マーケターがBtoBマーケティングの戦略立案をする際、成否を分ける要素のひとつが顧客への理解です。才流では顧客を深く知ることを、「顧客解像度を高める」と表現しています。
顧客解像度を高める方法は
- 見込み顧客へのインタビュー
- 既存顧客へのインタビュー
- 自社の営業担当・責任者へのインタビュー
- 自社の事業責任者へのインタビュー
- 自社/競合他社の導入事例の分析
- 営業同行/営業動画の閲覧
などがあります。
特に自社の営業担当・責任者へのインタビューは顧客に関するインサイトを得るためには欠かせません。顧客の興味関心、顧客が抱える課題、どのような訴求が刺さるのか……実際に現場で顧客と接している営業は、誰よりも顧客について理解しているからです。
そこで本記事では、営業担当・責任者から顧客に関する情報を聞くためのインタビューシートを公開し、活用法を解説します。
また、才流では「顧客解像度を高めたい」「インタビューを通して顧客理解を深めたい」企業さまを支援しています。戦略立案でお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら
営業担当・責任者へのインタビューシート(Excel)
※個人情報入力なしでダウンロードできます
■参考記事
・見込み顧客インタビューの効果を高める26のチェックリスト~ビザスク活用編~
・顧客理解に役立つ、見込み顧客インタビューシート
・導入事例を競合分析や顧客理解に役立てるためのテンプレート
・既存顧客へのインタビュー項目シート。契約に至るプロセス・ユーザーの情報収集方法まで
【前提】営業担当者と責任者それぞれにインタビューを実施
営業担当者と営業責任者では顧客に対する視点が違うため、インタビューは違う内容になります。
例えば顧客や商談の傾向については両者に聞けることですが、競合の最新動向や、過去の受注・失注についての詳細情報は営業担当者しか持っていない場合もあります。
逆に営業責任者しか知らないこと、例えば受注率、受注獲得のための方針、営業担当者ごとの傾向についての情報は責任者に聞くべきことです。
営業責任者インタビュー | 営業担当者インタビュー |
顧客の傾向 | |
商談の傾向 | |
営業部隊のマネジメント | 競合の最新動向 |
過去の受注/失注例 |
また、インタビューをする前に、営業インタビューシートに「目的」と「インタビュー担当者の属性情報」を記載しておきましょう。目的と前提情報が明記されていれば、万が一マーケティング担当者が変わったり、情報が不足した場合に関係者をスムーズに把握できます。
目的 | 顧客と自社の営業活動について理解する |
担当者氏名 | 例)営業 太郎 |
役職 | 例)営業部 部長 |
業務内容 | 例)大手企業向け営業の統括責任者 |
営業担当・責任者に共通するインタビュー項目
まず、営業担当者と責任者に共通して聞きたいインタビュー項目の「顧客の傾向」「商談の傾向」について解説します。
顧客の傾向
顧客の傾向を理解するために、次の4項目について確認しましょう。
1.先方担当者の属性(業種・部署・役職・売上規模など)タイプ
2.顧客の検討のきっかけや抱えている課題
3.顧客のサービスの探し方
4.自社に対する認知の有無
1.商談相手の属性タイプ
- 業種
- どのような業種の商談先の企業が多いか
- 商談先の業種が複数ある場合はどの順番で多く、どのような割合か
- 規模感
- どのような規模の商談先の企業が多いか
- もし特定可能であれば、年商や従業員規模はどの程度か
- 商談先の規模が複数ある場合はどの順番で多く、どのような割合か
- 部署
- 商談先の担当者はどのような部署が多いか
- 商談先の部署が複数ある場合はどの順番で多く、どのような割合か
- 役職
- 商談先の担当者はどのような役職が多いか
- 商談先の役職が複数ある場合はどの順番で多く、どのような割合か
2.顧客の検討のきっかけや抱えている課題
- 顧客の検討のきっかけ
- どのようなきっかけで検討がはじまったか
- 顧客が抱えている課題
- どのような課題があったか
- いつから課題感を持っていたか
3.顧客のサービスの探し方
- 顧客のサービスの情報収集方法
- 例)
- (Web検索であれば)どのようなキーワードで検索を行ったか
- (書籍や業界紙であれば)どのような媒体か
- (顧問紹介であれば)どのように紹介を受けたか
- 顧客が比較検討したサービスの数はどのくらいか
- 例)
4.自社に対する認知の有無
- 顧客は自社のことを認知していたか
- (知っている場合)どのような印象で認知されていたか
- 顧客が自社のことを認知したきっかけは何か
商談の傾向
次に、商談傾向についてインタビューしていきます。
受注までの営業プロセス、顧客に対するサービスの強みや弱み、発注までの稟議プロセスなどの項目を確認し、商談傾向への理解を深めましょう。
5.初訪問から受注までの期間と営業の流れ
6.顧客に刺さるポイント(機能・説明・画面)
7.顧客の反応が薄いポイント(機能・説明・画面)
8.最終的な導入検討にあたって気にしている点
9.受注の決め手とそれぞれの比率
10.失注の決め手とそれぞれの比率
11.顧客の社内での検討・稟議プロセス
5.初訪問から受注までの期間と営業の流れ
初回の商談から受注までの期間、どのように営業活動が進んだのかを確認します。
- 初訪問から受注までの期間
- 商談回数
- 商談回数を重ねる上での顧客の変化(同席する人数や反応)
6.顧客に刺さるポイント(機能・説明・画面)
商談中、どのようなポイントが顧客に刺さったかを聞きます。営業の方が実際の商談で使用した資料やデモ画面などを見せてもらうとスムーズです。
- 例)
- 料金や導入費用が他社より安い点
- 〇〇という機能
- 管理画面が使いやすい
- 24時間365日のサポート体制
- ◯か月間の導入支援 etc.
7.顧客の反応が薄いポイント(機能・説明・画面)
商談中に顧客の反応が薄かったポイントもインタビューします。日々改善される営業活動のなかで、顧客の反応が薄い内容は商談用の資料やサービス内容から淘汰される傾向にあり、顧客の反応が良いポイントに比べると充実した回答を得られないことも多いです。
- 例)
- 導入コスト(費用、人的工数)がかかる
- 〇〇という機能 etc.
8.顧客が発注にあたり気にしている点
発注前の最終意思決定を前に、どの部分が顧客にとってボトルネックになっているかを聞きます。
- 発注にあたって気にしている点はなにか
- 商談では、どのようにその懸念点を解消しているか
9.受注の決め手とそれぞれの比率
顧客に刺さるポイントと内容が被ることもありますが、受注に至った決め手をインタビューします。複数ある場合は、その要因ごとの比率を営業担当者の感覚値で良いので、わかる範囲で聞きましょう。
- 例)
- 他サービスと比較して料金が安かった(5割)
- 使いやすく、運用が簡単そうなデモ画面(2割)
- 〇〇という機能が他サービスより優れていた(1割)
- サポート体制(1割)
10.失注の決め手とそれぞれの比率
同様に失注の決め手と、要因ごとの比率もインタビューしていきます。こちらも顧客の反応が薄いポイントと近い回答になるケースが多いです。
- 例)
- 他サービスに比べて料金が高かった(7割)
- 〇〇という機能が他サービスのほうが優れていた(3割)
11.顧客の社内での検討・稟議プロセス
最後に顧客の社内でどのような検討・稟議プロセスを経たのかについて、営業担当が知っている情報を聞きましょう。
- 社内での検討項目はどのような内容か
営業責任者のみにインタビューする項目
続いて、営業責任者のみに聞く項目である「マネジメント」について説明します。
マネジメント
1.管轄している営業部門の人数
2.KPI
3.受注率(受注数/商談数)
4.受注のために優先度が高いと考えている点
5.成果を出す営業の傾向
1.管轄している営業部門の人数
管轄している営業部門の人数と、どのような方が多いかをインタビューしましょう。
- 営業部門は何人いますか
- どのような人数構成ですか
- 若手◯人、ベテラン◯人など
2.KPI
営業部門として定めているKPIを確認しましょう。事業によって設定しているKPIの種類や目標数値も異なるため、営業傾向を掴むためにも詳細に聞きましょう。
- KPIは何を定めているか
- アポ数、訪問件数、成約数、成約率、顧客単価 など
- KPIはどのくらいか
- アポ数◯件以上、成約率◯%以上 など
3.受注率(受注数/商談数)
前述したKPIのインタビュー項目と多少重なりますが、商談からの受注率の実際の数値をインタビューしましょう。受注率は30%未満に落ち着くことが多く、パフォーマンスを判断するための1つのボーダーとしてみてください。
- 受注率はどのくらいですか
- 受注数はどのくらいですか
4.受注のために優先度が高いと考えている点
顧客接点数、提案数、提案の精度、予算把握など、営業責任者の方が受注のためにどの要素を優先しているかをインタビューしましょう。組織によって優先する要素は異なることが多いため、営業組織の傾向を掴むためにも詳細に伺いましょう。
- 受注のために優先している要素を教えてください
- 顧客接点数、提案数、提案の精度、予算把握など
- なぜ、〇〇を優先しているのですか
5.成果を出す営業担当者の傾向
最後に、成果を出す営業担当者の傾向をインタビューしましょう。どのようなセールストークが刺さるのか、顧客に刺さる営業のポイントがマーケティングの施策に活用できる可能性もあるため詳細に伺いましょう。
- どのような営業パーソンが継続的に成果を出していますか
- 成果を出せている理由を教えてください
なお、営業管理については、詳しく次の記事で説明をしています。
参考:営業管理とは?500名への調査から見えてきたツール利用の実態も解説|SAIRU NOTE
営業担当者のみにインタビューする項目
責任者へのインタビューとは別に、営業担当者へのインタビューも行いましょう。前述した「顧客の傾向」「商談の傾向」に加え、「競合に関する傾向」「過去の受注/失注例」を聞きます。
大手を専門に営業する方、中小企業を専門に営業する方、のように役割が営業部門内で別れている場合は得られるインサイトも異なるため、複数名へのインタビューを推奨します。
競合の最新動向
商談中に顧客から挙げられる自社の競合サービスに関する傾向をインタビューしていきます。競合情報に関する顧客の声を聞くことで、どのようなサービスやメッセージがバッティングしているのかを把握できます。
1.よく比較される競合企業と特徴、それぞれの比率
2.顧客が開催するコンペの社数
3.競合と比較した際の自社の強みや訴求
1.よく比較される競合企業と特徴、それぞれの比率
比較対象として挙げられるサービス、企業についてインタビューしましょう。似たサービスでもターゲットが異なる(大手向けか中小向けか)ケースもあるため、実際のところ顧客はどのサービスと比較しているのかを把握しましょう。
- どのようなサービスと比較検討されますか?
- 競合企業の特徴を教えてください
- 例)ターゲットが大手金融業界 など
- 複数ある場合は、それぞれの割合を教えてください
- サービスA:80%、サービスB:20%
2.顧客が開催するコンペの社数
コンペ、相見積もりになった場合、どのくらいの社数でどのような会社が多いかをインタビューしましょう。
- コンペがある場合、社数を教えてください
- どのような特徴を持つ会社とコンペになりますか
3.競合と比較した際の自社の強みや訴求
「商談の傾向」でインタビューした「受注の決め手」と似た内容ですが、競合と比較した際の自社の強みをインタビューしましょう。こちらもマーケティング施策におけるメッセージに活用できます。
- 競合と比較した際の自社の強みを教えてください
- 営業時に強く訴求する内容を教えてください
過去に受注/失注した例
最後に特徴的な受注ケース、失注ケースを3件ずつインタビューしていきましょう。実際のケースをインタビューすることでより高い解像度で顧客を理解することができます。
■受注/失注例で聞く項目
- 企業名
- 先方担当者の属性(業種・部署・役職・売上規模など)
- 顧客の検討のきっかけや抱えていた課題
- 顧客のサービスの探し方
- 初訪問から受注までの期間と営業の流れ
- 比較検討されたサービス
- 発注にあたって気にしていた点
- 受注/失注の決め手
- サービス導入後のお客様からの反応
高い顧客解像度をもとにマーケティング戦略を設計するためには、営業の方へのインタビューは欠かせません。しかし、多忙な営業担当者にアポイントを取るのはなかなか難しいと感じる方もいるでしょう。
重要なのは、マーケターがこのインタビューをもって何をしたいのかを正しく理解してもらうことです。マーケティングの目的は営業活動を支援し、売上を上げること。営業とマーケティングは一体となり、目標に向かわなければなりません。
ぜひ営業担当・責任者に協力を仰ぎ、顧客解像度の高い戦略設計を行いましょう。これから営業担当・責任者へのインタビューに取り組まれる方は、ぜひ本記事と「営業インタビューシート」をご活用ください。
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