「仕事で成果を出す人」と聞いて、どのような特徴を思いうかべますか。
才流はコンサルティング会社であり、ビジョンとして「メソッドカンパニー」を掲げています。顧客へ価値を届けるにあたって、営業やマーケティング、新規事業などの専門知識はもちろん、ベースとして強固な「仕事力」が欠かせないと考えています。
本記事では、社内で実際に活用している仕事の進め方マニュアルの中身をテーマ別に厳選し、チェックリスト形式で紹介します。
※本記事が多くの方々に読まれていることもあり、このたび内容を最新版にアップデートしました。
ビジネスパーソンの心得
1. ビジネスの原理原則を理解する
- ビジネスで価値を提供するためには原理原則が存在する
- ビジネスの原理原則とは、相手>自分であり、顧客>外部パートナー>自分であること
- 具体的に表すと「顧客や社会、チームメンバーに価値を提供する→顧客や社会からお金がもらえる→自分たちの給与が出る」
知っておきたい仕事の考え
2. 面白い仕事が回ってくるメカニズムを理解する
- 任された仕事を円滑に進める→一緒に仕事をする社外・社内の人に信頼してもらえる→より大きな仕事を任せてもらえる→任された仕事を円滑に進める→(以下、無限ループ)
- 反対に「ミスが多い」「納期に遅れる」「50点のアウトプット」では、周囲からの信頼残高が減り、仕事が回ってこなくなる
- まずは狭い領域でもいいので「◯◯ならこの人」を目指す
- ごく狭い領域で頼られ、そこで信頼残高を増やし、より広い領域で価値を提供する
- 領域でなくても「細かい仕事ならAさん」「決してタスクを漏らさず、さくさく仕事を進めてくれるならBさん」「新しい視点をくれるならCさん」でもよい
3. 「仕事のUX(ユーザー体験)」を意識する
- 「仕事のUX」とは、相手が動きやすようにボールを渡すこと
- 「仕事のUX」が良い人のもとに、仕事は集まる
- 「仕事のUX」が良い人の共通の特徴は以下のとおり
- 短く、理解しやすい文章や話し言葉を使う
- 結論から話す
- 背景や目的の説明がある
- 次のアクションが明確(「ご確認ください」ではなく「ご確認後、◯◯してください」)
- 感情体験をよくする(「すみません」よりも「ご指摘ありがとうございます」)
- すぐに返信する
4. 仕事力の差分が生じるメカニズムを理解する
- 仕事力の差分は、フィードバックサイクルの差分である
- 大量の行動・アウトプットによってパターン認識を行い思考力が鍛えられる
- 将棋の棋士も同じメカニズム(※)
- ただし意図のない行動(仕事)では意味がない
- フィードバックのサイクルを回すには、1つでも自分で意図して行動するのが大切
- 高速にフィードバックサイクルが回るように工夫する
- 例:その領域のNo.1の会社やチーム、スモールなチームに所属する
- 例:アウトプットして、市場やユーザーからフィードバックを得るまでのリードタイムが短い仕事(SNSやブログ、ECサイト運営など)に取り組む
- 自分ひとりで考える時間を減らす。困ったらテキストや電話、Web会議で第三者にアウトプットする
※出典:長崎総合大学|パターン認識の話
これだけは守りたい仕事の進め方
5. ゴールから逆算して動く
- 期日を決めてから動く
- 「準備する→日程調整する」ではなく「日程調整する→準備する」
- いきなり仕事に取り掛からない。まずはゴールから逆算して、タスクを洗い出すことが第一
- タスクを洗い出す
- 所要時間を見積もる
- 優先順位をつける
- (終わらなさそうな場合には)取捨選択する
- 周囲の力を借りる箇所を決める
- 仕事に取り掛かる
6. 常に上から考える
- 会社のミッションやビジョン、バリュー、戦略、プロジェクトのゴール、目的などの上位概念と紐づけて、自分の仕事を進める
※参考:#44 常に上から考える。ベンチャー・キャピタリスト 世界を動かす最強の「キングメーカー」たち
7. アウトプットを相手視点で常に評価する
- 自分が知る限り、最も厳しい人の視点に立って評価する
- わかりやすいか
- 論理的な矛盾がないか
- 要望を満たすか
- 期待水準を満たすか
- 視点の抜け漏れがないか
- 次のアクションが明確か
- 相手の期待は時間の経過で変化する
- 後半になればなるほど期待が上がるため、前半でアウトプットを出して期待とのすり合わせを行う
- アウトプットを出す時は、いきなり完成形の100点で出さない
- 「40点→70点→100点」と段階的に仕上げることで、相手の期待と完成物のズレを埋める
8. タスクを滞留させずに進める
- 5分考えてわからなければ、チームメンバーに電話やWeb会議、チャット等で相談する
- 1人で進めると滞留させがちであれば、プロジェクト開始時から他メンバーを巻き込む
9. 苦手科目でも失点しない
- 誰しも苦手な業務があるのは避けられないが、苦手がそのままアウトプットされてしまうような仕事の仕方は避ける
- 苦手な業務への対処法は大きく3つ
- ①80点になるまで、鍛え上げる
- 学習によって失点、失血しない程度にスキルを磨く
- ②弱みを外部化する
- その業務が得意な人の知見やリソースを借りて、80点~100点でアウトプットする
- ③弱みが隠れ、強みで戦えるようにプレイする
- 例:会議における頭の回転が早くない → 事前のMTG準備を入念に行う/MTGでのコメント回数を減らし、一旦持ち帰った後、100点の回答を後日納品する
- 例:話すのが得意でないが、書くのは得意 → セミナー登壇ではなく、ブログ執筆で認知拡大に貢献する
- ①80点になるまで、鍛え上げる
コンサルタントの心得
10. 顧客へ提供すべき価値の基準を理解する
- 「対価に対して、3倍の成果を返す」が目安となる基準
- 例:月額50万円のコンサルフィーであれば、粗利で150万円/月の売上アップに貢献する
- 例:1年間のコンサルティングプロジェクトであれば、クライアントが3年かけて手に入るノウハウが1年で手に入るようにする
11. 御用聞きではなく、プロジェクトをリードする
- 次のアクション(方針、タスク、スケジュール、打合せ日程など)を自分から提案する
- クライアントに「どうしたらよいか?」を聞かずに「どうすべきだと思うか」を伝える
- リードしていないNG行動の例
- クライアントから「あれどうなっていますか?」などと促される
- クライアントから「今後の流れを教えてください」と質問される
- いろいろやっているが、成果へのインパクトが少ない
- いろいろやっているが、理由や背景を説明できない
- 返信やタスクの漏れが多い
12. オンボーディングに力を入れる
- プロジェクト開始から1か月以内のコミュニケーション頻度、接触頻度が肝
- 1か月以内に関係性を構築できると、その後のプロジェクトがスムーズに進み、成果が出やすくなる
- 最初の1~2週間での関係性構築を心がける
- 初回ミーティングから数週間後まで会わない、は悪手
- 早いタイミングでミーティングを重ねるための手段の例
- 営業インタビュー・営業同行
- 一緒にユーザーインタビュー
- レクチャー・ワークショップ開催
13. クライアントのクライアントを理解する
- 役員クラス・トップセールスから営業ロープレを実施
- 営業同行を複数回実施
- 見込み顧客へのユーザーインタビューの実施
14. クライアントの商品・サービスを理解する
- 営業資料、提案資料、パンフレットなどを共有してもらう
- 実際に使ってみる。もしくはデモ画面を見せてもらう
- クライアントの業界に関する書籍やレポートを読む
15. 1案件に対して2人以上で対応する
- 1人で対応するとタスクや思考の抜け漏れが必ず出る
- 2人で対応することで、情報の多角的な入手が可能
- 2人で対応することで互いにフィードバックしたり、ブレストしたりと、アイデアの質と改善のスピードが上がる
16. プロジェクトの進め方やスケジュール感を常に相手に提示する
- 今後どのようなことが、どんなスケジュールで進むのか?を提示する
- 例:WBSを提出する
- 例:具体的なスケジュールをテキストで提示する
- これをしないと不安感が高まり、不満足に直結する
17. クライアントとは私信(DMや電話)でやり取りしない
- 基本はプロジェクトに関わるメンバー全員が参加しているチャットやメールでやり取りする
- パブリックなチャンネルで発信することで自社が実働していることを伝える
- プロジェクトメンバーのアテンションを得て、プロジェクトの推進スピードを加速できる
- 一緒に入っている社内メンバーからフィードバックをもらえる
18. 自ら納期を提示し、守る
- 「約束」→「実行」のサイクルを回すことで信頼を獲得する
- 打合せ時に自ら納期(約束)を提示し、日程ベースで合意を取る
- あいまいな約束(今月中、週明け)はNG。明確な約束(週明け火曜、●●日)はOK
19. 確認、質問はメールやチャットで随時進める
- ミーティング時に確認しない
- 確認待ちによるタスク進行の遅延は双方にとってマイナス
- ミーティングは進捗確認ではなく、議論する場として活用する
20. タスクのリマインドをいとわない
- 基本、クライアントは多忙であり、宿題は遅れる前提でプロジェクトを設計する
- リマインドを恐れず、プロジェクトを前に進める
- その際のリマインドはマイルドに行う
専門スキルを高めるコツ
21. 自分の経験則から考える
- 身銭を切って自分でやって、肌感覚や経験値を得る
- マーケティングスキルを高める場合の例
- ECサイトを立ち上げる
- アフィリエイトサイトを立ち上げる
- ブログやSNSを運用する
- 発注経験を積む
- 100冊の読書より、1つのWebサイト制作・運営経験の方が効果的
22. 先人の知恵、他人の頭で考える
- 成果が証明されている手法や第三者の手法をインストールする
- 上司や社外の人とディスカッションする
- 一緒に学ぶ仲間を見つける
- コンサルタント・顧問・メンターを活用する
23. 自分の頭で考える
- KJ法やジャーナリングなどの思考法を活用する
- コーチングもおすすめ
上手な会議の進め方
24. 事前に重要事項をGoogleカレンダーのメモ欄に書き込む
- 目的
- ゴール(会議後に得たい成果)
- アジェンダ
- (あれば)相談したい箇所や論点
25. 冒頭に「目的」と「アジェンダ」を説明する
- 参加者の頭の中に、「今日はこういうことを話して、こういう流れで進むんだ」という地図を描く
- 「各自でアジェンダを読んでください」と相手に行動を委ねると認識のズレが起きやすい
26. その場で認識をすり合わせる
- 会議の議事録は「画面共有を利用しながらその場で取る」「直後にSlackに送る」など、ただちに認識をすり合わせる
- 後日、認識のズレが判明した場合の機会損失は大きい。他の参加者の落胆も大きい
27. わかりやすい議事録をとる
- タスク、決定事項など重要な情報から先に書く
- 議事録フォーマットの例は以下のとおり
200615 社内キックオフ
==
■タスク
・あ
・い■決定事項
・う
・え■議事メモ
□対象サービス
・お□対象顧客
・か
・き
==
28. 雑談から入り、アイスブレイクをするのも有効
- 最初は軽い雑談から入ると参加者の主体性が発揮され、発言の割合が増える
29. アイデアは持ち寄る
- アイデアを出すミーティングは事前に宿題を出し、当日アイデアを持ち寄る形式で運営する。その場でアイデアを考えない
ビジネス文章の基礎
30. 重要な情報を前に持ってくる
- 議事録であれば、タスクと決定事項が最初
- 「結論から書く」「提案書の1枚目はサマリーにする」はこれの最たる例
31. 全体から部分の話に進める
- 例:マーケティング全般の話→デジタルマーケティングの話→リスティング広告の話
32. 近い情報をグルーピングする
- × :バナナ、スイカ、コップ、レモン、りんご、包丁
- ○:バナナ、スイカ、レモン、りんご、コップ、包丁
33. 文章記述のルールをそろえる
- 文末は敬体(です・ます調)か常体(だ・である調)もしくは体言止めでそろえる
- 文末の「。」あり・なしを統一する
34. 読みやすいところで改行する
35. 冗長な表現は避ける
- 例:「チータは速く走ることができる」→「チーターは速く走れる」
- 例:「大きな価値があるものである」→「大きな価値がある」
36. 漢字をひらく
- (補助動詞の)頂く→いただく
- (補助動詞の)致します→いたします
- (補助動詞の)下さい→ください
- 事→こと
- 宜しく→よろしく
- 更に→さらに
- 出来る→できる
- 無く→なく
37. 読み手の解釈が揺れる言葉を使わず、具体的に記述する
- 良質なコンテンツ → 5,000文字以上で1万PV/月を獲得できるコンテンツ
- 本質的なSEO → 短期的な検索順位を高めるのではなく、ユーザーの検索意図を満たすコンテンツやサイト作成
※参考:Google社のテクニカルライティングの基礎教育資料がとても良かったので紹介したい
チャットコミュニケーションのコツ
38. 社内、社外ともに24時間以内には返答する
- 一次返答として24時間以内に「確認します」と返答し、タスク実行は24時間以降でもOK
- すぐに返せないものは「ブックマーク」を使うとタスク漏れが減る
- 自分の返答が漏れている前提で、定期的に返答の抜け漏れがないか確認する
39. スタンプを活用する
- コミュニケーションの流れ上、締めにあたる「了解です!」ぐらいなら返信しない。相手に通知がいかないようにスタンプでリアクションする
40. 1スレッド1トピックで展開する
- トピックごとに後で追いやすい
- 他人が見ても話の流れが分かりやすい
41. 会話とチャットを使い分ける
- チャットでの議論やフィードバックが長く続くようなら、一度電話やWeb会議で会話する。原則としてチャットで長い議論をしない
- 深い思考や細かい思考が必要な相談は、PCやスマホ上でのテキストコミュニケーションだけで進めない
- 提案書のフィードバックやタスク表、スケジュール表へのフィードバックなど
タスク管理の方法
42. その日もっとも重要なタスクを洗い出し、必ず終える
- 1日のはじめに5~10分程度の時間を確保して、その日のタスクを洗い出す
- もっとも重要なタスクを3つと、合間に処理するタスクを必要なだけ書き出す
- 基本は「最も重要なタスク3つ」を上から順に終えていく
- 新たに発生したタスクで2分以内にできるものはその場で処理する
- 2分以内に処理できないものは、タスクリストに入れるか、Googleカレンダーに作業する予定を入れる
- 「いつ、どこで、なにをやるか」を明記するとタスクの遂行率が上がる
- 5分考えてわからなければ、周囲の人とディスカッションする
- 解けない問題を解いてはいけない(note記事)
43. 確認を入れながら品質を高める
- 大きめのタスクは進行中にチームメンバーの確認を入れつつ、品質を高めていく
- アウトライン(40%): 30~60分程度でざっと作成
- 初稿(6~70%)
- 修正版(90%)
- 完成版(100%)
44. 集中力の向上に注力する
- 大きな成果を出すためにもっとも重要なのは「集中」
- 思考が必要なタスクは、午前中に取り組む(※1)
- 集中して作業する時は、チャットやSNSを立ち上げない
- 短時間の集中を繰り返す。人はずっとは集中できない
- ポモドーロ・テクニック:世界が実践する時間管理術はこうして生まれた
- 歴史上の著名人や科学者の働き方からも、1日あたりのMAXの集中時間は4~5時間といわれている(※2)
- そもそも疲れているとタスク処理力が下がるので、睡眠、食事、運動を管理し、エネルギッシュな状態を維持する
※1:出典:Biz Hits|仕事の効率が上がる時間帯やタイミングは?男女500人アンケート調査
※2:出典:The Week|Why you should work 4 hours a day, according to science
45. 忘れるためにただちにメモをする
- 人間は忘れる生き物
- 人間にとって何かを覚え続けることは頭を使う行為。できるだけ忘れることにフォーカスする
- 突然何かを思いついたときの処理方法は、自分にメールやメッセージを送るなど
おまけ:パフォーマンスを維持するための工夫
食事に気をつける
- 水分をこまめに摂取して代謝を上げる
- 血糖値の上昇が緩やかな低GI食品を選ぶ
- 油ものを控える
- アルコールは適量にする
- 高タンパク・低脂質・低糖質な食生活を心がける
軽い運動をする
- 緑の中を5分間散歩するグリーンエクササイズ
- 10分間の階段昇降
- 30分以上の散歩
適切な睡眠をとる
- 8時間睡眠。最低でも7時間以上
- 22時~2時の間に眠る
- 目覚ましの音ではなく、光で起きる
スケジュールに余白をもつ
- 週に1日以上は余白を設ける。そこで帳尻をあわせ、回復する
- 働きすぎない
集中力を節約する
- タスクをバッチ処理する。マルチタスクにしない
- 判断する項目を減らす。ルール化、マニュアル化する