「リードが増えない」「商談化率が低い」。BtoBマーケティングを進めていると、さまざまな課題に直面します。しかし、課題に対する打ち手をやみくもに実行しても、成果は出ません。課題の真因を特定できていないと、正しい打ち手を打てないからです。
本記事では、マーケティング課題の真因を特定するための4つのステップを、ロジカルシンキングの考えに基づいて解説します。対象は、自社の課題を自分で診断し、正しい打ち手を選びたいBtoB企業のマーケティング担当者・責任者の方です。
本記事で得られる知見
・課題と真因の違い
・真因にたどり着くヒアリングの組み立て方
・真因を特定するためのフローチャート
・社内で共有できるPowerPointのテンプレート
マーケティング課題の真因特定テンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます。
施策の成果が出ない理由は、真因の見誤りにある
自社の課題に対し、多くの打ち手を打っているはずなのに成果が出ない。この場合、施策の進め方や質が低いというケースもありますが、課題の真因を見誤り、打ち手を間違えているケースも多いのです。
まず、前提となる課題と真因の関係について、ここで説明しておきます。
課題は自社にとっての悪い症状、真因は症状を引き起こしている本当の原因です。真因は、表面的・直接的に見える出来事や状態ばかりではなく、深く掘り下げていかないと見えない場合があります。
| 課題 | 真因 | |
|---|---|---|
| 意味 | 悪い症状 | 症状を引き起こしている本当の原因 |
| 例 | ・リードが増えない ・商談化率が低い ・認知度が上がらない | ・検索需要のないカテゴリーにいる ・営業とマーケティングの連携フローがない ・検討期のコンテンツが存在しない |
たとえば、「リードの質が悪い」という課題があり、原因を「コンテンツの質が悪いから」と判断したとします。しかし、質の高い資料を作ってもなお、商談が増えず、リードの質が改善されていないとしたら、真因を読み間違えている可能性があります。
真因が「コンテンツの質が悪い」であれば、打ち手は「もっと質の高い資料を作る」です。しかし真因が「認知・興味フェーズ向けのコンテンツばかりで、比較検討フェーズの資料が存在しないから」だとすれば、打ち手は「導入事例・比較資料を優先して設計する」となります。
真因が違えば有効な打ち手も変わるため、真因を見誤っていると、どんなに打ち手を打っても成果が出ないのです。
真因の特定が必要な組織の傾向
私は多くのBtoBマーケティング組織やプロジェクトを支援してきましたが、真因を特定していない、または真因を見誤っている組織に共通する傾向は、次の3つだと考えています。
- 競合の施策をそのまま真似ている
- 手段が目的になっている
- 量や質を改善しても成果が出ない
1つ目は、競合の施策をそのまま真似ている組織です。
競合の施策は参考になりますが、施策を選ぶ根拠にはなりません。競合が良しとする施策が、自社の顧客にそのまま当てはまるとは限らないからです。競合の施策をなぞっている限り、成果が出なかったときに何を変えればいいのか判断ができません。
2つ目は、手段が目的になっている組織です。
施策を選ぶ理由が「まだやっていないから」「トレンドだから」などあいまいで、何のためにやっているのか理解できていない。施策のハックや量を増やすことばかりに注力している、などの状態がある組織では、施策の数は増えてもどれが効いたのかを説明できない状態が続きます 。
3つ目は、量や質を改善しても成果が出ない組織です。
たとえば「コンテンツの量を増やしたり、質を向上させるために時間をかけたのに、成果が出ない」場合、問題なのはコンテンツそのものではありません。こうした組織では、「誰に・何を・どのタイミングで届けるか」の戦略設計に問題がある可能性が高く、課題の真因を見誤っていることが多いです。
1つでも当てはまるものがあれば、本メソッドで真因の特定に取り組んでみてください。
課題の真因を特定する4ステップ
課題の真因を特定するために、4ステップで進めます。思いつきで原因を決めず、事実から順に積み上げるための手順です。
仮説をもとにヒアリングを行い、課題を分解し、真因候補を言語化していきます。そこから真因を特定し、解決策となる打ち手へとつなげていきましょう。
- 仮説をたてる
- ヒアリングする
- 真因を特定する
- 解決策へ接続する
真因の特定に失敗する原因は、多くの場合、思い込みで課題を分解しているからです。そこで2~4のステップでは、MECE・判定の問い・ピラミッドストラクチャーなど、ロジカルシンキングのフレームワークを参考に進めていきます。
マーケティング課題の真因特定テンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます。
ステップ1:仮説をたてる
最初のステップは、ヒアリングの事前準備として、想定される課題や真因の仮説をたてておきます。優先的に確認したいことも書き出しておきましょう。

ヒアリングは、営業・インサイドセールス・経営層・過去のマーケティング担当者などを対象に行います。調整や打診も、事前に済ませておきます。
社内の相手にヒアリングする時間は、15分程度でも構いません。「今どんな状態か」「いつ頃からか」を聞くだけでも、事実は集まります。まずは営業やインサイドセールスなど、顧客と接している人に「問い合わせのきっかけは何が多いか」を聞くところから始めてみてください。
ステップ2:ヒアリングする
ヒアリングを「とにかく聞く時間」ととらえてしまうと、情報が散らかって真因にたどり着けないことがあります。そこで、前後半に分け、それぞれ目的を持って組み立てましょう。
前半は情報を広く集めていく発散のフェーズ、後半は集めた情報を掘り下げる収束フェーズです。
前半の発散フェーズでは、「どんな状態ですか」「いつ頃から」「どのくらいの頻度で」といった5W1Hの質問で、まず事実を確認します。ここでは思い込みを排除し、全体像の把握に努めます。

さまざまな課題が出たら、各課題に対して、さらに分解して聞いていきます。
分解のコツは、MECE(ミーシー。Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)を意識することです。MECEとは、全体として抜け漏れがなく、重複がない状態という意味です。
ここでは「リードが増えない」という課題を分解し、さらなる問いをたてていきます。
分解の例
「リードが増えない」という課題に対し、「認知、興味・検討、行動、質」の4つに分解。
認知:そもそも自社を知っている人が少ないのか?
興味・検討:知っているが興味を持たれていないのか?
行動:興味はあるが問い合わせに至らないのか?
質:問い合わせはあるが質が低いのか?

【コンサルタントの実践アドバイス】
課題をヒアリングする際は、ヒアリング相手が語っている言葉が「課題」なのか「手段」なのか、意識しておくとよいでしょう。
実際によくあるのが、手段を課題として捉えてしまうケースです。あるマーケティング担当者の方にヒアリングした際、「顧客の課題はDX化です」という言葉が返ってきました。しかしDX化は手段であり、企業にはDX化によって果たしたい目的があるはずです。この場合に掘り下げるべきは、「DX化の先に解決したいことは何か」です。
後半の収束フェーズでは、集めた情報をもとに、時間・関与者・お金の3軸で原因の候補を掘り下げます。
なぜ今まで対処できなかったのか、誰の合意が難しいのか、このまま放置するとどの程度の損失があるのかなど、具体的に聞いていきましょう。お金の軸だけはほかと違い、真因を深掘りする問いではなく、課題の重要度・優先度を測る問いになっています。

ここで気をつけたいのは、急いで1つの原因に絞りすぎないことと、「~が原因ではないですか?」などと仮説を押し付けないことです。絞るのは次のステップで行います。
時間・関与者・お金の3軸で掘り下げていく質問フレーズの例を紹介しますので、参考にしてください。
質問フレーズの例
【時間】
| 確認すること | フレーズ |
|---|---|
| 過去の取り組みを確認する | 「以前、同じ課題に対して何か取り組まれたことはありますか?」 |
| 失敗の経緯を掘り下げる | 「そのときどうなりましたか?うまくいかなかった理由は何だったと思いますか?」 |
| 放置の理由を聞く | 「なぜ今まで着手できなかったのですか?」 |
| タイミングを確認する | 「なぜ今このタイミングで動こうと思われたのですか?」 |
【関与者】
| 確認すること | フレーズ |
|---|---|
| 意思決定者を特定する | 「この件の最終的な意思決定は誰がされますか?」 |
| 抵抗の所在を確認する | 「前に進めるうえで、誰の合意が一番難しいですか?」 |
| 反対意見の内容を確認する | 「反対されている方はどんな懸念を持っていますか?」 |
| 組織の構造を把握する | 「この課題に関わっている部署や方はほかにいらっしゃいますか?」 |
【お金】
| 確認すること | フレーズ |
|---|---|
| 損失の規模感を聞く | 「このまま半年放置すると、ビジネス上どんな影響がありそうですか?」 |
| 数字で把握する | 「もし数字で表すとすると、どのくらいの損失になりそうですか?」 |
| 優先度を確認する | 「今の御社にとって、この課題はどのくらい優先度が高いですか?」 |
| 緊急度を確認する | 「いつまでに解決しないといけないという期日はありますか?」 |

【コンサルタントの実践アドバイス
ヒアリングが失敗するアンチパターンを3つ紹介します。
1つ目は、解決策を先に言うことです。「◯◯をやってみましたか」「◯◯という方法はどうですか」と聞くのは誘導になってしまい、相手はこちらの仮説に合わせた回答をしてしまいます。解決策の話は、真因が確定してからです。
2つ目は、「課題は何ですか」と直接聞くことです。「一番の課題は何ですか」と聞いて返ってくる答えは真因ではなく、ほぼ確実に症状です。そのため、まず「今どんな状態ですか」「どのあたりで困っていますか」と、状態を聞くことから始めます。
3つ目は、最初のひと言で判断することです。最初に出てきた言葉を真因だと決めて次のアクションを選ぶと、対症療法的な打ち手になります。症状を聞き出したら、その背景にある原因を探しに行きます。
以上の点に気をつけておくと、勘違いや思い込みで間違った判断をしてしまうことを防げます。
ステップ3:真因を特定する
挙げた候補が本当に真因かどうかは、フローチャートに沿ってチェックしてみてください。

1つ目の分岐は、その原因の語尾が、「~していないから」「~不足だから」になっていないかです。
たとえば「受注率が低い」という課題に対し、「提案力が不足しているから」と表現するのは、課題の言い換えであり真因とはいえません。提案力不足のさらに先を掘っていくと、「商談前のヒアリング項目が決まっておらず、担当者ごとに聞く内容が違う」といった課題の真因があるはずです。
2つ目の分岐は、その原因に対して「なぜ」と突っ込めるかです。
たとえば、「ツールがないから」→「なぜないのか?」→「予算がないから」と掘り下げていけるなら、まだ真因にたどりついていません。掘れなくなるまで「なぜ?」を続けます。
最後の分岐は、その原因を取り除けば、状況は解決(改善)するかです。
取り除いても解決しないなら、ほかに原因があります。たとえば残業が多いことが課題の組織で、「部長の意識が変わる」だけで残業が減るのであれば、「システムを導入していないから」などのほかの要素は課題の原因ではありません。
3つの問いをすべて通過したものが、真因だと判断しましょう。
ステップ4:解決策へ接続する
真因を特定したら、解決策へとつなぐ提案を作成します。ここで使うのがピラミッドストラクチャーです。主張を頂点に、根拠を下に並べて論理を組み立てるフレームワークです。

まず主張として、真因と解決策を1文で言い切ります。
たとえば、「リードが増えない真因は、比較検討フェーズのコンテンツが存在しないことです。導入事例・比較資料を優先して設計すれば改善できます」といった具合です。
1文で言い切ったその下に、事実にもとづく根拠を3つ添えます。
1つ目は、ヒアリングで得た事実。「問い合わせのきっかけは展示会がほとんどで、Webからの自発的な問い合わせがほぼない」といった証言がこれにあたります。
2つ目は、データです。「サイトのコンテンツを分類すると、認知・興味向けが18本、比較・検討向けが0本」といった数字を指します。
3つ目は、パターンや傾向。「競合は導入事例・比較資料を複数公開しており、検討期の顧客の受け皿がある。自社にはそれがない」といった比較を添えます。
注意点としては、根拠を集める前に主張を決めないことです。結論ありきで根拠を探すと、都合のいい情報だけを集めて真因を見誤ることになるので、必ず事実・データ・観察から積み上げてください。
まとめた情報は、テンプレートにある次のシートに記入しましょう。社内会議で打ち手を議論する際に活用できます。

まとめ
マーケティングの成果を説明できるようにする第一歩は、施策を増やすことではなく、課題の真因を突き止めることです。
課題を分解し、時間・関与者・お金の問いで候補を出し、フローチャートで見極め、主張と根拠の構造で打ち手につなぐ。この4ステップで真因を特定できます。 そしてその土台になるのが、思い込みを排して事実を集めることです。
まずは真因特定テンプレートをダウンロードして、使ってみてください。