「ネット広告のCPAが良くならないのでタクシー広告に挑戦したい」
「予算があるのだけどネット広告で使い切れない」
最近、上記のような相談をいただくことが増えています。
インターネット広告を中心に運用していると、
- CPA(成果獲得コスト)の改善がすぐに天井を迎える
- 事業が好調で広告予算が余っているものの、広告を出す良い出稿先がない
といった状況があるのではないでしょうか。
本記事では、オフライン・オンライン合わせて毎年巨額の広告を使っているBtoCのマーケターに、どうすればオフラインメディアを使ってCPAを改善できるのか、伺ってきました。BtoB企業にとっても、参考になる内容なのでぜひご一読ください。
オンライン広告のCPAを落とす方法は2つある
私は過去20年、さまざまな会社のマーケティングに携わってきました。
ここ数年は旅行会社のマーケティングに携わり、かなりの額をマーケティングに投資しています。
その経験をもとに考えたことをお伝えします。
まず、オンラインの広告効果を上げる考え方は2つあります。
①オンラインの広告を使い、オンラインの広告を良くする
②オフラインの広告を使い、オンラインの広告を良くする
ひとつずつ説明します。
①オンライン広告を使い、オンライン広告を改善
Google広告のような検索連動型広告は、掲載順位1位になればクリックパフォーマンスが高いのはご存知の通りです。ただ、商品や会社の名前が知られている場合は掲載順位が2位や3位であってもクリックされます。
これをGDN(Googleディスプレイネットワーク)とリスティング広告(検索連動型広告)で実施するのです。
我々のケースだと、乗り換え検索・時刻表関連のサービスサイトに広告を配信すると、リスティング広告で成約する可能性が高くなります。
おそらく、時刻表を探しているユーザは新幹線を探しているので、次に旅行会社を決める方が一定数いるのでしょう。
この場合、乗り換え検索サイトで表示される広告はクリックさせる必要はなく、ただ見てもらえれば良いわけです。
我々の場合、GDN経由で商品が購入されることはほとんどなく、購入されるとしたら検索経由かメタサーチとよばれる価格比較サイトです。
GDNに広告を出すコツ
GDNに広告を出すコツがいくつかあります。
- クリエイティブを交換しないこと
- クリエイティブをシンプルにすること
シンプルに旅行会社であることがわかれば良いので、ロゴとサービスのポイントを記載したものをそのまま使えば良いです。
マーケティング予算の総額が年間5000万以内であれば、上記の施策が効果的と考えます。
②オフライン広告を使い、オンライン広告を改善
そしてもう一つの手法が、テレビを使う方法です。
テレビの広告は広告効果の計測が問題になります。かつては、テレビコマーシャルを流したビフォアアフターで調査していましたが、今はインクルメンタルROI(追加投資分のROI)を見るのが一般的です。
例えば去年の同じ時期に3億円の投資をして、今年は4億円投資した際に1億円追加分のROIを見る方法が最もオーソドックスです。
過去3年に発売された、5大メーカー(パナソニック、シャープ、三菱、ソニー、東芝)のうち4つのメーカーのテレビにはICチップが埋められており、テレビとWi-Fiを使っている場合はICチップを使ってスマートフォン、テレビに共通のIDを割り振ります。NetflixやAmazon Primeの急速な普及により、テレビやブルーレイレコーダーをWiFiに繋いでいる家庭は急速に増えています。
都市部のユーザーは、過去3年に発売されたテレビに買い換えている確率が地方より高いため、東京、名古屋、大阪、北海道、福岡などではテレビを使った分析が可能です。来年の東京オリンピックで新型のTVに買い替えるユーザーが増えると考えられ、来年秋以降はかなり重要な分析ツールになりそうです。
この共通IDのおかげで、テレビコマーシャルを見たユーザー(Viewer)と、見ていないユーザー(non Viewer)がサイトに訪問したか、購入したかがわかります。
また、GoogleのカスタマーIDとテレビのIDを紐づけすることで、テレビを見た人のネット広告のCPAを算出できるようになります。ちなみに、Yahoo!の情報開示ポリシーはやや厳しいため、この仕組を使えるのは残念ながらGoogleだけです。
GoogleのカスタマーIDとテレビのIDを紐付ける施策は、年間のテレビCMに使える予算が3億円以上あれば実施すべきです。1億円程度の予算では信頼性に欠けるデータになるのでおすすめしません。利用している広告代理店に、ツールの利用について相談してみるといいでしょう。
実は、以前は違うシステムを使ってテレビ放送後10分のデータを計測していました。この方法には問題があり、報道ステーションなどの夜の番組に流すCMのパフォーマンスが良くなる傾向があります。なぜなら、夜のほうが広告を見た後のアクションがしやすいからです。
そこで、朝の報道番組のほうが広告経由の売上が良い気がすると思い、計測方法を変えるとスッキリやZip!などの朝の報道番組のほうが実は効果があったことがわかりました。
さらに、朝6時台のZip!は単身者向けのコピー、朝8時のスッキリは家族受けのコピーが効果が高いことがわかりました。家族旅行は主婦がお財布を握っているんですよね。
テレビ以外のオフライン広告は効果があるのか?
オフライン広告はテレビ以外も全て試しました。
- 地下鉄ジャック
- 雑誌
- タクシー
- バス
など、これら全てがワークしませんでした。
各広告にクーポンコードをつけて1億円投資しても、各チャネルで数百人レベルしか増えません。予算があれば、テレビが良いと思います。
テレビ広告の予算が無いときの注意点は?
GDNで、自社サービスと相性が良い媒体を探すのが一番難しいです。
というのも、費用対効果がよく見えるサイトが多くあるからです。
たとえば価格比較サイトはパフォーマンスが良いですが、こういったサイトに訪問するユーザーは購入する気が満々なので、広告を出すのはもったいないです。
これから買う人を見つけるのが難しいです。
キュレーションメディアにもかなり投資をしましたが、結局ワークしませんでした。
リスティング広告の注意点は?
キーワードを「ブランドワード」、「ノンブランドワード」に分けて、ノンブランドワードを
- 施設名
- エリア
などにして、ROIを見たほうが良いです。
ノンブランドワードは、ROIが70~80%で十分です。
1億円使ったら7000~8000万円を稼ぐイメージです。
一見するとペイしませんが、ブランドワードとあわせて考えることでROIはあいます。
なによりも
- 最初の顧客接触はノンブランドワードが圧倒的に多い
ので、ノンブランドワードは重要になります。
朝のテレビ広告で見た広告を、通勤途中で検索、昼休みに検索、自宅に帰ってから買ってもらう流れが基本です。
リスティング広告で成果が出ているキーワードで、掲載順位の上位を狙うSEO用のページを作るのも有効な施策です。
以前、鉄道関係者に聞いた話があります。業界関係者は「鉄道」というキーワードに出稿をして高騰するものの、実際ユーザーが検索するのは「電車」といったように、ギャップができるキーワードがあります。
そういった穴場のキーワードを見つけてください。
予算が5000万円以下なら、LINEビジネスコネクトがおすすめ
広告予算が3億円はおろか、5000万円もかけられないケースにおすすめなのは、LINEを利用したマーケティングです。
LINEは、投資すると決めてとことんお金を使えば十分にペイするマーケティングだと思います。
肝は、LINEビジネスコネクトです。
月額30万円ほど投資をすれば、CRMとして使うことができるので
- レイヤー1:過去6ヶ月間に投稿をクリックしてない人
- レイヤー2:過去6ヶ月間に投稿をクリックした人
- レイヤー3:過去6ヶ月間に投稿をクリックした人かつ最新の投稿をクリックした人
と、レイヤー毎にオファーを提供することができます。
注意点としては、レイヤー1に対しては商品を売ることを一切忘れましょう。
レイヤー1には月1回の配信頻度で十分です。
セールスに繋がる情報ではなく、読んで為になるコンテンツを提供してください。
BtoBの場合であれば「MAツール選定のコツ」や事例インタビューなどが良いでしょう。
レイヤー2は、売上獲得につながるメッセージが良いので、
- ディスカウントクーポン
- 期間限定の無料体験
などが良いです。
レイヤー3は、2つのアプローチ方法があります。
①リマインダー
②追加提案
①は、レイヤー2で送ったメッセージの有効期限をアナウンスするものです。
②は、例えば今から24時間以内に申し込めば、さらにメリットがあるといった提案です。
レイヤー3のアプローチによって、LINEの投資はペイするかどうか決まります。
レイヤー3は4人に1人程度のクリックが望めるので、eメールと比べて断然に費用対効果が良いです。
BtoBの場合は、LINEフレンドを集めるのが難しいと思うので、まず既存顧客から広げるべきです。その次に、既存顧客の周りの人たちを狙ってください。口コミマーケティングに勝る施策はないということですね。
その際は、LINE経由で紹介してもらったら、LINEコインなどのインセンティブを与えるのが良いでしょう。
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インタビューは以上です。
要点としては
- 広告予算が3億円以上であればテレビが有効
- 広告予算が5000万円以上あれば、GDNとかけあわせる
- 予算がない場合であればLINEビジネスコネクトがおすすめ
この3つだと思います。
通常の広告施策で、選択肢が他に無いといった場合に是非検討してみてください。