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マーケティング

マニュアル作成の上場企業、グレイステクノロジーはなぜ高収益なのか【BtoB企業のマーケティング分析】
栗原 康太
  • 著者/栗原 康太
  • 株式会社才流 代表取締役社長

マニュアル作成の上場企業、グレイステクノロジーはなぜ高収益なのか【BtoB企業のマーケティング分析】

よくある「マーケティング」の話は

 

 

などが注目されるが、マーケティングは本来、「売れる仕組みづくり」や「顧客に選ばれ続ける仕組みづくり」をする活動のこと。

 

個別の施策を考える前に「顧客を満足させる最適な製品・サービスを最適な市場に提供すること」「それを届ける仕組みを作ること」の両方を考える必要がある。

 

本連載【BtoB企業のマーケティング分析】では、経営に役立つマーケティング情報として、優れたBtoB企業が、どのような売れる仕組みを持っているのかを解説していく。

 

マニュアル制作の上場企業、グレイステクノロジーとは

営業利益率30%超の高収益企業

連載の第1回に取りあげるのは、2016年12月に東証マザーズに上場したグレイステクノロジー株式会社。

国内初のマニュアル専門の制作会社として、 コンサルティングからテクニカルライティング、技術翻訳、マニュアル管理のクラウドサービスなどを提供している。

 

 

2018年3月期の決算は売上13億、営業利益4億円と営業利益率は3割を超え、対前年比成長率も売上・営業利益ともに+30%。従業員46名(2018年4月時点)で、この数字を生み出している。

 

事業は

 

 

の2本柱。

 

マニュアルとはメーカーとユーザーをつなぐ重要な“コミュニケーションツール”であると捉えています。最適なマニュアルの作成は、コスト負担を軽減させるだけでなく、メーカーとユーザーの非効率性を改善し、製品価値やユーザビリティを高めるもの。

出典:マニュアル制作のワールドリーディングカンパニーへ──グレイステクノロジー株式会社 代表取締役 松村 幸治 | ジャパニーズインベスター

 

と定義し、顧客のコスト削減(平均で4分の1程度)を実現しつつ、正確で統一性のあるマニュアル作成をスピーディーに提供している。

 

高収益体質の背後にある美しいビジネスモデル

 

同社は、付加価値の高いコンサルティング業務は社内で行い、労働集約的なマニュアル制作(原稿作成・翻訳など)は、500名、40社の外部パートナーに委託している。いわゆるファブレス(工場を持たない)なビジネスモデルだ。

 

スポーツ用品メーカーのトップ企業・NIKE社が、製造は全製品の98%をインドネシア、中国、タイなどのアジア諸国にアウトソーシングして、自社は製品企画・設計、R&D、マーケティングの機能に集中しているのと同じビジネスモデル。

 

グレイステクノロジーにはそれに加え、制作したマニュアルを管理・運用するクラウドサービス「e-manual」を提供。システム化によって顧客の業務効率化、コストを削減するとともに、他社への乗り換えを防ぎ、継続期間の長いストック収益を確保している。

 

マーケティングの対象がとにかく明確

 

グレイステクノロジーのマーケティングの特徴は、とにかく基本のSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)が明確なこと。

 

セグメンテーション(戦う市場)はBtoBのマニュアル作成市場。ターゲティング(対象顧客層の選定)は、専門性が高く、1製品あたりのマニュアルの分量が多い産業機械(半導体装置やパワーショベルなど)分野に特化。創業当初から、白物家電などのBtoCには一切手を付けていない。

 

BtoB製品のマニュアル作成の現場では、メーカー社内にマニュアルを統括する部署がなく、それぞれの部門の技術者が片手間に作成しているらしい。結果として、用語やデザイン、内容に統一感がなく、品質がバラバラ。大きな無駄が発生している、という課題がある。

 

今の事業を始めたきっかけは翻訳会社に就職したことだ。メーカーの製品マニュアルの翻訳を任されたが、その時内容のあまりの分かりにくさにびっくりした。そこで自分でマニュアル自体を分かりやすく書いてみたところ、メーカーからの評判が非常に良かった。この経験が今の自分につながっている

出典:グレイステクノロジーの松村幸治社長「日本のマニュアル制作を何とかしたい」:日本経済新聞

 

と松村社長が語っているが、上記の課題を持つ、市場と顧客に対するポジショニングも明確だ。

 

なるべく効率的にわかりやすいマニュアルを制作したいメーカー側と、操作が容易にできるように分かりやすいマニュアルを求めているユーザー側の課題に対して

 

 

しており、「質の高いマニュアル作成ならグレイステクノロジー」というブランドを確立している。

 

提供価値を届けるマーケティング活動

ここまで対象市場と顧客、ポジショニングが明確になっていれば、マーケティング活動はシンプルになる。

ターゲットである「専門性が高く、1製品あたりのマニュアルの分量が多い」産業機械メーカーの数はおそらく1,000~2,000社程度。

 

 

毎月1回やっているセミナー(https://www.g-race.com/seminar/)が

 

 

から、具体的なターゲット企業のリストがあり、そのリスト内にあるターゲット企業に絞って、マーケティングや営業活動を行っているだろう。

 

6年で取引社数は約3分の1、逆に1社あたりの売上が6倍

同社のターゲットが絞られていることは、営業戦略にも現れている。

 

 

営業対象を重点顧客にしぼり、2012年から顧客数を大幅に絞り、6年で取引社数を約3分の1に減らし、逆に1社あたりの売上は6倍近くに増やしている。

 

新規顧客への販売は、既存顧客に販売するコストの5倍かかると言われるが、同社のようにマニュアル制作の企画から制作・運用管理のサービスを一気通貫で取り揃えていれば、既存顧客の深耕は費用対効果の高い戦略だろう。

 

他にも、外部から情報を集められなかったが、明確な1,000~2,000社程度のターゲット企業リストがあれば

 

 

を通して、個別撃破的なマーケティング施策も走らせているだろう。

 

参考までに、「マニュアル作成」関連キーワードの検索順位を調べてみた。

 

 

ブランディング的に重要だと思われる「マニュアルコンサルティング」では1位を確保しているが、その他のワードではほとんどSEO(検索エンジン対策)を行っていない。リスティング広告の出稿もなく、「検索」は有効な集客チャネルと見なしていないことが伺える。

 

他にもこんなマーケティング施策が有効では

決算資料内に上場を機に認知が拡大し、需要が伸びていること。「マニュアルのプロ」としてさらなる認知拡大を狙っていきたい旨が書かれていたので、既存顧客の深耕をしつつ、まだまだ認知を広げ、取引したい顧客企業があるようだ。

 

同社のようにターゲットが明確な企業の場合、マーケティング施策としては、以下のようなものが有効だろう。

 

 

さらに、「マニュアル作成・コンサルティング」は無形商材なので、サービスの流れや提供の様子を動画等で表現したり、コンサルタントやマニュアル制作者など、サービス提供に関わる人を出すことも有効だろう。

 

グレイステクノロジーのマーケティング分析のまとめ

簡単にまとめると

 

 

あたりが秀逸で、調べながらとても勉強になった。

 

上場によって調達した資金は完全誘導型AIマニュアルの開発に投資するようで、これが実現したら、競合企業とのさらなる差別化になりそう。

※次世代AIマニュアル「Grace Vision」を発表|お知らせ

栗原 康太
  • 著者/栗原 康太
  • 株式会社才流 代表取締役社長

2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げる、株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。 より良い物事の捉え方・進め方を「サイル式メソッド」として発信しています。

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