の期待に応えられるだろうと考えました。
次のフェーズは、どうやって情報を届けるか。コミュニケーションの設計です。
まず、大手通信グループ内900社の中でも、重要度の高い取引先をリストアップし、各社の部署ごとに注力テーマや取引状況に加え、CTC様が提供できる情報をまとめていくための「関心事項マップ」を作成。部署や注力優先度、注力テーマ、顧客の取引状況、自社が情報提供できること、提案できる商品などを整理しました。
また、商談創出につなげるコンテンツ設計として、顧客が相談したいと思ったときに第一想起してもらうために、さまざまな切り口のコンテンツを用意することをご提案しました。
顧客理解を継続的に行うことの重要性と具体的な手法を学べた
栗原 私自身、CTCに転職して間もないということもあり、既存顧客や見込み顧客へのインタビューはとても勉強になりました。
栗原 外側から見たCTCと、私たちが抱いていたCTCのイメージに少なからずギャップがありましたから。BtoBマーケティングの戦略策定に入る前に、時間をかけてしっかりと調査・分析を行う重要性を感じましたね。
谷村 私はもともと営業でしたから、お客様のことはわかっているつもりだったんです。しかし、インタビューを実施していなかったら知り得なかったことがありました。日々の商談で話すことと、調査の場でありのままに答えることは違う。この2つは切り分けて実施しなければならないと、才流とのプロジェクトで体感しました。
もともと才流に依頼するきっかけは、オンラインに商談スタイルが変わり、顧客への解像度が低下していくのではないかと危機意識を持ったことだったので、プロジェクト序盤に顧客理解が進んだのはたしかな成果の一つです。
ただ、それ以上の成果だと感じたのは“お客様を知る努力”を継続して行うことが成功への近道だと知れたこと。そしてどのように顧客解像度を高めていけばいいのか、具体的な手法を学べたことです。
市場も顧客も変化していきますから、常にキャッチアップしていく必要があります。従来の顧客満足度調査だけでは、お客様のインサイトは見えてこない。さまざまな手法を学び、BtoBマーケティングの調査分析手法をアップデートできたことは、私たちにとって大きな意味があったと捉えています。
マーケティングに注力する機運を作るため、社内勉強会も企画
栗原 今回のプロジェクトで、金森さんはたくさんの勉強会を主催してくれましたよね。8月に「BtoBマーケティングの概論を学ぶ勉強会」、9月に「コンテンツ企画の勉強会」、そしてつい先日も「Webサイト改善の勉強会」を開いてくれました。
栗原 当事業部のマーケティングチームだけではなく、現場の営業や他部署のマーケティングチームが参加した回もあります。これからコンテンツづくりやサービスサイトの構築が始まっていくタイミングで、非常に有意義な時間だったと感じています。
金森 まずは営業推進課を中心に施策を実行していただきますが、現場の営業の方が、いかに動きやすい状態をつくれるかがマーケティング戦略の成否を分けると考えていました。
CTC様のように規模の大きな組織では関係者も多くなりますから、「BtoBマーケティング勉強会」で施策を実行に移すための前提知識を共有できると、その後の動きがスムーズになります。また、これからマーケティングに注力していくという空気感みたいなものを、みなさんと一緒に共有したいと個人的には思っていましたね。
栗原 僕自身は、これまでずっと運用や営業をやってきて、マーケティングを行うのは今回が初めてなんです。日々、金森さんがいきいきとマーケティングに取り組まれている姿を見て、おおいに刺激を受けました。「マーケティングでビジネスに価値を創出したい」と強く思うようになりましたし、マーケティングの原理である「人の思考や行動の仕組み」についても考えるようになりました。個人的には、ガラッと意識が変わったと思います。
谷村 間違いなく、私たちチームの意識は変わっていますよね。レベルも上がっていると思います。
というのも、才流に依頼した4月に抱えていた課題と、今抱えている課題が変化しているんです。4月の段階では「マーケティングでお客様とのコミュニケーションの質を上げるためにはどうすればいいか」と悩んでいましたが、今は「どう良質なコンテンツをつくるか」が課題です。課題のステージが上がっているんですよね。
振り返ってみると、意識や考え方はもちろん、スキルも向上させてもらえたと感じます。
ムダな時間やコストをかけず最短距離で成功まで導いてくれる
ー 才流との仕事で、良かったことや印象に残っていることはありますか?
谷村 才流は、CTCの事業やサービス、私たちができること、できないことをぜんぶ理解したうえで、BtoBマーケティングの戦略を立ててくれました。私たちと同じ目線、同じ立場になって考えてくれているんだなと感じる場面が多かったです。
自走力が高いことも、才流に依頼して良かったことの一つ。「こういう情報がないと、進められません」と言われたことがないんです。これって、意外と珍しいことですよね。必要な情報は、基本的に才流側で調べてくれましたし、こちらが用意する資料や情報も「AがなければBをお願いします」とすぐ代案を出してくれました。
栗原 私は、施策を動かしていくときに“きめ細やかに”フォローしてくださったのが印象に残っています。メルマガの添削も非常に丁寧でしたし、競合が行っているマーケティング施策の分析も的確でした。Zoomで画面共有しながら「このツールを使って分析していきます」と、実際に画面を見せながら解説してくださったのでイメージしやすかったです。マーケティングのOJTを受けているような感覚でした。
ー 最後に、才流のコンサルティングサービスは、どのような会社に合うと思いますか。
谷村 BtoBマーケティングに取り組まれているすべての企業にフィットすると思います。なかでも、とくにこれから新たにマーケティングの組織を立ち上げようとされている企業にはおすすめしたいですね。
数多くの成功事例・失敗事例を知り、さまざまなビジネスのベストプラクティスを熟知している才流にプロジェクトを指揮してもらうことで、「この戦略なら効果が出やすい」「この打ち手は成功の可能性が低い」と助言してもらえます。
ムダに時間やコストを費やすことなく、最短距離で成功まで進んでいけるんです。たとえ社内にリソースがなくても工数をおさえながら、才流のコンサルタントが導いてくれますから、今後BtoBマーケティングに本格的に取り組んでいく企業にとっては、とても魅力的だと思います。
(撮影/矢野 拓実 取材・文/ 猪俣 奈央子 編集/安住 久美子)
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