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BtoBのエンタープライズマーケティング・営業の攻略法|イベントレポート

【登壇者(右から)】
株式会社才流 コンサルタント 小島 瑶兵
株式会社プレイド Customer Experience Designer 野村 修平 氏
ClipLine株式会社 マーケティング・インサイドセールス部長 岡田 健 氏

【モデレーター(一番左)】
株式会社才流 代表取締役社長 栗原 康太

才流が主催するビジネスイベント「SAIRU Night」。1年2か月ぶりの開催となった今回のテーマは「BtoB事業におけるエンタープライズの攻略法」です。

エンタープライズ攻略は、最近のホットワード。しかし、現場担当者は課題を多く抱えているのではないでしょうか。

  • キーマンとの接点をどう作ればいいのか?
  • マーケと営業の連携はどうする?
  • 営業スキルを高めるために何をすべきか?

現状、まだまだ知見は集約されておらず、情報収集が難しいでしょう。

そこで今回の「SAIRU Night」では、エンタープライズ営業やマーケティングを経験した登壇者たちが、具体的な施策やノウハウ、失敗談などを共有しました。

新型コロナウィルスの影響を受け、急遽オンライン開催に変更したのにもかかわらず、60名以上の方に参加いただきました。参加者のみなさまには、心より感謝申し上げます。

また、今回配信のために会場を提供してくださった株式会社日宣 様と、配信に協力してくださったSHIBUYA LIVE STREAM 様にも心より感謝申し上げます。

<写真・ライブ配信/矢野 拓実forio 神 颯斗@PHOTOGRAPHERJPN 文/安住 久美子@081123tadatama 編集/中島 孝輔@KosukeNakajima_ デザイン/垰本 千代>

ユニコーンを創るマーケティング【ClipLine 岡田健】

まず行われた登壇者3名によるライトニングトーク。

最初の登壇者であるClipLine株式会社(以下、ClipLine)の岡田 健氏は、「ユニコーンを創るマーケティング~SansanとClipLineの事例でみるエンタープライズ攻略とマーケティングドリブンな事業成長~」と題し、自身の経験を語った。

ClipLine株式会社 岡田 健氏

岡田 健 氏(ClipLine株式会社 マーケティング・インサイドセールス部長)
2012年にSansanに新卒で入社、Sansan事業部マーケティング部で、月50件未満だった問い合わせを2年で月1500件まで引き上げた実績を持つ。海外向け新規事業のマーケ・PM補佐、エンタープライズ営業部の立ち上げ、インサイドセールスなどを経て、戦略担当マネージャーとしてエンタープライズ攻略を推進。2018年1月に同社を退職し、現在はClipLineでマーケティング・インサイドセールスを統括している。


「伸びている会社には、営業、PR、マーケなど、フェーズによって会社や事業の成長をけん引する突出して強い部門があると思っています。

Sansanの場合、2011年前後はマーケティングが事業成長に大きな役割を果たしました。ClipLineでもマーケティングドリブンな成長に取り組み、大きな手ごたえが出てきています。

エンタープライズを攻略することは高額な取引を目指していること。これがマーケティングで効率的に受注できれば事業成長には大きなインパクトがありますよね。

マーケターの皆さんには、ただリード獲得を狙うだけではなく、事業を伸ばす観点で取り組んでほしいですね」(岡田 健氏)

エンタープライズ攻略では、「接点を持てない」「接点を持っても大きく売れない」ことが多くの企業の課題だろう。そこで、岡田氏はSansanやClipLine他、複数のベンチャー企業でのアドバイス等で経験のある接点創出の施策についてまとめた。

ClipLine株式会社 スライド

同じセミナーやカンファレンスでも、各社の置かれた立場で微妙にカスタマイズは必要だと岡田氏は語る。

「例えば、カンファレンスを一つとっても、私が在籍していた時代のSansan、あまり自社商材を積極的に売り込むコンテンツではありませんでした。

一方でClipLineの場合は、まだまだ認知がないので、セミナーの場でも主催者講演や顧客とのパネルディスカッションを通して、オペレーションやマネジメントの変革について自社の活用ポイントをかなり訴求するコンテンツを実施しています」(岡田 健氏)

特にエグゼクティブ層の接点創出のためにはより抽象的なテーマを扱えるようになる必要があるという。今まさに日本の大手企業は変革が迫られている真っただ中だ。

経営層が求めているコンテンツはDX、イノベーション、働き方改革など抽象度の高いテーマ。そういったテーマに対し、自社がどう貢献できるかの言語化や、事例で箔付けする準備から始めるべきと岡田氏は語った。

次に、マーケから営業へパスを出した後、受注までどう結びつけるか。態度変容の設計について、岡田氏はマーケターと営業の間にあるギャップを指摘した。

「例えば、マーケターは、AIDMAやAISASといったフレームワークや、顧客の検討度を「認知・興味・検索…」フェーズで分類し、判断しているのではないでしょうか。

一方で、営業がパスされたリードを評価するときは、BANT(※)をよく使います。顧客の検討度を見る粒度が、両者の間で異なっています」(岡田 健氏)

※BANT:Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の4つの頭文字から取った言葉。

さらに岡田氏はリード獲得後のマーケターのスタンスについて説いた。

「『リードを獲得したあとは営業任せ』なスタンスでは、エンタープライズ攻略は難しいと思います。

エンタープライズ攻略に必要なプロセスは、決裁者である役員や、プロジェクトリーダーになるであろうミドル層、導入を強く賛成してくださる『チャンピオン』たちをまとめ上げ、稟議を通していくことです」(岡田 健氏)

検討上の難所の事前の把握により、マーケターが先に打てる布石も多くなるという。

例えば、セミナーの設計段階では、以下のような布石を打てるそうだ。

  • 経営企画を管掌する常務取締役をセミナーに招待
  • セミナー当日は常務が後から個別相談を許してくれるコンテンツの講演
  • アポ獲得後、常務のみならず、具体的にプロジェクトを推進する営業部長や課長、あるいはセキュリティチェックをするシステム担当までも同席させるアプローチを仕掛ける

「検討期間が長く、複数人が検討に関わるエンタープライズ攻略。入り口となるリード獲得を任されるマーケターが、顧客の稟議や検討方法の解像度を高め、先読みした施策の実施が、効率的なエンタープライズ攻略では重要です」(岡田 健氏)

ClipLineのターゲットは、外食・小売・ヘルスケアなどの多店舗ビジネスモデルを展開するエンタープライズ。数千店舗を全国展開する企業に対し、オペレーション変革を提案するためには、担当部長ではなく社長や役員と直接話すのが基本だという。

エンタープライズに特化したマーケティングを実施して、顧客開拓が進んでいるとのことだ。

自社のビジネスモデルに合わせ、ターゲット企業のキーマンを見極めていく必要があるのだ。

エンタープライズセールスはアルピニスト【プレイド 野村修平】

続く二人目の登壇者は、株式会社プレイド(以下、プレイド)の野村 修平氏。野村氏は、エンタープライズセールスを「登山」に例えて表現した。

「難攻不落のエベレストを目指すアルピニストは、中腹でトレーニングし、自身や山の状態を見極めながら、ゴールに向けてルートを選択していきます。これがエンタープライズ攻略と似ているんです」(野村 修平氏)

野村氏はルート選択の過程を、プレイドの事例をもとに具体的に説明した。

株式会社プレイド 野村 修平氏

野村 修平 氏(株式会社プレイド Customer Experience Designer)Twitter:@VC_II_1009
2004年ワークスアプリケーションズに新卒入社し、エンタープライズの新規セールス、セールスVP、SVPを経験。クロスセルチームを立ち上げ、3年でチーム売上げ5倍の36億円を達成。後にアメリカ事業の立ち上げも行う。現在はプレイドで、エンタープライズセールスの立ち上げやBizDevに従事。


株式会社プレイド スライド

「大企業は子会社が多い場合もあるため、どの企業が対象になるかを、まずは調査します。その上で、自社製品のポテンシャルを整理し、相性を見極めていく。人と人の力関係の把握が肝なので、組織図を作り、1年くらいかけて営業活動を行っていきます。
また、大企業は計画予算のため、4月1日の新年度予算から逆算し、新年度の予算策定を顧客と共に議論できるよう、前年度の秋までにクライアントとの関係を作る必要があります」(野村 修平氏)

株式会社プレイド スライド

またリード発掘施策について、野村氏は5つのタッチポイントを示した。水色のポイントは、野村氏の肌感として高い効果を感じた施策だという。

株式会社プレイド スライド

「最近は特に、デジタルタッチポイントを作る重要性を感じています。例えば社員が『note』などのソーシャルメディアで情報を発信し、個人に問い合わせをいただくケースもあります。

また、エグゼグティブと一緒に海外視察へ行くことも効果がかなり高いです。長い時間をともに過ごすので、濃密なコミュニケ―ションが可能です。ここから受注できるケースは多いですね」(野村 修平氏)

リード発掘と併せて行うべき実行計画支援。その中でも訪問準備にフォーカスし、それぞれチェック項目を紹介した。

株式会社プレイド スライド

セミナーのテーマは、営業色は抑えるほうが良いと野村氏は説いた。エグゼクティブが興味を持つ「一段上のテーマ」を扱えることが、エンタープライズ攻略には欠かせないようだ。

エンタープライズに有効なCXOレター実践術【才流 小島瑶兵】

最後のライトニングトーク登壇者は、弊社マーケティングコンサルタントの小島 瑶兵。テーマはエンタープライズの接点づくりで特に有効だといわれる、CXOレターだ。

CXOレターは、大手の責任者クラスに直接リーチできる非常に有効な手段です。継続的なアプローチが可能で、特定の業界に絞ったリーチが実現できます。

しかし、いざCXOレターをやりたいと思っても、情報がなかなか出てこないと相談を受けます。今日は私の経験から、具体的な手法を説明したいと思います」(小島 瑶兵)

株式会社才流 小島 瑶兵

小島 瑶兵(株式会社才流 マーケティングコンサルタント)Twitter:@yooheykoji
2013年にWEBコンサルティング事業を行う株式会社GENOVAへ入社。営業部長として100件以上のマーケティング支援を行う。その後、新規事業開発を行う部署を立ち上げ、医療メディア「Medical DOC」をローンチ。公開から2年で年商10億円を達成。現在は才流で上場企業やスタートアップのコンサルティングを行う。


株式会社才流 スライド

「封筒は手書きにするだけで、開封率は大幅に上がります。また送付する会社にあわせた内容のカスタマイズが必要で、特に『送付理由』と『お客様事例の紹介』はマストです。

コーポレートサイト、IR情報、取材記事などからの地道な情報収集が大事ですね」(小島 瑶兵)

次にCXOレター送付の手順について、小島は5つのステップを示した。

2つ目のステップの「キーマン特定」では、今までの受注・失注分析をした上で、ターゲットの部署と役職の特定を進めるという。また会社ごとに部署名の表現が違うため、注意が必要だ。

株式会社才流 スライド

「CXOレターの返信率の期待値は、1%程度。フォローコールをした場合だと、アポ獲得率は5%程度と考えています。僕はこれをKPIに置いていますね。

手紙施策は費用対効果が高いですし、エンタープライズ施策の中でも明日からすぐはじめられる数少ない施策だと思います」(小島 瑶兵)

リソースが足りない場合、キーマン特定や郵送作業の一部の外注化などの選択をしても良いだろう。

しかしフォローコールに外注はおすすめしないそうだ。絶対に落としてはいけないリストは、できるだけエースの営業マンが丁寧にコールしていくべきだ、と小島は強く語った。

【ディスカッション】エンタープライズセールスのリアル

ここからは、才流代表の栗原 康太と登壇者3名によるセッションの様子をレポートする。

  • エンタープライズセールスにおける失敗
  • 営業とマーケの連携をスムーズにする方法や育成方法など

以上の内容を経験談から意見が交わされた。

※以下、モデレーターと登壇者は敬称略。

エンタープライズにキャンペーンは効かない?

登壇者一覧

栗原:エンタープライズセールスでの失敗談はありますか?

野村:売上の数字が厳しく、キャンペーンに走ってしまったことですね。

初期費用を落として、短期的な値引きをしてしまう。しかし、エンタープライズはキャンペーンにほとんど反応してくれないんです。

目先の数百万の値引きは、彼らにとってインパクトがないからです。計画予算をもとに動いているので、値下げされても出せないこともあると思います。

栗原:プレイドでは、営業色のないカンファレンスを開催されているそうですが、内容について教えてください。

野村:弊社では、CX(顧客体験)自体の認知度向上、文化醸成を目的とした「CX DIVE」というセミナーをやっています。このセミナーの目的はリード獲得ではないので、営業リードがあってもフォローしてはいけません。

明確に定まった目標をもとに、お客様は参加してくださいます。その場面で営業すると「結局、営業電話がくるのか」と、お客様の体験にギャップを出してしまうんです。

だからこそ、「CX DIVE」ではCXに没入していただく。大企業の役員層の方もお越しいただくため、会社や製品の認知のきっかけにはなっていますし、全体のブランディングにはプラスだと思います。

栗原:エンタープライズセールスにおいて、会社のブランドはどのくらい重要だと思いますか?

野村:現状、大抵の役員層の方は弊社を知りません。ですので、弊社を知っている前提で話してしまうと、だいたい話が噛み合わなくなります。

だからこそ、最初の出会いでいかに惹きつけられるかを、すごく意識しています。

株式会社プレイド 野村 修平氏

栗原:岡田さんは、エンタープライズ攻略での失敗談はありますか?

岡田:セミナーでよくある失敗が登壇者の人選でしょうか。

既存のお客様の役職や会社のブランド重視で選んだ結果、弊社のツールを導入してまだ成果があまり出ていない、立場上絶賛できないことがありました。聞いている方も「あれ?」となってしまい、雰囲気が悪くなってしまいましたね。

栗原:経験上、エグゼグティブ層に接点を持ちやすいセミナー開催の時間や時期はありますか?

岡田:日程的に月末月初、そして月曜日と金曜日を避けています。

セミナーでの時間の使い方は、会社の認知率にもよると思います。ただ、ClipLineの場合、認知がまだ低いので、メインの基調講演のあとに主催者講演という形でがっつり売り込んでいます。受注を最大化するための時間の使い方を考えています。

ClipLine株式会社 岡田 健氏

栗原:時間の使い方の話だと、小島さんのテレアポ時代の話が好きなのですが(笑)。

小島:僕の場合、前職のクライアントが一般企業ではなく病院でした。病院は、診療開始前の5分と診療終了後5分までがハイパーコアタイムだったんです。

すべての病院の診療開始時間と、昼休み時間、診療終了時間を洗い出してアラートをかけていましたね。

栗原:5分は短いですね(笑)。

小島:その時間が勝負でした(笑)。

また、製造業のエンタープライズにアプローチしている会社から最近聞いた興味深い話があるのですが、日中は会議で埋まってしまうため、アポ率が非常に低いそうです。

そのため、コアタイムは朝7時~9時。そこで集中して電話をかけるとおっしゃっていました。
栗原:「エグゼクティブの朝は早い」という話はありますよね。

営業とマーケがうまく連携するために必要なこと

栗原:続いては、営業とマーケ部門の連携方法について伺いたいと思います。

マーケからリードをパスされた後、営業はどう動くか。マーケは営業にどんなパスを渡すべきか。

岡田さん、マーケと営業の連携で心がけていることを教えてください。

岡田:受注までのラストワンマイルは、どうしても営業さんに担ってもらわなくてはなりません。マーケターとして、営業担当の能力にかかわらず、マーケティングに投資すれば売れる環境を作りたいので、できるだけ後プロセスに食い込むようにしています。

先ほども述べましたが、例えば決裁者、導入推進者、情シスの責任者などが一同に集めるアポイントの設定を狙っています。

常務が「あのセミナーすごくよかったね」と言って始まる商談の場を設定できれば、「ここまでやったんだからあとは営業でやってくれよ」と言っていいと勝手に思っています。

そのために、セミナーに複数人で参加してもらう案内をしたり、お客様の課題に刺さるコンテンツを作ったりしています。

ClipLine株式会社 岡田 健氏

栗原:野村さんは営業とマーケの連携で、どのような意識を心がけていますか?

野村リードをもらったとき、マーケやインサイドの人が実際にどんな会話をしたのか、お客様の声色や雰囲気はどうかなど、一言一句詳しく聞きますね。その上で、訪問をどうデザインするか検討します。

栗原:アポが入ったとき、担当者に対してどのようなヒヤリングを行いますか。

野村:アポが入るとSalesforceのChatter(チャター)で飛んでくるのですぐ担当者に聞きに行きます。「これってどんな会話で、このアポになったのかな?」と気になるんです。

ネガティブな状態でアポをとっているケースもあります。訪問のクオリティを下げないためにも、最初のアポはかなり慎重に進めたい。無理なアポをとったとしても、その情報を詳細に伝えてもらいたいし、営業側からも情報を聞きに行くことが大事ですね。

栗原:「このアポはちょっとないな」と思うことはありましたか。

野村:ありますよ(笑)。

営業が感じているターゲットと、インサイドセールスの認識がずれている場合もあります。違和感があるときは直接会話し、すり合わせるべきですね。

栗原:小島さんは、営業とマーケの連携についてどう思いますか?

小島「相手のやりたいことをどう達成するか」に尽きると思っています。

マーケの立ち上げをした際、営業の人の協力を得ることがすごく難しかったんです。リードを渡しても商談に行ってもらえなかったり、しっかり報告されなかったり。

だから、彼らが追っている数字に対してマーケが役に立てることを示さなくてはいけないと思ったんです。

例えば、営業に同行して営業の成績向上に貢献しました。そうすると「お返し」で、少しずつ協力してくれるんですね。結局のところ、人間関係が大事だなと思いました(笑)。

株式会社才流 小島 瑶兵

強い組織づくりのポイントは「全体最適」

栗原:岡田さん、どのような組織づくりを目指すべきでしょうか?

岡田:まさに営業の方と同じ目線でアプローチして、営業の方に動いていただくことは大事だと思います。

ただ、営業とマーケの連携のような組織を動かすことは所詮プロセスの話なんですよね。

大事なのはお客様にいかに動いていただくか。この共通の目標に向かって、営業とマーケが同じ目線になれる会社は強いと思います。

小島:たしかに。いかに部分最適にならず、共通のゴールに向かえるかは大事ですね。

栗原:分業にした結果、各部署で部分最適になってしまう話はよく聞きますね。

岡田:日頃から様々な会社の施策を継続的にトライしてみるしかないと思います。

ただ、施策の結果を判断する際には「リードが獲得できたか」「リード単価が目標に収まったか」だけでなく、最終的な受注や導入後のLTV最大化に目線を合わせておくことが大事です。

栗原:たしかに、何が効果的かはわからないですよね。

マーケとセールスの連携に関しては、トップを統合して担当役員を置くのは、汎用性が高いと思っています。トップが別れているとだいたい揉めるので。

CRO(チーフレベニューオフィサー)とか、プロセス全体の責任を持つ人がいると両方ハッピーなのではないでしょうか。

株式会社才流 栗原康太

小島:最近聞いた話ですと、外資系企業では、日本の売上全体に責任を負うカントリーマネージャーが、統括的なトップの役割を果たしているようですね。

岡田:営業で優れた実績を上げた人が、統括する立場になるケースが多いため、マーケへの理解が少ないケースも多いです。

小島:たしかに営業の背景が強い人がCROになることは多いですね。

営業は全フェーズの間にいます。ですので、マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセスに対してある程度の理解があるからでしょうか。

岡田:売上の踊り場ができてしまうと、組織も停滞しますよね。

だからこそマーケテイングに投資して、様々な施策を並行して進行させる必要があります。リード獲得チャネルのポートフォリオを作っておくことこそ、継続的な成長や組織的なコンフリクトを減らすのではないでしょうか。

難易度の高いエンタープライズセールスを育成するために

栗原:エンタープライズセールスは、お客様の経営課題を把握し、かつDXやAIなど先進的な話題もできなくてはなりません。育成難易度はかなり高いのではないでしょうか?

野村:1人でやりきれるようになるには5年くらい、上司がある程度見ていなくても案件をまわせるレベルには3年くらいかかると思います。

栗原:エンタープライズ攻略を目指しても、3~5年くらいは売れる人がいない……。

野村:はい。ですので、経験者の採用こそ最優先すべきですね。

SMBとエンタープライズって異業種で、マラソンと短距離走くらいの違いです。そのため違いをまず認識する必要があります。

私自身も今の会社に入ってはじめてSMBセールスを担当しました。商談のスケジュール感も、何を持ち帰っていいかも違うので、当時は苦手意識を感じましたね(笑)。

SMBでは現場でお客様をどれだけ魅了し、納得していただけるかのスピード感が勝負の鍵です。製品知識やユースケース、営業マン自身のキャラクターなど、SMBでセールスの成果を出せる人は様々な要素があると思います。

一方、エンタープライズセールスは長距離戦なので、一人だけでは売れません。様々な商談相手へ対応しなくてはなりません。商談相手に合わせた営業マンの配役もしなくてはならない。

株式会社プレイド 野村 修平氏

栗原:なるほど、面白いですね。社内ではどういうふうに育成・研修をされていますか。

野村:資料や提案書の作り方はあまり教えていません。ただ、案件相談は徹底して行っています。

ホワイトボードにバイヤー相関や組織図、検討の背景、スケジュールなどを書かせて、いろいろな人が突っ込みます。

新卒1年目にしてみると、自分ができていないことがつまびらかになるので、その場に立つのは嫌でしょうね(笑)。でもその経験は後に生きてくるんですよ。

栗原:実際の案件で学んでいくことは大事ですね。

野村失注した案件でも再現性をもたせたい。「確認必須の事項」や、「お客様にネガティブな影響が出るケース」など。1つひとつ丁寧なフィードバック、シェアが重要だと思います。

栗原:岡田さんは、エンタープライズ向けのマーケター育成に何が必要だと思いますか?

岡田:エンタープライズとSMBでもっとも異なることは、抽象度だと思います。

世の中のトレンド、フレームワークですとPEST分析。戦略論でいえばポジショニング、ケイパビリティなど。

エンタープライズになればなるほど、組織が複雑化し、多くの人を巻き込んで物事を動かす必要があるため、施策への根拠や適切なアプローチ方法が求められます。

ですので、経営や社会トレンドまで話せるようになって欲しいですね。視座を上げるために「NewsPics」や新聞での情報収集や、エンタープライズ向けの専門セミナーへの参加など。経営者が何年先を見据えて動いているかの理解へ執着すべきですね。

さらに営業経験があればいいと思います。私もエンタープライズ営業を2年やっていましたが、営業をやると組織の力学が学べるんです。

稟議の上がり方が体感できます。複数人の会議で、営業プロセス上タッチしていなかった方が反対の声を挙げられて、導入が見送られるなど。

営業経験はお客様の解像度を高めると思うので、ぜひマーケターは営業にもチャンレンジしてほしいですね。

ClipLine株式会社 岡田 健氏

栗原:小島さんはこれまで多くの営業マンを育成されてきたと思います。エンタープライズに限らず、再現性高く営業数字を達成させる営業組織のつくり方を教えてください。

小島数字を達成するためには、一択で営業組織の行動管理だと思います。「商談、クロージングは何件できるか」の目標数字をしっかりと出す。

その上で、現状と目標のギャップをどう埋めるかを上司と部下で毎日会話する。ほとんどの会社はこれを徹底できていないと思います。

栗原:聞いた話ですが、「移動時間が1時間以上の商談は禁止」のようなルールもあるらしいですね。

小島:前職では、1時間半以上の移動はNGでした。ルールや行動管理は地味ですが、良い結果が必ず出ると思います。

栗原:例えば、BtoB事業に強い日本電産では、営業マンに対して、日中のアポを営業マンが入れると怒られるそうです。かなり厳しく営業マンの行動管理をされているらしいですね。

野村さん、エンタープライズセールスでも行動管理は重要でしょうか。

野村:重要ですね。前職でチームマネジメントをしていたとき、私は1か月の訪問数で行動を管理していました。

訪問数が30前後の人は売れていない、50前後だとそれなりに売れていて、70~80だと、逆になにか取りこぼしがありそうだななど。

ですので、訪問数はだいたい40~50くらいにおさえて、マネージャー陣が裏から管理する。モチベーションの低下を恐れて、営業マン本人には言っていませんが(笑)。

株式会社プレイド 野村 修平氏

栗原:さて、「Sli.do」から質問が来ているので、ご紹介していきます。

Q.エンタープライズ営業の場合、抽象度が上がることは理解できます。ただ後の保守フェーズで炎上しそうですが、なにか工夫されていることはありますか?

野村:私は前職でクロスセルやアップセルのチームを立ち上げたので、炎上後にどの程度ダメージを受けるかは肌で感じてきました(笑)。

やっぱりエンタープライズセールスとしては、やっちゃいけないと思います。回復するまでにものすごく工数がかかるので。

会社としてお客さんがきちんと活用できるまで投資しないといけないですし、そのくらい回復しない場合もある。SaaSの場合、サブスクリプション契約なので簡単にチャーンされてしまいます。だからこそ営業もアップデートしていかないと、焼き畑系の人はもう生き残れないと思いますね。

栗原:「抽象度を上げる」とありましたが、たしかに期待値が高まりすぎてしまうこともあると思います。

岡田さん、いかがでしょうか。

岡田:対策は二つ思いつきます。一つ目は、デモンストレーションを行うこと。ClipLineでは、セミナーでも営業でもデモンストレーションを行いますし、Sansanの営業プロセス内にも必ずデモがありました。

抽象度の高さと具体的な機能を結びつけるためにも、デモは重要です。

二つ目はKPIの管理です。私がSansanで営業をしていた時代、担当する顧客が解約された場合、担当の営業マンにマイナス数字がつきました。

50万で売るとプラス50万ですが、解約されたらマイナス50万と評価される。期待度を空経すぎて売ると後で自分が後悔することになる仕組みでした。解約を営業成績に加えることは、一長一短があると思いますが、営業マネジメント上、おもしろいと思いました。

小島自分のひとつ先の部署のKPIを見ることもベストプラクティスだと思います。マーケならインサイド、インサイドなら営業、営業ならカスタマーサクセスのKPIを、サブ指標として見るなどですね。

株式会社才流 小島 瑶兵


新型コロナウィルスの影響を受け、オンライン開催に急遽変更した「SAIRU Night」。日時、開催場所の変更にもかかわらず、多くのご参加いただき、重ねて御礼申し上げます。

昨今の状況を考慮し、才流では、オンラインセミナーやオンラインイベント引き続き開催していきます。

次回「SAIRU Night」のご参加も心よりお待ちしております。

登壇者一覧

株式会社才流 広報チーム

著者/ 株式会社才流 広報チーム

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