自社のプロダクト(商品・サービス)が顧客のニーズを満たし、正しい市場に提供されている状態をPMF(Product Market Fit/プロダクトマーケットフィット)といいます。新規事業を立ち上げたものの、「成長が頭打ちになっている」「営業やマーケティング活動を強化しても成果が出ない」などの課題をお持ちの方は、プロダクトがPMFしているかを検証することをおすすめします。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、新規事業の立ち上げからPMFに至るまで一気通貫で支援しています。新規事業で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)
本記事ではPMF達成までのプロセスにおいて、よくある質問に回答します。
※関連記事:PMF(プロダクトマーケットフィット)達成ガイド~基礎から事例まで、新規事業を成功に導くためのコンテンツ集
Q.PMFは、どのようなプロダクトで必要なのでしょうか?
すべてのプロダクトでPMFを目指すべきだと思います。PMFをしていないと、いくらプロモーション予算を投じても商談につながらず、商談しても受注できず、社内での予算やリソースは削られ、キャッシュフローが悪化するなどの悪循環にはまってしまいます。
逆にPMFしていれば、プロモーション予算を投じるほど商談が増え、商談によって受注が生まれ、社内で追加の予算やリソースを調達でき、キャッシュフローが積み上がっていきます。
Q.PMFをしている状態かどうか、どのように判断すればよいでしょうか?
「PMFしているかどうか疑問を持っている時点ではPMFをしていない」といわれています。反対に以下のようなシグナルがあると、PMFしているといえます。
・顧客からの問い合わせが殺到する
・異様に低い金額で問い合わせや受注が獲得できる
・顧客からの機能要望にプロダクト開発が追いつかない
・サーバーを増強しても、すぐにサーバーが止まってしまう
・事業の成長に採用が追いつかない
・予算を使っても使っても、利益が出てしまう
Q.PMFを達成するまでには、どのようなことを検証すればいいのでしょうか?
フィットジャーニーに沿って進むことを推奨しています。フィットジャーニーとは、事業アイデアの立案からPMF、そしてGrowth(グロース)に至るまでの道のりを示したものです。
Q.まだPMFをしていない場合は、最初に何からはじめればいいでしょうか。
フィットジャーニーのCPF(Customer Problem Fit/カスタマープロブレムフィット)のフェーズからはじめましょう。
CPFとは、自社が想定している課題を顧客は本当に抱えているのか、それがどれほど深い課題なのか、競合がこれまで解決できていない課題はなにかなどを検証するプロセスと、それが検証できた状態を指します。
CPFでやることは、顧客の声を聞くことです。30~50社程度インタビューを行い、顧客が共通して口にしている課題や今すぐ解決したがっている課題を洗い出すしましょう。
できればバーニングニーズ(Burning Needs)とよばれる「髪の毛に火がついていて、すぐに消すことが求められる」ような切迫したニーズや課題を特定できると望ましいでしょう。
Q.フィットジャーニーにおける6つのフェーズは、順番にきれいに流れていくことが多いでしょうか? それとも行ったり来たりすることもありますか?
直線的に進むことは少なく、行ったり来たりすることが多いです。
・SPFを達成したと思ったら、PMFを達成できずにCPFやPSFなど前のフェーズに戻る
・PMFを達成したと思ったら、対象の顧客セグメントは取りきってしまい、別の顧客セグメントに対して一からフィットジャーニーを始める
などがよくあるケースです。
Q.PMFは新規事業のみに有効な概念なのでしょうか?
新規事業のみならず、既存事業でも「PMFしているかどうか」は常に問う必要があります。PMFがないプロダクトは、広告を出稿しても申し込みがなかったり、営業パーソンが必死に売り込んでも発注してもらえなかったり、プロダクトを納品しても顧客が喜んでいない状態にあるからです。既に売上が立っている既存事業でもそのような状況がある場合は、PMFできていないと考え、フィットジャーニーをさかのぼって検証しましょう。
Q.プロダクトを売りながら改善する場合、改善前のプロダクトを購入されるお客様がいることを考えると躊躇してしまいます。どのようにフォローすればいいのでしょうか?
前提として、プロダクトが未成熟な状態で導入いただくことになるため、導入後の機能アップデートのスピード、サポートの手厚さなどによって、プロダクトの未成熟さをカバーする意識が重要です。また、導入前の商談時に今後仕様が変わったり、新しい機能が追加されることを予め伝えるようにして、期待値のズレがないようにしましょう。
また、クラウドサービスでは改善前のプロダクトを導入した既存顧客に対して、機能アップデートによって新しい機能を届けることができますが、オンプレミスや売り切り型、個社ごとにカスタマイズして届けるプロダクトの場合は、無料や割引価格で新しい機能や製品自体を提供する配慮が必要です。
そもそも、改善前のプロダクトを購入された顧客へのフォローは難しいものです。PMFに至るまでは無理に顧客数を増やそうとせず、PMFまでの仮説検証に耐えうる、最低限の数の顧客にだけプロダクトを届けるようにしましょう。
Q.PMFの重要性を社内で理解してもらえません。どうすればいいでしょうか?
事業が伸びているうちは、PMFに本気で向き合うのはなかなか難しいかもしれません。PMFを達成した企業に話を聞くと、解約が相次いだり、全然売れなかったり、受注数が減るなどの危機的な状況になってはじめてPMFと向き合ったケースが多いようです。
ただ実際に危機的状況になってから立て直すのはリスクが高いですし、早めに経営者や事業責任者に危機感を持ってもらいたいですよね。そのためには、ユーザーの声をそのまま届けることをおすすめしています。
「他社のほうが使いやすい」「導入したが全然使えなかった」「サポートサイトで問題が解決しなかった」など、見込み客インタビューや解約顧客インタビューで出た率直な声を聞くと、「このままじゃだめだ」と危機感を持つ経営者や事業責任者は多いものです。
Q.新規事業を立ち上げ、PMFに向けて進むためには、どのような人材が必要でしょうか?
当社でもさまざまな新規事業を立ち上げていますが、多少精度が粗くともフィットジャーニーを突き進んでいけるような、熱量と推進力を持った人材が適していると思います。
また、社内調整力が高いことも重要な要素です。予算の追加やリソースの配分など、計画どおりに進まないのが新規事業。社内にしっかりと説明し、調整する力がないと、プロジェクトが頓挫してしまうことが多いです。
Q.PMFするためにバリュープロポジションが重要とのことですが、自社独自の価値や競合との差別化ポイントをどのように見つければいいでしょうか?
独自の価値は今日、明日で作れるものではないため、2〜3年かけて独自の価値を作りにいくつもりで、長い時間軸でとらえることですね。ただ、現実的には事業立ち上げと同時に売上目標を持たされ、すぐにでも成果を出したいという企業が多いはずです。
そこで、プロダクトだけで差別化できないのであれば、人のサポートで価値を出すなど、顧客への価値の届け方をとらえなおしてみることも有効です。
まずはテンプレートを活用し、バリュープロポジションを描いてみてください。
※関連記事:競争優位性を見いだせなかった新規事業が「プロダクト×人」で突破口を見つけた話
Q.PMFに至るまでの期間は、一般的にはどの程度でしょうか?
エンジェル投資家のLenny Rachitsky氏が米国の有名スタートアップに調査したところ、8割が2年以内にPMFを達成し、2割がプロダクトのローンチ直後にPMFを達成。平均すると6~18か月の間にPMFを達成する企業が多かったようです。当社が支援したスタートアップ企業様も2~3年程度はかかっている印象があります。
Q.PMFを目指していますが、どの顧客がターゲットなのか判断が難しいです。どのように進めていけばよいでしょうか?
すでに自社のプロダクトを使ってくれている顧客がいるのであれば、既存顧客の一覧を作り、既存顧客の属性を分析したり、既存顧客にインタビューしたりすることから始めましょう。
例えば、以下のような問いに答えることでターゲットとなる顧客が見えてくることが多いです。
・自社のプロダクト、サービスを使っている顧客にはどのような共通点があるか
・顧客をいくつかのセグメントに分類する場合、どのように分けられるか
・プロダクトを利用して、もっとも喜んでいるのはどのような顧客なのか
・プロダクトをなくてはならないものと考えているのはどのような顧客なのか
・会社としてプロダクトやサービスの価値を届けたいのはどのような顧客なのか
・自社にとって最も収益性の高いのはどのような顧客なのか
新規事業で、まだプロダクトを使ってくれている顧客がいない場合は、アンケート調査を実施したり、ターゲット候補となる見込み客にインタビューするなどして、自社の製品・サービスを必要とするであろう顧客セグメントを明らかにしましょう。
Q.事業を撤退する場合のタイミングや基準を、どのように設定すればよいでしょうか?
事業の成功までに、どれぐらいの期間や投資金額を許容できるかは企業によって異なります。
ある上場企業では「事業をローンチしたら成功するまで辞めない」としていますし、「累積●億円の赤字になった時点で終了」としているケースもあります。私の前職では「4半期ごとに進捗を確認し、進捗が悪い事業は撤退」がルールでした。
自社が許容できる期間や投資金額の中で、あらかじめ撤退基準を定めること。場当たり的な判断ではなく、撤退基準に則って判断をすることの2点が重要です。
Q.PMFを達成している事業やプロダクトに、共通点はありますか。
これまで14社の新規事業立ち上げからPMFまでの過程を取材しました。その中で見えてきたのは、それぞれの新規事業にはPMFを達成するにあたって引き金となった出来事があることです。これをPMFトリガーと名付けました。
共通するPMFトリガーは以下の7つです。
1.顧客に向き合う
2.入念なリサーチ
3.受託開発・コンサルティング
4.コンセプト創出
5.ターゲット変更
6.キラー要素の発見
7.市況変化への対応
7つのPMFトリガーすべてを満たす必要はありませんが、成功事例の各社は2~3個のトリガーを経て大きく飛躍しています。
Q.PMFを達成している企業の事例を教えてください。
当社で取材した14社のPMFトリガーを表にまとめました。社名をクリックするとPMFストーリーの記事がありますので、ぜひご一読ください。
14社のPMFトリガー
社名 | 顧客に 向き合う | 入念な リサーチ | 受託開発・ コンサル ティング | コンセプト 創出 | ターゲット 変更 | キラー機能 の発見 | 市況変化への 対応 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
FLUX | 〇 | 〇 | |||||
HERP | 〇 | 〇 | |||||
コドモン | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
タイミー | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
TOKIUM | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
コミューン | 〇 | 〇 | |||||
サイカ | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
プレイド | 〇 | 〇 | |||||
WACUL | 〇 | 〇 | |||||
Photosynth | 〇 | 〇 | |||||
ノバセル | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
fondesk | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
ベーシック | 〇 | 〇 | |||||
Shirofune | 〇 | 〇 |
PMFは、スタートアップだけでなく、大手企業の新規事業でも注目され始めている概念です。新規事業をこれから立ち上げる方、立ち上げたものの思うような成果が出ていない方は、社内でPMFへの道のりを検討してみてはいかがでしょうか。
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