株式会社ティーガイア様は、国内最大手のモバイル端末・回線の販売代理店です。同社の法人事業では、企業向けにスマートデバイスの導入・運用管理・保守サービス、ICT・DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のためのクラウド、セキュリティ、データ管理など多様なソリューションを提供しています。
市場環境の変化により、「モノ売り」から「コト売り」への事業転換を図っていた同社は、全社的なマーケティング戦略の策定と、それを実行する組織体制の強化が不可欠だと考えていました。マーケティングの型を学び、組織を根本から変革することを目指し、才流(サイル)にご相談いただきました。
本プロジェクトでは、マーケティング戦略の立案から将来の自走を見据えた組織設計までを一気通貫で支援。プロジェクトの成果やその後の変化について、ソリューション本部 ソリューション開発部の齋藤さん、宮脇さん、movino star推進部の木本さんにお話を伺いました。

専門家からマーケティングの知見を学び、自走体制を整えたい
ーはじめに、ティーガイア様の事業を取り巻く環境について教えてください。
齋藤 当社は、携帯電話の販売代理店事業を主軸として成長してきた企業です。そして、法人事業を担うソリューション本部では、スマートデバイスや関連ソリューションなど多岐にわたる商材を扱い、お客さまのデジタル化を支援しています。
近年、市場が成熟するにつれ、デバイスを売っているだけではお客さまに対して十分なベネフィットを提供できなくなってきました。 お客さまが求めているのは、デバイスからネットワーク、セキュリティ、アプリまでを統合したソリューションです。そのため、当社では「モノ売り」から「コト売り」へと事業の転換を進めていました。

ー事業転換を進めるなかで、マーケティングにはどんな課題がありましたか。
齋藤 事業転換を成功させるには、個別商材の販売ではなく、お客さまの課題に対する統合的な提案力が不可欠です。そこで、Webサイトのリニューアルや、SFAやCRMを導入するなどのマーケティング強化に着手しました。
しかし、これまでは商材ごとに独立して動いていたため、全社横断のマーケティング戦略を策定・運用した経験が社内にありません。社内で一からマーケティング基盤を構築するには5年、10年という時間がかかり、事業機会の損失は避けられないでしょう。だからこそ、専門的な知見を持つ外部パートナーの力を借りることが最善の選択でした。
ー才流に支援を依頼した決め手は何だったのでしょうか。
齋藤 依頼の目的は、単に業務を代行してもらうことではありません。マーケティング組織を編成し、そこで働く担当者一人ひとりがマーケティングのノウハウと考え方を学び、実践できるようになることでした。
才流には再現性のあるメソッドがあり、私たちにもわかりやすく学びやすいと感じました。そして、メソッドに沿って進めることが、最もスピーディーかつ確実に社内にノウハウを定着させられると判断し、支援をお願いすることに決めました。
商材整理から組織設計まで。短期間で持続可能な体制構築へ
ープロジェクトはどのように進められたのでしょうか。

岸田 今回のプロジェクトで目指したのは、単発の商材のマーケティング戦略の立案や施策の実行ではありません。ティーガイア様の事業転換を成功させるため、マーケティング組織・体制の立ち上げと、そのノウハウを社内に蓄積し、将来自走できる状態をつくる仕組みの構築。この2つを大きなゴールとして設定しました。
まず最初に行ったのが、徹底的な現状把握と顧客理解です。まず、事業や商材への理解を深めて課題の解像度を上げるために、ソリューション開発部のみなさんはもちろん、各商材の責任者や営業担当の方々、計10名以上にヒアリングを実施しました。
それと並行し、見込み顧客へのインタビューも実施。スマートデバイスの取引先である総務系の部門と、企業のデジタル化を担う情報システムやDX推進系の部門、それぞれにお話を伺いました。これにより、それぞれの立場(Who)における課題感やニーズの違いを把握し、ティーガイア様が提供すべき価値(What)の違いについて理解を深めていきました。
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岸田 次に、ヒアリングで明らかになった顧客の課題を踏まえ、多数ある商材を「誰に(Who)」「どのような価値を(What)」提供するのか、という2つの軸で分類・整理。 これまで商材ごとに捉えがちだったマーケティング活動を、WhoとWhatの組み合わせを基本単位として定義し直しました。

岸田 そして、WhoとWhatの組み合わせに対し、優先的に取り組むべきマーケティング施策(How)を立案しました。リード獲得だけでなく、ターゲットや提供価値に合わせて認知獲得も含めて検討し、優先順位をご提案しました。

岸田 そして最終段階では、策定したマーケティング戦略を確実に実行するための組織体制と役割分担を設計しました。
他社の事例なども参考に、全社マーケティング部門の目的や目標を定義し、事業部との役割分担を明確にしました。将来的にインサイドセールスを組み込むことまで見据えた、持続可能な体制の土台をスピーディーに構築することを目指しています。

商材起点から顧客課題起点へ。議論を重ね、優先順位が明確に
ープロジェクトのさまざまな取り組みのなかで、特に印象的だったことを教えてください。
宮脇 私たちが向き合うべきお客さま、つまりペルソナ(Who)が明確になったことです。これまでは「この商材をどう売るか」という商材起点で物事を考えていたため、お客さまの全体像を捉えきれていませんでした。
しかし、プロジェクトを通じて「お客さまの課題をどう解決するか」という思考に変わりました。お客さまの課題ごとに解決策となる商材群を束ねていく整理を行ったことで、マーケティング担当として何に注力すべきか、優先順位が明確になり、格段に動きやすくなったと感じています。

木本 それから、私たち自身では直接ヒアリングするのが難しいような、企業規模、職種などの見込み顧客に対してインタビューを設定し、調査・分析していただいたことも印象に残っています。外部の客観的な視点や、自分たちだけでは得られない情報を得られたのは非常に貴重でした。

岸田 課題を軸に整理を進めるなかで、私たちからすると少し言いにくいようなご提案もありました。しかし、ティーガイアのみなさんが常にフラットに受け止め、「どうすればもっと良くなるか」という共通の目線で議論してくださいました。だからこそ、深い部分まで検討できたと感じています。
小東 今回は、短期間で多数の商材の誰に(Who)と何を(What)を整理していく挑戦的なプロジェクトでした。しかし、定例会ではティーガイアのみなさんが闊達に意見をくださり、議論がスムーズに進みました。みなさんが自社のプロダクトと真摯に向き合っているからこそ、私たちの提言をフラットに受け止めていただき、建設的な結論を導けたのだと思います。

部門の壁を越えた共通言語が生まれ、組織の縦割りが解消
ー今回のプロジェクトを通じて、どのような成果がありましたか。
齋藤 最も大きな成果は、これまで課題だった縦割りの意識が組織の中で少しずつ解消してきたことです。マーケティング設計を通じたWho/Whatなどの共通言語ができたことで、部門間の連携が以前よりスムーズになりました。
そして、これまで気づかなかった自社商材の価値や可能性など、新たな着眼点が生まれたこと。具体的な数値成果はこれからですが、重要な組織変革の土台ができたと感じています。
木本 プロダクトを主管する私の部門にも、良い変化がありました。これまでは自分たちの目線で開発を進めることもありましたが、プロダクトを顧客目線で考えるという重要な気づきを得られました。
今では、どうすればお客さまに価値が伝わるのか、開発段階から意識する文化が芽生え始めています。
宮脇 実務面では、データに基づいたマーケティング活動への移行が進んでいます。Salesforceを本格的に使い始め、現場からデータが集まってきているという実感がありますね。これにより、従来の勘と経験に頼った活動から、データドリブンなアプローチへと転換しつつあります。

ープロジェクトの影響は、他の取り組みにも波及したそうですね。
齋藤 実は当時、才流とのプロジェクトと並行して、社内で今後のソリューション戦略を練る重要なプロジェクトが動いていました。才流との取り組みが、その事業戦略プロジェクトの助けになったと感じています。
宮脇 大きな相乗効果がありましたね。というのも、才流とのプロジェクトのメンバーと、事業戦略プロジェクトのメンバーがほとんど同じだったのです。
そのため、普段はどうしても「自社の商材をどう売るか」という視点になりがちでしたが、「顧客とは誰か」「どういう課題を抱えているのか」「自社のソリューションが提供できる顧客価値はなにか」という議論が、自然と事業戦略の会議に持ち込まれる形になりました。たとえば、才流と定義したターゲット顧客像は、事業戦略でどの顧客セグメントに注力すべきかを決める際の議論の土台そのものになりましたね。
「考え方」の型を学び、自走する組織へ。才流の伴走型支援の価値
ー才流のコンサルタントとのコミュニケーションはいかがでしたか。
宮脇 非常にやりやすかったですね。 専用のチャットルームで密にやり取りができましたし、ストレスを感じることはありませんでした。
また、才流が提供してくれたBtoBマーケティングのメソッド一覧は、課題に直面したときに「こういう時はどうすればいいんだっけ?」と立ち返る場所になっており、実務を進めるうえで心強い教科書のような存在です。

木本 私たちが求めていたのは、単なるマーケティング施策の代行ではありません。施策のやり方だけでなく、その背景にあるマーケティングの考え方まで含めてお手本として示していただき、それを私たちが学ぶことでした。
才流は、まさにその期待に応えてくれるパートナーでした。一方的に教える「先生」ではなく、私たちの状況を深く理解し、共に考えてくれる伴走者として、プロジェクトを推進してくれたと感じています。
齋藤 実は、才流にはプロジェクトの開始時に「ダメなところはダメと言ってください」とお願いしていました。お世辞や遠慮は必要なく、私たちのためになることであれば、厳しい指摘もしてほしい、と。
その点でも、率直な意見交換ができるビジネス上の信頼関係を築けたと感じています。
ー才流の支援はどのような会社におすすめできると思いますか。
齋藤 私たちのように、まさにこれからマーケティング組織を立ち上げようとしている、あるいはマーケティングのノウハウを基礎から学びたいと考えている企業にはおすすめできると思います。基本の型からていねいに教えていただける伴走型のコミュニケーションなので、私たちにとっては最適なパートナーでした。
宮脇 才流は、課題が顕在化している企業には再現性のある型でスピーディーな解決策を提示してくれます。 一方で、まだ自社でも気づいていない潜在的な課題を掘り起こす、といった支援も得意なのではないでしょうか。 そういう意味では、マーケティングに課題を抱える、あらゆる企業にとって心強いパートナーになってくれるはずです。
ー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
宮脇 今後は、これまでは手薄になりがちだったソリューション商材のコンテンツを充実させつつ、改めて当社の強みであるモバイル領域のキャンペーンも強化していきたいと考えています。
齋藤 私たちが目指すのは、総合ITネットワークをサポートできる企業へと進化することです。今回のプロジェクトで得た顧客理解や商材の整理は、その実現に向けた大きな一歩となりました。先日リリースした新サービス「まるっと情シス」は、まさにその象徴です。

「まるっと情シス」は、SaaS導入の拡大やDX推進によって業務負荷が増大する企業のIT・情報システム部門に向けた、ワンストップのアウトソーシングサービスです。
IT資産の調達・導入設定から、日々の運用・管理、ヘルプデスク、不要になった端末のリユース・リサイクルまで、手間がかかる属人化しやすい業務を幅広く支援。担当者が本来注力すべきコア業務に集中できる環境を整備します。お客さま企業のDX推進をサポートし、競争力を高めることが、本サービスの目指すゴールです。
このように、入り口から出口まで一貫したサポートを提供することで、中堅・中小企業でも利用しやすいIT運用体制の構築を支援します。ティーガイアはお客さまの事業成長を支えるパートナーであり続けます。

(撮影/関口達朗 取材・文・編集/ 河原崎 亜矢)